第九話 ローレライ
なんでお嬢とお母様の髪の色が同じなのバカやん………というわけで修正しときました。お嬢は紅髪蒼眼、お母様は蒼髪蒼眼です。そしてもう一個修正で、89話でうっかりして書き忘れていた部分を加筆しました。誰が権能を取得するかはまだ秘密です
今回はちょっと長め
…………………よし、落ち着け俺。
まずは深呼吸をして、呼吸が整ったら3分間瞑想。
波風が立たないほどに精神統一できたらもう一度深呼吸。
よし、準備万端。
ではもう一度、ステータスオープン!!
Name :ルキア
Level:65 (Total Level:150) (60up)
Phylum:魔物
Species :グローツラング(進化が可能です)
HP :3,723/3,723 (2360up)
MP:4,728/4,728 (2950up)
Strength :1,863 (1180up)
Vitality :2,224 (1475up)
Dexterity :1,521 (885up)
Agility :1,881 (1180up)
Stamina:1,890 (1180up)
Luck :40 (15up)
Skill :
【耐性系】
精神苦痛耐性Lv.100
毒耐性Lv.60
麻痺耐性Lv.21
呪詛耐性Lv.57
【魔法系】
毒魔法Lv.59
呪術Lv.68 (5up)
流水魔法Lv.48
魔力操作Lv.62
魔法調整Lv.46
並列詠唱Lv.47
刻印魔法Lv.40
【感知系】
暗視Lv.51
熱源感知Lv.61 (1up)
魔力感知Lv.62 (1up)
気配感知Lv.61 (2up)
危険感知Lv.61 (1up)
心眼Lv.60 (2up)
五感強化Lv.40 (3up)
空間把握Lv.58 (3up)
【身体系】
尾撃Lv.50
魔力強化Lv.51
剛体Lv.48
縮地Lv.40
【その他】
念話Lv.59
硫毒生成Lv.60
霊体化Lv.48
いやおっかしーだろ!なんでレベルが上限まで行ってんの!?
俺別に特別なことはなんも………………あ。
よし、まず整理しよう。
レベルは人間、魔物を問わず殺すと上がる。
そしてそれは必ずしも殺した本人だけが上がるわけじゃない。
お嬢いわく、たとえ全く戦っていなかったとしても戦闘していた場所の近くにいればレベルが上がるらしい。
つまりレベルアップの条件は殺された人間もしくは魔物の近くかつ、殺された時間に居ることだ。
ではカトリス聖遺跡での戦闘を振り返ってみよう。
まず正門での戦闘。
暗殺者九人に加えて「金剛」キース・ファロンテッサとそのパーティメンバーである双剣士のヒューゴ・エヴァンズ、神官のエマ・ガルシアと戦闘になり、その内の暗殺者七名が死亡。
その中にはシオンが戦っていたリーダーと思しき相当手練れの暗殺者も居た。
加えて言うならおそらくあそこに居た全員が俺よりもレベルは上だっただろう。
というか生後まだ一年の生まれたて(精神年齢アラサー)よりレベルが低い戦闘職とか普通に考えてあり得ない。
で、次に聖遺跡内の礼拝堂での戦闘ではタイガ・ロベリア含め、十一人の襲撃者たちと交戦し、暗殺者七人が死亡。
総合して確実に俺よりもレベルが格段に上の手練れの暗殺者十四人が俺のいた戦場で死亡した。
…………ああ、うん。納得っちゃ納得ですわ。
俺が一切手を汚してないというのが少しばかり洒然としないが、まあそのうち殺すこともあるだろう。
今気にしても仕方ないか。
レベル爆上がりの原因が大体分かったところで進化先を見ますか。
種族選択欄
・バジリスク
亜竜の一種であり、人を石に変える魔眼を持つ凶悪な蛇の魔物。魔眼もさることながら30m近い巨体から繰り出される攻撃と、自由自在に操る毒液は人間のみならず魔物すらをも恐怖させる
・コカトリス
雄鶏の頭部と下肢、亜竜の胴と翼、蛇の尾を持つ混合獣。生物のみならず無機物も石化させるブレスを吐く。また、触れたものを毒で汚染する能力を持ち、不吉の象徴として恐れられてきた魔物
・ザルティス
下位の精霊であり、人々に幸福をもたらすと言われる。毒を生成する機関こそ持たないが、炎を操り大地に豊穣の恵みを授ける。また僅かではあるが神聖な力を保有し、古来より神の使いとして崇められてきた蛇
