第三十七話 呪い祝う禍福の園
転換点
今回クッソ長いです
正門サイドの先頭をこの顔で終わらせようと思ったら二話分の文字数になってしまった………すまない
というか設定もろもろ練っていくうちに時系列がこんがらがっていくんですけど………年表でも作ろうかしら?
──誰かの幸福が好きだった
──誰かの不幸が好きだった
──ただ、人を見るだけで幸福であれる自分が異常だと気づくのに、それほど時間は掛からなかった
──誰かの満ち足りた幸せそうな顔が好きだ
──その笑顔でこちらも満たされたような気分になるから
──誰かの恐怖に歪んだ歪な顔が好きだ
──その恐怖で悦楽に浸れるから
──異常だとわかっていて、人間として破綻していると分かっていて、けれどそれを直すことなどできなかった
──どれだけ普通であろうとしても、俺の心は人の喜怒哀楽に見て快楽に浸ってしまうのだから
──それでも出来る限りの努力はしたつもりだ
──〝普通〟で在れるように
──〝普通〟に慣れるように
──それでも、出来なかった
──どうやっても、〝普通〟を演じることしかできなかった
──だから生前はどこまでも束縛されているような感覚が絶えなかった
──身体ではなく心が
──あの世界では、あの身体では、何をどうやっても満ち足りるということはなかった
──常に鎖で雁字搦めにされているような気分だった
──なら、今は?
──嗚呼、
──満たされているとも
──だって、
──もう、まともな人間であろうとする必要は無くなったのだから
◇◆◇◆◇◆
『──ハ、ハハッ。アハハハハハハハ!!!』
黒銀の大蛇がどこまでも可笑しそうに笑う。
人が死に逝く様を見て、これ以上に愉快なことはないとばかりに笑う。
『嗚呼!やはり俺は人を愛している!!いや、こんなにも美しく、醜く、清純で混沌に満ちた生き物を愛せない俺がどうかしていた!!フフフっ、アハハハハハハハハ!!!それなら!嗚呼!それならば!!その血潮と悲鳴と慚愧を我が園に飾ろう!!!』
そう、高らかに叫び声を上げると、空中に待機させていた4本の万里の堅鎖を鱗と鱗の間に突き刺した。
鮮血が溢れ、黒い鱗と銀色の杭が血の色に染まる。
「ご主人様!?」
『構うな!ヘカテ!そこの2人を押し留めておけ!!』
「っ!……御意!其は世界を覆う影。我が意に従い、敵を縛れ!『シャドウ・バインド』!!」
「クソッ!邪魔だ!『デュアルファング』!!!」
「天にまします我らが神よ。今、迷える我らに一時のお導きを!『セイント・ブレス』!」
習ったばかりの魔法までも使って俺を止めようとする二人を懸命に牽制するヘカテを尻目にことの準備を進める。
身体に突き刺した杭に血が塗りたくられ、綺麗な銀色を紅く染め上げる。
正直なところ、コレを行う意味はない。
堅実に詰めればこの戦いはほぼ確実に勝てるだろう。
シオンが6人の暗殺者を殺し、暗殺者の長を追い詰めている今、後はランデルが残った暗殺者2人を無力化し、俺とヘカテがヒューゴとエマを倒せばそれで済む。
確かにヒューゴとエマはそれなりに強いが、倒せないというレベルじゃない。
切り札を切り、長期戦に移ればほぼ確実に勝てるだろう。
加えて、長期戦になれば勝つのは十中八九こちらだ。
もとより身体能力において、魔物の方が圧倒的に優っている。
だからこそ人は技術を磨き、策を弄することで人外の魔性に勝つ術を見出す。
さらに言うのであれば、俺は最下位とは言え、魔法戦に優れ、魔力量に潤沢な精霊の一種であるため、戦いが長引けば長引くほどこちらが優勢となる。
だから、この「呪術」を使うことに意味はない。
だが、理由ならある。
自分でもびっくりするぐらう我儘で、利己的で、自己中心的で、身勝手な理由が。
──今なら、この「呪術」を完成させられる
──今、この場を怨嗟と叫喚の楽園に仕立て上げたら、どれだけ美しいだろうか
呪術師としての欲望が、蛇としての冀求が、どうしてもやらねばらないのだと訴える。
