第13話 さまようトージ
正史と美湖は白鳥丘のあの洋館に向かって走った。もちろんトージを探して連れてくるためだ。また苦労して丘に登り、陰鬱な道を歩いて洋館にたどり着いた。
「トージ! トージ!」
二人が名前を呼んで探すが、辺りは静まり返っていた。そこにはトージの姿はなかったのだ。美湖が心配げに言った。
「トージがどこかに行ってしまった!」
「大丈夫だ。そこいらにいるはずだ。町の中を探そう」
正史と美湖は丘を降りて町の中を探した。商店街やアパート、小学校やこども園、公園や神社・・・しかしどこにもトージの姿はなかった。
「トージはどこに行ってしまったの?」
美湖が悲しそうに正史に聞いた。
「うーん。どこだろう・・・」
正史は考えた。トージが行きそうなところ・・・多分トージは自分の記憶にある場所に行ったに違いない。それは・・・正史は思いついた。
「そういえばトージは他に絵を描かなかった?」
「うん。描いた。浜の絵を描いた。」
「そこだ! 浜へ行こう!」
トージは洋館の次には浜を思い出して絵に描いたのだ。そこでの記憶が残っているに違いない。二人は海岸の方に向かった。
◇
トージはお嬢様を求めて浜をさまよい歩いていた。そこはよくお嬢様と散歩をした場所だった。そこに行けばお嬢様に会える気がしていた。
「お嬢様・・・お嬢様・・・」
トージは呼び続けるが、お嬢様の姿はどこにもない。もう一晩中、歩き回っていて布の足が濡れた砂でふやけてきていた。
「お嬢様は・・・もしかして・・・私がいけなかったばかりに・・・」
トージは絶望していた。もうこのままお嬢様に会えないと・・・。その時、そんなトージの後ろ姿を正史と美湖が見つけた。そしてすぐに2人は浜に下りて、トージの方に駆けて行った。
「トージ! トージ!」
そう呼ばれてトージは振り返った。その声を聞いて、「お嬢様だ!」・・・と思って一瞬、喜んだ。だがそれが正史と美湖と分かってがっかりしたようだった。正史はトージに声を開けた。
「トージ。探したよ」
「私のことは放っておいてください。お嬢様を探しているんです。邪魔しないでください」
トージはそう答えた。偽物のミーコには用はない。町中を歩き回っても本当のお嬢様を探すのだ・・・とも言いたげだった。そんなトージに正史はうれしそうに教えた。
「見つかったんだ。トージの探しているお嬢様が。ミーコが見つかったんだ」
正史の言葉にトージは長い耳をぴんと立て、ガラスの目を輝かせた。
「本当ですか! お嬢様が・・・お嬢様が生きておられたのですか!」
「そうだ。今から会い行こう! 今なら間に合う!」
正史はトージを抱き上げた。
(大きいおばあちゃんがまだ生きているうちに、トージを会わせるんだ!)
そう思った正史は美湖とともに大急ぎで病院に走って戻っていった。