まずザルティスは論外だな。
毒が使えないとかマジで有り得ん、クソかよ。
炎やら豊穣の恵みやら神聖な力やらは興味がないこともないが、それ全部お嬢ができるんだよなあ………なので即却下です。
今更だけどお嬢多才すぎん?魔法限定だけど。
となるとバジリスクかコカトリスだが…………まあ、バジリスクかなあ。
コカトリスはなんか色々ごっちゃになった身体してて、慣れるまで時間かかりそうだし毒に関しても汚染するというのはいいが、説明文を見た限り触れなければ効果を発揮しなさそうなので、中距離戦を主軸におく俺としてはマイナスだ。
何より単純な畏怖ならともかく、お嬢の使い魔としてそっち方面の邪悪は風評的に不味いでしょう。
バジリスクは毒使いに加えて人を石に変える魔眼とかいう素敵能力までついてきて、更には亜竜の一種だというから身体能力の向上も期待していいだろう。
お嬢は魔法使いというだけあって身体能力はそこまで高くないため、これからダンジョン探索をする時にはお嬢が俺の上に乗って魔法をブッ放すことになりそうだし、身体能力を上げておいて損はないはずだ。
『まあ、進化するなら最低でもお嬢が居るときかなあ………』
驚いたり悩んだりしてたら気が変わったわ。
書庫行こ。
◇◆◇◆◇◆
「それで、不老長寿の秘儀をお教え願えますか?母様」
グレイシア・ローレライの執務室にて、ソファに対面い向かい合った二人の内の片方、アリシアが口火を切った。
「私は魔法競技祭が終わってから話そうと思っていたのですけれど………それではダメですか?」
「正直気になって大会どころではありません」
「話だけ聞いて大会ほっぽり出すとかしませんか?」
「母様相手にそんな恐ろしいことはできませんよ」
真面目くっさた顔でそう言い放ったアリシアにグレイシアは思わず吹き出したが、アリシアとしては大真面目だ。
小さい頃から憧れて、恐れてきた相手だ。
幼い頃からの刷り込みとは恐ろしいもので、大人になった今でも中々反抗しようという気持ちが湧いてこない。
そうでなくとも「凍土の魔導師」。
グレイシアとの約束をすっぽかしてロクな目に遭うはずがない。
「あはははははっ、まあいいでしょう。私が貴女にかけた不老長寿の秘儀。お教えしましょう」
ひとしきり笑うとグレイシアはいつもの氷の微笑を浮かべた。
「よろしくお願いします」
「そうですね………何から話しましょうか。ああ、そうですね。まずは魔女という存在の定義からいきましょうか」
パン、と手を叩いて話を始めたグレイシアにアリシアは少しムッとする。
「不老不死を追い求める魔法使いでしょう?そんなもの、言われるまでもありません」
「間違ってはいませんが、五十点といったところですかね。その不老不死………我々が到達できているのは不老長寿までですが、それが一体何処から来ているかは分かりますか?」
「それを聞きたいのですが………統一されているのですか?魔女という存在の定義として」
「ええ。そもそも魔女という存在が不老不死を追い求める魔法使いであると定義したのは、我らがローレライ家一代目当主アリス・ローレライです」
「はい、彼女は不老長寿の霊薬を開発し、それを服薬することで老いない体を手に入れましたが、不死には程遠かった。故に不老不死を一族の命題とすることを決めた、と」
そこまではアリシアにとって既知の知識だ。
だが、不老長寿をどうやって実現させたかまでは知り得ていない。
「その一代目がどうやって不老を手に入れたかですが………簡単に言えば魔物の因子を取り込んだのです」
「は?」
「厳密には幻獣、それも幻想種の因子ですね」
何でもないことのように言ったグレイシアの言葉にアリシアは硬直する。
魔物の因子を取り込む。
言葉にすれば容易いが、それを実現するのはあまりに困難で、明らかに禁術の類だ。
なにせ、そもそも魔物の因子はそういうものがあると学術的に立証こそされてはいるが、観測できていない。
加えてそれを取り込むということは、本来人体に存在しないものを新しく付け加えるということ。
明らかに荒唐無稽の話であるし、それを一時的に可能にしたとしてもすぐに身体の方が拒絶反応を起こすはずだ。
