第二十九話 数が多くなると死ぬ程面倒臭くなるアレ
龍門幣……増強剤ィ……!!
シャイニングを昇進させたいけど素材が足りねぇんだよ……!
ギルドマスターことダズリーから聖女様の護衛依頼を受けてからはや数ヶ月が経った。
この数ヶ月間何をしていたかというと、ずっと家事をしていました……。
おかげで八百屋の店長と近所のおばさん達とは普通に世間話ができる様になったぜ!
はいそこ!お母さんみたいとか言わないの!
お嬢曰く俺の素材で色々試したいことがあるし、聖女様の護衛に向けて作るものもあるからこの数ヶ月は家に篭るとのことだ。
それも大体済んで俺のレベル上げの為にコルテカの迷宮に行こうぜ!となったのが一昨日。
昨日は準備に費やしたので今日からダンジョン探索な訳だが……
『だあぁーー畜生!!数多すぎないか!?』
「まあ、それが第十一階層から下のダンジョンだからな。特にこのコルテカの迷宮は」
壁にかけられらたランプが照らす中、1匹の蛇と数多の人型の魔物達が死闘を繰り広げていた。
ちなみにこのランプ、ダンジョンから汲み上げられる魔力で起動する魔道具であり、外してしまうと、魔力を注入する部分が壊れてしまうため冒険者達が取ることはない。
もし修理するとしても精緻な作りからその修理にはかなりの経費が必要となり、またランプであれば他の魔道具で代用できることから価値は低かったりする。
閑話休題。
全てダンジョンにおいて第十一階層より下の階層は前座である第十階層までとは違い、複数種類の魔物が群れをなして襲いかかってくる。
加えて魔物達の知性も格段に上がっており、オークまでもが連携をして襲いかかってくる為第十階層までとは比べ物にならないぐらい攻略難易度が高い。
『邪魔だ人間擬きが!!『フローウィングサークル』!』
第十一階層は役職持ちのホブゴブリン、役職持ちのハイコボルト、役職持ちのオーク、リザードマン、アルラウネとこれまで出てきた魔物達が一気に出てくる。
迷宮回廊であるこの場所は成人男性が5人程度は並んで歩ける為、横幅の大きいオークでも他の魔物と並んで襲い掛かれるで死ぬ程めんどくさい。
『チィッ!!『ポイズンバレット』!』
今相手しているのはホブゴブリンソルジャーが5体、盾持ちのオークソルジャーが3体に後衛としてアルラウネが2体だ。
一度に来るのは大体10体前後で今は試しにひとりで相手してるのだがかなりキツイ。
『フローウィングサークル』と『ポイズンバレット』でホブゴブリン2体とオークソルジャー1体は倒したが頭数が減ったことによって個々の自由度が上がり、ここぞとばかりに攻めてくる。
「尾撃」の『斬尾』でホブゴブリンソルジャーの首を跳ねに行こうとしてもオークソルジャーが盾で防ぎ他のホブゴブリンソルジャーが攻めてくる。
それを狙って万里の堅鎖で迎え撃とうとしてもアルラウネの風弾によって軌道を逸されてしまう。
(チッ)
舌打ひとつ、「魔力強化」で身体能力を底上げして力任せに目の前のオークを突き飛ばすと、背後から剣を振りかぶってきたホブゴブリンソルジャーに向かって『翔天』を放つ。
『ゲギャッ!?』
振り下ろした剣の柄をカチ上げると、『翔天』によって浮き上がった身体をぐるんと回して『墜落』でホブゴブリンソルジャーの頭をカチ割る。
その隙に先程万里の堅鎖を放ったホブゴブリンがソルジャー下段から斬り上げてくるが、至近距離で『ポイズンショット』を放って頭部を吹き飛ばす。
『これで残り後5匹!来いや!人間の出来そないどもが!!』
だが、後衛のアルラウネは1体も仕留められてないし、盾の役目を担っているオークソルジャーは2体とも無傷で未だ健在だ。
『『フローウィングブレイズ』!』
アルラウネに向かって今ある手札の中で最も攻撃力の高い魔法を放つが、軌道上に滑り込んできたオークソルジャーによって防がれる。
それでも何の痛痒も与えずとはいかなかった様で、オークソルジャーの身体を隠しきるにはあまりに小さい円盾には大きな傷が入り、オークソルジャーの身体はのけぞった。
アルラウネには『ポイズンバレット』を、ホブゴブリンソルジャーともう1体のオークには万里の堅鎖を放って牽制して、身体を蛇腹の様に縮めると一気に飛び出した。
これはこの数ヶ月間暇だったので編み出した技術だ。
と言ってもそう大したものでもないのだが。
身体を蛇腹の様に縮めて、そこから一気に身体を伸ばすことによって爆発的な速度を生み出す。
蛇が蛇腹の様に身体を畳むというのはダジャレじゃないゾ!
