理不尽を喰らう1
世界中に出現したダンジョンの総数は公表されているだけで2764箇所にも上り、それらは探索者協会によって最高危険度1等級から5等級に分類されている。
1等級は平均10階層、2等級は平均30階層、3等級は平均50階層、4等級は平均70階層、5等級に至っては踏破記録がなく、最高踏破が62階層で100階層はあるだろうと推測されている。
そもそも4等級ダンジョンですら、過去3例しか踏破されていないのが現状だ。
各国政府が探索者協会を支援し、衛星や特殊な魔素感知機などを用いて既存ダンジョン及び新規ダンジョンをリアルタイムで監視している。
また、踏破されたダンジョンは消滅する事が確認されており、そのダンジョンによって回数は変わるが、何度か踏破する事でダンジョンを維持する魔素が枯渇し消滅する。出現に関しては人口密度や地脈に関係しているのではないかと中途の研究結果が出ていた。
そしてダンジョン内は別の次元空間であり、地球とその別次元空間を繋ぐ入り口が出現したのがダンジョンと表現したものであり、5等級で約50Mほど、1等級であれば約5Mほどの入り口であると解明されている。
ダンジョンが出現した当時に溢れたモンスター、地球外生物は1等級から3等級ダンジョンからのものであり、もし当時5等級または4等級ダンジョンから溢れていた場合は半年も保たずに人類は滅亡していただろうと言われていた。
今現在リアルタイムに日本で公表されているダンジョン数は5等級ダンジョンが1箇所、4等級ダンジョンが4箇所、3等級ダンジョンが12箇所、2等級ダンジョンが24箇所、1等級ダンジョン42箇所の合計85箇所になる。
85箇所の内、5等級ダンジョン、4等級ダンジョン、3等級ダンジョン4箇所、2等級ダンジョンが7箇所、1等級ダンジョンが16箇所、公表されているダンジョンの約3割弱である29箇所が東京に存在している。
埼玉県寄りの郊外にある東京ダンジョン1等級11号、その入り口の隣には探索者協会の簡易事務所があり、警備員が数名立っていて、そこを探索者証を提示して通り、初めてのダンジョンに立ち入って1時間、スキルにより上がった1等級で入ったのにも関わらず、未だ1階層の広大な草原地帯で俺は息を切らせていた。
すでに50体に迫る数のいわゆる半透明なスライムをスキルで購入した剣で倒していた。
探索者1等級であれば単独でも1等級ダンジョンであれば5層以上は踏破できるはずだが、未だ1階層でスライムを相手にしているのは戦闘経験を積むためと慣れ、そして購入したスキル『魔闘気1等級』を使いこなす為だ。
『魔闘気1等級』は、体内の魔力を使い肉体や武器に纏わせ強化を可能にするスキルで、これが使ってみるとめちゃくちゃ難しい事が分かった。
スキルを取得すると簡単に使えると思ったのは大間違いで、非常に甘い考えだった事を痛感しながら、何度もスライムに剣を振るう。
そもそもスキルのお陰で取得できているが、本来覚醒時に取得しているスキル以外は、膨大な経験値によって取得できるものであり、基礎があるからこそ取得してもスムーズに使いこなせるのであって、俺みたいに基礎もない状態で取得した場合に直ぐに使いこなせるのは当たり前に無理だろ!と、心の中で悪態をつく。
そしてスライムを倒し始めて2時間、ある考えが閃いた。
袋に入れて集めておいたスライムの核を『購入2等級』で売却画面で1個500円だったので全部で40,000円で売却。
その上で、出費は貯蓄を削る為に痛いが、スキル欄で以前見た『魔力操作1等級』を10万円で購入する。
結果を言えば、全然違う!
