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魔女の使い魔  作者: 自動機械鮎
第二章 戦火舞い散るは古の神殿
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第十六話 牛頭の守護者 其の四

興が乗って魔法の説明詰め込みすぎた……

「設定とかどうでもいいからさっさと戦闘描写見せろカス」という方は「閑話休題」のところまで飛ばしてもらっても構いません

読まなくてもこの先の展開に支障があるわけじゃ無いですし……

でもできたら読んで?

「グッ、ゴホッ、ゲホッ」


(あ"ぁ?)

 

 思わず何か起きたのか分からずにガラの悪い声を出そうになって、咳込んだ。

 『ポイズンヴェール』を頭部と心臓部に集中して展開していたとは言え、それだけで守り切れるはずもなく、多少なりとも炎が肺にまで回っていたから息が喉がつっかえて咳き込んだのだ。


 それでも何とか無理矢理回した思考で状況を把握する。

 満身創痍の身体で背後に回ったのと同時に周囲の炎が消え去った。

 

『……『ポイズンショット』』


 掠れた声で魔法を唱える。

 「魔法調整」でほとんど攻撃力のないぐらいに弱めた毒弾を口の中に放り込む。

 

「ごふっ、がはっ、……ごぽっ」


 そんなことをすれば当然ダメージを食らうというもので、弱めた毒が口の中にに満たされる。

 「毒耐性」を持っているとは言え少なくない毒が体に回る。


 だが、これで喉は潤った。

 これから唱える魔法名は万が一にも言い間違えることはできない。

 実際は口から言葉を発しているわけではないので完全にプラシーボ以外の効果はないのだが、プラシーボだろうが何だろうが少しでもプラスに働くのならば実行すべきだと、物理的に茹だった頭で考える。


「オオォ……」


 ミノスの斧が陽炎を全て溜め込んだのを確認する。

 ……ホント、アイツが一番無茶してんじゃねえのか?


 身を以て食らってわかったがあの炎、ただの炎じゃない。

 というかそもそも炎じゃない。

 闘気と魔力を混ぜてそれを変質させたモノだ。

 変質したことによって限りなく炎に近い性質を持っているソレは魔力と闘気を焼き尽くす。

 ただ、この世界において殆どの物体は魔力を含んでいるので実質、すべてのものを焼き尽くす炎となる訳だ。

 それを常時くらってるんだから無茶しすぎである。


 全く、魔力焼きとはやってくれる……。

 お陰で残っている魔力は3分の1程度。

 まあ、アレを使うのには十分か。

 そんなことを考えつつソレを虚空庫から取り出す。


 黒い泥が中に入った瓶の名前は「冥界の呪泥の残骸」。

 かつて3姉妹の女神の末妹アムネシアが現世に降臨した際に神官に授けたとされる「冥界の呪泥」を模した泥。


(さて、虎の子の出番といきますか)


 ひゅっ、と万里の堅鎖で「冥界の呪泥の残骸」がミノス頭上にくるように投げる。

 それと同時に魔法を撃つために集中力を高める。

 「心眼」まで使って「冥界の呪泥の残骸」がミノスの頭上にくるタイミングを見計らって魔法を発動させる。


『『歩み忌む紫黒の魔手』!』


 ミノスの足下に黒い沼が展開され、それを穿つように黒い穴が開き、さらにそこから悍しい空気を漂わせる紫黒の腕が這い出てくる。

 俺がただレベルだけ上げて魔法やアーツを覚えるのを馬鹿みたいに待っていたと?

