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六十九、最終決戦、開幕

六十九


 京を発ったのは九月は末である。

 前回と違い、晴明の式神での旅路は疲労を生まない。だというのに、まどかたちに会話は一切なかった。


「くぐりますよ」


 そしてあっさりとたどり着いた出雲大社に、まどかが意を決する。

 出雲に入った時点で、数多の九十九神、或いは霊的存在の数を思い知らされた。

 神無月は、出雲では神在月と呼ばれている。つまり日本各地の神々が、十月に限り出雲に集まるのだ。


「……怖気付いたか?」


 なかなか踏み出さないまどかに、康仁が言う。そして着いて来いとばかりに先に鳥居をくぐりぬけた。康仁の首からは勾玉が下げられており、懐には八咫鏡、右手には草薙剣が握られている。準備は万全だ。


「皇子さま!」


 慌ててまどかも鳥居をくぐる。晴明と黒雲も続く。


「……これは……」


 眼前に広がる景色に、まどかは息を飲んだ。

 現状、まどかが封印した九十九神はたった四体。そして、目の前に居るのは残りの九十五体。

 唯一、火の九十九神だけは見当たらない。


『ぐぉぉお!』


 九十九神たちが一気にほえた。

 まどかと康仁を――敵を見つけ、そうして次々に襲いかかる。


「皇子さまは後ろに!」


 晴明が結界をはる。康仁は火の九十九神を封印するために、その力は温存しなければならない。歯痒いが、致し方なしと康仁はさがる。

 一方まどかも、火の九十九神に対抗するため、雨の式神は使えない。となると、


「集中、集中……」


 スマホから顕現したのは風の式神である。

 しかし、まどかの意識がなかなか式神に同調しない。前回、式神を使役しながら腕を切り落とされた記憶が、痛みが頭を過ぎって、集中しきれない。


「まどかさん。大丈夫です」


 黒雲が震えるまどかの手を握った。


「今日は私も晴明さまも、全力でまどかさんを後援します」


 黒雲とて怖いはずだ。それは、黒雲がまどかと同じ巫女だからだ。

 このおびただしい数の九十九神を見て怯まない人間などいないだろう。

 しかし黒雲は、言葉通り動いた。式神を顕現し、使役しながら自らも九十九神と対峙する。


「黒雲さん……!」


 いつもとは明らかに違う、固い動きの黒雲に、まどかは冷静さを取り戻した。


 チリチリチリ。バンッ!


『よし……!』


 式神との同調は成功した。あとは九十九神たちを弱らせて、スマホで封印するのみだ。

 すう、はあ。

 深呼吸して、まどかは舞う。黒雲とともに、晴明とともに。


『……え?』


 しかし、辺りの景色が一気に焼き払われた。

 九十九神が式神が一気に燃え倒れる。まどか――風の式神も例に漏れず、燃えた。


「……はっ!」


 式神との同調が解ける。体に戻ったまどかは、脂汗をかいていた。

 目の前には、焼き払われた九十九神。そして。


「火の九十九神……」


 全てを薙ぎ払ったのは、紛れもなく火の九十九神の所業である。

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