第二十一話 狂気の輩 前
何の気なしにアクセス数見てみたら総アクセス数が1万超えててびっくりしました………読者の皆さん、ありがとうございます!
お礼を言っておいて何なんですが、今回のお話は相当グロい、つーかエゲツないです。スプラッタとかGの画像を見ながら平気で飯食えるような同士以外は見ないことをお勧めします。
それでも見たいという方は自己責任でどうぞ。
あ、次回もおんなじような話が続きます。一応、これからの展開は今回と次回の話は見ないでも分かるようにはするつもりですので、ダメな方はご遠慮ください。
それはルキア達がコルテカの迷宮から帰ってきてから十数日後のこと。
ルキアは家事をこなした後、アリシアに新しく実験場の地下に作って貰った研究室で呪術の実験をしている。
シオンは適当に遊んでくるとのことで、今は街中をぶらついていることだろう。
そしてアリシアとヘカテはというと、
「アリシア様、私に「呪術」を教えては頂けませんでしょうか」
実験場にいた。
アリシアの実験場は二階建てで、一階が魔法を撃つための試射場でかなり拓けている。
偶にルキアやヘカテが魔法の試射にくる場所だ。
二階は半分が吹き抜けになっており、分厚い壁を挟んで書斎がある。
魔法の参考書や論文があっちこっちに散乱しており、週に一度ルキアの掃除が入る。
ちなみに今週は明日に掃除が入るため、今は汚部屋と言って差し支えない状態だ。
そんな汚部屋にヘカテとアリシアが向かい合ってソファに座っていた。
「「呪術」、ね。一応何故?と聞いておこうか」
「勿論、ご主人様のお役に立つためです。私が「呪術」を習得すればもっとご主人様の御力にーー」
「却下だ」
ヘカテが言い終える前にアリシアがバッサリと切って捨てる。
「…………この理由ではやはり駄目でしょうか」
ヘカテとしてはこの答えは予測していたものだった。
何しろアリシアは冒険者をやっているものの、本業は研究者だ。
自分の研究分野にそんな私情で入られたくはないだろう。
そう思っていたのだが、
「いや、理由が駄目なわけではない」
つづく言葉はいささか予想外だった。
「では……何故?」
「アイツの手伝いをすると言ったな?」
「はい。そのために「呪術」を学びたいのです」
「なら、お前の才能では無理だ」
動機云々ではなくそれ以前の問題だと、アリシアは言う。
それはある意味で、動機が駄目と言われるよりもヘカテには精神的に堪えた。
単にアリシアが気に食わないだけならば別の師匠を探すなど、他にもやりようはあった。
だが違う。
根本的な問題として才能が不足しているのではどうしようも無い。
「私には……「呪術」の才能はありませんか……?」
絞り出すような声で問いかける。
ルキアの役に立つことはヘカテにとって生きると言う行為そのものと言ってもいい。
だからこそ、ルキアに「足手纏い」と言われたのはヘカテには相当堪えたのだ。
「ああ……まあ、そうは言ってもヘカテの才能が劣っているわけではない。努力すればそれなりに優秀な呪術使いにはなれるだろう」
「……?では何故?」
ふう、と一息吐いて一種の諦観を滲ませたような顔で言う。
「ルキアは魔法使いとしての才能は殆どない。確かに詠唱ができないと言う点で既に魔法使いとしては落第だが、それ以上に原始魔法を除く人類が使うような魔法に対しての才能が欠如している」
「それは……魔物なのですから仕方ないのでは?」
「いや、魔物であれ人間であれ魔法への適性は持っているものだ。そもそも人間が使う魔法は原始魔法を元として作られたと言う。魔物が使えないと言う理由にはならんさ」
「……では、私にも才能はあるのですか?」
「ああ、無論だ。というかルキアと比べれば宝庫のようなものだ。基本八属性の魔法にも適性があるし、その他にもちょくちょく魔法の適性はある。勿論呪術にもな」
それを聞いておかしい、とヘカテは思う。
ルキアには魔法の才能はなく、ヘカテの方が魔法使いとしての才能は優っている。
その疑問を察したのか、アリシアが言葉を続ける。
「確かにルキアには魔法使いとしての才能は無い。というか皆無だ。………たった一つの魔法を除いてな」
それを聞いて、ヘカテにはピンときた。
「それが呪術……というわけですか?」
「その通りだ。アイツが適性を持っている魔法は二つ。さらに細分化すれば三つか。「錬金術」、「呪術」、「死霊魔法」だ。まあ、「死霊魔法」は「錬金術」と「呪術」の合成魔法を体系化したものだから実質二つだな」
一息ついて、机の上に置いてあったカップの中に注がれた紅茶を飲んで話を続ける。
