第八話 錬鉄の魔女と凍土の魔導師 後
次回から週一更新に戻します。やっぱりちゃんとストック貯めとかないとダメですね、ハイ
「母様、そろそろ聞いてもいいですか?」
「その前に。立ち話もなんですし、応接室に行きましょうか。ガーベラさんも一緒に」
「はっ、はいっ!」
くるり、と御母堂がローブを靡かせて翻る。
背中がついて来いと言っているようで、俺たちもそれに従った。
グレイシア・ローレライ
この国でその名を知らぬ者はいない女傑。
千年を生きると言われており、正しく生きる伝説だ。
王国宮廷魔法師団団長であり、魔法協会会長を務めている天上人。
原初の魔女を輩出したとされるローレライ家の八代目当主。
そして国内最強の魔法使いと言われている「凍土の魔導師」。
多くの肩書きを持てど彼女の全貌を知る人間は限られており、その人物像は謎のベールに包まれている。
そして実際に見て痛感する。
これは化け物だ、それも超常の。
「どうぞ、入ってください」
案内されたのは執務室。
無駄なものはなく、見窄らしくならない程度の高価な調度品が揃えられているだけで、どこか退廃的な雰囲気を感じる。
奥にデスク、手前にソファとテーブルがあって配置的に校長室のようだ。
奥に御母堂が、その横にガーベラが座りツヴァイはガーベラの後ろに控え、お嬢とシオンが御母堂の対面に座り俺とヘカテは後ろに控える。
「それで?聞きたいこととは?」
「なぜ、私が魔法競技祭に出ることになっているのですか」
「娘の晴れ舞台が見たかったから?」
「なぜ疑問系………なんで無断で登録したのですか」
「だって貴女出るかどうか聞いたら絶対断るでしょう?」
「当然です。なにが楽しくて見せ物にならなければいけないのですか。大した得もないというのに」
うわあ、お嬢怒ってるぅー。
まあ、お嬢ってあんまり他人から注目を浴びたいタイプの人間ではないからなあ。
「あら、得ならありますよ?」
「どんな」
「出場して真面目に競技に取り組むと約束してくれたのなら、ローレライの秘技をお教えしましょう。貴女の不老長寿の仕組みも含めて」
終始怒っていたようなお嬢の顔が崩れた。
不老長寿の秘儀。
魔女の家に伝わる一子相伝の技であり、魔女を魔女たらしめる伝説の技術。
というかお嬢教わってなかったんだね、割と意外。
お嬢のことだから御母堂に質問攻めでもしたのかと思ったんだが………いや、あの御母堂に質問攻めはいくらお嬢でも無理か。
「………霊薬のレシピですか?」
「霊薬?ああ、いえ。あれは嘘です。一から十まで嘘というわけでもないんですが………そこら辺も含めてお教えしましょう。どうです?やる気になりましたか?」
「………ええ、大変不本意ですが」
「それは重畳」
グレイシアが氷のような微笑を浮かべる。
お嬢はかなり不服そうな表情を浮かべているが、好奇心には勝てなかったのだろう、諦めてしまっている。
「ああ、そうです。いつまでも宿屋に泊まっているのも非経済的ですから魔法競技祭本邸に泊まりなさい。書庫の文献読み放題ですよ?」
おおぅ、お嬢が何かいう前に逃げ場を防いで来るな、御母堂。
三千年続くローレライ家の本邸の書庫ともなれば古い文献など山のようにあるだろう。
それこそ下手に魔法協会なんかで貸し出しするよりよっぽど価値ある文献がありそうだ。
というかぶっちゃけ俺も読みたい。
なんせ「呪術」は使い手が少ないから残っている文献も少ないのだ。
「呪い祝う禍福の園」を開発して以来、手詰まりになりつつあるから丁度刺激が欲しかったのだ。
それを察したのだろうか、お嬢が俺を見てため息を吐く。
アンタも人のこと言えんだろうに。
「私とルキアは泊まるの確定か。ヘカテとシオンはどうする?」
「ご主人様の居るところが私の居場所ですので当然行きます」
