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魔女の使い魔  作者: 自動機械鮎
第二章 戦火舞い散るは古の神殿
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第四十二話 龍虎相摶つ 其の四

なんっ!でっ!!はじめちゃん来ないの!!


ヴァイオレット・エヴァーガーデン二回目観てきました。クラウディア(ホッジンズ社長です)の「おおばか野郎ー!」が結構好き。ホッジンズ社長は常に誰かのことを考えて行動してる感じが好きです。それはそれとしてディートフリートの株上がりすぎじゃない?クソかっけえんだけど大佐。私が女だったら惚れてたぜ、危ねえ………二回目は原作を読んでから観に行ったので原作との乖離も楽しめました。ストーリーはもはや別物と言っていいレベルで違うけどどっちも好きです。でもやっぱり映画はアンのお話を最初に持ってくるのは卑怯だと思うの。開始五分で号泣したからね?


鬼滅?鬼滅はもうちょっと静かになってから、ね?こう、あんまり騒がれ過ぎるとかえって見る気がなくなるよね。それはそれとして煉獄さん観たいので行きますけど。煉獄さんの勇姿だけは観に行かねば(迫真)

「これが、隊長格同士の戦い………」


 およそ人の領域に留まらぬ達人同士の戦い。

 火花が散り、白銀の炎が吹き荒れ、魔力の嵐が迸る。

 数十合、幾度となく名槍と聖剣が打ち合い、その度に轟音を鳴らしながら互いに超絶技巧の必殺を叩き込み、しかして離れる。

 赤銀の騎士は多少傷を負えど、それを「高速再生」による再生能力が癒す。

 一方、蒼銀の騎士には再生の異能などない、しかしその身は神々を信仰する敬虔な信徒であれば、神の奇跡が傷を瞬く間に癒す。


「『業火滅却(フレアデリート)』!!」


 その隙を狙ってブレイズが仕掛ける。

 上段から放たれたのはただの聖炎ではなく、剣技を織り交ぜた魔技(アーツ)

 炎は先ほどと比べてより一層に(つよ)(つよ)く猛り、尽くを焼き滅ぼさんと突き進み、


「『疾風迅雷(ゲイルトニトルア)』!!」


 回復を終えた槍兵が絶技をもって炎刃をバラバラに斬り裂く。

 斬り裂かれた聖炎が宙に舞い、それを意に介さずに蒼銀の騎士が吶喊する。

 剛速の歩みから放たれるのはまたしても突きーーではなく、薙ぎ払い。


 槍という武器の特徴は素人でも簡単に人を殺せるという点にある。

 人に向けて突けばよほど運動神経がない人間でない限り何処かしらにはあたるだろうし、適当にぶん回せば穂先なり柄なりに当たって負傷を与えることができる。

 斬ってよし、突いてよし、殴ってよしの優れた武器だ。

 そんな優れた武器を達人の域に達した騎士は己の手足の如く扱う。


 薙ぎ払いは当然刃を立てて、腰を使ってより速く、そのままでは柄に当たり、避けたとしても刃が肉を斬るように。


「──ラアッ!」


 しかし相手は剛力の剣の持ち主。

 鉄塊だろうがお構いなしと言わんばかりに柄へ剣撃を迸らせ、スイングを打ち返す。


「まだまだ!」


 跳ねあげられた槍の勢いに逆らうことなく、むしろその勢いを利用して一回転し、遠心力を利用した薙ぎ払い。

 空を斬り裂き音を斬り裂きながら迫りくる槍刃は先程よりもなお速く。


「ハッ!」


「チィッ!」


 回転し、弾き、また回転する度に金属音。

 打ち合うこと八合、ブレイズが槍を振りかぶったアーネストへと仕掛ける。

 構えは下段、そこから天に登る龍を思わせる一閃を放つ。

 右脇腹から左肩にかけて放たれたのは剛速の一閃は、


(差し…………込む!)


