第4話 秘密基地
正史は学校から帰ってきたら、すぐに外に遊びに出た。家にはトージがおり、美湖の相手をしてくれるからだ。アパートの下で友達の優斗と翔太が待っていた。
「待たせたな!」
「今日は何やって遊ぶ?」
「白鳥丘を探検しよう!」
3人は近くにある小高い丘に登ることにした。そこは木々が鬱蒼と茂り、少し気味が悪かったが、それだけにそこを探検すると思うと胸がわくわくした。
正史たちは土の崩れかけた階段を上り、石だらけの細い道を進んでいって木々の生い茂る森に入った。日の光が届きにくく薄暗いこの場所は奇妙なところだった。凸凹で雑草が生い茂っているものの道があり、そのわきには崩れかけた塀が所々に見え、その奥にはコンクリートの焼け落ちた壁と鉄骨がむき出しになった建物があった。それがこの道沿いにいくつも並んでいた。ここは廃墟になって誰も住まなくなった土地なのだ。
「幽霊でも出そうだな?」
「怖いのか?」
「怖くなんかない!」
その時、「ばさばさ!」と鳥が飛び立って木々を揺らし、辺りがざわめきだした。
「うわっ!」
3人は縮み上がって思わず声を上げた。だが恐る恐る辺りを見渡してみても、別に何も出てきていなかった。
「大丈夫だ!」
「ああ、何もいない!」
3人はほっとして息を吐いた。落ち着いてみると、誰も来ないこの場所は秘密の遊び場として最適なように見えた。
「ここに秘密基地を作るぞ!」
「おう! そうしよう!」
「ここなら誰にも知られない。僕らだけの基地だ!」
3人は辺りの建物の残骸を見て回った。するとドームが印象的で、壁がくずれて一部がなくなっているもののまだ屋根が残っている洋館が目に入った。近づいてみると、壁が黒く焼け焦げていて、かなり前に火に包まれたらしい。だがまだ原形をとどめている部屋もあった。
掃き出し窓があったところから中に入ると、そこはかつて応接間であった部屋だった。かなり汚れて朽ちているが椅子やテーブルなどの調度品が置かれていた。
「秘密基地にうってつけだな」
「ああ、きれいにしたらまだ使えそうだ」
「よし、じゃあ、ここに決めよう」
3人はそこを秘密基地にしようと片付け始めた。そして落ちていた古い箒を使って掃除した。するとそこは彼らには小洒落た部屋に見えた。
「毎日ここに集まるぞ。ここが僕らの秘密基地だ」
「名前をどうする?」
「ええと・・・」
正史はこの洋館の崩れた門にあった『石神』の表札を思い出した。
「石神・・・いしがみ・・・ストーン・・・ゴッド・・そうだ、ゴッドストーンにしよう。」
「いいね。」
「そうしよう。」
そう名付けられてそこは彼らの遊び場になった。ここでこれから何をして遊ぼうか・・・正史は考えを巡らしていた。