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2.乙姫

 短いので続けて。



【夢メモ】

乙姫

 竜宮城在住。海神・竜王の娘とも、和爾ワニとも言われる。





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 妾は三女神の一人、ニヴアン。海の底ロッホランに住んでいた。


 地上で孫のバロルが生まれたと聞き、顔を見に行くつもりであった。ところが、いざ地上に出るとそこはエリン(アイルランド島)ではなくアルビオン(グレートブリテン島)だった。ロッホランを経由すると、聖地である水場にはどこにでも出られるのがアダとなったのだ。


 何もかも面倒になった妾は、そのままアルビオンの湖に居を移した。



 ∝



 その湖では、時々鉄の斧が投げ入れられたり、エクスカリバーとかいう銘の剣が投棄されたりした。その後も「斧のネタいただき!」というギリシャの男神や、聖剣を返せと怒鳴り散らす騎士がたびたび現れたので、うんざりした妾はいい引越し先がないか、友である鳥神たちに相談した。


 すると、不老の妾やもう一人の姉モリガンとは違い、死すべきものとして幾度も転生する姉ヴァハが、もうすぐ彼らの管理世界に転生するという情報を入手した。



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 妾は鳥神たちの力添えでヒベルニア島(エリンの異世界対応地)に転移したが、姉が転生するにはまだ時期が早いようだった。


 暇つぶしの異世界探索のためにワタリガラスに変じた妾は、大陸の一箇所に好みの湖沼やヒースを見つけた。その湖底に鳥神たちに作ってもらったゲートで、この異世界とロッホランとを行き来しながら、姉が転生するまでの時間をつぶすことにした。





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 ある日のこと、妾のお気に入りの湖に小さな舟が浮かんでいた。覗いてみると、そこには金の髪をした少年が横たわっていた。少年をひと目で気に入った妾は、舟ごと彼をロッホランへ連れて行くことにした。


 目を覚ました彼はウラオシンと名乗った。金の髪(フィン)を連想した妾は、彼を子鹿オシーンと呼ぶことにした。


 「ここって竜宮城?!」とオシーンが呼ぶここロッホランで、妾たちは寝ても覚めても楽しい日々を過ごした。


 だが二度の目覚めを迎えた後に、オシーンは故郷に戻りたいと妾に懇願するようになった。デビューをしなければならないらしい。必ず戻ることを約束させ、妾はオシーンを帰郷させることにした。


 与えた注意は一つ。決して故郷の地は踏まず、水上で別れを済ますこと。そうしなければ止めていた肉体の時が進み、土の上での記憶が封印される呪いがかかるのだ。呪いを解く方法はある。愛を得ることだ。


 キツく言い聞かせたつもりだったが、「大丈夫、大丈夫! ちょっとだし」とオシーンはあまり聞いてはいなかった。


 ロッホランは土の上ではないし、地上の星は土星が元の位置に戻るほど移動しているのだが……。まあ万が一の時でも、オシーンが妾の元に戻りさえすれば呪いは解けるのだ。むしろここに戻ろうという気持ちを後押しできるのならば、勘違いも正す必要はないだろう。



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 程なくして小舟で戻ったオシーンは、記憶を保持したまま白髪の老人になっていた。





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【夢メモ】

オシーン

 妖精と結婚して常若の国(ティルナノグ)へ移住。3年後に里帰りして馬から足を地面に降ろしたら、年齢が300加算された。『魔女』の元ネタ神話のクウァルの孫。父はフィン。


ネヴァン

 アイルランドのケルト神話に登場する、戦いに勝利をもたらす三女神の一柱。水辺が好き。


湖の貴婦人ニミュエ

 水の妖精。別名ヴィヴィアン。エクスカリバーの貸出し人。




2022.10.2初稿


【完結済み小説のご案内】


 feat.地球の神様シリーズはおそらく今作で終了なので、後書きに完結作の紹介も入れていきます。


とある海神の娘・豊玉姫については『バードの歌』へ

とある竜王の娘・頗梨采女については『乙女』へ

ギリシャの男神については『吟遊詩人』へ

ヴァハについては『魔女』へ


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