 振りかぶった槍の勢いをそのままに石突から滑り込ませることによって阻まれる。


「ぐおっ」


 だが相手は剛力の剣、急突貫で築いた防御では受け止め切ることはできず、その勢いのまま空中に打ち上げられる。

 驚異的な膂力で体躯を打ち上げられようとも、アーネストがそれに動じることはなく、むしろそれを好機と捉える。

 空中に打ち上げられたが故にすぐには身動きが取れないが、向こうは渾身の一撃をたたき込んだが故に直ぐに次の行動に移れない。


「神よ──鉄槌を『ホーリー・レイ』


 であれば、選ぶ手は魔法による攻撃。

 「神聖魔法」の技術は信仰の厚さに依存していると言われる。

 それが嘘か真かはおいておくものの、一大宗教がそう定説するにはそれ相応の根拠があるということであり、神聖騎士団の三番隊の隊長を教皇より任されたアーネスト・ディートリヒの信仰に曇りなどあるはずもなく、故に「神聖魔法」の技術も熟達している。

 放たれるのは奇しくも正門で神官(ビショップ)が撃った『ホーリー・レイ(神の鉄槌)』、しかしその威力は段違い。

 「詠唱簡略」によって短縮された詠唱は短く、されど「並列詠唱」によって九重詠唱にまで拡大された光芒の一つ一つは下級の吸血鬼(ヴァンパイア)であれば直撃すれば一瞬の抵抗すら許さずに即死させるほどの神性と威力を秘めている。

 そしてそれは不死者に対してほど効力があるわけではないが、人間相手でも相応のダメージを与えることができる。


「チィッ!」


 巧みに角度を付けて発射された光柱は時間差で着弾し、それらをすんでのところでブレイズが避ける。

 食らったとしても「高速再生」が瞬く間に傷を癒すだろう、それは神由来の光芒であったとしても変わりはない。

 だが、瞬時に再生できることと、再生に全く時間がかからないということはイコールではない。

 そしての不死殺しであればその隙を絶対に逃がさない。

 それを誰よりもよく知っているのが他ならぬブレイズだ。


「──シッ」


 果たして、九つ目の光柱が大地を穿ち、上空に朦々と立ち込めた土煙を突き破って蒼銀の騎士は飛び降りてきた。

 「空歩」を使ったのだろう、彼が飛び上がった地点から落ちてきたことによる自然落下の加速にしては速すぎるほどの速度でまっすぐブレイズの下へと飛んでくる。

 引き絞るように取られた槍の構えは突き、碧瞳は真っ直ぐに赤銀を捉えて離さない。


「『千槍の墓標(サウザンドグレイヴ)』!!」


 (アーツ)の名を告げた直後、アーネストの背後に魔力が集まり、広がり、そして収束する。

 束ねた魔力の形は十文字槍、それが夥しいほどの数浮いて、否、宙に()()されている。

 引き絞られた名槍は引き金(トリガー)だ、それが突き出された瞬間、千の(十字架)は標的目掛けて撃ち出されるだろう。


 しかし、千の魔槍に立ち向かうのもまた英傑であれば、その紅瞳に恐れはなく、聖剣を振るう手にもまた迷いはない。

 千槍を迎え撃つのであれば、こちらもそれなりの数をもってあたらねば少しの隙をつかれて十字架を突き立てられるだろう。

 ただクラレントの炎を放出するのでは足りない、それではあの槍群は炎幕を容易く突き破ってくるだろう。

 『業火滅却(フレアデリート)』でも足りない、あれは威力は申し分ないがその分範囲は直線であるため、今や周囲を半球状に覆うように展開されている槍群を凌ぎ切ることはできない。


 ──ならば連撃をもって迎え撃つのが最上の策と考える


「槍よ!貫け!」


「『業火剣乱(フレアブレイディング)』!!」


 アーネストが槍を突き出すのを号令として千の槍群が射出されるのに合わせて、ブレイズもまた己の持ちうる中で最速かつ最多の連撃で臨む。

 聖剣が縦横無尽に振るわれ、それをなぞるように白銀の聖炎が吹き荒れる。

 全方位から襲い掛かる魔槍の群勢を白銀の(つるぎ)がいなし、炎が灼き尽くす。

 超高速の連撃が放たれ、夥しいほどに穂先を光らせていた魔槍のおよそ半数近くが灼き滅ぼされた。

 だが、


(──まだ終わってない)


