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39.まさかまさかの『特別授業』②


多少臓物の表現があるので苦手な方はご注意ください。


****



「さてと…では、ぼちぼちはじめましょうか。…皆さんちょっと失礼しますよ」


 アレク先生が人差し指に魔力を込めて私たちの眉間に触れていった。

 眉間から柔らかな魔力が顔面に広がっていく。


「はい、これおまじない」

「?」


 おまじない、とははて?

 私とアメリアさん、シルヴィ君は互いに顔を見合わせる。ぱっと見て顔に何も変化はない。


「感覚がちょっと鈍くなる魔法。ニオイとかも分かりにくくなっているはずです」


 アレク先生が効果を説明した。

 …、言われてみればパンの香りなどもしなくなったような…。


「これは魔属性の応用で…と、まあ今は止めておきますか。また今度お教えしますね」


 なるほど…。魔属性の魔法には毒や麻痺といった使い勝手の難しい魔法があるのだけれど、こういう使い方もあるのか。 

 …実は私は魔属性の才能がほんのちょっとだけあるので…いやほんのちょっとだけど! 今後アレク先生にはきちんと教えてもらいたいと思うのでした。


 ともあれ、私たちはこれから始まるバーナード所長の特別授業に備え、互いに頷き合う。内容は先に聞いていたので実はこれから起こることを知っているのです。知っているからこそお昼も控えめにしておいたのよね。


「シルヴィ・アルダー君のゴーレムにまたお世話になりますが大丈夫ですか?」

「はい、だいじょうぶです」


 そうしてアレク先生は休憩スペースで待機していた2年生に声を掛け、指定の場所へと移動を促した。もちろん私たちも彼らと一緒に移動する。



 本日のテーマは『食』

 生命維持活動に絶対に必要だけれども、『貴族』である私たちにとっては、あまり関わりのない分野だ。料理をすることも食材を扱うことも全く無いわけでは無いけれど必須というわけではない。


 畜舎からは卵やミルク、農園からは野菜、果樹園からはフルーツ等、各エリアの担当の生徒たちがそれぞれの成果を手に戻って来ることで、飲食スペースには即席のビュッフェが誕生するまでになった。

 この研究所はまるで社会の縮図だ。


 作業チームのほとんどが『食材』を手に入れるために『労働』をする。私たちが『食』というものにいかに人生のリソースを払っているかを知り、普段の生活がどれだけ恵まれているのかを知る。


 そして今回の特別授業はさらに一段階踏み込んだ『現実』について知ることになる。


今回の作業で唯一手ぶらで戻ってきたチームがある。

 それは『狩りチーム』

 つまり食材でいうと『肉』だ。


 手ぶらで戻って来たのは彼らがさぼっていたからとか、手際が悪かったからといったものではない。狩りチームは『罠』を仕掛けて獲物を捕る。初日はまず罠を整備して、獣の通り道に罠を仕掛ける。収穫があるとしたら翌日以降となる。




「今回の授業は男女別に行う」


 バーナード所長がまずそのように宣言した。怪訝な顔をしつつも生徒たちは素直に男女別に分かれて指定の場所へと移動する。お手伝いである私たち一年生3人組も、きちんと男女に分かれてそれぞれの集団の後ろに待機した。…といってもシルヴィ君のゴーレムが既に複数基起動して待機しているけれど。