スキルがあるのと無いのではこれほどに違うのかと実感しながら、剣を振るう。
魔力の流れも感じれば、思い描くイメージに近い形で動かす事ができるようになった。
例えれば重いハンドルから軽いハンドルに変わったような感覚に近い。
30分程そのままスライムを倒し続けて、慣れたところで2階層へと足を踏み入れてみた。
2階層も1階層と変わらずに全体は分からないが広大な草原で、出てくるモンスターも変わらずスライムだった。
ただし、1階層のスライムよりもひと回りは大きい。
そして更に降りると3階層のスライムは更に大きく酸まで吐くようになり、4階層でやっとスライム以外のモンスターが登場した。
4階層は今までの草原地帯よりも木々が生い茂り、その先は見えないほど広い。
足を踏み入れて数分で、大きな足音と共に体長は1Mほどだが、口からはみ出た鋭い牙から涎を垂れ流した猪型モンスターが3体向かってきた。
3体同時など想定していなかったが、焦らずに剣に魔力を纏わせて構える。
まずは先頭の猪型モンスターを上段から剣を打ち下ろして切り裂くと、そのまま左の1体を下から掬い上げ、切れ味鋭い剣が両断する。
駆け抜けた最後の1体が雄叫びをあげながら踵を返して突進してくるのを冷静に見極めて、またも上段から剣を振り下ろし両断した。
スライムと違って鮮血が飛び散り、むせ返る匂い、初めて見るグロテスクな光景に一瞬膝を着きそうになるが、能力的な精神力によって耐え、モンスターは数秒後には光の粒子となって消え、死体があった場所には薄く緑色に光る核が残されており、全て拾ってそのまま『購入2等級』で売却する。
現在解明されている情報では、モンスターにも1等級から10等級まで設定されており、1等級から3等級までは緑、4等級から6等級までは青、7等級から10等級は赤と核の色が変わり、核自体の色が濃ければ濃いほど上の等級になり、またエネルギー資源として高額で売却される。
また1等級ダンジョンには1等級から3等級までのモンスターが、2等級ダンジョンには3等級から5等級モンスターが、3等級ダンジョンには4等級から6等級モンスターが、4等級ダンジョンには4等級から8等級モンスターが、5等級ダンジョンには5等級から10等級モンスターが出現するとされ、階層主と呼ばれるボスモンスターや、特殊なモンスターは紫や黒などの核を持っている例も確認されていたりする。
どこからともなく現れる猪型モンスターを剣で狩りながら思考する。
どれだけモンスターを倒して経験値を積み上げても固有スキルの特性上、他の探索者とは違い能力もスキルも決して上がる事はない。
上げる為には購入するしかないし、購入するにはお金を稼ぐしかない。
手っ取り早いのは宝くじだが、現実的では無いし、事業をするのも元手がなければ無理だ。
そうすると、モンスターを倒して稼ぐしかない。
どうすれば効率良くモンスターを倒して稼げるか。
高等級のモンスターを倒すには実力が足りない。
なら、倒せるモンスターを効率良く倒す方法はないか。
猪型のモンスターを倒し、辺りに静寂が訪れ、気配が消える。
スキルで購入画面を表示し、探し出したスキルを12万円で購入する。
気付いたが、以前の記憶では10万円だったはずだから、スキル数が増える度に他のスキルの購入価格が上がる仕組みらしい。
やはりなかなか世の中甘くは無いらしい。
購入したのは、
結界1等級
『結界をイメージする事で発動し、その強度は等級または魔力値及び精神力値によって強化される』
シンプルな説明分だが、理解は難しくない。
少し離れた場所にいる猪型モンスターを発見して、試してみる。
『結界』
イメージしやしすいように言葉に出して、猪型モンスターを閉じ込める形で四角い結界の箱を作り出す。
魔力操作1等級を取得してあるから、イメージ通りに作り出す事ができた。
『圧縮』
言いながら箱が小さくなるイメージをすると結界が圧縮し、悲鳴を上げた猪型モンスターと結界が消え、地面に核だけが残った。
効率を考えた上で、捻り出した答え。
結界で囲んで圧縮する。
シンプルであり、尚且つ多対数にも使える現状最も効率的な方法。
手応えを得て、また次の獲物を探し始めた。
20万円で購入した簡易テントを35万円で購入したスキル『収納1等級』で仕舞い込む。
簡易テントは簡易と名はついていたが気配遮断と警報が付いていてかなり便利で、スキル収納も1等級とはいえ、6帖間ほどの容量がある。
すでにダンジョンに篭って1週間、誰も待ってはいないし、スキルによって簡易テントや食料が手に入る為、そのまま籠りスキルを磨くと共に狩っては売却して能力を上げるのを繰り返した。
櫻井要
31歳
等級レベル1
体力1.340
攻力1.300
防力1.241
魔力3.101
俊敏1.226
精神3.021
固有スキル 購入2等級
保有スキル 隠蔽1等級・擬装1等級・身体強化1等級・剣士1等級・魔闘気1等級・結界1等級・収納1等級
売却したお金は全て能力値購入に充て、特に魔力と精神に集中させた結果、かなり能力値が成長した。
そのおかげで狩りもより効率的になり、今では結界を5個同時に作り出す事が可能となった。
そして更に1週間ダンジョンに籠り、10階層のボスと対峙することになった。