「繰り返すようだがアイツに魔法の適性はない。それこそ塵ほどもな。「錬金術」でさえ、削りカスのような才能しかない。習得できるのは初歩の初歩までだ。だが、「呪術」に限って言えばアイツは化け物だ」
「化け物………ですか?」
「ああ、まるで「他の魔法の適性全部「呪術」にぶっ込みました」とでも言わんばかりだ。天才、では過小表現に過ぎる。鬼才、でまだ足りない。異常や化け物と言った表現でやっと足りる。そんな才能の持ち主だよ、アイツは」
呆れたように、事実呆れたのだろう。
乾いた笑みをこぼしてそう言った。
「元より「呪術」というのは適性者の少ない魔法系スキルだ。「呪術」の才能は大きく二つに分けられる。ひとつ目は冥界から呪詛を引き出す才能。もう一つが呪詛を変質させる才能だ。ほとんどの者がこの一つ目の才能が無いために「呪術」が使えない。そもそもこれは別の世界から特定のものを持ってくるというものだ。異能と言い換えてもいいだろう」
「では、二つ目の才能はどのようなものなのですか?」
「まあ、これも言った通りだ。呪詛とは死者の怨念などが凝縮されたものだ。それを変質させるという所業は並大抵のものではない。そしてこの二つの才能を両方持っている者など本当に稀だ」
「それをご主人様は………」
「どちらも私が知りうる限り、比肩する者が居ないほどの最高水準で持っている。私も「呪術」は使えるから「呪術」の行使がどれぐらい難しいのかは分かるが……ハッキリ言ってアイツは異常だ。アイツ、私の呪術を見ただけで理解して、更には再現したんだぞ?「呪術」は他の魔法と違って使用者によって差があるということを認識してはいたが……アレは別格だ」
「それは……具体的にはどれぐらいのことなのですか?」
「……何も教えて貰っていないのに四則演算できるぐらいか?」
「…………化け物ですね」
「化け物だよなあ」
しみじみと二人して呟く。
ルキアにしてみればヘカテはともかくアリシアにだけは言われたくはないのではないだろうか、という疑問を呈する者がいないのは幸か不幸か。
「いずれにせよ、お前が「呪術」を習得しても対して役には立たん。というか私も一年もすれば抜かれるだろうからな。学ぶなら他の魔法にしておけ」
「それでしたらーー」
その日は朝方までアリシアの講義が続いたとかなんとか。
◇◆◇◆◇◆
迷宮探索から4カ月程たち、季節も進んですっかり夏になった。
ここイージアは日本のように蒸し暑いわけではなく、かと言って極端に気温が低いわけでもなく、何というか普通だ。
一応四季のようなものはあるのだが、冬を除いてそれほど気温差があるわけではない。
夏場の体感温度としては最高温度は30度弱ぐらいだろうか。
その分冬は寒いらしいが。
「さて、と」
目の前に広がった惨状……もとい実験場を見やる。
お嬢に作って貰った地下の石製の研究室は大きく分けて二つの部屋に分かれている。
一つ目は書斎。
ここはお嬢がもう使わなくなった参考書や文献、論文などが壁際に一面並んである本棚に敷き詰められている。
お嬢曰く、「そろそろ実験場の本棚がヤバイ」とのこと。
……お嬢、少しは自分で整理整頓してくれ。
後は種族関連かこっちの石で出来た部屋の方が寝心地がいいのでこっちで寝るためのスペースも確保している。
結構染まってきてるなあ。
で、もう一つの部屋が作業場。
書斎と比べてこっちの方がかなり大きく割合は1:3ぐらい。
で、ここで何をやっているかというと……
「シュルルルゥウ」
「ゲコっ」
「ガアアア」
「ヂュヂュッ」
他にもカサカサだのギィギィだの色んな生き物の音が檻や木箱の中聞こえてくる。
そう、ここは呪術の実験場兼養育場だ。
まあ、その養育も殆ど呪術関連の使い道なので実質呪術の研究場と言っても問題はないが。
魔法協会では色々な魔物が生きた状態で売られている。
これを誰が買うのかと言えば、魔物の研究者、薬屋、錬金術師などなど多くの人が魔物を生きた状態で欲しいという人がいる。
解剖する人、毒を弱めて薬にする人、とれた新鮮な素材を材料にするなど色々あり、俺は後ろ二つに該当するだろう。
お嬢が魔法協会に顔をだしにいくというのでついて行き、そこで買ったのがこの100を超える魔物たち。
どれもE、Fランクの低レベルの魔物で最高でもDランクだ。
蛇にカエルにカラスにネズミ、果てにはムカデをはじめとする様々な魔物達。
一見ばらつきの内容にも見えるが、こいつらにはある共通した特徴がある。
それは毒を持っているということだ。
最初に「呪術」を使う上で何がいいか?と考えたときに毒関連ならやり易いんじゃない?と思ったわけだ。