『食事とは命に感謝をしていただくものである』


 厳かな声でバーナード所長の授業が始まった。

 こちらは女子チーム。

 男女に分かれても授業内容は同じなのだけれども、2組に分けたのは理由がある。気分が悪くなったりして救護室へ運ばれる生徒が増えるからだ。


『君たちが普段食べている食事は、植物であり、動物であり、全て生きている命をいただいている』


 今回ばかりは生徒も私たちも体育座りで所長の話を聞く。地べたに座るのを嫌がる人もいたけれど、倒れたりしたら危ないからね。


 勘の鋭い人はもう分かったと思う。

 そう、これは現代日本でも稀に行われていた『命の授業』だ。

 私は直接受けたことは無いのだけれど、テレビで見た。

 察しのよい令嬢たちもどうやら話の方向性に気がついたらしく皆一様に緊張し、固唾をのんで耳を傾けている。

 うん、分かるよ。

気になるのは、このこれ見よがしにたてられた衝立。

衝立の隙間からほのかに冷気が漂ってくる。


 おそらくこの衝立の向こう側に『肉』がある。



 研究所の畜舎にはヤギがいる。

 粗食に耐え、飼いやすく、日本でも近年再び雑草を食べてくれるとスポットが当たっているあのヤギだ。

 雌は子ヤギを産んだ後、乳を絞ってミルクを得る。


『普段は意識せずに口にしている食材も、誰かが自分の代わりに生き物の命を奪っているのだということを忘れてはならない』


 簡単な説明を終え、衝立の向こう側へと引っ込んだバーナード所長は雄のヤギを一頭肩に担ぎ、目の前の大きな木の枝から下ろされたフック付きのロープに頭を下にしてぶら下げた。


「…ッ!」

「ヒイッ!!


 令嬢達がそろって息を飲む。

 ぐったりとしたそれは確かに生き物の形をしているのに生気がまったく感じられない。腐敗防止のために掛けられた冷却の魔法がヒヤリと私たちの足下にまで忍び寄る。

 衝立の向こう側にいた『肉』だ。


「ううっ」

「…そんな…」


 事前に絞められ、既に血抜きまで終わっている。

 私たちはアレク先生のおまじないがあるのでよく分からないけれど、きっと血のニオイとか獣のニオイとかがダイレクトに感じるんだろうな。女子生徒の皆さんは一様に青ざめ言葉を失っている。

 うん、私も事前に知らされてなかったらそうなると思う。


 バーナード所長はするすると手際よく皮を剥ぎ、内蔵を取り出していく。

 素早く迷い無く行われるそれは魔法のように生き物を『肉』にしていった。


「具合が悪くなったものは遠慮なく休みなさい」


 そう言われて席を外したのはほぼ半数くらい。

 気絶3名、貧血8名、具合が悪くなった人10名だ。


『君たちは魔法を当たり前のように扱い、政治や経済、社交術など、色んなことを学んでいる。だが自然と向き合い寄り添うことを忘れてはいけないよ』



 所長はそう締めくくり、特別授業は終わった。

 『ヤギだった生き物は』大きなたらい二つと皮に分けられた。 


 私たちは具合の悪くなった生徒たちを介抱し、必要に応じて医務室へ運ぶ。

シルヴィ君はいなくても、彼のゴーレムが今回も活躍して一度に何人もの女子生徒を医務室へと送り届ける。私はと言えばショックで泣き出してしまう令嬢を落ち着かせたりなんかをしていた。ロゼッタから見れば年上だけれども、【私】からすれば十分に子供だ。

 お水を飲ませて背中をさすってあげたり、手を握ってあげたりなどする。


 魔法学園の生徒はほとんどが蝶よ花よと育てられた子供たちだ。当然こんな風に目の前で『生き物』が『お肉』になるところなど見たことも無い。もちろんロゼッタだってそう。

 私も今は魔法で感覚が鈍くなっているから平気だけれど、初見で見たらどうだったかな。


 授業を終え、お肉をどこかへ片付ける所長を見送る。所長は続いて男子生徒にも同じ授業を行う予定だ。

 普段はあまり目にしないことだし、正直驚きおののいてしまうことだけれど、これは普通の…日常的なこと。むしろお肉屋さんにとってはこれが毎日の仕事だ。


(可哀想だけれど、やっぱりお肉は美味しいもの)


