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魔女の使い魔  作者: 自動機械鮎
第二章 戦火舞い散るは古の神殿
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第十九話 いや、本気でトレインとかやめてね?

喧騒の掟の曲良すぎてツライ……「Speed of Star」って曲なんでぜひ皆さん聞いてください

 あれから少し微妙な雰囲気になりつつも俺とシオンが会話をしてお嬢がそれに乗っかる形で会話をし、所々でヘカテと少しずつではあるが話せるようになった。

 と言ってもまだぎこちなさは抜けないが。

 

(どうしたもんかね……)


 まあ完全に自業自得ではあるんだが。

 そんなことを考えながら階段を下って行く。

 

『第二十一階層からは森林だったか?』


「ああ、私も来たことはないから一階層ごとにどこが異なっているかまでは知らないが第二十一階層から第三十階層までは森林のはずだ。出てくる魔物はこれまで通り。ただ当然ながら危険度も格段に上がっているから注意しろ」


「はい」


『はいよ』


 で、下りきった階段の先に重厚そうな扉を開いて件の第二十一階層に出たわけなんだが……


『は?』


「あ?」


「ええ……」


「……」


 上から順に俺、シオン、お嬢、ヘカテである。


 俺とシオンは揃って呆けた声を上げて口をOの字に開けたまま()()を呆然と見つめ、お嬢はちょっと引いたようで顔を痙攣らせながらも隠しきれない好奇心が笑みとなって顔に出ている。

 ヘカテに至ってはさっきまでの気まずさはどこえやら、声を上げることもなく()()が燦然と輝く天上を見上げている。


 いや、いやいやいやいや!

 おかしい、絶対おかしいこれは!

 なんで、


『なんで()()()()()()()()()()()んだよ……』


 この葉の上にて自分こそが天上の支配者であるとばかりに我が物顔で輝くのは、見間違うことなく太陽だ。

 いや、おかしいだろ。


 ダンジョンは階層が上がるごとに地下へと潜って行く構造だ。

 登り坂なんて一度としてなかったし、逆走なんてのもしてない。

 ありえるかもしれないとすれば転移の類だが、魔法か魔力を行使した罠であれば俺かヘカテ、お嬢の誰かが気づくはずだ。

 第二階層から第十階層までも平原という似たような場所だったが、あそこだって光源らしきものが無かったために「暗視」のスキルが役立ったんだ。

 

「……信じがたいですがダンジョン内で間違いないかと。魔力の質もこれまでとは少し異なりますがダンジョンのモノと大体合致しています」


『……そうっぽいな』


 魔力というものには大気中にあるものと人体に存在しているモノとでは質が異なる。

 そしてそれは内部が半ば異界化していると言われているダンジョンであっても例外ではない。

 加えて言えば俺とヘカテにとってこのダンジョンは言わば生まれ故郷だ。

 もっとも慣れ親しんだ場所の魔力を見間違うほど鈍感になった覚えはない。


「………………いや、太陽ではない、か」


 あり得ざる光景に呆然としていると、お嬢がそう呟いた。


「太陽ではない、と言うのは?」


「言ってしまえばアレは幻影だ。よくできた、な」


『いや、アレが幻影ってのはいささか無理があるだろう。陽光によって影もできてるし、日向は暖かいぞ?』


「だからよくできた、と言ったろう。光、熱、大きさ。そう言ったものを尽く模倣した魔法だ」


 ……………マジですか。


「なぜ、ダンジョンだと?」


「巧妙に隠されているが魔方陣が隠蔽された跡がある。流石に隠蔽方法や隠蔽される前がどんなものかまでは分からんが」


『お嬢、アレ魔法で再現できる?』


「…………大枠の劣化版ならできなくもない。だが流石に精巧さでは劣るし何より魔法陣の構築に時間がかかりすぎる。展開、維持に必要な魔力が多すぎてとても「再現」というレベルでは無いな」