 バカ言え、俺だって他に使えるようなものがないか調べるぐらいするさ。


 しかし武器はそもそも持てないし、武器らしい武器と言えば万里の堅鎖ぐらいだが鎖関係のスキルはどういうわけか、いつまで経っても生えない。

 では魔法はどうかと言えば普通の、人間の魔法使いが使うような魔法は俺には使えない。


 要因としては言葉を声として発せないからだ。

 詠唱とは声で魔法陣を描く作業らしく、声を媒介とすることによって成立するため「念話」ではダメ、というのが通説だそうだがよく分からなかった。

 他にも説はあるそうだが、取り敢えず詠唱しなければ成り立たない魔法は使えないということがわかれば十分だ。

 では詠唱を必要としない魔法は存在するのか。


 答えは「ある」だ。

 お嬢曰く、意見は分かれるが、一般的に魔法は大きく分けて4種類に分類されるという。


 まず1つ目は人間が主に使う魔法で汎用魔法と呼ばれる魔法だ。

 基本八属性である「火属性魔法」「水属性魔法」「風属性魔法」「地属性魔法」「氷属性魔法」「雷属性魔法」「光属性魔法」「影属性魔法」を筆頭として詠唱によって発動する魔法。


 2つ目は皆さんご存知、原始魔法。

 魔物の種族に由来し魔物の特権とも象徴ともいえる魔法だ。

 魔方陣が展開されてからの魔法の起動までの時間が短く、詠唱を必要としないメリットがある反面、魔力消費が多いという欠点をもつ。


 3つ目は「錬金術」や「刻印術」、「死霊魔法」などのモノ作りに関係する生産魔法。

 これは詠唱が必要かどうかはその魔法によって変わってくる。

 今挙げた中では「錬金術」と「刻印術」は詠唱が必要なく、「死霊魔法」は詠唱が必要な場合と必要ない場合がある。

 ちなみに「刻印術」は物に魔法刻印を刻むためのスキルであり、魔道具の作成にはこのスキルが必要不可欠である。


 1つ目の汎用魔法に分類される「付与魔法」とは少し違い、「刻印術」は物に魔法刻印を刻むスキル、「付与魔法」は生物に魔法をかけるスキルだ。

 そして4つ目が「呪術」、「召喚魔法」をはじめとする触媒を必要とする媒介魔法。

 メリットとしては原始魔法と似ていて詠唱は必須ではなく、デメリットは触媒が必ず要求されるという点だ。


 ここで言う触媒とは科学用語の触媒のように化学反応を助けるような物ではなく、それ自体が起点や呼水となって魔法を成立させる物である。

 どちらも何かを生み出すために使うと言う点は変わらないものの、魔法用語の触媒は使ってしまえば劣化なり消失なりしてしまう。

 魔力消費量としては種類にもよるが、汎用魔法と原始魔法のちょうど中間ぐらいで上から2番目だ。


 ちなみに3つ目の「錬金術」や「刻印術」、「死霊魔法」などの生産魔法は使う魔法や対象となる物によって振れ幅がありすぎるので一概にどれより魔力消費量が多いとは言えない。

 まあ、それは上記のものにも言えることだが取り敢えず大体の傾向ということだ。


 で、俺が戦闘に使えるものといえば4つ目の「呪術」や「召喚魔法」の媒介魔法だが、「召喚魔法」は召喚するときだけでなく、現世に維持し続けるのにも魔力を使うし、ずっとスキルを使用し続けるため常時集中力を持っていかれるためボツにした。


 で、俺が使いたいと思い、お嬢に教えを乞うたのが「呪術」だ。

 というか一番適性があった。

 「呪術」は触媒を呼水にして冥界の至る所にに存在していると言われている呪詛を現世に引き摺り出し、それを術者が望むように変質、指向性を持たせて魔法として成立させると魔法系スキルだ。


