表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺の君への鎮魂歌  作者: 136君
37/49

♪37

 思い出したのは歌詞カードだけではない。それは押し入れの奥に隠してある。


「あった。」


ホコリの被った箱の中に入っているのは、桜花からの手紙だ。


 幼稚園の頃だっけか、桜花のマイブームが手紙で、毎日のように何かを書いてきた。だいたいのことが「大好き」とか「将来結婚しようね」とか。今見たら赤面するような内容ばかり。でも、『1番一緒にいる人が好きな人』になりやすい幼児なら、よくあることだ。


「これは、見返すと俺でも恥ずいな。」


同じ内容のものがだいたい4セットずつぐらい出てくる。それにしても、何通あるんだろう。この箱なかなか大きいはずなのに、パンパンだ。


「あっ!」


その手紙は折り目がついていて、それに沿って折れば、紙飛行機になった。


「懐かしいなぁ。」


その日は、幼稚園の行事で昔遊びのおじいちゃんが来た日だった。そのおじいちゃんは折り紙が得意で、鶴を何個か繋げて折ってたっけ?それで、1番簡単な紙飛行機を飛ばして遊ぶってことになって…


「これを窓から投げ込んできたもんだから、びっくりしたわ。」


その日家に帰ったあと、いつものように呼ばれて、窓を開けた瞬間、紙飛行機が飛んできた。


「2人してめちゃくちゃ笑ったなぁ…」


窓を見る。その窓はもう静かだ。


『手紙の中の登場人物AとBは

 いつも楽しげに笑っていて

 記憶の中に押し込んだままだった

 遠い春の日の思い出


 知らないほうが良かったこともあった

 見ないほうが良かったこともあった

 だけど君の笑顔それだけは

 目を逸らせそうになかった


 この思いが飛んでいくように

 手紙飛行機を折るよ

 君に届くか分かんないけど

 雨も風も越えてって

 遙か遠くまで

 君の軌跡を探しに行くよ 手紙飛行機



 手紙の中の登場人物AとBは

 いつも楽しげに過ごしていて

 ホコリの被った押し入れの中から

 僕のことを呼んでいた


 消えない方が良かった思い出たちに

 「バイバイ」それだけを呟いて

 だけど君の笑顔それだけは

 忘れられそうになかった


 この記憶が風化するまでに

 手紙飛行機を折るよ

 誰かの記憶に残るために

 上昇気流に巻き込まれ

 遙か遠くまで

 夢と現実の狭間のところ 探しながら



 僕は何も信じられなくなった

 君以外のことを

 僕は偽ったこの世界が嫌いだ

 もちろん僕のことも


 この思いを忘れ去るように

 手紙飛行機を折るよ

 君に届かないことを信じて

 揺れた文字で紡ぐのは

 本当の言葉

 君の軌跡をなぞっていくよ 手紙飛行機』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