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魔女の使い魔  作者: 自動機械鮎
第二章 戦火舞い散るは古の神殿
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第三十話 開戦前

SE.RA.PH.のすぐ後に大奥をやるっていう運営がにくい

 王都アトランタは広い。

 前にも話したが、多くの組織の本部を内包するこの都市は人口と比較しても都市面積の方が圧倒的に広く、全て周り切ろうと思ったら月単位で時間がかかる。

 ついでに大通りなどを除外した路地などは道が入り組んでいて、誰が呼んだか「迷宮都市」なんてあだ名さえついている。


 ………そういうのってダンジョンを中心に構えた都市とかにつけられる名前じゃない?


「と、言うわけで王都を散策するぞー!」


『なにが「というわけで」なのかさっぱり分からんのだが。あとうるさい、死ね』


「辛辣すぎないか!?友よ!!」


 隣で朝っぱらから親友(バカ)が煩い。

 こっちは厩舎で心地よく寝ていたと言うのに………。

 まあ、こいつの話を要約すると、依頼まで二週間ほどの空き時間があるのだから、折角だし王都を観光して回ろうということだ。

 お嬢は魔法学院時代、ここに住んでいたのだから土地勘もあろだろうし、案内してもらうにはうってつけの人物だから色々見て回ろうぜ、と言うのがシオンの弁だ。


 が、それには一つ問題がある。


『それをお嬢が了承するか?そこそこ物臭なお嬢が』


「既に了解の言は取り付けてある。代わりに新しい魔法の動く試射台になってくれだとさ」


 ………マジか、コイツ。

 多分、お嬢としては、無茶難題をふっかけて諦めさせようと言う腹だったのだろうが、このバカには無意味だったらしい。


 いっそ清々しいまでの笑みを浮かべて、「アリシアにも結構、優しいところもあるもんだな!」などと宣う剣術バカ。

 死ぬんじゃねえかなあ、とか思わんでもないが、コイツなら普通に生還しそうだからなおのこと腹が立つ。

 キラン、と歯を光らせて浮かべる笑顔が憎たらしい。


『で?どこに案内して貰うんだ?』


「王都には観光名所が沢山あるからなあ。案内して貰う場所は沢山あるともさ」


 


◇◆◇◆◇◆




「で、ここが冒険者ギルドの本部だ。各支部から集められた冒険者や魔物に関する情報がここに一括で管理されている」


 シオン発案の王都ツアーが開催されて、早数時間。

 これまでに王城、魔法学院を始めとして観光地を巡って夕方になった今、冒険者ギルドの本部に着いた。

 

 改めて王都広すぎね。

 各々の玄関先ぐらいしか覗いてないってのにえらい時間のかかりようだ。

 移動の時間がかかりすぎる。

 ホント、誰だよこの都市設計したヤツ………配置はともかくスケール調整ミスってんだろ。


「冒険者ギルドの隣に隣接されているのが魔法協会本部。王都には魔導師が二人もいるし、魔法協会の本部を置くにはいい場所だったのだろう」


「二人?」


「「豪雷」の魔導師にしてこの国の王を務める、ギルバート・アトランタ・ラニア王。そして、「凍土」の魔導師にして王国宮廷魔法師団団長を務めるグレイシア・ローレライ。この二人が王国に在籍している魔導師だ」


 …………ん?「ローレライ」?


『お嬢、そのグレイシアさんって………』


「私の母親だ」


 …………なるほど、ある意味合点が入った。

 お嬢の屋敷がアホみたいにでかいことと言い、イージアのギルマスがローレライの名前を強調していたことと言い、お嬢の実家は所謂名家なんだろうなあ、とは思っていたが………よもや魔導師とは。

 

 以前、お嬢が言っていたが、魔導師とは冒険者で言えばSランク、あるいはそれ以上の、言ってしまえば人外の領域に足を踏み入れた魔法使いのことだ。

 しかも宮廷魔法師団団長ですってよ、奥さん。

 これ社会的地位ヤバいことになってない?

 で、お嬢はそこの息女で、俺はそのお嬢様の使い魔、と………。

 今更ながらに社会的地位が(カンストして的な意味で)ヤバイ人に仕えてたってことが明らかになったよ。


 しかし、魔導師について語っていたときと言い、母親の名前を出した時といい、結構苦々しい表情になっていたのは何故だろうか?


 ………いや、深くは考えるまい。

 俺のおおよその予想が正しければ、これは結構デリケートな問題だろうし、ズカズカと入っていい問題ではないのだろう。

 決してお嬢の逆鱗に触れるのとか絶対嫌だからとか、そう言う理由ではないことをご理解頂きたい。


「アリシア様?アリシア・ローレライ様ではありませんか?」


「ん?お前は……アインスか?」


「はい、ご無沙汰しております。アリシア様」


 ふと、通りがかった魔法使いと思しき女性から声がかかった。

 一見すればただの人間なのだが、何か違和感があるような…………気のせいか?