 ──呪術『歩み忌む紫黒の魔手』


 これは俺のオリジナルの「呪術」ではあるのだが、ぶっちゃけるとお嬢のパクリだ。

 より正確に言うのであればお嬢の「呪術『歩み阻む泥濘の湖沼』」という魔法の対個人用の魔法だ。


 『歩み阻む泥濘の湖沼』は半径10mの泥沼を発生させる魔法。

 しかしそこは「呪術」、ただの泥沼であるはずが無く、その中から無数の呪腕が這い出てきてそこにいる生物にしがみつく。

 その呪腕に掴まれた者は生物にとって有害な呪詛を体内に送り込まれ、生命力の弱い者であれば即死してしまうというかなり危険性の高い足止めの魔法だ。


 と言っても「呪術」の中では結構初歩的な魔法であり、範囲にさえ目を瞑れば展開難度、発生速度、魔力消費などを考えれば使いやすい阻害魔法だと言える。

 それほど強い魔法ではなく、即死するのもせいぜい虫ーー魔物ではなく普通のーーぐらいものだ。


 で、それの用途を変えたのが俺の『歩み忌む紫黒の魔手』

 効果はお嬢の『歩み阻む泥濘の湖沼』とほぼ同じだが、効果範囲を直径1mにまで絞ってあり、呪腕が向かう対象も単一だ。

 効果範囲を極端に絞ったがゆえに対象に向かう呪腕の数は多く、また泥沼の展開範囲も狭いので魔力消費量も少ない。

 どれぐらいかと言うと俺の手持ちの魔法の中で最も魔力消費量の少ない『ポイズンショット』の次に魔力消費量が少ない魔法だ。

 主な用途は阻害と雑魚の始末。


 ただ雑魚相手に使うには「冥界の呪泥の残骸」はちと高すぎる。

 錬金術ギルドで販売している「冥界の呪泥に残骸」の原価が30000デル。

 一日あたりの食材費が1500デルだから相当高い。

 それでも「呪術」の触媒としては結構やすかったりするのだから「呪術」というのはかなり金を必要とする。


 「呪術」の使用率が低いのはそれが理由だとはお嬢の言。

 まあ、マイナーだからこそ対策が立てられにくいのだから使い手としては文句は無いんだけどね?


 閑話休題。


「ブオッ!?」

 

 そんな雑魚相手にはコスパが悪すぎてボス戦ぐらいにしか用途が見出せない『歩み忌む紫黒の魔手』はミノスの身体に纏わり付き、その動きを鈍らせていく。

 呪詛とは即ち冥界に贈られた魂が死してなお叫び続けた怨嗟の具現。

 故に生あるものに取り憑き魔力を、闘気を、生気を奪う。

 今まさに必殺の一撃を放とうと脚を踏み込んだミノスの歩みを止める。


(呪腕が斧に集中している?やっぱりミノスの生命力が目に見えて下がっているのか)


