第三十二話 正門開戦
どうも、アクナイで単発でニェン当たったけどFGOでキャストリア引こうとして無事爆死した小鳥遊です。
夏イベは巴さんを当てるのだあ!!!
似非聖女が聖遺跡に向かう当日になった。
聖遺跡に向かう道中も襲撃は特になく、何事もなくカトリス聖遺跡に着いた。
…………いや、襲撃者が来ればよかったのに、とか思ってませんとも、ええ。
あわよくば腕の一本ぐらい切り落とされて泣き叫べばよかったのに、とか命に別状ない範囲で負傷すればよかったのになー、なんてまさかまさか。
自他共に認める善性の擬人化たるこの俺がまさかそんなこと考えるわけないでしょ、HAHAHA。
「なんかとんでもない虚言が聞こえた気がする」
『空耳でしょ。それとも痴呆でもはじまったか?親友』
「おやおや、親愛なる我が友は三枚おろしが所望かな?」
ちゃきり、とシオンが柄に手を添える。
見れば若干目が据わっているように見える。
ええい!度量の小さいヤツめ!!そのくらい笑って流すのが大人だろうに!
「お前ら仲良いな………」
「そうですね………それはそうとランデル様。正門の見張はどのように行うのでしょうか」
そう言えば確認してなかったな。
今俺たちがいるのはカトリス聖遺跡の正門前。
そこに門番よろしくだべっているわけだ。
カトリス聖遺跡の外観を説明するのであればギリシャのパルテノン神殿が分かり易いだろうか。
アレの柱の密度を室内が見えなくなるぐらいに厚くして、南方と北方に出入り口を設けたのがカトリス聖遺跡のおおよその構造だ。
中は分からん、感知系スキルを使って視ようとしたが、結界でも張られているのか、弾かれてしまった。
そとは木々で囲まれており、いかにも「襲ってください」とでも言わんばかりの立地だ。
とりあえずお嬢、俺、ヘカテ、シオン、ランデルが正門の見張。
裏門はフレデリカに加えてセドリック、リチャード、リゼット、ミカエラ達、黒鎧の守護者が見張ることになっているが、そこからどうするかということに関してはそれほど詰めてはいなかった。
出立前は神聖騎士団が主に周囲の状況を調べていたというのもあって、聖遺跡訪問中の役割分担にまで手が届かなかったのだ。
正門裏門の件に関しても決まったのはエルキア出立前だったし。
「俺は暗殺者だからなあ………適当に隠れ潜んで不意を撃つぐらいしかできん。あとはお前らが決めてくれ」
「いいのか?」
「ああ。どうせお前らの方が互いのことよく知ってんだろ。俺が口を挟んでも藪蛇にしかならないさ」
自分が踏み込んでいい領域を自覚、ないしはきちんと弁えようとしている姿は好感が持てる。
たとえできていなかったとしても、やろうとしているというのが分かる分、精神的なダメージが少ない。
どっかのモドキ風情と違って。
パーソナルスペースを考慮せずに土足でドカドカ踏み込んで来るのはフレデリカも同じだが、アレは本当にこっちが踏み込んで欲しくないところには入ってこないタチだ。
だが、あのクソ聖女はそもそも自分が踏み込まれて嫌がるという発想そのものがないと見える。
でなければお嬢の家庭事情を根掘り葉掘り聞くものか。
自分がされて嫌がることがあるという発想がない、相手の家族関係が険悪であるという発想がない、人に手名付けられた魔物に襲い掛かられるという発想がない。
気持ち悪いぐらいにおめでたい頭をしている。
ホント、頭に花でも湧いてんじゃねえの。
その純真さは見る人が見れば救いにすら映るのかもしれんが、俺からすればただの出来損ない、人間の失敗作だ。
人間として必要な「疑う」という機能が決定的に欠如している。
まるで──
「おい、ルキア?」
『──っと、悪いお嬢。で、何だったか』
思考の海にどっぷり浸かりすぎたらしい。
お嬢とランデルが半眼でこちらを見ている。
いや、まったく申し訳ない。
「ハア、正門の配置についてだ。いつも通りシオンが前衛、ルキアが中衛、私が後衛、ヘカテが遊撃で行こうと思うが構わないか?」
「異論はない」
『同じく』
「問題ないです」
というかそれ以外の編成だと割と命に関わると思う、主に俺とヘカテが。
相手はAランク冒険者混じりの襲撃犯ですぜ?ぶっちゃけ今回俺とヘカテ要らなかったんじゃない?とか割と本気で思ってる。
いやまあ、それだと冒険者グループの頭数が足りないから仕方ないんだが。
取り敢えずこっちのメンツとしてはAランク冒険者ランデルと推定Aランクオーバーのお嬢とシオン。
Bランクの魔物のヘカテにランク的にはCランクだけど実力的にはBランク(とお嬢とシオンは言ってた。まあ、Cランク相手ならそこそこ軽く捻れるから多分合ってる)の魔物の俺。
情報を精査してアーネストが建てた見立てでは、襲撃犯は多くても二十人前後。
それを二で割って正門に十人、裏門に十人ぐらいだから………うん、絶対的に数が足りてないネ!