 いろいろ思うことはあるけれど、やはりこの一言に尽きる。

 こんな風に思ってしまうのはやっぱり『私』は生粋のご令嬢ではないからなのかな。



『君たち…ああ、シルヴィ・アルダー君も含めて全員、こちらに来てもらってもいいですか?』


 最後まで残った女子生徒たちを宿舎へと返した後、アレク先生から届いた『声の鳥』の指示の通り救護室へ向かう。


「アレク先生、どうしましたか?」


 私とアメリアさんとシルヴィ君の三人が揃って救護室のドアをくぐる。三人まとめて呼び寄せるとは何か別の用事が発生したのだろうか。


「あれ? こちらに運ばれた生徒たちは?」


 ゴーレムに運ばせた生徒の姿がない。ベットも全て空っぽで部屋にはアレク先生しかいなかった。


「ああ、皆目を覚ましたので軽く問診をしてそれぞれの個室へ帰しました。休むにしても自室の方が落ち着くでしょうから」


 そう言ってアレク先生は私たちに椅子を勧めた。

 なるほど、確かにそうかもしれない。先生とはいえ他人がいる場所ではゆっくりと休めないものね。

 

「何かあれば遠慮なく連絡するようにと伝えてあるので大丈夫かと思います」


 今は大丈夫でも夜中に夢に見たりするからちゃんと精神面のケアとかもするのだとか。二日目が特に大変だというアレク先生の言葉に嘘はなかったね。あと、先輩たちが言葉を濁していた件もだいたい理解した。

「ところで、何か別の用事でもありましたか?」

「うん、いや…その2回目の方はちょっと刺激が強いかな、と思いまして」

「二回目?」

「はい、授業です」


 授業とはバーナード所長の特別授業の事だろうか。


「???」

「授業内容は男女とも同じだという話でしたが…?」


 私はアメリアさんと顔を見合わせる。

 ひとまず、私たちは女子の授業を一緒に受けてきたけれど、先生の魔法のおかげもあってか割と大丈夫だし、ピンピンしている。シルヴィ君にいたっては、男子チームに付いていたのでまだ授業を見てもいない。


「いやね、ロットンのやつが突然『狩りチームには絞めるところから一緒に見せてやる』と言い出しまして…狩りチームに見せるのであれば男子生徒全員も一緒にやったらいい、ということになったのです」

「えっと…それは」


 さすがにちょっとしんどいかも。

 実際に血が出たりするのはさすがにちょっと…怖い。

 私もだけれど、こう…シルヴィ君にもよろしくないよね。うん、まだ早い。大人びてはいるけれど、まだ子供だし…いやどうなんだろう。

 わりと放任主義のアレク先生も少し頭を抱えている。


「一応向こうには『きき耳ウサギ』を配置してあるので、私はここで様子を観察します。大変申し訳ないのだけれど、シルヴィ・アルダー君は私の指示通りにゴーレムを遠隔操作してもらってもいいでしょうか」

「はい、それは大丈夫ですけれど…」


 ボクだって男なのに…という小さな声が聞こえたけれど、うん、私もまだ早いと思います。シルヴィ君は来年でいいじゃない。いや、来年でも早いと思うけれど!?


 となると、ご令嬢達ほどでは無いにしても男子チームでも具合の悪くなる生徒が出るかもしれない。救護室を空にしたのはそういうことか。

 アレク先生は目をつぶって自分の肩にちょこんと乗せた『きき耳ウサギ』と視聴覚をつなげている。うーん、知っていたけれど、バーナード所長の突然のプラン変更にも即座に対応するアレク先生ってけっこう有能。普通に尊敬する。


 ちなみに『きき耳ウサギ』というのは声の鳥とは少し違った魔道具で、二匹一対でセットになっているウサギ型の連絡手段。送り手の兎が聞いた音声を受け手の兎の耳から聞くというもの。いわゆるスピーカー型の魔法道具。音声だけならば周りの人間にも聞こえるけれど、持ち主のみ送り手のウサギと視界の共有ができる。魔道具というにはちょっと抵抗があるのだけれど、精霊の力を借りて生成された半分生き物みたいな生体アイテムだ。

 見た目がまるで白いおまんじゅうみたいなその姿はすごく可愛くて、世間一般でも大人気! 『きき耳ウサギ』が可愛いおかげで、アレク先生まで可愛く見えてくる不思議。ホントかわいいは正義。


 いいなあ『きき耳ウサギ』、私も欲しい!