ヘカテは即答。
シオンは少し考えると、
「グレイシア様。書庫にあるのは魔法関連の書物だけですか?」
真っ直ぐに御母堂を見据えてそう言った。
ヘカテは置いておくとしても、たしかにシオンだけはローレライ本邸に行くメリットがあまりない。
けれどそこにシオンにとって価値ある文書があるなら話は別だ。
加えて御母堂はシオンの生家のことを、ともすればシオンよりも知っているような口ぶりだった。
おそらくシオンはそこが気になったのだろう。
「いいえ?魔法に限らず歴史書、兵法書、哲学書などなどかなり節操なく蒐集していますよ。五代目が蒐集家だったものですから。私も貴方の生家には興味があったので、その際に集めた文献も書庫にあるはずです」
「見せていただくことは?」
「もちろん構いませんよ?他ならぬ娘の友人ですもの。歓迎しますよ」
「それでは、お言葉に甘えさせて頂きます」
座ったまま頭を下げたシオンに対して御母堂は静かに頷く。
「貴女もどうですか?ガーベラさん」
「うひゃいっ!?」
「お嬢様………」
つい、と視線を向けられた残念ゆるふわウェーブお嬢様ことガーベラが奇声を上げて跳ね上がる。
背後のツヴァイの視線が呆れたものに見えたのは決して見間違いではないだろう。
「コホン、失礼致しましたわ。私はグレイシア様に父からの届け物を届けに来ただけですので遠慮させて頂きますわ」
そう言うや否や、おそらくは宝物庫であろう指輪に魔力を込めるとガーベラに手元に細長い、それこそ150cmほどもある棒が入るような縦長の木箱が現れる。
「魔力感知」からその中に収められた棒状のソレに込められた魔力は尋常ではないことがわかる。
アレ暴発したらここ一帯丸々吹き飛ぶぞ?
「届け物?………ああ、アレですか。ありがとうございます」
「いえ。それと父からの伝言ですわ。「貴女に言うことではないだろうが、くれぐれも最新の注意を払って扱って頂きたい」とのことですわ」
「ええ、承知しました。アルチザン殿に宜しくお伝えください」
「はい、それでは私はこれで失礼しますわ。行きますわよ、ツヴァイ」
「はい、お嬢様」
くるり、と陽だまりのような髪を振り払ってドアへと向かい、
「あいだぁ!」
なにもないところで転けてドアノブにおでこを強打した。
流石のお嬢も苦笑いを浮かべ、ツヴァイに至っては額に手を当てて「なんで何もないところで転ぶんッスかねえ、ウチのお嬢様は」と呟いている。
ガーベラさんや。
御母堂の氷の微笑を崩したのは素直にすごいと思うぞ、手段が滑稽すぎるけど。
◇◆◇◆◇◆
おでこを強打したガーベラと居た堪れなくったツヴァイを皆して生暖かい目で見送った後、御母堂の仕事がひと段落するまで応接室で待ち、お昼を食べる前に仕事が終わったとのことなのでローレライ本邸で食事を取ろうということになった。
大体御母堂が決めたが。
王国最強にして最高の魔導師に彼女と瓜二つの娘、異国風味溢れる格好をした剣士、滅多にお目にかかれないほどに整った顔をしたメイド服の美少女、黒銀の鱗と黄金の瞳をした体長10mをゆうに超える大蛇。
これほど目を引く集団も中々に珍しいだろう。
御母堂やお嬢、ヘカテとお近づきになろうとナンパ男がたまに寄ってくるが、大体俺の姿を見て悲鳴を上げて逃げるか、相応の実力がある奴はCランクの魔物だったらなんとかなるだろうと思って近づき、シオンの足運びを見て「ダメだこりゃ」と踵を返す。
そして直接魔力を感じ取れる異能を持ったヤツに関してはそもそもこの集団を見た瞬間に全力疾走で逃げていった。
うん、分かる。
なんなら俺も逃げたい。
いや、逃げないけど。
そんなこんなで王都の住民たちの心に少なからずのダメージ(防御不可)を与えながらもローレライ本邸に着いた。
「でっか………」