そして、今の俺にはこの自分勝手な願望を押し留めるものなど一片たりとも存在しなかった。
だからその情動に従って、血色に染まった万里の堅鎖を地面に当てる。
血というインクと杭というペンで硬く踏み固められた大地というキャンバスに描くのは簡素な魔方陣。
正方形は領域を表し、三角形は中心地を表し、七という数字は幸運を表す。
『謳え七つの正方形。其は我が支配する領域を指し示し、三角形は術者たる俺を指す。ならばこの領域において支配者足りうるのは俺であり、故に凡ゆる幸を俺が定めよう!!』
「念話」での詠唱に意味はない。
だが、「呪術」は怨念という意志に干渉するもの。
そして触媒が己の血であるならば、己の意志をより強く反映させる足掛かりとなる。
自身が指定した領域の「幸」を支配するならば、それは味方への祝福だけでなく、敵方への災禍をも操るだろう。
表裏一体とはよく言ったものだ。
「呪術」においても【裏返】という技法も、表裏一体の概念を利用したものだ。
表があるなら裏がある。
では、ひっくり返せば全く真逆の効果が得られるのだと。
『さあ!我が禍福満ちる庭にて打ち上げられた魚の如く喘ぐがいい!!『呪い祝う禍福の園』!!』
魔法の名前を唱えると共に、血で描かれた魔法陣がこの場に居る全員を囲むほどに拡大し、かと思うと弾けて消える。
「こ、れは………!」
「ヒューゴ君!?………っ!?」
「ぬぅ!?」
異常をきたしたのはまだ戦えているヒューゴ、エマ、そして暗殺者の長と残り2人の暗殺者。
重圧を受けているかのように、あるいは身体から闘気が、魔力が、肉体にあるありとあらゆる「力」が少しずつではあるが、確実に抜け落ちていくような感覚に陥る。
「身体が、軽い?」
「これは………なんだ?」
「ほう?ルキアめ。また随分とけったいなものを」
反対に体の動きが良くなったのはヘカテ、ランデル、シオンである。
ふと、足下を見ればそこには黒の花が先ほど広がった魔法陣の広さだけ、あたり一面に広がっている。
踏み鳴らした花弁が宙を舞い、花弁から漂う赤黒の空気のような、粉末のような、あるいは光子のようなソレが空間を満たす。
空間を漂うソレーー花粉がここにいる全ての者を犯す。
──それは何処までも冒涜的で、しかしどこか幻想的な光景だった
『アハハハハハハハハハハ!!!正直成功する確率は五割を切っていたが………このテンションであれば成功しないはずがないという俺の目算は正しかった訳だ!!!いやまあ、単純にノリに合わせただけなんだが』
「テ、メエ!蛇!何をした!?」
『何をしたも何も………見ればわかるだろう?「呪術」を使っただけだ』
「「呪術」……だと!?あり得ん!!蠱毒ならまだしも、領域を支配する「呪術」など無いはずだ!!」
確かにその通りだ、と言うかよく知ってるな暗殺者の長。
というかそろそろこう呼ぶの面倒くさくなって来たな。
作者もルビ振るの面倒くさいって思ってるぞ?
いちいちルビ振るのって割とめんどいんだからな?
閑話休題
『蝕み侵す蠱毒』はあくまで周囲に毒を散布するだけの「呪術」だし、『歩み忌む紫黒の魔手』や『歩み阻む泥濘の湖沼』は究極的に泥沼と黒手を出現させる「呪術」だ。
『命妬む亡者の叫声』に至っては精神的な作用はあるものの、声を出すだけの『呪術』だ。
つまり「呪術」には所謂「領域支配型」というものはない。
領域全体を覆うようなものと言っても、結果的にそうなっただけであって、それを目的にした魔法は「呪術」にはないのだ。
そして「空間そのものを己が物」とする「呪術」もまた、存在しない。
と言うかそもそも、そういうモノは「結界魔法」や「時空間魔法」の領域だ。
「呪術」はどっちかというと真逆で、一般的には割と単一を対象とした物が多かったりする。
だが、それがどうした?
『可笑しなことを言う奴だな?無いなら作ればいいだけの話だろう?』
「………は?」
原理的に不可能でないのであれば。
理論が破綻していないのであれば。
それは実現可能ということだろう?