 しかしそれ以上に驚愕すべきは斧溜め込まれた魔力と闘気だろう。

 残りカスも同然とは言え命ある者と、膨大とは言えただ魔力を込めた物とでは呪詛がどちらに向くかと言えば普通は命ある者だ。

 それほどまでに呪詛の生への執着は凄まじい。


 にも関わらず呪腕は斧を目掛けて突き進む。

 それは即ち斧が孕んでいる魔力と闘気が尋常では無いことを指し示している。

 呪腕が斧に掌を翳して伸びていき、しかしその尽くを紅蓮の炎が焼き尽くしている。


 だがその炎も魔力と闘気の集まりだ。

 それは即ち呪腕からして見ればこれ以上ないエサでしかない。

 常時100を超える呪腕が斧に手を翳す。

 本当に少しずつ、だが確実に、そして加速度的に真紅の陽炎がその光を閉ざしていく。


「ブオオ!!!」


 流石にこのままでは自分の命までも危ういと思ったのだろう、ミノスが陽炎を解放し、呪腕も泥沼も全て魔方陣ごと焼き尽くす。

 その予想は正しい。

 そのまま放って置いたら呪腕は陽炎を食い尽くして、やがてミノスすらをも飲み込んだだろう。


 『歩み忌む紫黒の魔手』と『歩み阻む泥濘の湖沼』が他の「呪術」よりも優れているのは威力ではなく持続性にある。

 「魔法調整」まで使って展開された『歩み忌む紫黒の魔手』は最後まで続けば30分はもつ。

 呪腕が尽きるのが先か、陽光が尽きるのが先か、それとも牛頭の守護者の命が尽きるのが先か。

 明らかに自分の命を代償にして放っているのであろう、あの炎がそう長くもつとは思えない。


 刻一刻と「危険感知」が伝えてくる悪寒が小さくなっているのが何より弱っている証拠だ。

 だが、陽光を解き放ったその判断は正しくはない。

 何故ならアイツの脅威はまだ去っていないのだから。


『御影幻刀流『獅迅』!!』


「オアァッ!?」


 その声と共にミノスが顔を上げるがもう遅い。

 放たれた獅子のような魔力を纏った短刀によると突きは見事にミノスの眉間を貫いた。

 ズブリ、と柄まで突き刺さる短刀。

 刃先が頭蓋骨を突き破って鮮血を石畳に滴らせる。

 

「ア、オオ、オ」


 ──だが、それでも


 眉間を貫かれ、頭蓋骨を貫通されてなお、ミノスは動いた。

 

「……バカな。脳が貫かれているんだぞ?ありえん」


 お嬢の珍しく動揺したような声が聞こえる。

 だが俺からすれば「それぐらいはやるだろうな」という感想しか湧かない。

 それはシオンも同じだってようで、


「アレは死を覚悟し、眼前に迫ってなお戦い続ける戦士だ。で、あれば死がすぐ隣に来たとしても抗い続けるだろうよ」


 ああ、同感だ。

 アイツであれば脳を貫かれてなお、最後の足掻きを見せるだろうとある種の信用があった。


 ──だから


『その闘志に心からの称賛を。手向けとして受け取れ『ポイズンレイ』』


 最後の詰めは忘れなかった。

 背骨、両肩の3箇所を貫いた『ポイズンレイ』

 両肩に放たれた2本の『ポイズンレイ』は右腕を切り落とし、左肩の腱は切り裂かれて左腕が辛うじてくっついているような状態だ。

 背骨を貫いた1本の『ポイズンレイ』は身体を突き抜けるまではいかなかったものの、確かに心臓を貫いた。


 残りの魔力を全て使って放った三光はいずれも術者が狙った場所を過たず穿った。

 ドシャリ、と音をたてて牛頭の守護者が膝をつく。

 「魔力感知」からはミノスには身体についた残骸程度の魔力しか残っておらず、「熱源感知」からミノスの身体は既に冷たくなっていることがわかる。

 部屋を覆っていた陽炎の紅海は主人が沈むと共にその姿を消した。


 ──ようやく、牛頭の守護者は倒れた




◇◆◇◆◇◆




 ──見事だ


 そう口が動いた気がした。

 人の言葉を話せるはずがないのに、たしかにそう言った気がした。

 自分がわかるとしたら蛇系の魔物の言葉ぐらいだ、牛の亜人系の魔物の言葉までは分からない。


 けれど確かにそう聞こえた。

 そしてそれは、不思議と間違いでは無いと思ったのだ。

 だから、その称賛にこう返す。

 

『当然です。私のご主人様ですから』

 

 返したその言葉に、ミノスが苦笑したような気配がした。

 最後に彼が何を伝えたかったのかは分からない。

 けれど、それは主人への賞賛では無いような気がした。

「呪術」の人気が低いのはその見た目もあります。後は適正を持つ人の少なさも


主人公は戦法こそエグいですが戦士とか騎士相手にはそれ相応の態度で接するタイプ

え?最初の方とイメージが違う?

転生なんてしてるんだから性格ぐらい環境で変わるでしょ

そうじゃなくても一応元とは言え人間なんだから主人公だってちょっとは成長、というか変化します。描写はありませんが……

ウチの主人公の成長過程とか需要ある?

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