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山姥DRIVE  作者: 高山丸虎
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第5話

角丸退却後、「後処理隊」と言われる人達がせかせか動き出していた。

PM9:30 低山桜(炎の祖母)の遺体を回収した炎たちは、P・Pと言われる後処理隊が来るのを待っていた。

今回のこの騒動で死者がかなり出たらしく、死者の弔いは集団埋葬になると聞いている。

両腕が少々言う事を効かない俺は、祖母の遺体を前にして・・・

「うわぁぁぁぁぁぁん、婆ちゃん、助けられなくてごめんよぉ。」

泣き喚いていた。

戦いに必死で感じなかった感情が、終わった安堵からか、一気に込み上げてきたんだ。

いざ祖母の遺体を前にすると涙が溢れ出して止まらなかった。

「婆ちゃん、今まで育ててくれてありがとうなぁ・・・本当にありがとうなぁ。」

俺は言葉を掛けながら爆発する感情に逆らう事なく泣き続けた。


しばらくして、

「ぐすん・・・。」

「少しは落ち着いたかい?」と優しく声を掛けてくれたのは姶良だった。

「・・・・・はい。」と、答えた直後、バチーンと頭を殴られたような衝撃が走る。

「痛えなぁ、誰だよ!」

ムカっときて振り向くと、そこにはマルコがいた。

「何すんだよお前は!怪我してんだよ俺は!腕に響くだろうが!このバカッ!」

「泣き過ぎじゃ、もうええじゃろ!」

「この状況で言うセリフか!俺は今たった1人の家族を失ったんだよ!そのくらいわかんねぇのかよ、このチビコロがっ!」

「そうじゃないわ、心を強く持てと言うとるんじゃ!これから先、どんな困難が待ち受けとるかも分からん。泣くんはこれで最後にしとかんけ。だけん、婆ちゃんの最後の姿、しっかり目に焼き付け解くんじゃぞ!そしてその苦しみ・悲しみ・辛さ、怒りを全てをあいつらにぶつけるんじゃ。それがうぬの出来る最後の婆ちゃん孝行じゃ。」

と発言した直後、マルコの頭にバチーンと殴られたような衝撃が走る。

「何するんじゃ、うぬは!」と言って炎の方を見るマルコ。

さっきとは表情が変わって、

「そんなの分かってるわ。お前の言う通りだよ・・・いつまで泣いてられねぇよな。ぜってぇあいつらは俺がぶっ潰してやるよ!」

マルコは、分かっとるやないかと思ったが、叩かれた事がムカついたので、「そうじゃな!」と言いながらもう一度炎の頭をバチーンと叩き返した。


わなわな・・・


「ああ、そうだよ!」と俺もムカついたので更に叩き返した。

「何するんじゃ、うぬは!」

「先にやってきたのはお前だろうが!」

頭と頭をぶつけ合う2人。


「ぷっ・・・はははははははは!」


ポカーン・・・

炎とマルコが瞳をまんまるとさせている。


「いや〜、ごめんごめん。君らって相性いいよね。なんか、悩んでた事が吹き飛んじゃうよ!」

親指を立てて無垢な笑顔で言う姶良。


「そんな事ないです!」

「そんな事ござらん!」


「ほらね、息ピッタリ!」とニヤニヤしている姶良。


どうしても意気が合ってしまう炎とマルコ。

それが気に食わない2人は、互いに顔をそっぽ向けてプンッとしている。

そんな2人の所に姶良が近付いて来る。

「ところで炎くん、怪我は大丈夫かい?」

「え?・・・あ〜折れては無さそうですが、全腕打撲だと思います。上手く動かせません。」

「そっか・・・それで済んで良かったよ。ホッ。」

「ホッ、じゃないですよ、たった一撃で両腕ボロボロだし。死ぬかと思いました。あなたが来なければ俺は今頃____。」

「気にしなくていいんだよ。当然の事しただけだから。 」


(婆ちゃんの事気に掛けてくれてんだな・・・なんだか、逆に気を使わせちゃって悪いな。)


「てか痛いでしょ。とりあへず応急処置の方法を教えようか。」

炎の両腕の事を気遣う姶良。


「え、あ、そんなのあるんですか?」

「でもまー、あくまで応急処置だから。あと出来るかは君次第だけどね。」

「はぁ・・・。」

この痛みが治るのならと思い、俺は姶良の言う通りにやる事にした。 

「じゃあ、今から僕のいう通りにやってくれるかい。」

「分かりました。」

「怪我を回復させるには、血流促進させないといけないんだ。」

「はい。」


「まず、心臓全体を暖かい何かで覆っていくようなイメージを持ってくれ・・・いい?それが圧によるプロテクトだよ。そして怪我している部分の毛細血管の細部まで血液が行き渡るよう、鼻で深呼吸して口から吐くんだ。そうする事で体温を上げて血流促進していく。」