『不可能で無いのなら、世界が拒絶しないというのであれば、「呪術」において俺にできないことなどない。あらゆる触媒を駆使して、俺の全霊を賭して、お嬢の言葉を本物にしよう』
俺が指定した範囲の空間を一個の存在として認識し、それを支配しようとすればいいだけのこと。
「呪術」とは呪詛に含まれた欲望、意思といったものを抽出、あるいはねじ曲げて一個の方向へと変えることで及ぼす害を定める。
であれば、単純だ。
その欲を支配欲に集中させればいいのだから。
論理的にはいとも簡単だ。
ただ、対象を空間そのものに変えたというだけの、工夫とすら呼べない細工をしただけのなのだ。
かつてお嬢はこう言った。
「おまえは「呪術」の分野であれば出来ないことなどないだろう」と。
ならば、俺は臣下として、主人の言葉を虚言にはさせまい。
『ーーさあ、足枷手枷が嵌ったような状態だが、せいぜい奮闘しろよ?』
「クソが!上等だ、クソ蛇!!!」
◇◆◇◆◇◆
呪詛の庭園に咲く花に侵されながら、ヒューゴは懸命に足を動かす。
目の前にはメイド服の女が立ちはだかり、その背後には黒銀の蛇が悠然と構えている。
グローツラングとはこれまで二回ほど戦ったことがある。
エルデア帝国周辺は龍種が主に生息している天霊の山脈に隣接していることから、その近隣種と目されている蛇系の魔物が多く出現する。
蛇系であり、同時に高質な霊脈が通っている場所に多く出現する精霊種の一種であるグローツラングはエルデア帝国では多く見られるため、必然としてヒューゴも遭遇したことがある。
一度目は駆け出しの頃、ソロであっても自分ではなんでもできるという根拠のない自信を胸に魔物の群生地に踏み込み、そこで遭遇したグローツラングに呆気なく食べられそうになったところをキースが助けてくれた。
二度目はそこそこ最近で、五ヶ月ほど前のこと。
とある農村で十数名の子供が行方不明になっているので、その捜索をお願いしたいという依頼を受け、そこでその犯人であるグローツラングと遭遇し、これを倒した。
だが、これまで会ったどのグローツラングも、人の言葉を話したりはしなかったし、「呪術」を使ったり、あまつさえ人の恋路を肴に酒を飲み始めるような個体は見たことがない。
………というか最後のに至っては、そもそもそんな魔物が居るなど見たことも聞いたこともない。
居るとすれば伝説にまでなった魔王ぐらいだろうが………あれはそもそも存在するかどうかすら疑わしい。
ただの一撃で山を吹き飛ばす魔物など、居ると考える方がどうかしている。
それはともかくとして、今相手をしているグローツラングは魔物の中でも明らかに異質だ。
そもそも、人間扱うはずの「呪術」を使っているという時点で色々突っ込みたいのだが、それをしても仕方がない。
現在の状況は、暗殺者たちがほとんど倒れ、彼らの長にしても、だいぶ押され気味だった。
それがあのグローツラングの「呪術」ーー『呪い祝う禍福も園』と言ったかーーの影響で、こちらの体の調子が少しずつではあるが確実にに悪くなり、絶え間ない嘔吐感と目眩、耳鳴りと言った不快感が襲ってくることで残りの暗殺者たちも戦闘不能、というか気絶している。
こちらとしても足下はふらつき、立っていることすら難しい。
エマはなんとか立っているが、そのうち戦えなくなる時間の問題だろう。
──だが、それでも
──やらねばと思うのだ
──この場をキースに任され者として
──たとえ勝ち目などないと分かっていても
──力尽きるまで、足掻くべきなのだと
──身体が、心が、魂がそう告げている
今対峙している二人に勝っても、その後には「暗闇の暗殺者」とあの恐ろしい剣士が待っている。
前に立ちはだかる二人を倒しても大した意味がないのはわかっている。
──それでも
「剣が振れなくなるまで戦うんだよ!!」
吠えながら撃ちかかった剣閃に曇りはなく、確固たる覚悟を決めたからか、むしろ先ほどよりも研ぎ澄まされていた。
「はあぁっ!!」
対するは小太刀を持った従者。
吸魔の小太刀は刃に込められた魔力を徴収する。
だが、その簒奪によって双剣の舞が鈍る様子はない。
「づっ………あぁああ!!!」
「ぐっ…………天にまします我らが神よ!今、迷える我らに一時の加護を!!『セイント・ヴェール』!!」
その身を呪いに侵されて、それでも二人は足掻く。
ただ、目の前にいる敵を倒すために。
生存への渇望を、再会への希望を胸に剣を振るい、魔法を行使する。
より強く、より早く、より巧く、より高く。
自分の身の危険を身近に感じれば感じるほど、身体はこの状況を打破しようと己の技術を高める。
(まさか………戦いの中で強くなってる!?どこの少年漫画の主人公だ!)
