第四話 ちょっといいなとか思ってないんだからね!
CMのテキサス可愛い……ヘラグカッコいい……
『お嬢、助けて』
俺がまずしたことはお嬢に助けを求めることだった。
はいそこ!情けないとか言わないの!
人(魔物)に跪かれた経験なんぞあるわけもなく、自分ではどうしようもない事態に陥った時に信頼できる相手がいるのらば頼るのはごく自然なことだろう。
よって俺の「人を頼る」という行動はまったくもって適切な行動であり、逆説的に今この状況で「人を頼らない」という選択はまったくもって愚行だといえよう。
……とまあ、自己弁護はこのぐらいにして。
何なら最後ボッチに対する批判みたいのなっちゃったし。
「んー、流石に私もこのようなケースは初めてだが……。まあおまえが「眷属」を持つのもありなんじゃないか?」
『眷属?』
「魔物が配下を持つようなものだな。……そうだな、この場合「契約魔法」で契約を結ぶから魔物同士版使い魔と言った方が分かりやすいか?」
『何となく分かった』
要するにお嬢と俺みたいな契約を魔物同士で結ぶってことでしょ?
ーーしかし、
『何でコイツは俺の眷属になろうと思ったんだ?理由がさっぱり分からん』
行動には理由がいる、理由のない行動など字の書かれてない本と同義だ。
それが本能によるものであれ人間的な思考であれ、明確な理由のない行動など、少なくとも俺は認められない。
……正直自分でも面倒な性分だとは思うがこればっかりは死んでも治らん。
「……蛇の魔物にとって「毒」というのは特別なものだ、という話を故郷にいたときに聞いたことがある。ならば自分よりも「毒」の使い方に長けたルキアに従うのがラミアとしての本能、と言うのはいささか無理があるか?」
「……だいぶ飛躍したな」
『そもそもそれ、ただの伝承だろ。当てにならんな』
「友とその主が冷たい……」
んな蹲み込んでいじけても可愛くねえぞ、男だし。
目隠しした和装の男が座って地面にのの時を書いていじけている様子はある種の見ものではあるが。
「ルキア、意思疎通は出来ないのか?同じ蛇の魔物だろう」
『お嬢、会話が成立するのは双方が同等の知性を持った時だけだ。いくらなんでもコレと会話は出来んよ。そもそも「念話」で形成する魔力のパスは急造のものだ。ただ同族というだけでコレの思念を伝え切れるほど強力なものじゃない。スキルレベルがもっと高かったらまた違うのかもしれんが……』
「…………ふむ、契約を結んでパスを繋げば案外何とかなったりするものなのか?ルキア、ちょっと実験台になれ」
うわあ、ちょっと考え込んでたかと思ったら無茶振りきたよ。
いや、やりますけどね?他ならぬお嬢の頼みだし。
それに俺だって配下ができるのであれば欲しいというのはある。
……主に家事面で。
だってお嬢の屋敷広すぎるんだもの。
屋敷内の片付けが全然終わってなくて実験場の掃除はまだ手をつけられる段階じゃない。
あの広い邸宅を他の家事をしながら掃除しきるにはいささか人手が足りないのだ。
戦闘面を抜きにしても自分の手足となる存在は欲しかったりする。
『応よ。ただ契約の内容は俺が決めてもいいか?』
「構わん。おまえの眷属だ、好きにするといい」
◇◆◇◆◇◆
おおよその契約の内容をお嬢に提示して、それをお嬢が訂正して、その訂正を鑑みて俺がまた契約内容を考案すること10分。
その間シオンは瞑想してたしラミアはずっと跪いたままだった。
いやだって言葉通じないし……。
別に跪いたままだからって何かあるわけじゃないからそのままでもよくね?ということだ。
なお、瞑想する前にシオンが何か言いたそうにこっちを見てきたのはみなかったことにします。
「さて、確認だ。契約内容は「このラミアがルキアに損傷を与えた際にこの契約は服従の契約へと変更される」、「魔力のパスは通しておくが双方の了解なしに魔力供給はできない」と。この二つでいいのか?」
『ああ、構わない。アレが了承するかどうかは知らんが……。嫌だったら契約中に拒むだろ」
尚、契約内容が理解できないとかいうのは知りません。
ちなみに契約内容について補足しておくと、一つ目は単純に裏切られたとき用だ。
何せ殆ど信用できるような材料がないのだ、むしろいきなり服従の契約にしないだけ充分有情だと言えるだろう。
二つ目はこっちが魔力を搾り取られないようにする為。
当初の案では俺だけが魔力供給をできればいいと思っていたんだが、それだと契約が色々こんがらがって失敗する恐れが出てくるとのこと。
まあ、これに関しては問題ないだろう。
こっちが了承を与えなければいいだけの話しだし、万が一ラミアが「魅了の魔眼」で俺を操ろうとしても一つ目の契約内容が効いてくる。
「損傷」というのは肉体的なものに限らず、状態異常にも適用されるらしい。
そのため俺を魅了の状態にしようとすれば逆に向こうが隷属させられるという、ミイラ取り的な感じになるということだ。
