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魔女の使い魔  作者: 自動機械鮎
第一章 白蛇と魔女
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第七話 豪邸という名のゴミ屋敷

「………こいつの従魔登録に来た」


「従魔登録ですね。かしこまりました。契約魔法の『コントラクト』は使用済みですか?」


「………ああ」


「承知致しました。ギルドカードの提示をお願いいたします。…ありがとうございます。ではこちらの用紙に必要事項の記入をお願いします。あちらの方に書類を記入するためのスペースがございますのでお使いください」


 無口を体現したような返事しかしない。

 お嬢………もうちょっと愛想よくしよ?

 こくんと頷くと指し示された受付の脇のスペースに移動する。

 んで、必要事項は、と………。


『名前、種族、特技、んでもって備考か。結構少ないな?』


「まあ、魔物相手に住所とか年齢とか聞いても仕方あるまいよ。お前、特技は何だ?」


 急に蛇相手に喋り出したのでお姉さんが凄い変な人を見るような目でお嬢を見ている。

 あ、ゼンドさんが説明しに行った。


『特技……生まれてそれほど経ってないからできることも少ないんだがなぁ……。強いて言うなら毒魔法か?』


「そうか。まあ、別に細かく書く必要も無いだろう。備考も空欄でいいか。進化すれば変わるのだし」


『別に構わんだろう』


 と言うかやっぱり魔物は進化するのね。

 一通り書いて一応記入漏れがないことを確認すると、受付へ戻る。


「………できた。これで頼む」


「はい、かしこまりました。………問題ありませんね。こちらが従魔の証となります。街中では必ず着けるようにしてください」


 そう言って受付のお姉さんはギルドの看板に象られているのと同じ紋章の刺繍が施されている首輪を渡してくると、お嬢は俺の首につけた。

 だいぶ緩くない?とも思ったのだが、俺の首につけられるや否やシュッと縮まった。

 え、何これスゴイ!

 後でお嬢に聞いたところ、この首輪には装着者にピッタリ合う様にする魔法がかかっているんだと。

 やだ、魔法便利。


「………了解した。では、失礼する」


「はい。ルキアも、さようなら」


 ゼンドさんに説明されたので本当か試したのだろう。俺にも声をかけてくる。

 美人なお姉さんに声をかけられて悪い気はしないですねえ、うん。

 とはいえ、喋れないのでかわりに尻尾を振っておく。

 因みに晩ご飯はギルド内の酒場で食べた。

 味はまあ、かもなく不可もなく。

 生前のどこぞの飯マズ王国に比べればマシってもんよ。




◇◆◇◆◇◆




 街中をお嬢と雑談しながら歩く。

 ゼンドさんとはギルドを出たところで別れた。

 何でも書類の処理が残っているのだと。


『そう言えばお嬢って『念話』みたいなの出来ないのか?』


「ん?できるぞ?」


 ……オイ。 


『……何で使わない?』


「いや、だって魔力の無駄だろう?」


『そのせいで変な目で見られてるだろうが。使えよ』


「ん、そうか?気づかなかった」


 ……マジか。もうちょっと周りの目を気にしよう?

 と言うか、普通に考えて蛇と喋ってる奴とか変な目で見られるな決まってるだろうに。


『いいから使え。因みになんて技なんだ?』


「繋ぐは意思、言の葉を解さずして我が思念を僕に伝う。『サイレントエクスプレッション・スレイブ』」


 ああ、もう大体分かりましたね。


『ん、ああ。「契約魔法」の『サイレントエクスプレッション・スレイブ』だな。これは「念話」を参考に生み出されたとされるスキルだが、制限が2つある。1つは、『コントラクト』を使用した相手にしか使えない。これは『サイレントエクスプレッション・スレイブ』が「契約魔法」に分類されるが故の制限だな。次に、相手が一定以上の知能を持っていることだ。これはよく解明されてい。私も一応考えては見たんだが、納得のいく仮説が立たなくてな。まあ、制約はこの2つだ』


 うん。やっぱすごい饒舌……。


『…なるほど。それはいつまで続くんだ?』


『きらない限りずっとだ』


『は?』


 え?ずっと?


『魔法というのは基本的に制限をつけることで効果が高まったり魔力の消費が少なくなる。この魔法もその法則に則っているというわけだ』


『…魔力は大丈夫なのか?』


『ああ、問題ない。魔力を消費するのは会話をすときだけだからな。たいした負担にはならない』


 ……そうですか。

 ため息をひとつ。

 お嬢は魔法の知識はすごいんだが……色々言葉が足りんな?