生存欲求を糧として、その技を昇華する。
その勇姿を目の当たりにして、呪園の主人は嫌悪ではなく歓喜に唇を歪める。
死神が隣で鎌を振り上げているのだとしても、きっとそれは彼にとって忌避すべきことではない。
人の生き様を観れるのであれば、人の足掻きを愉しめるのであれば、彼はそこがマグマの海であっても迷わず飛び込むのだろう。
だから、彼がヒューゴとエマに向けるのは憎悪ではなく歓迎だ。
『ハハハハハハハハハハハハハハハハ!!いいぞ!いいぞ!!死の淵で成長する人の姿!!嗚呼、お前たちはどこまでも愛おしくいじらしい。だがどうする?それではまだヘカテは降せんぞ!?』
その通りだ、とヒューゴは歯噛みする。
目の前に立ちはだかる従者は即席の二刀流を捨て、小太刀のみでヒューゴと打ち合っている。
先ほどまでと違う点を挙げるとすれば、向こうもこちらと同じく首を獲りにきているのではなく、あくまで防戦に徹していると言う点だ。
その判断は正しい。
現状、圧倒的に不利なのはヒューゴたちだ。
長期戦に持っていって仕舞えば、向こうは自滅するのを待つだけでいい。
刻一刻と呪詛の花が身体を蝕んでいる。
今戦えているのだって後先考えずに力を振り絞っているからだ。
……と言うか
「お前本当に人間か!?」
「当然です。それ以外の何に見えるのですか?」
「俺が知るかあ!!」
息をするように嘘をつくのは主人に似てきたからだろうか。
平然な表情を保ちつつ、超人的な身体能力を駆使してヒューゴの猛攻を防ぐ。
(クソッ!このままじゃジリ貧だ。どうにかしないと………)
エマからの援護もルキアの「呪術」と「流水魔法」が防ぐ。
発動に時間はかかるがそれほど多く魔力を使わない「呪術」と、要魔力量は多いが発動の早い原始魔法の両方を使い分けることで的確に対処をしている。
優れた状況分析力に並列思考を可能とする頭脳、更には「呪術」まで使ってくるときた。
あれは本当に魔物かと疑いたくなるが、それは転じてこの戦況における要であることを示している。
(だったら!先にあのクソ蛇を潰す!!)
「エマ!!足止め!!」
「っ!はい!天にまします我らが神よ。今、我が前に立ちはだかる障害に一時の足枷を!『ホーリー・レストリクション』!」
エマの詠唱と共にヘカテの足元に現れた光り輝く魔方陣から同色の鎖が何本も射出され、足首に巻きついたかと思うと立派な足枷が嵌められていた。
「こ、の!舐めるな!!我が僕たちよ!!喰らい尽くせ!!」
「「なっ!?」」
ヘカテが号令を告げると共に、ロングスカートの中から無数の蛇が湧き出た。
ヘカテがエキドナへと進化したことで習得したスキル「眷属生成」。
自身の魔力を大量に消費することで一時的に眷属を作り出すスキル。
時間をかけて生成すればもっと良質な眷属が作り出せるのだが、今はそんな時間はない。
急造ではあるものの、魔力の大部分を消費することで大量の眷属を作り出し、それを光の枷にぶつけることで魔方陣ごと砕いた。
(だが──好機だ!)
