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魔女の使い魔  作者: 自動機械鮎
第一章 白蛇と魔女
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第四話 大空に身を任せて

 洞窟の中を歩く、歩く。

 俺ではなくお嬢が。

 いや、楽だなぁ。

 暇だったので下を見ようにも大きいお山で見えない、なんて事はなく普通に見えた。

 そんなことを考えているとお嬢から、「何?」と割と本気で怖い感じの声がしてきたのでぶんぶんと首を振っときました。


『そういやお嬢って人間なのか?』


「どう言う意味だ」


 冷たい声が返ってきた。怖えなオイ。

 だが、俺がそう思うのにも理由がある。


『いや、流石にお嬢みたいな魔力を持っているやつがそこら中を闊歩しているとは考えたくなくてなぁ』


 すると、ピタと止まって


「なんで私の魔力量が分かる?」


 と、今度は不可解そうな声音で聞いてきた。


『魔力感知ってスキルを持っていてな。お嬢のそばにいてからスキルが伸びる伸びる』


「ああ、魔力感知を持っているのか。だが、それなら何で私が来た時すぐに逃げなかった?魔力感知を持っていたのなら私がくる事はわかっただろうに」


『会得してから1日も経っていなかったから使い慣れていなかったし、何より索敵範囲はかなり狭かった。なんかやばいのがいる、とわかった瞬間にはお嬢に見つかってたしなぁ』


 と言うと成る程と頷いて、


「おまえの問いに対しての答えだが、まともな人間ではないと言うのが答えだ」


 そう言った。


「私は魔女の家系でな。代々その秘術を継ぐ者はまず、不老長寿の霊薬を飲まなければならない」


『不老長寿か。不老不死ではなく?』


「それこそが我らの悲願だ。不死の身に至るために長い年月をかけて研究をする。ローレライ系はそう言う家系だ。と言っても私はまだまだひよっ子でな。霊薬を飲んだのは5年前の17才の時だ」


 そうか……ではもうその小山は成長しないのか……。

 いや、まな板でないだけ喜ぶべきだろう。


『そうかい。それじゃ、今は不老不死の研究を?』


「まあ、それもあるが今は私の興味の赴くままにやっているよ。私は魔法やそれに関連するものが大好きでな。今はそっちに集中している」


『ほう?と言う事は俺を使い魔にしたのもその一環かい?』


「そうだな。後は純粋にホワイトスネークの生態について気になったと言うのもある」


ホワイトスネーク()の生態?』


「そうだ。大体の蛇系の魔物は「毒生成」というスキルを持って生まれるが、上位の蛇系の魔物やホワイトスネークを始めとした数種類の蛇系の魔物は「毒魔法」というスキルを持って生まれる。私が研究したいのはその「毒魔法」だ」


 この嬢ちゃん…。

 薄々察してはいたが、自分の好きな分野のこととなると急に饒舌になるタイプの人間か…。

 オタク気質の奴によく見られるタイプだな。


「この「毒魔法」を始めとする魔物が固有で持っている魔法を纏めて原始魔法とよぶ。原始魔法は詠唱を必要とせず、発生速度も早い。加えて効力も大体が高いため、魔法使いが一般的に使う属性魔法よりも魔法として遥かに優れていると言える。反面、その種族にしか使えない魔法が多いため、技術として議論するのであれば属性魔法の方が優れていると言える。一説には原始魔法を参考にして属性魔法を始めとする多くの魔法がうみだされー」 


『まてまてお嬢!いったん落ち着け!」


 自分でも喋りすぎたと思ったのか、ハッとしてどこか恥ずかしそうに咳払いをする。

 うん、恥じらってる女の子というのは見てて目の保養になります、ハイ。


『まあ、要するにお嬢は使い魔と「毒魔法」の研究のために俺を使い魔にしたってことでいいのか?』


「後はお前の素材から何か作れないかな、と思ってな。蛇系の魔物の素材は私達錬金術を研究している者からすれば良い素材なのでな」


『……剥ぐなよ?』


 少し不安になったので釘を刺しておく。

 お嬢が本気になったら抵抗はできなさそうだしなぁ。


「仮にも私の使い魔だ。そんな事はしないさ。それに、蛇系の魔物は脱皮するからな。それで欲しい素材は大体集まる。強いていうのであれば牙が欲しいくらいか…」


『牙ぐらいならまあ、一本ぐらいなら構わないぞ?』


 まあ、これからお世話になるわけだしなぁ。と、思って言ってみると


「本当か!!」


 ……予想以上、いやある意味予想通りの反応がかえってきた。

 ちょうどその時、出口が見えた。


『お、おう。あ、お嬢。そろそろ出方じゃないか?』


「うん?ああ、そうだな」


 …ほんとこの嬢ちゃんは。

 もうちょっとこう…リアクションをしよう?