 ちなみにこの『きき耳ウサギ』は精霊と契約して実用化されたもので、覗きや盗聴など悪用はできないことになっている。安全。



『狩りのチームは明日またきちんと教えるが、獲物を絞めたら直ぐに血抜きをする。持ち帰ってから処理するのでは遅い。どんどん味が落ちてしまうからな、時間との勝負だ』


 『きき耳ウサギ』からのバーナード所長の声が聞こえてきた。

 どうやら狩りのメンバーへのアドバイスも追加しながら授業を進めているみたい。なるほど、さっきよりちょっと詳しい。


『これは俺の持論だが、肉は美味しく食べることが大切だと思っている。本来美味である肉を手際の悪さで不味い肉にしてしまうなど言語道断、食材に対して大変失礼なことだと思う』


 なるほど、先ほどの授業の時よりも熱意を感じるというか、食材への愛?が溢れているというかなんというか。声だけでもバーナード所長の姿が目に浮かぶようです。


『肉の鮮度を保つためにできれば冷却魔法の装備を用意すること。用意がなければ水辺などを利用してすぐに獲物の体温を下げることが重要だ。夏は特に一刻を争うと言っても過言ではない』


 バーナード所長って研究者って感じがしないと思ったけど、実はプロの狩人なのかな? この研究所の施設といいなんというか、アウトドアのプロ? 生徒がいない間は施設の作業をほぼ全て一人でやっているって話だし。


「うん、やはり貧血を起こしている生徒が数人いるね」


 『きき耳ウサギ』と視界を共有したアレク先生が向こうの様子を確認する。予想の通りショックを受けた様子の令息がちらほらいるらしい。


「でも人数は想定の範囲内だ。そうだね、君たち二人はもう休んでもらっていいよ」


 アレク先生が私とアメリアさんに告げた。


「後は私とシルヴィ・アルダー君のゴーレムで手が足りるから大丈夫」


 そう言ってアレク先生は意味ありげに微笑む。

 なるほどピンと来た。


「分かりました、では私たちは失礼いたしますね」


 怪訝な顔をしているアメリアさんを連れて私は早々に救護室を後にする。

 ご令息がたのプライドのためにも私たち二人は席を外した方がいいってことですね、了解。アメリアさんには説明…しなくていいか。


 アメリアさんと別れて自室へ戻って来た。さて自由時間である。

 おしゃべりをする気も起きないのか、皆さん素直に部屋で休んでいるのか廊下も広場もほぼほぼ無人だった。

 まだ日は高いけれど、朝からたくさん歩いたし、授業は衝撃的だったし確かにハードな半日だったかも。


 私は窓を開けて外の空気を吸う。

 景色は美しいし風は気持ちが良い。時折キラキラと輝いていたり花びらが舞っていたりする。初めは驚いたけれどここではこれが普通なのだ。


 ふと視界の端に男子生徒の姿が見えた。どうやら特別授業が終わって解散したみたい。

 お兄様は大丈夫だったかしら。

 ロイド先輩は大丈夫そうだけれど、ユージン先輩やアルフレート先輩は? モブAモブBは大丈夫だったかな~なんて少しだけ思う。


 ところで、こんな授業を行って貴族の保護者からクレームが来るのではないかと思っていたのだけれど、そうはならないらしい。


 なぜならこの『夏の課外授業』を経て生徒の魔力も格段に上がるから。

しかもこの授業は昨日今日に始めたものではなく、親世代もしくはその前の世代から結果を出しているのだとか。数日後にパートナー精霊との契約もあるし、魔力は多ければ多いほどいいものね。



