第三十一話 流石にそれは勘弁してほしい今日この頃
ん"あ"あ"ぁぁあ"ぁぁ!!
サリアが欲しいいいいい!!!!
その後何度か戦闘になったものの、それほど苦戦することなく勝利を収めた。
やっぱり後ろからの支援砲火があるとずいぶん楽に戦える。
『そういやお嬢。前から気になってたんだが何で複数の魔法を同時に発動できるんだ?』
戦闘中、お嬢は複数の炎弾やら風槍やらを飛ばして支援していた。
別にそれだけならば特に疑問に思うことはない。
複数の弾を打ち出す様な魔法があっても不思議ではないからだ。
しかし、俺がちらっとお嬢の方を見たときには魔法陣が複数展開されていた。
お嬢曰く、基本的にひとつの魔法につき出現する魔法陣はひとつとのことだ。
例外もあるらしいが、それはいずれも特殊な魔法でのみ見られるらしいので今は置いておく。
「あれは「並列詠唱」というスキルによるものだ。ひとつの魔法を複数発動できるスキルだな。もっとも別々の魔法を一緒に発動はできないが」
『しかし別々の魔法陣が複数個展開されていただろう。あれは何だ?』
「それは「遅延詠唱」のスキルだな。魔法陣は詠唱が完了した時点で出現する。その後、魔法名を唱えることで魔法を起動するわけだ。銃に例えるなら詠唱は弾込め、魔法名は引き金といったところか。「遅延詠唱」は魔法陣を詠唱が終わった状態で待機させておくことができるスキルだ。通常、詠唱が終わってから何もしないでいると魔法陣は崩れて魔力へと戻ってしまう。だが、このスキルを使えば魔法陣を展開したまま待機させられるというわけだ」
成る程、ところでアナタ魔法系のスキルいくつ持ってるんですかねぇ?
絶対今ので全部じゃないし、他にも色々持ってますよね?
そんなこんなで話していると、ボスのいる部屋にたどり着いた。
ダンジョンにおいて、迷宮回廊の階層のボスは大体が大部屋にいて、その次の部屋に次の階層へと繋がる階段と宝箱があるのだとか。
大部屋の扉は大きく、精緻な彫刻が施されている。
扉には何やら棍棒を持った大きな鬼の姿が……あれ?
ここは亜人系の魔物が出てくるダンジョンです。
さて、鬼は何系の魔物でしょうか?
『お嬢、この扉に描かれてるのってもしかしなくてもこの部屋のボスだったりする?』
「正解」
にっ、と笑って答えたお嬢の笑顔、プライスレス!
お嬢曰く、ボス部屋の前にはそのボスのヒントが記されていることが多いのだとか。
でもそういう事は先に言って欲しかった定期。
◇◆◇◆◇◆
ボス戦の前に少し休憩をしよう、ということになったので休憩をする間、ステータスを確認しておこうか。
Name:ルキア
Level:14
Phylum :魔物
Species :ホーンドサーペント
HP:431/431
MP:354/354
Strength :182
Vitality :171
Dexterity :175
Agility :185
Stamina :178
Luck :18
Skill:
【耐性系】
精神苦痛耐性Lv.100
毒耐性Lv.10
【魔法系】
毒魔法Lv.37
魔力操作Lv.22
流水魔法Lv.20
魔法調整Lv.1
【感知系】
暗視Lv.19
熱源感知Lv.30
魔力感知Lv.33
心眼Lv.27
【身体系】
尾撃Lv.28
魔力強化Lv.29
剛体Lv.18
【その他】
念話Lv.29
「清流魔法」のスキルレベルが20に達した事で新たに『アクアトルネード』という魔法を覚えた。
これは文字通り水で構成された竜巻を魔法陣の上に発生させる魔法だ。
竜巻の中に毒とか入れたら楽しそうとか思ってませんよ、ホントに。
新しく覚えた「魔法調整」は魔力を大量に込めて『ポイズンジャベリン』の速度を上げたヤツ、あれの拡大版だ。
魔法の展開範囲、威力、他にも「毒魔法」を例に出せば毒の強さを高めたりなどができるスキルだ。
「さて、それじゃあ行こうか。予定通り私は手出しはしないということでいいんだな?」
『ああ、頼む』
今回のボスはオーガ1体とのことだ。
オーガは亜人系の魔物の中でも鬼種と呼ばれる魔物の仲間で、鬼種は膂力に優れた魔物だという。
オーガ自体はCランクの魔物であり、それがボス個体であるためCランク上位と見てかかるべきとはお嬢の言。
ホーンドサーペントはDランクの魔物であるため思いっきり格上なのだが、それを言ってしまえばアルラウネやジャイアントスパイダーの幼虫もCランクだったため格上とか今更じゃね?となってきている今日この頃です。
まあ、お嬢がいるお陰で死にそうになったら後退はできるし、魔力供給もある。
折角の格上との闘いだ、楽しんで行こうか。
◇◆◇◆◇◆
ギイィ、と音を立てて扉を開ける。
大部屋の床や壁、天井これまで通り石製で部屋の大きさは小学校の体育館ぐらいはあるだろうか。
入口の反対側には次の階層への階段と宝箱があるのであろう部屋へ繋がる扉がある。
そして何より目を引くのは真ん中で仁王立ちしている1体の鬼の姿。
身長は3メートルと少しほどで、こめかみからは2本の雄々しい角が天に向かって生えている。
屈強な胴体から伸びるのは俺の身体であれば握り潰せそうな厳つい手。
その手には下層のゴブリンが持っていた物とは比べ物にならない程に太く、大きく重厚さを漂わせる棍棒。
太くて大きくて硬い……いや、何でもないです。
これで熱いだったら完璧だったのになぁ、とか思ってないですよ、ホントホント。
しかし何だあの棍棒。
継ぎ目はないから1本の木から削り出したんだろうが、それにしては太すぎない?