魔物の因子という聞くからに不浄っぽいものを取り込むという点においても、宗教的に中々グレー、なんなら限りなく黒に近いグレーである。
「ええ、本来であれば確実に身体の方にガタがくる。けれど彼女はこう考えた。ゆっくり、少しずつ、それこそ何年もかけて薄めた幻想種の因子を取り込めば身体の方が順応するのではないか?と。そしてそれは成功しました。具体的な方法としては龍種の心臓をスムージーにして薄めたものを六十年かけて飲んだそうですが。当初、彼女が望んでいたほど多くの因子は取り込めませんでしたが、最低ラインは突破したようですし、それならば老化という現象からは解放されます」
「待ってください!なぜ魔物の因子を取り込むことが不老繋がるのですか?それに幻想種とは何ですか」
するとグレイシアは意外そうに目を見開いて、
「おや、てっきり知っているものとばかり思っていましたが。貴女の持っているスキルの中にもあるでしょう。「幻想種の因子」というスキル」
「たしかにありますが、それに関する文書を探してみても見つからなかったのです」
「ああ、そう言えばそうでしたね。現代の人間は大体魔物で一括りにしてしまいますものね。長いこと生きていると細かいところを忘れてしまっていけません」
浮かべた微笑は自分の忘れっぽさを微笑っているようで、現代に生きる人間たちの無知さを嗤っているようでもあって、アリシアは薄ら寒い何かを覚えた。
「──幻獣とは、平たく言って仕舞えば魔物の上位種のようなものです。まあ、本来の言い方をするのであれば魔物が幻獣の劣化品なのですが。そして幻想種とは、その種族そのものが幻獣として定義される生き物です。そうですね………例えば人間という枠組みが哺乳類として分類されるように、幻想種という枠組みが幻獣として分類されるのです」
「では、魔物は進化を重ねて強くなれば幻獣になれるということですか?」
ならばルキアもいつか幻獣になるのだろうか。
「いいえ、全ての魔物が幻獣になれるというわけではありません。星に幻獣であるに足ると判断された個体のみが幻獣に成れます。しかし、幻想種であればそれを判断するための試験のようなものが免除される、というわけです。幻想種は全部で五種。精霊種、巨人種、吸血種、鬼種、そして龍種。我らローレライ家の人間は一代目アリスから引き継がれる龍種の因子をより濃くしていくのです」
「………なぜ不老になれるのかという質問には答えてもらっていませんが」
「ああ、それなら簡単ですよ。彼ら幻想種には〝老い〟という概念自体、存在しないのです」
成る程、〝老い〟という概念が存在しない生物の因子を取り込めば老化現象から切り離されて存在となることも不可能ではない。
──と、そこまで考え至って、おかしいことに気づいた。
「母様、〝老い〟という概念から切り離された存在であるなら、なぜ私は成長できたのですか?」
ローレライの一族が老化から切り離された存在であるなら、成長という概念からも切り離されて然るべきだ。
成長と老化は人間にとって悪影響か好影響かという違いがあるだけで、どちらも年月の通過によって齎されるという根底は変わらない。
霊薬によって因子が取り込まれたというならそれもやはりおかしい。
だって、「幻想種の因子」はアリシアが生まれた頃から保持していたのだから。
「──ふふっ、流石は私の娘ですね。やはり貴女は最高傑作ですよ」
「──っ」
氷の瞳に僅かな喜悦を浮かべてグレイシアはアリシアを見つめた。
「順を追って説明しましょう。まず貴女は代々のローレライたちとは不老へと至るためのコンセプトが違います。我々は少しずつ因子を取り込むことで、身体が崩壊しないように因子に身体を順応させていきます。けれど私はふと思ったのです」
──最初から因子を取り込んだ身体を用意すればいいのでは、と
薄めているとは言え幻想種の因子は人間からすれば劇薬だ。
容量を少しでも誤れば激毒にもなる。
事実、自分の無身体の限界点を見誤り、破滅していった魔女は何百人もいる。
だが初めから完成された身体を用意すれば、血筋を途絶えさせる危険性を恐れて慎重に因子を取り込む必要などない。