まあ、ぶっちゃけ冒険者グループの役割って襲撃が来たときの伝達と足止め、敵の数減らし、あとは侵入した敵を後ろから追い込んで挟み撃ちの状況に持っていくってぐらいだから人数不足はそこまで問題じゃない。
全員止めろとは言われてないし、最悪室内にいる神聖騎士団に混ざって一緒に迎え撃てばいいのだから。
つーか神聖騎士団は1部隊で5、60人、今回出動してるのは三番隊と五番隊なわけだから100人以上居るわけよ?
つまり戦力差的には5倍以上もあるわけで………うん、俺らいる?
いや、政治的な理由で駆り出されたんだから最低限のことさえやってればいいんだけどね?
にしても冒険者グループの必要性よ………備えあれば憂いなしとは言うが流石にこれは不要不急と言わざるをえん。
◇◆◇◆◇◆
『来た、か』
「はっ」
「相変わらず化け物みたいな感知網だな。ああ、混沌・悪の化け物だったか」
『天誅ァ!!』
「っぶねえ!?」
清廉潔白を絵に書いたような男(蛇)に向かってなんたることを!
「金剛」がくる前にここで仕留めてくれるわぁ!
「はいはい、じゃれ合うのはそのぐらいにしろ」
『オッケー、お嬢』
「いや、今普通に殺気篭ってたぞ!?」
HAHAHA、コイツは何をいってるんだ。
唯一無二の親友に俺がそんなことする訳ないだろうに。
まったく、ヘカテを見習え。
きちんと戦闘体制に入ってるじゃないか。
「ルキア、数は?」
『全部で12人。その中でもヤバいのが2人だな』
圧倒的に数が足りてない、
残りの10人は2人ほどヤバくないとは言え、それなりの手練れだろう。
「………最初はシオンとランデルでその2人を受け持て。ルキアとヘカテはその他10人の相手。私が全体の指揮と援護をする。そのあとは作戦通りに」
「応」
『了解した』
「はっ」
「ああ、それでいいだろう」
『ランデル、打ち合わせ通りだ。こっちの合図と一緒に頼むぞ?』
「分かっている」
木々の影に隠れているランデルに向けて最終確認を済ませ、接近してくる敵を待つ。
………にしても奴ら、隠れる気ないな?
固まってこっち向かってきてるし………油断しているのか?
そうであれば、むしろやりやすいからいいんだが。
待ち構えていると、黒づくめ集団が姿を現す。
その中で、冒険者のような格好をしているのが3人。
格闘士と思しき男に二刀使いの男、そして神官の女だ。
ヤバいのの1人がこの格闘士の男で、伝え聞く情報からすれば、この男が「金剛」キース・ファロンテッサだろう。
曰く、龍殺し。
曰く、その拳は山をも砕く。
曰く、その拳はアダマンタイトよりも硬い。
曰く、曰く、曰く──
彼を称賛する文言は絶えることなく、帝国とは犬猿の仲である王国にもそ名前は轟いている。
それも悪名としてではなく、純然たる英雄として。
その実力は疑いようもなく、歴戦の兵と呼ぶにふさわしい。
──故に
「………Aランク冒険者キース・ファロンテッサだ。できれば何も言わずにそこを退い──
「御影幻刀流、シオン・ミカゲ。押して参る!!」
──こうなることは当然だったわけだ
俺の知覚網をしてなお、追いきれぬほどの速さで吶喊したのはシオン。
まさしく閃光のような速さで接近し、いつの間にか抜き放った銀光を刹那のうちに振り落とす。
それはあたかも断頭台のギロチンのようで、
「ぬあっ!?」
しかしキースの肉にその刃が突き立つことはなかった。
両手に嵌めたガントレット交差することで受け止めた銀光がけたたましい音を上げる。
拳闘士の足が硬い土にのめり込み、周囲もわずかに陥没し、それをかき消すようなシオンの剣気が放たれる。
「シャアッ!!」
「ラアッ!!」
拮抗したのも束の間、再び激突する拳と刀。
2回目の剣撃の音を聞いてローブ男たちもようやく現状を把握したのか、急いでこちらを攻撃する準備に取り掛かる。