 そう言うのは先に説明しよ?




◇◆◇◆◇◆




『ついたぞ、ここが私の家だ』


『でか…』


 それが我が主の邸宅を見た感想だ。

 いわゆるお屋敷というやつで、本館よりも併設されているよく分からん蔵のような建物の方が大きいのが印象的だ。

 かと言って本館が小さいわけではないのだが…。


『あの蔵みたいなのは何?』


『ん?ああ、あれは試射場兼実験場だ。あの建物自体も特殊な素材で出来ている』


 ああ、そう言えばこの人魔法大好きだもんね。

 いや、にしてもあんなでかいの作ります?

 外から見るに縦長だけど横10mぐらいありません?

 そこに本館と庭があるわけで…。うん、アホみたいに広い。


『ん?お嬢?』


 そう尋ねたのは普通に門を開けるのかと思いきや、お嬢が門に手をついたからだ。


『見てろ』


 どこか悪戯っぽくそう言うと、門に魔力を流し込んだ。

 すると、お嬢の2人分程もある高さの門に魔法陣とは違う何やら幾何学的な文様が浮かび上がったかと思うと


「ガチャン」


 と言う音を立て文様が例えるなら歯車を回したかの如く()()()


『……今のは?』


『私が「結界魔法」で組んだ結界だ。特定の魔力を流すことによって解錠、施錠ができるように組んである。無用意に他の人間がやると防衛機構が作動する仕組みだ』


 なるほど、要するにセ○ムですね?違うか。いやでも似てるか?

 いやしかし魔法とは便利なものだ。 

 それにしても…、


『お嬢、この「結界」やら属性魔法やらは俺にも使えるような物なのか?』


 やはり便利なものは使えるならば使いたい。そう思うのは人間として普通の感覚だろう。蛇だけど。

 お嬢は少し考えると、


『言葉が喋れるようになれば使えるだろう。魔法は基本的に詠唱をする事で発動する。刻印や特定の儀式をしたりすることによって発動する魔法がないわけでもないが、それはやはり少数だしそういうのも属性魔法などの詠唱で発動する様な魔法が使えることが前提であることがほとんどだ。加えてそう言ったものは用途が限定的であることが多い』


『「念話」を使って詠唱するってのは?』


 少し気になったので聞いてみた。任意で発動するスキルの同時発動は少々難があるものの、試してできないことはなかったのだ。

 しかしお嬢は首を振ると、


『いや、それに関しては無理だという結論が出ている。数十年前にうちの学院の「念話」持ちの教授が試してみて失敗したそうだ。その教授曰く、魔法に必要な詠唱は声という媒介をもって世界に刻むという行為なのではないか、ということだ』 


『…よく分からんな』


『ああ、私もよく分からなかった。まあ、結構クセのある方だったからな』


 あんたが言うか?

 庭を歩きながら説明するお嬢にそう思った。


『さて、ここが我が家だ。とっ散らかってはいるが、まあ気にしないでくれ』


 そう言ってドアを開けーーるのではなく、また扉に手をついて魔力を流すと、今度は先ほどとは少し違った幾何学的な模様が家全体に広がり、


「ガチャン」


 と言う音とともに文様が少し()()()


『………二重ロックか』


『用心するのに越したことはないと言うことだ』


 そう言って今度こそドアを開けるとそこはーー

 

 ゴミ屋敷だった。

 うん、ひどい。

 あっちこっちに脱ぎ散らかしたであろう服が転がり、物が散乱している。

 正直、泥棒が入ったのではないかと疑うレベル。


『………お嬢?これは何だ?』


『?何って家だぞ?』


 やだ、頭痛い。

 何がやだってお嬢にとってはおそらく()()が普通なのであろうと言うことだ。


『お嬢、最後に掃除したのはいつだ?』


『掃除?そんなのしたことないぞ?』


 あ、ダメだ。

 因みに俺が想定していた最悪の事態は年に一回とかそういうレベルだったんだが………。

 さすがは我が主、俺の想像など遥かに上をいく。

 こういう上回り方はしてほしくなかったんだがなぁ…。

 ふう、とため息ひとつつくと、


『お嬢』


『ん?』


『俺に腕を作ってくれ』


 そう懇願した。

 お掃除がしたいのぉ!

ちなみに「念話」の場合は魔力パスを繋ぐのと維持するのに魔力を消費するため、使用じは常時魔力を消費します。しかし、主人公の場合はお嬢とは既に魔力パスが繋がっているので魔力消費を必要としません。他の人との会話だと魔力を消費しますが。

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