(そうだ、お兄様にフルーツのジュースでも作って差し入れてみようかな)


食材は炊事場にたくさん届いていたし、好きなだけ食べていいバイキング形式なのでちょいと拝借しても大丈夫だろう。

 生徒の名誉のために誰が具合が悪くなったとかの情報は伏せられていたけれど、私はちょっとお兄様のことだったのではと心配している。

 お兄様はとても優しいので、たぶんあの授業内容でショックを受けているのではないかなあ、と思うのだ。


 いるとしたら救護室かしら。さっとジュースを作って救護室かいなかったらお部屋に持っていけばいいかな?


 私は宿舎の玄関から遠巻きに広場を確認し炊事場へ向かう。

 既に授業の痕跡は片づけられ、木陰で休憩するといった生徒の姿もない。

 よかった、血痕があったりしたらびびってしまうところだ。


(そういえば、今日の夕飯はどうするんだろう)


 まだ日は高いけれど、自給自足のこの生活。ご飯は自動では出てこないのだ。

 今日は食欲が無い人も多いかもしれないけれど、明日からはまた純粋な労働が行われるわけだし、腹が減ってはなんとやらだし…。


 最初の説明で調理チームだけは朝昼晩調理場に立つように言われていたけれど、今日の晩ご飯のことは言われてなかったんだよね。



『内臓は丁寧に扱う事、中身が飛び出すと悲惨なことになるからな』


 炊事場から元気な声が聞こえてきた。

 あれ、この声は…。


 短く刈った金髪にムキムキの後ろ姿。

 バーナード所長と狩りチームの皆さんだ。ロイド先輩もいる。

 先ほどパンをこねていた調理台から少し離れた場所にある洗い場で大きなたらいを地べたに置いてなにやら作業をしている。…何だろう、洗い物かな?


『野営でもうまい飯を用意できる奴は重宝されるから、覚えていて損はない』


 あ!なるほど。どうやらさきほどの授業で無事にお肉になった肉(?)の下処理をしているみたい。大きなたらいに水を張り、モツ?を洗っている。

 そういえばロイド先輩、以前騎士見習いの野営で、微妙な飯を食べた経験があるって言ってい

たっけ。同じ貴族でもこういったことは経験済みなのかもしれない。


「さて、では今晩のメニューはどうしようか」


 解体した肉をテーブルに並べ、バーナード所長が腕まくりをする。

本日のお肉ヤギ丸ごと2頭分。質素倹約を目指している訳ではないそうだが、これだけの肉を一度に料理するとなるとご馳走だ。夕飯の支度をするにはまだ少し早いけれど、バーナード所長が手ずから料理を振る舞うのであれば早すぎると言うほどでもない。


「毎年2日目は食欲が湧かない生徒が多いからメニューは悩むんだが…」

「あの、僕も手伝ってもいいですか?」


 バーナード所長が振り返ると、そこには青い顔をしたお兄様が立っていた。


(お兄様! なぜここに!?)


 私は物陰にさっと身を隠して、こっそりとお兄様の様子をうかがう。

 救護室でも自室でもなかった! …てか私なんで隠れちゃったんだろう!? 隠れる必要はなかったのにね???