「けれど話はそう簡単ではありませんでした。まず、子に受け継がれる因子はその代の魔女が保有している因子のおよそ半分程度。交配相手を厳選しても双方の平均値の三分の二未満程度が精一杯でした。しかし世の中にはイレギュラーの存在もいるものでして。エルフの中でも純血と崇められるハイエルフ。彼らは精霊種の因子の保有密度が恐ろしいほどに高かった。ええ、それこそどうして人の姿を保っていられるのかと聞きたくなるくらいに。ですので──」
「まさか」
考えたくもない予想が頭をよぎる。
いやいやいやいや、まさかまさかまさかまさか。
いくらアリシア以上の魔法バカだからといってまさか、エルフの王族とでも言うべき一族にそんなまさか。
「ええ、精子ぶんどってきました」
「嘘でしょう!?」
「潜入した後は、ちょっくら眠らせるだけだったので楽でしたよ」と付け加えたグレイシアに思わず頭を抱えた。
不敬どころの騒ぎではない。
こんな頭のおかしい所業を行う人が自分の母親であるという事実に全力で目を逸らしたくなるも、残念ながら頭を上げると目に入るのは自分と瓜二つの妙齢な女性。
否定したい、全身全霊をもって否定したいけれど目の前に映るDNAが「NO!」と告げている。
「どうしたのですか?教えを乞うたのは貴女でしょう?」
「だからってこれは無いですよ!知りたくなかった!私の母親がこんな人間だなんて知りたくなった!!」
そりゃあ、自分だって魔法バカという自覚はあるが、流石に他種族の王族から子種簒奪するほど頭は狂っていない。
それくらいの分別は付いているし、グレイシアだってそのはずだと思っていたのだが………信じた結果がこのザマである。
長年見上げ続けていた「凍土の魔導師」像がガラガラと喧しい音を立てて崩れていく様を幻視する。
だが、当の魔導師様はそんなことは知ったこっちゃねえようで、
「話を続けますよ?」
そう宣いやがった。
「ハイエルフによって新たに加えられた精霊種の因子を保有した精子に、私から引き継いだ龍種の因子を保有した卵子。これらを人工授精させ、ホムンクルスと同じ容量で溶媒液に入れて養育する。それが私が計画した、八代目ローレライ計画です。けれど、八代目のローレライを生み出すまでには多くの失敗がありました。温度保管が上手くいかず死滅してしまったもの、精霊種の因子に龍種の因子が負けてしまい崩壊してしまったもの、それを克服しようと溶媒液の中に龍種の血液を混ぜた結果今度は栄養が足りなくなってしまったもの。それらによって判明した問題点を全てのクリアできた個体が貴女だったのですよ、アリシア」
ぞわり、と背筋を悪寒が走る。
多くの生まれるはずだった命を自らの研究のために犠牲にして、それでなんの罪悪感も覚えていない母親が酷く恐ろしいものに見えた。
圧倒的な武力ではなく、先の見えない暗闇が如き薄気味悪さ。
得体に知れない魔女という生き物が自分を「我が子」と愛おしげに口にして、その実コレが最も自分に向けているものは親子の愛情ではなかったのだ。
「とは言えこれだけでは貴女が成長した理由にはなりません。幻想種の因子は体内に存在するだけで成長を止める。それ故に貴女の中にある幻想種の因子を凍結させることで休眠状態にしたのです。貴女が十七歳の時に飲んだ霊薬はその凍結を解除するためのものです。まあ、(凍結解除することで)不老長寿になる霊薬という意味では間違っていないでしょう?」
ずっと、何かが引っかかっていた。
氷の瞳に孕んだ膨大な熱量は親が子に向けるそれではないのではないかと。
そして今になってやっと分かった。
コレが自分に向けている最大の感情は子への愛ではない。
己が作り上げた最高傑作への愛だ。
己の人生の終局とも言うべき大作、一族の悲願を叶えるべく生み出した願望器。
ならば、親が子に向ける愛よりも作品として向ける愛の方が勝るのは魔法使いという生き物として、魔女という生き物として当然だろう。
そう頭では分かっていても、納得しきれない感情がアリシアの胸の奥に残っていた。
進化回はちょい後回しです。もう一場面入れたかったけど予想以上に母様が喋ったので。
ローレライ家の血筋で特級でヤベーのは一代目と七代目です。この二人は倫理とかそこら辺の常識をことごとく無視して研究に突っ走りますので、周りが大変。他の魔女の家系が引くレベルで非人道的な実験繰り返してます
いっつも周りを振り回すお嬢が逆に振り回れる構図は書いてて楽しかったです




