表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

44/72

四十四、消えた神主

四十四


 大きな鳥居が見えてきたのは、しばらく歩いた頃である。

 まどかも康仁も無言で足を止めた。


「あれが……出雲大社……」


 思わずまどかが呟くと、康仁は再び足を進めた。晴明と黒雲はなにも言わずに康仁についていく。

 そうしてまどかもまた、大きな鳥居をくぐり抜ける。

 バリバリっとまどかの体に電気が走り、まどかは思わず目を閉じた。まどかだけではない、康仁も黒雲も、晴明までもがその衝撃に目を閉じ、やがてゆっくりと瞼を開けた。


「お待ちしていました」


 鳥居をくぐる前には、向こう側にひとなど見えなかった。だが、鳥居の真ん前に、その人物はいた。

 恰好から見るに、晴明と同じく陰陽師か、或いは単なる神主か。


「九十九神について、お聞きになりたいのでしょう?」


 神主が淡々と言葉にする。


「今は時期尚早。神無月にまた、いらしてください」

「神無月……?」

「はい。巫女さま。神無月には全国の神々が出雲に帰ります。ゆえに出雲では、神無月ではなく神在月といいますが」


 ふっと神主が笑う。かと思えば、すっとその姿を消して、まどかたちは呆けるしか出来なかった。


「晴明さん、あのかたは一体……」

「神々の遣い、といったところでしょうか」

「神々の?」


 言われてみれば、晴明すら圧倒するなにかがあった。そもそも、人間は消えたりなどできない。

 晴明ですら不可能なのだ。

 とは言っても、普通の人間から見れば、晴明もあの神主も『異質』である。

 晴明の式神は一般人には見えない。ゆえに、晴明の屋敷の戸を開ける式神も見えなければ、馬のような空をかける式神も見えない。ただただ、『勝手に』戸が開いて、『ひとりでに』空を飛ぶ。それが一般人から見た晴明である。


「なんだか無駄足になっちゃいましたね」


 帰路は式神を使った。まだ昼間であるため、九十九神の出現の確率も低い。なにより、無駄足に終わった気苦労から、康仁が徒歩で帰る気にならなかったのが大きな理由である。


「皇子さま。怒ってます?」

「別に。怒ってなどない」

「そうですか」


 分かりやすいとまどかは思った。康仁は喜怒哀楽が読みやすい。とはいえ、最近はよくわからない行動や言動も増えた。


「まどかどの。帰ったらゆっくりおやすみください」

「……ありがとうございます……」


 神無月。十月のことだ。

 今はまだ七月に入ったばかりだ。あと三ヶ月、どう過ごそうかと、まどかはぼんやりとそんなことを考えた。





 康仁の御殿に帰っても、まどかは寝付けない。

 そもそも、あんなにあっさりと帰ってきてよかったのだろうか。


「九十九神……神無月……」


 あの場でもう少しなにかを探せば、手がかりが見つかったのではないだろうか。


「出雲では神在月……」


 そもそも、晴明はすべてを理解しているような、そんな雰囲気すらあった。

 神々の遣い、あの神主は何者なのだろうか。

 見た目は人間であった。ならば、神に使える神職であろうか。


「消えた神主……」


 消えた、どこに?


「出雲大社は……神々の国と繋がってる……?」


 考えれば考えるほど分からなくなる。分からないのだが、考えずにはいられない。

 十月には全てが明らかになるのだろうか。


「なにか……ヒントは……」


 神在月には出雲に神々が集まる。つまり九十九神も。

 そこを一網打尽にする、というのがあの神職の言わんとしたところであろうか。


「はー。眠れない」


 呟いても、誰が返事をするわけでもない。だがまどかは、一晩中考えた。考えていないと、どうにも落ち着きそうになかったのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