 それは直感であり、同時に確信と信頼だった。


「ハァァァア!!」


「シャァっ!!」


 これこそが本命だと言わんばかりにブレイズへと突き出された名槍、それを渾身の一撃で迎え撃つ。

 片や千槍の群勢を指揮するための指揮棒として使われた名槍、片や襲い掛かる千槍の群勢を迎え撃つために聖なる炎に加えて己の剣技を織り込んだ聖剣。

 どちらが勝つかなど明白で、それ故に、


「刺し穿て!!」


 まだ空中で待機していた残り半数の魔槍の群勢が聖剣を標的として空を切り裂き白銀を穿つ。

 一つの魔槍では太刀打ちできないが、それを幾重にも束ねて一つの群にすれば話は別だ。

 拮抗する聖剣と魔槍。

 片や究極の一を体現したような一振りの剣、片や究極の群を体現したような数百の槍。


 刹那のような、永遠のような蒼銀と赤銀の拮抗が続き、


「貫けぇぇぇぇ!!!」


「ぐぅぅぅっ!」


 推し勝ったのは蒼銀だった。

 百以上あった十文字槍は蜃気楼のように消え失せ、名槍は悲鳴を上げている。

 けれど、()槍は聖剣を押し除け、今不滅の首元に届かんとしている。

 鈍く光る穂先、碧色の瞳が真紅の瞳を真っ直ぐに捉え、神速の脚は未だ止まることを知らず、


「ふ、ぅぅぅうう!!」


 けれど、名槍の穂先は不滅の頸を穿つに至らなかった。

 咄嗟の判断で脚部を「気功術」で強化し、聖剣が弾かれた時の勢いを利用して渾身の力を振り絞って後ろに飛び下がったのだ。

 火事場の馬鹿力というやつだろうか、アーネストをして目を見張るほどの跳躍を成し遂げたブレイズの体が宙を舞い、致死の名槍が空を切り、大地を穿った。

 土煙が上がり、両者の視界を覆い隠す。


 ──今日は、やけに土煙が上がる日だ


 ふっと湧いて出た感想が着地の衝撃で泡沫のように消え失せた。

 そして入れ替わるように出てきたのは追撃が来ないことに対する疑問。

 紙一重で必殺を躱した今のブレイズはお世辞にも体制が整っていると言い難い。

 対してアーネストは空ぶったという事実こそあれど、槍が途中で止まったということを鑑みれば十分に追撃は可能だ。

 それをしない理由で考えられるのは


 一つ目は槍に異常が生じている、更に言えば壊れてしまっているということ、しかしそうであれば狼狽なり撤退なりなんらかの反応を見せるはずだ。

 二つ目は槍が地面に刺さって抜けないということ、しかしこれもどうにかして引き抜くなり、槍を置いて肉弾戦に持ち込むなりなんらかのアクションはあるはずなので却下。

 そして三つ目、これがブレイズ本人としては一番避けたくもあり、同時に歓迎したいものではあるが──


「チィッ、やはりか!」


 ──大技の準備だ


 台風が木の葉は吹き飛ばすように、蒼銀の騎士から吹き荒れる魔力の嵐はいっそ暴力的な威風を纏って土煙を晴らす。

 構えは上段の構えが一番近いだろうか、石突きを相手に、穂先を後ろに向けている。

 だが、槍の柄は地面と平行ではなく、石突きが地面に、穂先が上を向くようにして斜めに構えられている。


 大地を踏みしめた脚は力強く、槍を握る手もまた力強い。

 吹き荒れる魔力は渦巻くようにして槍の穂先へと収束していく。

 その充填に耐えきれなくなったのか、あるいはこれまでの戦闘の負担がこの局面になって現れたのか。

 どちらにせよ、穂先はビキリビキリ、と嫌な音を立て、細かい亀裂が穂先全体に蜘蛛の巣のように走っている。


 その構えを、その魔力の奔流を、その技を知っている。

 彼が己の憧れを追い続け、けれど己が振るうのは剣ではなかったが故に「槍術」として作り替えた彼の努力と憧憬と信念の結晶。