「おや、君は…」

「僕は調理班のジーク・イオリスと言います」

「そうか! それは助かる…が、大丈夫かね?」


 バーナード所長が言葉を濁している通り、お兄様は軽い貧血を起こしているんじゃないかしら、顔も随分と白い。


「はい、もう大丈夫です。バーナード所長が調理場に立っていらっしゃったので、もっと教えていただきたくて…」

「ほう…それはいい心がけだが…そうだな、何を学びたい?」


 バーナード所長が面白いものを見つけたように目を輝かせてお兄様に質問する。


「その、そうですね…先ほど授業で所長がおっしゃった通り、このお肉を絶対に美味しい料理にしてあげたいと思ったのですが、僕は胸肉やもも肉を使って料理を作ったことはあっても、その他の部位は扱ったことが無いのです」


 うんうん、そうだね! 分かる! 私も無いよ。

 レバー…は分かるけれど、他はどうしたらいいか分からない。


「全部、丸ごと美味しく食べられる調理方法とか扱い方とか教えていただきたいと思って来ました」


「うむ! その意気や良し!!」


 うわあ、でっかい声!びびった!!

 お兄様の返事がいたく気に入ったのか、バーナード所長は大きな声でお兄様を褒める。

 私も驚いたけれど、狩りチームの皆さんも一様に驚いてお兄様に注目した。


「猟師側ももちろんだが、調理する側にも同じくらい食材には敬意をはらって貰いたいと私は常日頃から思っている!! 私はプロのシェフではないから料理はそれほど得意ではないのだが、こういうことなら大歓迎だ!! ぜひ何でも聞いてくれ!!」

「あ、ありがとうございます!」

「じゃあまずは、彼らの下処理を手伝ってもらえるか?」

「はい!」


 お兄様は嬉々として狩りチームに混ざり、やり方を教わっている。


「赤モツは串焼きにして、白モツは煮込みにしよう。腸は塩漬けにして後日ソーセージの皮にするか…。リブなどの骨付き肉はスパイスをたっぷり利かせたカレーだな」


 バーナード所長は次々と各部位の調理方法を指示していく。

 なるほど、こうして見ているとちょっとかっこいい。

 最初はちょっと暑苦しいな~とか思っていたけれど、料理ができる男性ってやっぱりいいよね。


「丸ごと全部、無駄にはしないし、全て美味しくいただく予定だが、調理や味付けなどは協力を頼んでもいいだろうか」

「はい!僕でお役に立てるのであればぜひ!」


 バーナード所長の提案にお兄様が頼もしく応える。

 そうなん! 調理チームはお兄様の他はみんな女性だからこう…無理には誘えないけれど、お兄様はお料理だったらすごいのよ!


 …キャロル先輩は声を掛けたら来てくれる気もするけれど…、うーん悩む。お兄様の格好いいところは見てもらいたいけれどここにはロイド先輩もいるんだよなぁ…。今から違うフラグが立っちゃうと困るから今回はいいかなぁ。


 でももったいない!

お兄様下手に目立とうとしないで普通にしてればすごくいい男なのに! どーしていつも人気の少ないときにこういい感じの言動するんだろうね!? 周りに女子が一人もいないよ!!?

…お兄様、男性陣にはわりと好かれているんだよなぁ…。どういうことなの?



 夕方、スパイシーで食欲を誘うカレーの匂いがただよい、一人また一人と食事のテーブルへと誘われてくる。

 特別授業にショックを受けて意気消沈していた生徒達も美味しい匂いに誘われれば、腹も鳴るというもの。


 朝も昼も夜も、ここは自由なビュッフェ形式。

 無理に食べる必要は無いけれど、お腹が空いたら食べればいい。 


 本日は所長の特別料理ということで、米が炊かれ、スープとカレーの大鍋が並ぶ。

 ビュッフェには今まで食べたこともないようなお肉もズラリ。私は一本だけ串焼き肉を食べたけれど歯ごたえがあって美味しかった。


 可哀想だけれど美味しい。

 やっぱり美味しいは強いのだ。


 あと所長のカレーはスパイスの配合が独特でめちゃくちゃ絶品だったので、これは本当に食べるべきだと思いました!! お家のカレーとかじゃなくて、本格インド料理のお店で食べたやつみたい(伝われ)!


 アレク先生もお代わりしていたので本当に美味しいんだと思うよ!

 ライスもいいけどナンも食べたい!






****



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