スゥー、ハァー・・・・・痛っつ。


「慣れるまでは痛かったりするけど、これを当たり前にやって血流を高速化させるんだ。仕上げに守護精霊エネルギーを乗っけてやる。それを繰り返すことで超回復が可能となるんだ。君は覚醒したからきっとできるはずだよ。」


スゥ、ハァ、スゥ、ハァ・・・・・・。


カハッ、ハァ、ハァ・・・・・。


「慌てなくていい、ゆっくりから速くしていけばいいよ。」

「はい!」


(心臓全体をプロテクトするイメージで圧を・・・毛細血管まで行き渡るように・・・そこに守護精霊エネルギーを・・・。)

そうして、少しずつ回復していくのが分かる。


「痛みが和らいで少し動かせるようになりました!」

少し腕を動かしても大丈夫な感じがしてきた。

「うっ・・・。」

しかし、その後で一瞬足が砕けそうになった。

「大丈夫?」

「はい。」

「精霊契約の特異体質の効果なのかな?飲み込みの早さはまだ良いにしても、君の回復速度は異常だよ・・・ただ、この能力って体力を半端なく使うから気をつけてね。」

「先に言ってくださいよ〜。」

「まあ、あくまで暫定的な回復方法だし、完治させるにはしっかり治療してもらう事と休養をとる事だから。治ったと勘違いしちゃいけないよ。」

姶良が人差し指を立てて炎に説明する。

「あとはそれを、いついかなる時でもイメージを崩さずトレーニングし続ければ、体力の上昇と免疫力強化、心肺機能強化、それから精神面の強化の効果が得られるんだ。その上、戦闘中にプロテクトする事で心臓または血管の保護もできるから、即死回避だったり身体強化にも使えるんだよ。 おまけに体温上昇にも使えるから、極寒にパンツ一丁でも耐えられるようになるしww便利でしょ!」

俺は、自分の回復した腕をマジマジと見ながら答える。

「マジか、すげーな。 是非続けていきます。」

「でも、体力使い過ぎて死んだりしないように気をつけてね〜。」

「・・・・・。」

「こやつはゴキ並の生命力なんで死にやせんぜい!」とマルコが揚々と割って入る。

「うるせーよ!」俺はマルコを捕まえてグニュグニュする。

「こりゃ、やめんか。」

「しかし、珍しいなぁ、守護精霊を具現化させてしまうなんて。本来、魂の中に存在するもんなんだけど。君みたいな人は今までに1人くらいしか見た事ないよ。歴史的に見てもすごく稀だし。すごいねキミ!君は絶対に僕のチームに入ってもらうからね?ね?」

目を輝かせて炎に詰め寄る姶良。


・・・・・!


「ちょっと待ってください、もう1人ってどういう事ですか?」

俺は、自分と同じような人間がいると聞いて少し嬉しくなった。

「僕のチームにいるよ!君と同じようなタイプの子が。興味ある?」

グイッとくる姶良。

「しかもー・・・性別は、女の子!」

「・・・・・。」

「年頃だしねぇ、うんうん、分かる分かる!」

(なんか、勝手に納得されても困るんだが・・・しかも別にそういう訳じゃないんだけどなぁ。)

俺は頭をかきながら少し困った顔をしていると。

ずっとニヤニヤしている姶良。

「・・・・・。」

「あ〜、ちょっと待ってね。それより先にさ、今日ここに一緒に来てる僕のチームメンバーを紹介させてくれるかな。ちなみに今日は、その彼女はいないんだけどね。」まだニヤニヤしている。

「・・・・・。」

何やら少し離れた所に連絡をとりに行く姶良。


連絡をとってしばらくすると、ガラガラという音が聞こえきた。

その音のした方を振り向くと、2人の男が瓦礫を越えて目の前にやってきた。

見るからに俺と年が変わらないほどの青年2人だった。


俺から向かって左側に立っている人。

ガリヒョロで高身長、メガネ掛けてるけど耳にピアス付けてるし、いかにもチャラそうな感じ。

俺から向かって右側に立っている人。

俺より少し身長が低くて目つきが悪く、いかにも恐そうな感じ。オレンジ頭だし。


(2人でバンドでも組んでるのかな〜なんてwww)

心の中で俺は、2人を少し小馬鹿にしていた。


「見つけたんですか?」

「そうだよ〜、こっちへおいでよ2人とも。」

「アイちゃん、こいつが例の?」


(いきなりこいつ呼ばわりかい!何でやねん!ってつっこんだやないかい!てかアイちゃんって可愛すぎだろ!まあ実際、姶良さんって見た目可愛い系男子だからしっくりきてるんだけど___。そんな事言ったら怒られそうだな。)

姶良がこっちをギロっと見ている気がしたが、無視する事にした。


「それでは紹介しよう!彼が、僕の命の恩人:桜さんのお孫さん、低山炎くんだよ。隣にいるのが炎くんとの契約によって現世に具現化された火の守護精霊マルコくんだね。」

「どーも、初めまして炎です。」

俺は2人に向かって頭をペコっと下げた。

「ちなみにさっき、この2人の力でRクラス一体倒しちゃったよ〜!」


!!!!!