 ()()が彼にとってどのような意味を持つのかを知っている、()()を完成させるまでにどれだけの年月と研鑽を費やしたのかを知っている。

 その技を完成させるために力を貸したのは紛れもない自分自身なのだから。


「いいだろう!お前がそうくるのであれば!()()を撃つのであれば!!」


 だからこそ、自分も最強をもって迎え撃たなければならない。

 裂帛の気合と共に八相に構えた白銀の聖剣から白銀の聖炎が塔の如く立ち上がる。


「【真名、開放──】!」


「はぁぁぁああ…………!」


 聖炎と、魔力の嵐。

 互いが己の領域を主張するようにせめぎ合い、けれどこれから起こるであろう衝突を考えればそれすらも小鳥の(さえず)り程度にしか思えない。

 聖炎は白銀から蒼金へと色を変え、なお一層に猛り、周囲を暴力的な熱波で揺らす。

 荒れ狂う魔力の奔流は槍の穂先に集中することで精錬されているが、元からあった力が失われるわけではなく、むしろ精錬されたとこによって更なる気迫が空気を震わす。


「ーーー」


「ーーー」


 触れれば壊れそうな一瞬の静寂の後、


「「永炎(クラ)──」


「『万壊の(フル)──」


「報告します!」


 今まさに互いが持ちうる中で最強をぶつけ合おうというところでその声が無遠慮に横から入った。

 声のした方を見れば、そこには聖遺跡内に侵入したはずの黒づくめのうちの一人が負傷した肩をおさえて膝をついていた。


 ちらり、とブレイズがアーネストへと申し訳なさげな視線を送るとアーネストは「仕方ありません」とでも言うように笑みを浮かべると、魔力を霧散させヒビだらけになった槍を下ろす。

 アーネストが槍を下ろすのを見るとブレイズも聖剣の炎を消しさり、構えを解くと、


「なんだ」


 恐ろしく不機嫌そうな声で黒づくめの男を詰問した。

 殺気すら感じさせる如何(いかん)の問いかけに黒づくめの男は一瞬詰まるものの、そんなことをしている場合ではないと覚悟を決めたのか、意を決して再度口を開いた。


「っ、聖遺跡内に侵入した各員は神聖騎士団四番隊と交戦、膠着状態だったのですが──」


「が?」


「正門から入ってきたアリシア・ローレライの奇襲により強襲班十一名のうち七名が死亡、四名が傷を負っています」


「ちっ、魔女の足止めすらできんのか!あの木偶(デク)は!」


 堪え難い、その怒りを暴言にして吐き捨てると、


「すまんな、アーネスト。決着はまたの機会になりそうだ」


「ええ、構いませんよ。私も、貴方と戦うのであれば万全を期したい」


「ははっ、そうか。なら、次は聖槍を持ってこい。その時こそ、心ゆくまで仕合おう」


 ニィ、と笑みを浮かべながら剣を鞘に収めた。

ブレイズとアーネストは主人公とシオンとの関係と対照的かつ相似的に書いています。どちらも互いの在り方を尊重し、尊敬し合う仲です。まあ、主人公とシオンの場合は煽り合いが多すぎる気がしますが。ただ、一つ決定的な違いは立場の違いです。どちらも互いの存在を認め合っていても信念がぶつかり合ってしまったのがブレイズとアーネストであり、胸に抱いた願いは違えど共に歩むのが主人公とシオンです。どちらも根本的な部分は同じですがその先が違っただけでこれほど違う結末(終わってませんが)になるというのを意識的に書いていたり。読者のみなさんはどちらの“友”の関係が好きですか?

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