加えて、俺って毒使いの割には毒の種類が少ないことにも気がついた。
ぶっちゃけて言えば、俺が使える毒の種類って二つしかないのだ。
一つ目は「毒魔法」で生み出される神経毒。
そもそも神経毒とはなんぞや?というと、運動神経や感覚神経を始めとする生物の神経細胞に特異的に作用する毒のことだ。
毒の周りが極めて早く、症状としては順番に、「痺れの発生→運動機能低下→知覚機能麻痺→血圧低下、呼吸困難→意識消失、呼吸停止→死亡」といようなプロセスだ。
ちなみにこれはシオンとちょくちょく行っているアルフの森での狩りで感知系スキルを総動員して観察した結果だ。
いや、感知系スキルって便利ね。
めっちゃ集中すれば心臓の脈拍数まで測れるんだから。
これ対人戦に使えるんじゃない?うわ、クッソ楽しそう。
閑話休題
で、二つ目の毒が「硫毒生成」で生み出される硫毒という毒だ。
まあ、早い話が二酸化硫黄であり、こっちは呼吸器にダイレクトで作用する毒だ。
これが関連する歴史上の有名な事件といえば、足尾銅山鉱毒事件や四日市喘息だろうか。
他にもクリミア戦争でイギリス軍が化学兵器として使ったのではないかと言われてもいるが……まあ、それは今はどうでもいい。
で、コレは二酸化硫黄そのものではないと思う。
というのも本物の二酸化硫黄そのものには致死性はあまりない。
気管支炎や喘息を起こしたり、場合によっては肺がんになったりもするが、それはあくまで何日も身体を蝕んで、ようやく症状が見られるような所謂疫病の類だ。
しかし、俺が生成した硫毒は密度にもよるが、森林中で吸い込ませたゴブリンは2分で死亡。
液体化させた硫毒を飲ませた場合に限っては死亡まで1分どころか30秒を切った。
本物の二酸化硫黄やそれに類する硫黄酸化物にそれほどの殺傷性と即効性はない。
と、なればこの硫毒は二酸化硫黄を強化したもの、あるいは二酸化硫黄の性質を再現する毒と考えるのが自然だろう。
……今更ファンタジーで何を言っているんだと言われそうな気がしないでもないが、考察は大事だ。
で、俺が持つ毒はこの二つのみ。
それだと毒使いとしてはなんともいえない感じだし、何より俺は結構マッドな実験とかイケるクチだ。
だったらやってみようと思った俺は悪くないと思います。
で、何をするのかしらん?と言われれば、とりあえず思いついたことをやった。
まず初めに各種毒を持った魔物を5体ずつ。
メスを3体にオスを2体だ。
で、メスとオスをそれぞれ1組にして2つの組みを作る。
なお、余ったメスは後で使うので今は放置。
片方の組みを檻にいれて、普通に繁殖させる。
で、本命はもう片方だ。
先程の組みはどっちかと言うとこれからの実験材料のために繁殖させるだけだ。
もう片方の組みを魔法協会で買って手に入れた高さ2mはある、強度が強化された樽に6グループに分けて入れる。
このうちの4つは爬虫類and哺乳類と虫に分けて入れてある。
この分け方にしたのは、単に虫の魔物は種類が多かったからだ。
で、もう二つのグループはごちゃ混ぜ。
こっちは種族を混ぜて入れたときにナ二ができるのか、という期待を込めてだ。
さて、ここまで言えばもう何を作っているかは分かるだろう?
そう、蠱毒だ。
様々な毒を持った生き物を密閉空間内に入れて餌をやらずに共食いさせる、地球でも有名な儀式だ。
この世界でもソレは呪術の儀式として伝えられており、お嬢がくれた呪術関連の文献に載っていたものだ。
で、俺はここにさらなる一工夫を加える。
現在、樽は同じ種類分けのものが2つずつ存在している。
内容を言えば、爬虫類and哺乳類を一緒に入れた樽が二つ、虫のみを入れた樽が二つ、そして上記二つをごちゃ混ぜにした樽が二つの合計六つの樽がある。
で、これら六つの樽の中から三つの中身が別々の樽に呪詛を少量、しかし長時間浴びせるのだ。
おかげで部屋の中が呪詛で酷いことになっている。
一応、教会で買っておいた聖水と浄化のお香を上に続く階段に配置してあるので大丈夫だろう。
………多分、きっと、メイビー。
で、今日が収穫日な訳だ。
中間経過を見るために感知系のスキルで覗いてみたのだが、中々酷かった。
特に虫。
最初からムカデだのゲジゲジだの黒いあくまだので中々な光景だったのに、ソレらが体液を浴びてテカテカ光っているのだ。
覚悟していなければ中々キツい光景だった。
あ、その日の夕食は美味しくいただきました。
さて、開けますかあ!
『さーて、ナニが出来上がってるかなあ?』
まずは爬虫類and哺乳類の樽だ。
ざっくり、と万里の堅鎖を突き刺し二つ、蓋を開ける。
すると──