ヘカテが足枷を砕いたとはいえ、それは足止めが作用しなかったことを意味しない。
ヘカテの「眷属生成」に目をくれることなく、ルキアへと疾走する。
「終わりだ!『エアリアルファング』!!」
双剣を覆うのは獅子の牙の如き暴風。
切っ先に集中するように収束された風の牙は荒々しく、何よりルキアの知覚網をもってしても反応が遅れてしまうほどに早かった。
ルキアの胴で交差するように宙を駆けた双牙は正しく討つべき相手を捉え、黒い鱗に覆われた胴を一切の抵抗なく貫いた。
「───な」
ヒューゴの双剣は確かにルキアの蛇腹を貫通していた。
切っ先は背中から飛び出、鍔は身体の中に埋まっている。
ただ、おかしな点があるとすればそれは貫かれたルキアの身体から血が一滴も溢れてこないことと、ルキアの身体の貫かれた周辺が透けていることだろう。
『惜しい、惜しい、いや本当に惜しかったなあ?双剣士。あと一秒、いや?あと刹那早ければ俺も間に合わなかったろうさ』
嘲るように発せられた言葉によって正気に戻ったヒューゴを襲ったのは真上に振りあげられた蛇の尾だった。
「しまっ──ガッ!?」
回避行動へと身体を動かすも、それすら読んで振りあげられた尾はヒューゴの顎を正確に捉えた。
鞭の如く放たれた尾は違えることなく頭部を打ち抜き、脳を揺らすことで双剣士を気絶させた。
『ふふっ、いや危ない危ない。「剛体」でも防げるかどうか怪しかったぞ、あれは』
どさり、とヒューゴが倒れ、一応念のために本当に気絶しているかどうかを感知系スキルを総動員して脈拍を計ることで確認しから万里の堅鎖の二本を使って手足を縛る。
そんな風にガチャガチャやっていると、ヘカテが神官の後頭部を小太刀の柄尻で殴って気絶させたのが見えたので、同じように万里の堅鎖の内の二本で手足を縛る。
先ほどヒューゴのアーツを躱した、というかやり過ごしたのは「霊体化」のスキルによるものだ。
肉体を魔力に置換する「霊体化」は部分的にも発動可能であり、緊急回避が必要な時なんかによく使う。
あと家事してる時とかな。
この図体だと尻尾なんかがはみ出ることが多いんだが、それをこの「霊体化」のスキルが解消してくれるので、結構重宝しているのだ。
普通の攻撃なら傷一つ付かないんだが、魔力を込めた攻撃だと魔力が削られるので、今は“園”を使ったこともあって割と、具体的には残りの魔力量が2割切るまでに削られていたりする。
『しかしヘカテ、「魅了の魔眼」は使わなかったんだな?』
俺が戦闘中疑問に思ったのはそこである。
ヘカテが持っているスキルの中でもっともスキルレベルが高いのは「魅了の魔眼」であったのだから、それを使っていればもっと有利に先頭を進められたはずなんだが………。
『ご主人様、「魅了の魔眼」を使って仕舞えば私が魔物であることがバレてしまいます』
他の人………というか今意識のある部外者だと暗殺者の長とランデルに聞かれたくないことだからか、「念話」を俺にのみ繋げて会話してくる。
『いや、人間でも「魅了の魔眼」を使えるやつはいるぞ?』
「え」
「石化の魔眼」や「魅了の魔眼」と言った魔眼の類は魔物が多く持っていることが多いが、人間が先天的に持っていることもある。
というか、英雄譚なんかだと魔眼持ちが迫害されて旅に出て、紆余曲折あって主人公の仲間になるといった展開は、この世界では結構定番なんだが………知らなかったか。
ちなみに魔眼持ちへの迫害に関してだが、これは“魔物と同じ目を持つ忌み子”として迫害されていたという。
もっとも、数十年前にどっかの学者が“人間が持つ魔眼は魔物が持つ魔眼とは別物である”と提唱し、それが魔法協会と冒険者ギルドによって認められたため、今ではよほど閉鎖的な村だったり変なおきてでも持っていない限り、迫害されるということもない。
流石に外国のことはよくわからんが。
『むしろ「眷属生成」の方が怪しまれないか?』
『へ、蛇使いと説明するつもりだったのですが………ダメだったでしょうか?』
『なら先に蛇を出しおかんとまずいだろう。スカートの中から大量の蛇が出てくるとか一種のホラーだぞ』
そっちのがよっぽど魔物っぽいわ。
『ま、どっちにしろお前さんが魔物とバレたってお嬢の従者として振る舞ってれば大した影響はないだろう。ランデルとかフレデリカあたりは気付いてると思うぞ?』