 そっかあ、お嬢でも無理かあ。

 お嬢の魔法使いとしてのランクは世界を見渡しても相当上位にはいる。

 これはシオンや冒険者ギルドの職員、魔法協会の職員から聞いた情報だ。


 若くして魔法師に至った魔法の技量は伊達ではなく、魔法協会の職員さん曰く、才能のある人間が一生を費やして到達できるかどうかという域だそうだ。

 鬼才という言葉がふさわしいお嬢をして不可能と言わしめる魔法を、当たり前のように常時展開し続けるダンジョンという存在を、この日俺は初めて正しく認識した。




◇◆◇◆◇◆




 んなこと言ったってダンジョン探索はすると言うもので。

 第二十一階層まで攻略してから帰ろうという予定が俺が寝てる間に決まっていたのは少しばかり釈然としないが、お嬢がそう決めたのならば付き従うのが臣下の務め。

 それでも報・連・相はきちんとして欲しかったよ、俺は。


『ヘカテ。折角の森林という隠れる場所がある階層だ。隠密の練習と索敵がてら気配や姿を隠して先行しておけ』


「は、はい」


 やはり未だにあの言葉が効いているようで、普通に接しようとはしているのだろうがどこかぎこちない。

 持ち前の俊敏さでヘカテが素早く気配を消して前に進む。

 それを見送ったシオンがこちらによってきた。


「まあ随分と悪役を買って出たなあ、ルキア」


『………まあ、な。アイツ自身、改めて自分を見つめ直す機会も必要だったろうさ。そういう意味では今回のは丁度良かったとも言える』


「苦虫噛み潰したような顔で言うことじゃねえだろうに」


 蛇の表情って見てわかるもんかね?

 まあコイツ、肉眼でことを把握しているのかどうかは怪しいところではあるが。

 ん、っと。

 「魔力感知」に反応があった。

 これは……オーガか?


『そら、敵が来るぞ』


「はいよ、っと」


 シャラン、とシオンが苦笑しながら背中に背負った「銀光」を抜く。

 ま、ちゃっちゃと終わらせますかね。




◇◆◇◆◇◆




『あっ!クッソ、お嬢!1匹逃した!気をつけーーって、危ねえ!!』


「チィッ!『フレイムランス』!キリがないぞ!」


「ふはははは!!もっと!もっとだ!!」


「………しっ!」


 黒銀の蛇が叫びながら尾を振り回し、魔法使いが真紅の炎槍を撃ち出し、終始嬌声を上げている盲目の剣士が両手に持った白銀の太刀が血飛沫をあげたかと思えばメイド服の美女が小太刀を振るう。


 そんな総力戦になりつつも推されている状況がこのコルテカの迷宮第二十一階層で起こっている。

 2人と2匹の周りを見ればうじゃうじゃと魔物達が集まっている。


 あー、クッソ!これが森林かよ!

 森林という場所はアルフの森結構慣れたと思ったんだが見込みが甘かったかも知れないーーいや、確実に甘かった!

 誰だよちゃっちゃと終わらせるとかほざいた阿呆は!

 ………もしかしなくとも俺でしたわ。


 ゴブリンやコボルト、ミュルミドンと言った木にも隠れられるような小型のーー亜人系の魔物の中ではーー魔物が息を潜めて襲いかかり、オーガやオーク、ミノスと言った大型の魔物が後ろからやってくる。

 草木にはトレントやアルラウネが隠れ潜み、油断したところで魔法やら根っこやらで不意を打ってくる。


 夜になれば夜間ではステータスが上がるスキルを持ったル・ガルーが闇夜から飛び出してその鋭い爪と牙で襲いかかってくる。

 加えて厄介なのがこの迷宮、ご丁寧に日没まで再現して月も出るのだ。

 視界は暗闇に閉ざされ月下においてはル・ガルーのステータスはさらに上がる。

 今日ほどこのメンツの中で1人も夜目が効かないやつが居なかったことを幸いに思ったことはない。


 つーか俺とヘカテは「暗視」のスキルを持ってるからともかく、お嬢とシオンはなんなの?

 「暗視」って魔物専用のスキルだよね?

 もう俺は最近、この2人が人間ということを忘れつつあるよ。

 しかし…………


(はあ─────面倒くさい、本当に面倒くさい!)


 倒しても、倒しても途切れることなくやってくる魔物共の群れ。

 魔物と戦っている俺たちを見た魔物達が追加で襲いかかり、それを見た魔物達が襲いかかり、それを見た魔物達が──やってられるかあ!!