壮絶につまらんしな。
元より俺のステータスの中で最も秀でているのは敏捷であり、そこに蛇腹射出(今つけた)に隠し味として「魔力強化」で身体能力を底上げしている。
それ程距離が離れていない為、オークソルジャーがのけ反りの状態から回復するよりも先にこちらが早く着く。
浮遊している状態から尻尾を前から後ろに叩きつけることで速度は増し、でっぷりとした腹に当たる軌道から上に修正する。
加速した勢いのまま野太い首の横をすり抜けすれ違いざまに『斬尾』で頸動脈を斬り裂く。
パッと血が吹き出て褐色の肌を赤く染める。
意外と血は濁ってるのね、意外と言えば意外。
豚擬きだからもっと鮮やかな血が出るかと思ったんだが、やはり魔物だったというわけか。
俺の血も似た様なもんだったし。
『クソ植物風情が!横槍入れてくんじゃねえ!!』
幾度となくこちらの邪魔をしてきたアルラウネに向かってこれまでの鬱憤を晴らすという決意と共に、加速した勢いのまま突っ込む。
風弾と蔦が襲い掛かるが、風弾は魔力消費による「剛体」で、蔦は飛び出したときに回収した万里の堅鎖で弾く。
途中、最後のホブゴブリンソルジャーがその痩躯を活かしてかなりの速さで追ってくるが、『ポイズンジャベリン』で胸を貫く。
突っ込んだ勢いのまま『波涛』で顔の位置にある花を吹き飛ばす。
もう1体のアルラウネが蔦を使って攻撃してくるが、今倒した頭の無いアルラウネの死体を万里の堅鎖で巻き上げて盾にした後、まだ生きているアルラウネに向かって思い切り投げつける。
結構な勢いで投げられた同胞の死体を蔦を使って受け止めるが、その隙に向かう間合いに入り込み、『翔天』で斬り上げた。
『ラストォ!!』
最後に残ったオークソルジャーに向けて万里の堅鎖を4本バラバラに放つ。
その内2本は盾によって弾かれたが残りの2本はそれぞれ右目と喉に刺さった。
「ふふふっ、どうだ?第十一階層、本当の迷宮は」
『キッツイ。ソロは流石にキツイわ』
これをずっとやり続けるというのは中々にキツイ。
魔物達との技術と知恵の競い合いは楽しくはあるのだが、いかんせん疲れるのだ。
これから先、ずっとこんな戦闘が続くとなると流石に気が滅入る。
「そうだろうな。むしろ今のレベルでこの数相手に大きな傷なく勝利を収めたのは見事と言っていいと思うぞ?」
『そうか?まあ、向こうの知性も格段に上がっていたしオークに至っては役職持ちだったしなぁ』
「そうだ。という訳でこれからは私も戦闘に参加する」
マジでございますか?
正直お嬢がいるだけで効率は倍以上だぞ?
「もちろん本気は出さないし、魔法も下級と中級魔法の一部に収めるがな」
いや、それでも十分ありがたい。
後衛が一人いるだけでも戦闘は随分楽になるというものだ。
それがお嬢であれば尚のこと。
むしろ蹂躙しないかどうかの心配をしてしまう。
ちなみにお嬢は意外と放任主義だったりする。
「別に死んでも「死霊魔法」で生き返らせればええやん?」とか思ってらっしゃる模様。
何で主従揃ってやべー奴になったのか作者も謎