「うぅ………」
………割と本気で凹むヘカテを見てちょっとゾクッとしたのは心の奥にしまっておこう。
と、ヘカテと下らない話をしていると、シオンが渾身の一撃で暗殺者の長の首を撥ねた。
シオンの蹂躙を逃れた暗殺者たちは“園”の影響で気絶しっぱなしだし、後はお嬢に飛ばされたキースのみか。
俺が“園”を展開したことで早々に出番が終わったランデルは聖遺跡の正門に寄りかかってくつろいでやがる。
『さて、裏門の方はどうなってるかねえ?』
延ばせば視えるんだし折角だから観てみようか、丁度開戦したみたいだし。
上のは『呪い祝う禍福の園』の魔方陣です
見た目は塔の無い邪悪なガーデン・オブ・アヴァロン。なお、今の主人公の技量でいくと3割弱ぐらいの確率で失敗する。効果は指定した範囲内で自身が指定した見方へのバフと敵へのデバフ。今は範囲はそれほどでもないけど効力は今は中級魔法程度で普通に実践レベル。味方はなんか身体がやけにうまく動くし、魔法の扱いもちょっとやりやすくなる。敵はその逆。実はこれ「呪術」界の中では革新だったりします。新しい分野を切り拓いたというか、そんな感じ。後々主人公にとって重要になってくる魔法です
ちなみ主人公の「呪術」に関する技術ですが、主人公は呪詛を引き上げ、それを操作する精度が並外れて高いです。てか異常。反面、引き揚げたり操作できる呪詛の量はまだまだ。というかこれからの研鑽次第でどうとでも上がっていく模様
以下、ヘカテのステータス
Name:ヘカテ
Level:3 (Total Level :123)
Phylum :魔物
Species :エキドナ
HP:1884/1884 (100up)
MP:1451/1451 (100up)
Strength :822 (50up)
Vitality :650 (40up)
Dexterity :819 (60up)
Agility :881 (60up)
Stamina :771 (50up)
Luck:35
Skill:
【耐性系】
毒耐性Lv.58 (8up)
呪詛耐性Lv.21 (new)
麻痺耐性Lv.56 (new)
【魔法系】
毒魔法Lv.52 (16up)
魔力操作Lv.58 (21up)
魔法調整Lv.38 (new)
並列詠唱Lv.45 (22up)
詠唱簡略Lv.28 (new)
刻印魔法Lv.17 (new)
儀式魔法Lv.27 (new)
合成魔法Lv.18 (new)
風属性魔法Lv.40 (new)
水属性魔法Lv.40 (new)
光属性魔法Lv.37 (new)
影属性魔法Lv.49 (new)
幻影魔法Lv.41 (new)
結界魔法Lv.40 (new)
【感知系】
暗視Lv.40 (11up)
熱源感知Lv.50 (11up)
魔力感知Lv.50 (10up)
気配感知Lv.48 (25up)
心眼Lv.58 (33up)
【身体系】
尾撃Lv.54 (27up)
剣術Lv.56 (29up)
体術Lv.48 (new)
暗器術Lv.56 (25up)
投擲術Lv.46 (new)
縮地Lv.52 (26up)
空歩Lv.20 (19up)
気功術Lv.55 (new)
魔力強化Lv.54 (new)
気配遮断Lv.41 (19up)
【その他】
念話Lv.37 (3up)
猛毒生成Lv.28 (27)
人化Lv.63 (62up)
眷属生成Lv.55 (54up)
Unique Skill :魅了の魔眼Lv.61 (20up)
「眷属生成」の使用法は二つあり、一つは今回ヘカテがやったように魔力による生成。一体一体のステータスに加え知能も低く、また要求される魔力量も多く、さらに時間経過で消えてしまうため、緊急時以外はあんまり使いどころはない。
もう一つが生きている蛇を従属させる調教みたいな「眷属生成」。魔力コストはそこそこ高いが前者と違い時間経過で消えるということもなく、普通に生物を隷属させるスキル。こっちはこれから出します。
なお、戦闘における金的は賛否両論あるとは思いますが、ヘカテはそれが効率的だと思ったら大抵のことはやってのける方なので………もしかしなくても主人公に汚染されてる?