 2度3度ならともかくこれでやってきた団体さんの回数は2桁は優に超えている。


 どっかの戦狂いのバカは置いておくとしてもヘカテは疲れが見え始めているしお嬢に至っては疲れこそしていないものの、苛立っているのが表情から分かる。

 で、あれば──


『ヘカテ!下がれ!!』


 元々下がっていたお嬢はそのまま、前線で切った張ったをしていたヘカテが俺の声に反応して疾風もかくやというスピードでこちらに向かってくる。

 シオンはーーまあいいでしょ、多分死なないし。

 ヤバかったら離れるんだろうが結構距離はあるし。

 というか前衛が突出しすぎているというのは如何なものかな?まあ、いいや。


『っしゃあらあ!!大盤振る舞いだ!!『歩み阻む泥濘の湖沼』!『ポイズンミスト』!!』


 「並列詠唱」を起動して『歩み阻む泥濘の湖沼』と『ポイズンミスト』を俺を中心とした円を描くようにしてどっちも五重詠唱で展開。

 それに被さるように「硫毒生成」を発動する。


 この「硫毒生成」なかなか便利なスキルで、まず俺自身はこの毒を吸っても体に害はないようで……というよりは「毒耐性」でレジストされている。

 「硫毒生成」のスキルレベルが上がったら気をつける必要があるが、使う度に「毒耐性」のスキルレベルが上がっていくだろうから問題はないのではないかと思う。


 次に硫毒の発生場所だが、これは俺の牙を通っている毒腺から分泌される。

 で、ここからが重要なんだが、生成した硫毒は結構操作できるのだ。

 流石に「毒魔法」で生み出したような毒の槍などよりは操作範囲は絞られるがそれでも気体を操作するというのであれば十分すぎる。


 で、これを『ポイズンミスト』範囲と被るように噴出させた訳だ。

 するとどうなるか?

 見ての通りだ。


「ブ……ゴオォ……」


「グ……ギャ」


 『歩み阻む泥濘の湖沼』で生み出された沼と亡者の萎びた腕が脚を掴み、『ポイズンミスト』と「硫毒生成」で作り出された毒が身体を蝕む。

 加えて『歩み阻む泥濘の湖沼』によって湧き出てくる魔手は触れた者の生命力や魔力を奪っていくため、例え「毒耐性」を持っているラミアのような魔物であってもどんどん毒が進行していく。


 勿論、この攻撃だけで全ての敵を倒し切れるわけではない。

 魔法の範囲内にいた魔物は漆黒の沼に埋まっていくが、魔方陣で描いた円の外にいた魔物達は違う。


 だがこちら側には毒の霧が壁となって入ってくることはできない。

 目の前にいる変わり果てた同胞がこちらに踏む込めばどうなるかを明確に示しているからだ。

 しかし共闘した相手を見捨てるわけにもいかず、慌てふためいているところにシオン(死神)の刃が迫っていることに気づくが時はすでに遅く、首が跳ね飛び鮮血が噴水の如く噴き上がるのは一種の見物だ。


 惜しくらむは2種類の毒霧ではっきりとは見えないことか。

 一方、魔法陣で描いた円の内側にいた魔物達は背後で起こった惨事に振り返り、そして目を剥く。


 しかしそんな明確な隙を逃す馬鹿はこの中には存在しない。

 ヘカテの小太刀が頸を刎ね、俺とお嬢の魔法が乱舞する。

 そうして機械的に残っていた魔物達を掃討していくこと数分後。

 「呪術」で生み出された沼は消え去り、後に残ったのは血の海だった。


『お疲れ様、お嬢、ヘカテ』


「ああ、お疲れ様」


「お疲れ様でございました」


「おい、ルキア。俺にお疲れ様は無いのかよ」


 銀光を真っ赤に染め上げたシオンが太刀を担いでこちらに歩いてくる。


『お前メッチャ楽しんでただろうが。終始嬌声上げてたやつに「お疲れ様」なんて口が裂けても言わんぞ』


「確かに楽しんでたことは否定はせんが……ちょっとぐらい労いの言葉があってもいいだろうが。大体お前、なんでヘカテには下がれって言っておいて俺には言わなかったんだよ」


『お前アレぐらいじゃあ死なないだろうが……。大体、お前は前に出過ぎなんだよ。声掛けても戻ってくるまでに時間が掛かるだろうが』


 何も知らない人間が見れば剣呑な雰囲気に見えるのかもしれないが、一応コレはじゃれあいである。


「おい、少し早いけど昼食にするぞ。私は結界張ってくるから準備して待っていろ」


「『イエス、マム』」


「誰がマムだ」


 ほら息ピッタリ。

 でもお嬢?暴力はよく無いと思うよ?

 俺はともかくシオンまで頭抱えて悶えちゃってるじゃん。

 その杖、鋼鉄製とか言わないよね?

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