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魔女の使い魔  作者: 自動機械鮎
第一章 白蛇と魔女
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第三話 ご主人様とおはなし

『おお、美人さん………。』


「うん?」


 それが率直な感想だ。

 身長は160cmぐらいだろうか。

 体が小さいため見上げることしかできないが多分それぐらいだろう。

 腰程まで真っ直ぐに伸ばされた髪は蒼穹を思わせるような青。

 そんな髪とは対照的に、瞳は燃え盛る炎の様な赤色をしている。

 そんな瞳の色をしているのに何処か冷たい印象を抱くのは顔立ちのせいだろう。


 いわゆるクールビューティーと言われる様な整った顔は今は困惑に彩られている。

 きょろきょろと辺りを見回し首を傾げたかと思うと、杖でコンと地面を叩く。

 すると、魔力が波紋状になって広がっていく。

 発した魔力が微弱なのは俺への心遣いだろうか?違いますか、そうですか。

 発した魔力が俺の知覚外までいってから数秒後、またこてんと首を傾げる。


『どうでもいいけど可愛いな、それ』


 うん?なんか変な感覚が…。まあ、いいか。

 すると、またきょろきょろと辺りを見回すと、最後に俺を見る。


「おまえか?」


『……何が?』


 うん?また変な感覚…。

 これは……そう、まるでスキルを使ったときの様な感覚だ。


「さっきから美人だなんだと言っているのはおまえか?」


『ああ、俺ですね。うん、はい』


 言葉を発したりするスキルは持っていなかった。

 ということはー


 Name:

 Level:6

 Phylum :魔物

 Species :ホワイトスネーク 

 HP:43/43

 MP:24/24

 Strength :12

 Vitality :10

 Dexterity :14

 Agility :16

 Stamina :14

 Luck :7

 Skill:

  【耐性系】

    精神苦痛耐性Lv.100

  【魔法系】

    毒魔法Lv.3

    魔力操作Lv.4

  【感知系】

    暗視Lv.4

    熱源感知Lv.4

    魔力感知Lv.5

  【身体系】

    尾撃Lv.2

  【その他】

    念話Lv.1


 「念話」が新しく習得できているので恐らくこれだろう。

 と言うか魔力感知がすごい上がっているんだが…。この嬢ちゃんのそばにいるからだろうか?

 索敵範囲も半径20mは超えてるし…。


『「念話」というスキルを新しく覚えていた。あんたが何かしたんじゃないのか?』


「ん?ああ、一定以上の知能のある魔物が覚えることがあるスキルだな。だが、私は何もしていないぞ?」


 と、いうことは俺が覚えた?だが、なぜ?

 後天的に覚えた物というのであれば魔力感知がそうだが、あれは体外にでた魔力を感じ取って取得したものだ。

 一方で念話は特にこれと言ってきっかけとなる出来事があったわけでもない。

 知能のある魔物が覚えられるというのであればもっと前に覚えて然るべきだろう。

 うーん、謎だ。


「まあ、意思疎通ができるのであれば越したことはないだろう」


『あ、聞こえてた?』


 うっかり念話発動したままだったか?


「まあな。それにしてもおまえ、随分と知能が高いな?名付きの魔物だったりするのか?」


『いや、名前はない。あー、転生って言ってわかるか?』


 輪廻転生と言うのは仏教に考えられる概念だ。

 異世界で通用するかなぁ…?


「なんだ、おまえ転生者か?種族ごと変わるのは初めて見たぞ?と言うかおまえの前世って何だったんだ?」


 前言撤回。異世界で輪廻転生の概念は通用するそうで。

 というか、前例あんのかよ。

 あと、随分早口だな。


『生前は人間だ。種族ごと変わるのは珍しいのか?』


「珍しい、と言うより聞いたことがない。まあ、魔物に転生した場合、人間と喋る機会なんぞほとんど無いだろうから本当にいないのかどうかはわからんが」


 ああ、そりゃそうだ。


『それで?あんたの事は何と呼べばいい?』


「何とでも。好きに呼べ」


 うーん、丸投げされてしまった。


『なら、お嬢とでも呼ぼうか』


「好きにしろ。で、おまえは…名前無いんだったか」


『ああ、折角だからお嬢がつけてくれ」


 自分の名前を自分でつける、と言うのはいささか変な話だ。

 そして何より俺はネーミングセンスに自信のある方では無い。


「そうだな…。ならポチ」


『却下!犬か!?俺は』


 何が悲しくてそんな名前を付けられなきゃならんのだ。

 こいつ…俺よりネーミングセンスないじゃ無いのか?


『せめてもっとこう…、使い魔につける様な名前にしてくれ』


「そうだな…。なら、ルキアというのはどうだ?神話に出てくる蛇の神獣の名前だ」


 おお!やれば出来るじゃないか。

 おじさんは嬉しいぞう…。


『いい名前だ、そういえばお嬢の名前は?』


「アリシアだ。アリシア・ローレライ」


 アリシア…ギリシャ語で『真実』と言う意味だったか。

 まあ、この世界でどう言う意味かは知らんが似合っていると思う。

 こう…裁きとか下しそう。


「おい、聞こえてるぞ」


『ああいや、公正を重んじそうと言う意味だ。本当だぞ?それで、これからどうする?』


 話題を切り替える。まあ、嘘ではないし。


「ああ、とりあえず街に戻る。従魔登録もしないといけないしな」


 従魔登録…まあ、読んで字の如くだろう。


『了解だ。お嬢』


 そう言ってスルスルと近くに寄る。

 未だ魔力による圧迫感がないわけではないが、それもそのうち慣れるだろう。


「ん」


 鈴の根を転がす様な声と共にしゃがんでこちらに手を伸ばしてくる。

 チッ。ロングスカートか、見えねぇ。


『……どした?』


「登れ。おまえに合わせて歩いたのでは時間がかかって仕方がない。と言うか踏むぞ」


 ああ、そう言う事。

 流石に踏まれるのは勘弁したい。

 我々の業界ではご褒美ではあるが、蛇の体だと話は別だ。

 潰れる、と言うか死ぬぞ。

 言われた通りにスルスルと登る。


『どうする?首にでも巻き付けばいいか?』


 なんて冗談めかして言うと、


「ああ、そうだな。そうしろ」


 なんて返してきた。


『おお、マジか。首絞められたりとか考えないのかい?』


「使い魔になった際の制約としておまえが私に危害を加えようとすると激痛が走る様になっている。因みに私のはそれに加えて内臓を灼かれる幻覚を起こす様に改造しているから、体験したいのならやってみるといい」

 ………。


『お嬢、そう言うのは先に言え?』


 ちょっとした戯れにやっても死にそうになるだろうが。


「戯れでもやるなよ」


 笑いながらそう言った。

 やれやれ、とんでもない主人に当たった物だ。

 だかまあ、これもこれで悪くはない。

 そう思っている自分がいて、それに気づいてつい、おかしくなってしまった。

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