『そして結界やば………』
ローレライ本邸を見てまず思ったのはとにかくデカいということ。
敷地に面積は一辺100mは余裕である。
周囲は柵と樹木で覆われており、正門からでないと中の構造は見ることができないのだが、おそらく結界の効果なのだろう、外からは何もないように見えて中の様子が全く見えない。
御母堂の許可を得て中に入るとこれどこの王宮?と聞きたくなるような建物まで一本道が正門から走っており、左右には花壇があって色とりどりの花が咲いている。
そしてこの屋敷の結界。
おそらく起点となっているのであろう魔方陣は地下にあるのだが、そこから球状に結界が張られている。
おそらくは地下から入ってこれないようにするためなのだろうが、効果がエグい。
まず、先程の視覚の誤認。
地下に限定された認識阻害と迷いの結界。
それをくぐり抜けて中に入ってきた者を閉じ込めて外に出れないようにする効果に加えて、拘束術式。
更には無許可で入ろうとした者への攻撃機能も搭載されている、とのことだ。
自慢げに説明してくれたのはお嬢ではなくこの家の執事であるセバスチャンという初老の男性だ。
にしてもまたずいぶんと鉄板な名前だな、オイ。
いつ知らせたのかは全くもってわからないが、俺たちの滞在はすでに御母堂から知らされていたらしく、中々お目にかかれないほどに豪勢な昼食を終えた後、俺含め全員に個室が与えられた。
そう言えば随分と久しぶりな自由時間である。
護衛中は感知系スキルをフル起動していたために気を抜くことはあまりなかったし、魔法協会本部に行ったのも護衛を終えて割と直ぐだ。
なので暇な時間というのはかなり久しぶりなのだ。
お嬢は御母堂と何やら話があるらしく、リビングで御母堂と話しており、ヘカテは本邸のメイド長に教えを乞いに行くとかなんとか。
ヘカテ曰く、メイド道を極めたいのだと。
シオンは早速書庫に行っている。
俺もシオンと一緒に行こうかと思ったのだが、なんとなく気が乗らなかったので明日に行こうと思う。
となると──あ、そう言えばステータスの確認してなかったな。
別に確認しようと思えばいつでもできたのだが、今まで放っておいていたのだ。
護衛任務で暗殺者たちと戦ったりしたから結構レベル上がってるとは思うんだが………どうだろうな?
Name :ルキア
Level:65 (Total Level:150) (60up)
Phylum:魔物
Species :グローツラング(進化が可能です)
HP :3,723/3,723 (2360up)
MP:4,728/4,728 (2950up)
Strength :1,863 (1180up)
Vitality :2,224 (1475up)
Dexterity :1,521 (885up)
Agility :1,881 (1180up)
Stamina:1,890 (1180up)
Luck :40 (15up)
Skill :
【耐性系】
精神苦痛耐性Lv.100
毒耐性Lv.60
麻痺耐性Lv.21
呪詛耐性Lv.57
【魔法系】
毒魔法Lv.59
呪術Lv.68 (5up)
流水魔法Lv.48
魔力操作Lv.62
魔法調整Lv.46
並列詠唱Lv.47
刻印魔法Lv.40
【感知系】
暗視Lv.51
熱源感知Lv.61 (1up)
魔力感知Lv.62 (1up)
気配感知Lv.61 (2up)
危険感知Lv.61 (1up)
心眼Lv.60 (2up)
五感強化Lv.40 (3up)
空間把握Lv.58 (3up)
【身体系】
尾撃Lv.50
魔力強化Lv.51
剛体Lv.48
縮地Lv.40
【その他】
念話Lv.59
硫毒生成Lv.60
霊体化Lv.48
……………………………………………………は?