樹齢数百年ぐらいの木からじゃないと削り出せんぞ?あれ。
『いや予想以上に手強そうだな、オイ。あれアルラウネと同ランクってマジか?』
「アルラウネはCランクの中でも下位だ。同じランクといってもそれなりに幅はある。加えてボス個体なのだから限りなくBランクに近いCランクと言ったところか」
通りで。
下手すりゃジャイアントスパイダーの幼虫よりも強いんじゃないか?
『ま、格上との闘いを望んだのは俺だ。いっちょやりますかね』
「安心しろ、死んでも「死霊魔法で」アンデットとして生き返らせてやる」
『いや、安心できる要素がひとつもないんですけど!?』
死んだ使い魔をアンデットにする主人とかヤバすぎない?
◇◆◇◆◇◆
時はルキアがジャイアントスパイダーの幼虫と闘っている時まで遡る。
「ぬ?」
ソレはどこか懐かしく、されどどこか異なる気配を察知して唸った。
場所はアルフの森の最奥。
そこは人外魔境の地であり、Aランク冒険者パーティーが複数で開拓しようとして尚、数時間で全滅させられる様な場所だ。
天霊の山脈、腐敗の荒野と並んでアルフの森の最奥、別名アルフの樹海は冒険者ギルドが正式に「魔境」として指定した場所だ。
それらに入れるのは最低でもAランク冒険者という規制がかけられているまさしく魔境であり、噂ではあるがその3箇所に魔王が住んでいると言われている。
「ふむ。「凍土の魔導師」……では無いか。あれはもっと寒々しい気配だ。ヤツにしてちと熱すぎる。それに魔力も小さい。が、素質そのものはヤツ以上か……ヤツの血縁か?」
ソレはその様な魔境に優雅に鬣を揺らしながら寝そべっていた。
普通の獅子よりも大きく、その体高は立てば2mを超えるだろうか。
体毛は全て新緑の色をしており、それだけ聞けば草木と同化しているように思える。
しかし、ソレの周りには同化するための草木はおろか、雑草の1本すら生えてはいない。
新緑の獅子の周りにあるのは砂とかつては青々としていたであろう草木の灰。
だが、本来ならこれはあり得ないことだ。
アルフの樹海に繁殖している全ての植物はどこぞの黒い悪魔すら超える生命力と繁殖力を持つ。
なぎ倒されようと、焼き尽くされようと、凍らされようと何らかの方法で再起を図る。
中には魔物では無い植物であるにも関わらず魔物を喰らい尽くす物までいる。
にも関わらずそれらが焼滅しているのにはソレの特徴をもうひとつあげる必要があるだろう。
それはその口内にて燦然と輝く炎だ。
青を通り越して白く輝くそれは存在するであらゆる生命を焼き殺す。
「しかし、もうひとつの気配は……魔物か?ヤツの血縁よりも大分弱いが……ホワイトスネークか?ほう、幼虫とはいえジャイアントスパイダーを降したか。成る程、成る程。低位の魔物にもかかわらず知性を有するか。面白い」
ソレは面白そうにクツクツと喉を鳴らして笑った。
それに応じて炎が一層燃え上がり、人界にて不滅と称される植物達をまたひとつ殺す。
そこだけが砂漠のようになり、しかし燃え尽きた植物や分を弁えずに近づいた魔物達の灰はやがて大地の栄養となって新たな生命を育むだろう。
故に、ソレがこの樹海に存在しようとも砂漠化しない理由のひとつだ。
もうひとつは単純なこと。
単にソレが無闇矢鱈に徘徊しないからだ。
──新緑の炎獅子は今日も命を焼き殺す
奇妙な2人組をその深紅の瞳に写しながら。
一応、命絶対焼き殺すビーストのモデルはありますが神話や伝承というよりはシンボル
緑のライオンで検索すれば出てきます