 そう言ってる間に洞窟を出ーー


『んあ"あぁぁぁあ!!目が!目がぁぁああ!!!』


 どこぞのジブリ映画の様なリアクションをしてしまった。

 そうだよ、普通に考えれば生まれてから一度も火の光を浴びてない奴が急に日光に照らされたらどうなるかなんてわかりきってんじゃん!


『うお"おぉぉぉお…。目、目ぇいてえ…』


「何やってんだお前は…」


 呆れた様な声が聞こえる。

 パチクリパチクリして目を慣らして改めて周りを見ると、そこはThe:未開拓とでもいう様な場所だった。

 周囲には木々が広がり、鬱蒼としている。

 後ろを振り返れば土でできたドームのようなものが。

 これがさっきまでいた洞窟なんだろうが……デカいな。

 東京ドーム何個分よ?これ


「ここはアルフの森と言ってな。動物と魔物が半々ぐらいの比率で生息している。さっきまで私達がいた所はコルテカの迷宮というダンジョンだ。一層はグレイラットとケイブスネークしかいないが、二層からはゴブリンがでてきて五層からは罠も出現する。現在の最終到達階層は37層だったかな」


 歩きながら解説している。

 ……やっぱ結構饒舌ですね。いや、さっきと比べるとトーンが少し落ちてるかな?


『ほお……。うん?じゃあ何で俺は一層にいたんだ?』


「ホワイトスネークは出現状況がよくわかっていない。有力な説としては周囲の魔力濃度が濃く、気温が安定しているとがあるが……。私はその道にはあまり詳しくないからこれ以上は知らん」


 先ほどとの温度差よ……。


『んで?街ってのはどこにあるんだ?』


「森を抜けて数キロ歩いた先にイージアという街がある。辺境の街で、冒険者や騎士団の質も高い」


『日を見るに正午はもう過ぎたし、これからこの森を抜けると日が暮れるだろう。ここで一夜明かすか?』


 そう提案すると


「いや、()()


『は?』


 そう言った直後、詠唱を始めた。


「軽やかなる風足、それは空を駆ける権限。私は地の法に逆らい、虚空を踏む」


『いや、まてまてまて!』


 制止の言葉をかけつつも半ば悟った。


 ーーあ、これ駄目なやつだ


「さあ!今こそ大地の枷を解き放つ!歯を食いしばってないと舌噛むぞ!!『ステアウェイ・スカイ』!」


 その言葉を最後にアリシアの身体は飛んだいや、()()()


「この魔法こそ私が魔法学院を首席で卒業した際に書いた論文のテーマ、「擬似飛行魔法の実現とその実用について」の核たる魔法、『ステアウェイ・スカイ』!時空間魔法と風属性魔法の複合魔法だ!まず、自身の両足裏に魔法陣を展開し、そこから風を噴射する事で自身の身体を吹き飛ばす!そして、空中で任意で虚空の足場をイメージすることで一時的に空間に足場を形成。それとほぼ同時にまた風を噴射する事で再度飛び上がることで魔力と集中力が切れない限り半永久的に飛び続けられるという仕組みだ!」


 魔法の解説の饒舌さに呆れるどころかむしろよく噛まずに言えたものだと感心してしまった。

 そうこう言っているうちにだいぶ高いところまできてしまった。

 どれくらいかというと此処から落ちたらまず間違いなく死ぬだろうというくらい。


『お嬢!マジで大丈夫なんだろうな!?』


 大分悲鳴っぽくなったのは仕方がないと思う。


「安心しろ!この魔法は幾度とない検証を重ねて作り上げた魔法だ!事故の確率は10%以下だ!」


『ああ、そうかい。そりゃ安心……いや、なんて!?10%以下!?』


 それって最悪十回やって一回は事故るじゃねぇか!!


『お嬢!今すぐ降りろ!いや、今すぐ俺を木の上に落とせ!今なら助かる!多分!』


「大丈夫、大丈夫!」


 こいつ…!首に巻きついたのが失敗だった!

 ガッチリ俺の腹握ってやがる…!


『んああぁぁぁあ!!』


「あははははは!!」


 上げられる二つの叫声。

 片方はそもそも念話故大気を震わせることすらなく。

 片方はアルフの森を駆け抜けて回った。

 ある冒険者パーティーが魔物の襲撃かと勘違いして空を見上げると人影が飛んでいるのを見て自分達の正気を疑ったことがあったとかなかったとか。

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