「ええと………そちらは?」


「ああ、紹介しておこうか。大きな蛇が私の使い魔のルキア。で、こっちが私の従者のヘカテ。で、おまえは…………おい、シオン。おまえって私のなに?」


『奴隷とか?』


「よし、ルキア。お前が俺をどう思ってるのかよくわかった。今から冒険者ギルドの運動場に行くぞ。斬り刻んでやる」


『お?上等だ、呪い殺してやるよ』


 まあ、いつものである。


「ともかく、ルキアの友人のようなものか?煽り合いが過ぎるが」


「は、はあ………と、こちらの紹介がまだでしたね。アインスと申します。「錬鉄の魔女」ガーベラ・アルキーミア様の従者にしてホムンクルスです。以後、お見知り置きを」


 …………なるほど、道理で違和感があったわけだ。

 しかし、


『ホムンクルス?』


「簡単にいってしまえば人造人間だ。製法は私も知らん。アルキーミア家が秘匿しているからな」


 魔女というからにはお嬢と同じような家系なのだろう。

 お嬢が2人…………天国か地獄か、どっちだろう。


「ガーベラのやつは?」


「今、論文の提出の手続きをなさっています。もう暫くすれば出てくると思いますが………」


「いや、いい。顔を合わせればどうせいつものだ。面倒臭くてやってられん」


「さようですか」


 思いっきり「面倒臭い」と顔に出しながら言うお嬢にアインスが苦笑いする。

 お嬢意外の「魔女」はちょっと気になるが………まあ、そのうち会うこともあるだろう。


「では、な」


「はい、アリシア様と、皆様もお元気で」


『次会ったらご主人様を紹介してくれ』


「いい女であることを期待しておこう」


「失礼致します」


 各々がアインスに別れの挨拶を済ませ、魔法協会を後にする。

 あとシオン、別れの挨拶にそれはねえだろう。




◇◆◇◆◇◆




 カトリス聖遺跡の玄関口として知られる街、エルキア。

 そのスラム街にある集団が集まっていた。

 それぞれが一眼で暗部のものであろうという黒装束をしており、彼らはあばら屋の地下にある広めの室内にいた。


「戻ったか」


 その中央、黒装束である一党とは違い、見る人の殆どが騎士というであろう鎧を纏った人物が新たにやってきた2人の黒装束を視界に入れて言う。

 

「報告します。敵戦力を調査中、神聖騎士団四番隊隊長、ヨハンナ・フローレンスおよび四番隊の襲撃を受け、調査員一名の死亡を確認しました」


「チッ、あの野郎………訓練を受けた暗殺者を育てるのにどれだけの手間暇がかかると思っている。まあいい、それで肝心の調査は?」


「はっ、護衛に着く冒険者は「暗闇の暗殺者」ランデル・セリディア、「疾風」フレデリカ・ニーベル、「黒鎧の守護者」の四名、「蒼天の魔女」アリシア・ローレライにそのお供らしき人物が二名と使い魔が一体。神聖騎士団からは三番隊と五番隊が出るようです」


「そうか、ご苦労」


「はっ」


 黒装束下がらせると騎士は思考にふける。


(注意すべき冒険者は「暗闇の暗殺者」「疾風」「蒼天の魔女」の三人。こいつらを先に潰すとして………聖遺跡では神聖騎士団が直接聖女のそばに着くだろうからまとめて()()()()問題はないが………アーネストがどう出るかが留意すべき点か。他の有象無象はとるにたらん)


 数秒のうちに思考をまとめると、


「キース・ファロンテッサ、貴様らが「暗闇の暗殺者」「疾風」「蒼天の魔女」のどれか最低で一名を受け持て。他は俺がやる」


 この中で彼以外に黒装束をしていない人物ーーキース・ファロンテッサとそのパーティーメンバーの二人に指示する。


「………了解した。だがその前に一つ。お前は皇帝陛下の意思を知っているのか?ブレイズ」


「知らんし、知る必要もない」


 騎士ーーブレイズと呼ばれた男は興味なさげにそう答える。


「俺は一振りの剣。担い手を選ぶことはあっても、その思考を探ることはない」


「………そうかよ」


 吐き捨てるようにキースは言う。

 そもそも、彼自身はこの任務には乗り気ではなかった。

 宰相に半ば押しつけられた依頼であるために、本来は自分一人でやりたかったのだが──結果はパーティーメンバーを巻き込むことになってしまっている。

 彼らが嫌々ついてきているのではなく、キースを慕ってきてくれると言うのがせめてもの救いか。


 せめて皇帝の意図がわかればと思って聞いたのだがーー結果はご覧の有り様である。


「お前ら、俺らの役目はおとりってだけなんだから無理して戦うなよ?」


 それはそれとして、弟分、妹分のような彼らを心配してしまう。

 ブレイズには聞こえないようにパーティーメンバーであるヒューゴ・エヴァンズとエマ・ガルシアに注意を促す。


「大丈夫ですよキースさん。いざとなったらヒューゴをおとりにして逃げますから」


「ちょっ、酷くないか!?エマ!」


「ふふっ、冗談ですよ?」


「本当だよな!?」


 いつも通りな二人を見て、これからの任務で鬱屈していたキースの気持ちが少し晴れる。

 冒険者のランクはキースには劣るBランクであるから、今回の任務には少し心許ないところはあるものの、その分自分が働けばいいか、と決意を新たにした。

びっくりするぐらい話が進まない………

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