抜き放たれるナイフにダガー、ククリナイフ。
視線が俺とヘカテ、お嬢に集中する。
『ランデル』
「念話」のスキルは結局のところ、魔力のパスを繋いでそのパスを辿って直接思念を送り込むスキルだ。
それ故、他の人間に聞こえないように意思疎通を行うには最適のスキルと言える。
例えば今のような状況は、「念話」を行うには最適の状況だ。
シオンが速攻で吶喊したことで一瞬空白が生まれた。
彼らが次に行うのはシオンの無力化だが、相手をしているのは一騎当千たるキース・ファロンテッサ。
下手に横槍を入れれば足手纏いにしかならず、ならば次に彼らするのは他戦力の排除。
つまりは俺たちへの攻撃だ。
こちらに視線が集中し、最初から誰かが隠れているということにまで頭が回らない。
故に、
「グフっ!?」
「ガッ!?」
「アガッ………」
ヒュン、と軽やかな音がして、黒づくめたちの後方で鮮血が舞い踊った。
膝、足首、肩、肘、手首とことごとく関節を切り裂かれている。
血のついた糸ーー否、鋼糸が優雅に宙を舞い、バタバタと人が地に伏せる音が三度。
悲鳴が聞こえたことで視線は後方へと移り、視線がこちらから外れる。
『そうら!大盤振る舞いだ!『歩み阻む泥濘の湖沼』!!『蝕み侵す蠱毒』!!最後だ!『命妬む亡者の叫声』!!』
黒づくめたちの頭上に放り投げたのはそこそこお高い「冥界の呪泥の残骸」に俺が試行錯誤の調合の末に完成させた特製の蠱毒。
ちなみにこの蠱毒、オーガに与えたら30秒で死にました。
いや、やっばいのできちゃったねえ、とシオンと笑い合ったあと、いっそ「呪術」の触媒にしてみたらいい感じに毒性が強まるんじゃない?という考えのもと、出来上がった「呪術」がこの『蝕み侵す蠱毒』。
効果としては瓶の中に入れた蠱毒を触媒にすることで、その蠱毒の毒性を保ちつつ、それをさらに強化した毒を霧状にして指定範囲に散布するというもの。
吸い込まなければ効果は発揮しないものの、この混乱した戦場ではほぼ不可能に近いだろう。
そして止めの「呪術」が『命妬む亡者の嬌声』。
触媒にはレイスの魔石を使っており、言ってしまえばひたすらに「声」を発生させる「呪術」だ。
しかしもちろんただの声ではなく、恨み辛みがこもった声であり、声自体が呪詛を含んでいるためか、割と精神的に直接クる。
ためしにゴブリンソルジャーたちにやってみたらショック死したのは見物だったなあ。
これらの「呪術」は全て範囲攻撃であり、そうなればシオンやランデルも「呪術」の対象であるのだが、そこは対策をしてある。
「呪術」というのは冥界から引き出した呪詛の負の力を自分の思い通りの方向にねじ曲げる術だ。
『歩み拒む泥濘の湖沼』であれば歩みの阻害だし、『蝕み侵す蠱毒』であれば毒、『命妬む亡者の嬌声』であれば恨み、辛み、怨恨、嫉妬といったものを「声」に込めたものだ。
結局のところ、呪詛の操作術が「呪術」であり、触媒とはその方向を示すもの。
であれば、それを真逆の方向に向かわせることだって可能なはずだ。
妬みは忍耐に、飢えは節制に。
それこそが「呪術」の応用、【裏返】と呼ばれる技術だ。
シオンとランデルにはそれぞれの呪術を反転させ、それを「魔法刻印」に刻んだ呪符を持たせてある。
オリジナルの「呪術」に比べれば効果は薄いものの、彼らの耐性スキル諸々を鑑みれば十分耐えられる範囲だ。
──さあ、どうする?キース・ファロンテッサ、それに黒づくめども
──何もできないのならお嬢の準備が終わってしまうぞ?
ちなみに【裏返】ですが、【裏返】させると効果は結構落ちます。そこら辺、呪術師の腕の見せ所ですが、断じて習って一年ぐらいでモノにできる代物ではありません。主人公の吸収スピードが頭おかしいだけです。