ちなみにこれを考案したのはお嬢です。
俺が『いっそのこと隷属したらいいんじゃない?』って言ったら「ならハメ殺したほうがよくね?」とか言ってきやがったのがラブリーマイエンジェル・アリシア。
鬼!悪魔!お嬢!でもそんなお嬢が大好きです。
「んじゃ、とっとと始めるか」
『宜しく』
カツン、とつ杖が石畳を叩くと何時ぞやと似た、だが少し違う様な印象を与える銀色の魔法陣が俺とラミアの足元に浮かび上がった。
「繋ぐ。意思を、道を、選択を、命運を。叛逆する下僕に隷属の枷を嵌めて、彼の明日はこれより等しき道を敷く。誓いをここに、『コントラクト』」
魔方陣同士の間に繋がっていた線は徐々に太くなって、魔法陣の直径と同じぐらいにまで太くなったかと思うと一本の紐になって2人の間を無限の字を描く様にして結んだ。
あの時とは少しだけ違う詠唱が終わってお嬢が魔法名を唱えた後、銀色に光る紐は俺達に溶け込む様にしてその姿を消した。
「よし、これで契約完了だ。早速意思疎通ができないかどうか試してみてくれ」
契約が終わったや否や真っ先にそこに食いつくお嬢。
そういうところはある意味魅力であるのと思うのと同時、もう少し落ち着きを持って欲しいと思う今日この頃です。
いやまあ、俺も気になってるからやるけどさあ……。
『おい、蛇女。聞こえるか』
『はい。御身の美声、恐れ多くも拝聴させていただいております、我が王。この降伏は何者にも代えがたいものと存じます』
…………おおう、これはまた予想とはまた随分と違うのが来たんだが……大丈夫かこれ?俺扱い切れる?
◇◆◇◆◇◆
『あー、聞きたいことは山ほどあるんだが……まず、その「我が王」って何だ?』
『?我が王は我が王ですが……。何か問題でも有りますか?我が王』
あ、ダメだこれ。
そう瞬時に悟った俺を誰か褒めて欲しい。
こういう類の奴はいくら言ってきかせても無駄だろう、人生何事も諦めが肝心である。
腐った目が特徴的なとある青年も言っていたではないか「押してダメなら諦めろ」、「千里の道も諦めろ」と。
よってコイツに関しては色々諦めるものとする。
次は地面に蹲って笑いを堪えている我が主だ。
『いや、いい……。おい、バカ主。もしかしなくとも俺とコイツの会話は聞こえてるのか?』
「ふっ……くくっ………!ああ、バッチリ聞こえているぞ?我が王………ふふっ」
コイツ…………!今度から俺も我が王とか呼んでやろうか?
いや、やっぱやめとこう。
それは俺へのダメージも考慮しなければならない諸刃の刃だ。
というか俺が精神的に死ぬ。
ああいうのは場の雰囲気とか本人の気分が高まっている時にやるから後でちょっと後悔するだけで済むのだ。
素面でやったら俺が死ぬ。
そう考えるとこのラミア、実は結構凄い奴なのでは?と思えてしまうから不思議だ。
ああ、くそ!この「どうかしましたか?我が王?」とか言いそうなきょとんとした顔がムカつく………!
『どうかなさいましたか?我が王』
ほら言った!すぐ言った!
多分、というかまず間違いなく素でやってるのがまたムカつく!
何がムカつくって、恥ずかしい思いをするのが俺だけでコイツは何も思っていないのが腹立つ!
ホント、どうしてくれようか……。
「はあ、笑った笑った。ちなみシオンには聞こえてないんだよな?」
「ああ、だから少し寂しいぞ。まあ、何となく何があったのかは分かるが。ちなみにそのラミアは俺の言葉は理解出来るのか?」
『そう言えば。おい、ラミア。お前あの男が言ってること理解出来るか?』
『はい、我が王。ダンジョンからの知識から人間の喋っている言語は理解できます』
「ダンジョンからの知識!?何だそれ詳しく!!!」
ここばかりにお嬢が食いつく。
一方ラミアは困惑した様にこちらを見てくる。
おそらくアイツにとっては使えているのは俺ただ1人であってお嬢ではないのだろう。
『そいつはアリシアと言って俺の主人だ。お嬢に聞かれたことは全て答えろ』
『は、承知いたしました我が王。それではアリシア様、返答させて頂きます。ダンジョンの魔物は全てダンジョンから知識を授けられます。基本的には罠の位置、自分がどこからどこまでに居なければならないか、そして自分の役割を魔物としての本能に準ずる形で植えつけられます。例えば私であれば罠の位置は掌握しておらず移動許可範囲はこの部屋内、役割は私ともう一体のラミア以外のこの部屋に侵入してきた生命体を殺害し、次の階層へ行かせないことです』
「ほう?つまりそこにいるにあたって最低限の知識をダンジョンから授けられ……いや、植え付けられると。しかしお前の知能が高いのは何故だ?」
『ボス個体は総じて知能が高くなる様にダンジョンが魔物を生み出しています。私の知識が他の同族の個体と比べて高いのはそれが理由かと』
「なるほど?ではーー」
尚、お嬢の質問タイムは1時間も続きました。
大体合ってるのに一蹴されてしまう悲しき男シオン……