「マジかよ!」

「マジ卍?」


(マジ卍??古っ!てか死語なんすけど^^;)すかさず心の中でツッコミを入れてみる。

2人から、初見?すげーな、すげーなとマジマジと見詰められる炎。

「・・・・・。」

「で、次にチーム姶良を紹介するよ! 炎くんから向かってこっちにいるのが、ガリヒョロのヤマトくんで〜す!そしてこっちにいるのが、脳筋みかんこと軍ちゃんで〜す。みんな仲良くしてね〜」


「おい!誰が脳筋だ!おらっ!」

脳筋みかんから早いツッコミが入る。

(ひいっ!なんかめっちゃ怖いんですけど〜)俺はビクッとした。

「師匠に向かって、オラとは口が悪いですね君は!」

と姶良からバシッと蹴りが入る。

「すみませんでした!」

「分かれば良い、挨拶しなさい。」

「はい!阿賀野将軍あがのまさいく、19歳、これからよろしく頼む。です!みんなからはショウグンって呼ばれてるんで、そう呼んでくれ。です。」

きちっと頭を下げて挨拶をする将軍。

(この人、不器用で口は悪いけど意外と礼儀正しいみたい。良かった〜。)うるうるさせる炎。

「なぜ、泣いてる!?」

何か悪い事したっけ?と思う将軍だった。


一方ガリヒョロの方は、

「どーも、楠大和くすのきやまといいます。19歳です、よろしゅう頼みます。僕はヤマト言われてるんで、そのまま読んでくれたらええですわ。」

こちらもしっかりと頭を下げて挨拶する大和。

(こっちは関西弁バリバリだし、かといってチャラ過ぎる訳でもないし、なんかツッコミづらいわ!)

と考えながら険しい顔をしている炎。

「なぜ険しい顔を!?」

何だかショックな気がした大和だった。


「てゆーか俺ら3人とも19歳なんすね。」

「あっ!確かに」

「ほんなら、同級生の嘉という事で、タメ口でいこか! よろしゅう!」


(早っ!でもその方が気楽でいいかな。)


「よろしく!」

「よろしくな!」

「よろしく。」


姶良がパンっと手を叩いた。

「よし!P・Pも到着したみたいだね。挨拶はこの辺までにして一旦本部に戻ろうか。今回の件を本部長に話さないといけないし、炎くんの件もあるしね。炎くんはついて来てもらうけどいいね?」


「はい、分かりました。」


「待った!帰る前に言わせてもらいますわ、お師匠さん。あの術式使うならもっと早う使こうてくれませんか?そしたらもっと多くの生命救えたんとちゃいますか!?」そう怒りながら大和は、すごい剣幕で姶良に詰め寄る。


あれだけの大技だ。

確かにそう言われても仕方ないよな。


しかし、実際問題、姶良の闇光には弱点があった。

そもそも闇光とは、姶良を中心にして光と闇を反転させていく術である。

その光に触れた全てのものが効果発動の対象物となる。

鬼や魔物などの怨力は闇属性なので、光に反転させる事で身体を崩壊させる効果が発揮される。

だが、街灯などの明るい場所に入られると術から逃れる事が可能である。

また地中に逃げられると効果がない事。

術中は身動きが取れない。

などなど、意外と弱点が多い。

初見相手には効果抜群だが、一度弱点が露呈してしまうと、自分が危険に晒されてしまう諸刃の剣だったのだ。

だから、その弱点が漏れるリスクは極力減らしたい姶良は、誰にもその弱点は教えていない。

今回はたまたま条件が整ったから発動できただけだった。


「いや〜、はははっ、何かと色々かあるんすよ(^^;;  さーせん!」

何とかその場を誤魔化そうとしている。

「杉田玄白、もういいですよ。」ふん!としている大和。

「杉田玄白〜ギャハハハハ!」爆笑する将軍。

「お前は意味わかって笑っとんのか?大体!」

「いや、ぜんっぜん分からん!」自信満々に言う将軍。

はあ〜っと深々溜息をする大和。

「よしっ!あとはP・Pに任せて行こ〜、みんな〜」先導する姶良。


この人達が何を言っているのかさっぱりだったが、本当にこのチームは大丈夫なのかなと思って見ていた炎とマルコであった。


(ま、まあ、とにかく楽しそうで何よりだな。)


そんな事を話しながら4人は、迎えにきた黒いセダン車に乗り込みその場を後にしたのだった。


一旦本部とやらにいく事になった炎とマルコ。同じ守護精霊を具現化させた女の子のことを気にかけながらも色々と話が進んでいき、果たしてこれからどうなるのやら。

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