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魔女の使い魔  作者: 自動機械鮎
第一章 白蛇と魔女
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第二話 邂逅

 取り敢えずテキトーに歩き回ってわかった事がいくつかある。


 一つ、この洞窟馬鹿みたいに広い。  

 丸3日かけても回りきれる気がしない。蛇と言う小さい体も相まってそう感じるのかもしれないが。

 しかも構造が迷路みたいになってるから余計に回り切れる気がしなくなってきた。

 オートマップ、カモン。


 二つ、ここ普通に人が来る。

 と言うかいた。

 これまでに見た人間は全員で三グループ、計8人だ。

 それぞれ4人、3人、1人だったがここからが本題。

 おそらく8人中全員が冒険者や探索者と言われる部類の人間という事だ。

 革鎧や長剣、ローブ、杖、盾などなど如何にも「冒険者やってます!」と言わんばかりの格好からして間違い無いだろう。


 ここで思い出すべきなのは俺が暫定、と言うかほぼ確定でモンスターである事。

 見つかれば高確率で狩られるだろう、何なら皮剥がれそう。

 そうならないためにも隠れ潜んで見つからないようにしなければならない、て言うかそうした。


 三つ、おそらくこの洞窟はダンジョンと呼ばれる類のものであると言う事。

 と言うのも大層ご立派な階段にランタンを持った冒険者(仮)が降りていくのを見たからだ。

 どれくらい立派かと言うと大の大人3人が間隔を開けて歩いても手広なくらいだ。

 ダンジョンでないとすると盗賊の寝ぐらぐらいのものだが、これほど大きい洞窟を拠点として下に住んでいるのだとしたら見張りの一つもいないのはとかしいだろう。

 もし仮に見張りを見つけられていないのだとしてもそもそもの話として冒険者(仮)の緊張感がなさすぎる。

 まあ、実際俺と言うモンスターがここで生まれている時点でダンジョンであることはほぼ確定のような気もするが。


 後、普通の洞窟はこんなに広くないしあんな立派な階段もありません!

 と、分かったのはそのぐらいだ。

 因みにネズミや御同輩() (同じ色はいなかった)を倒したりしてレベルも上がった。

 今のステータスはこんな感じだ。



 Name:

 Level:6

 Phylum :魔物

 Species :ホワイトスネーク 

 HP:43/43

 MP:24/24

 Strength :13

 Vitality :11

 Dexterity :15

 Agility :17

 Stamina :15

 Luck :7

 Skill:

  【耐性系】

    精神苦痛耐性Lv.100

  【魔法系】

    毒魔法Lv.3

    魔力操作Lv.4

  【感知系】

    暗視Lv.4

    熱源感知Lv.4

    魔力感知Lv.1

  【身体系】

    尾撃Lv.2



 祝、全ステータス二桁!

 なお、運は除くものとする。


 スキルの方は不意打ちで『ポイズンショット』を撃ちまくったため、常時発動している「暗視」や「熱源感知」に一歩劣るものの、それなりに伸びている。


 また、「魔力操作」に関しては何か効果があるかも知れないと体内でこねくり回しているので上がっている。

 因みに体外へ出すとMPが消費されてしまう。

 別にまた体内に戻せば問題ないのだが、体外で魔力を操作するのはまだかなり難しいのでやめておいてある。


 そして、「魔力感知」である。

 これは先程魔力を体外に出す、と言うのをやった際に会得したものだ。

 自分の魔力は何となくわかるので、体外に放出したことで周囲の魔力も感知できるようになったという様な感じだ。

 索敵手段が増えてとても便利。 

 索敵範囲としては大体半径5mぐらい。


 さて、先程見つけた階段を降りて見たいと思う。

 理由としてはこの階層のモンスターがそれほど強くないからと言うのが第一だ。

 ネズミに関しては最初から強くは無かったし、御同輩()にしても正直苦戦はしなかった。

 まあ、次の階層でどうしても歯が立たなければ戻ってくればいいだけの話である。

 そう思ってた先ほどの階段へ行こうとしたその瞬間だった。



 そこに絶望があった。

 背後から噴き上がる強烈なプレッシャー。

 ほんのかじった程度の「魔力感知」でもわかってしまう膨大な魔力。

 震える体を抑えて振り向いた先には人影ひとつ。

 そんなに大きくは無いはずなのに、俺にとっては巨人のようにも見えた。

 とんがり帽子を深く被り、鍔で目元が見えず真っ直ぐに引き結んだ口元だけが嫌にはっきり見えるのがかえって迫力を増している。

 暗闇の中で、たなびく赤い長髪だけが輝いて見えた。

 全身をローブで包み、手にはこれまた膨大な魔力を孕んだ杖。

 より注視すれば首にはネックレス、左手にブレスレットと右手にバングルと、やはりこれらも魔力を内包している。


(これは…………死んだかな?死んだか)


 そう悟るのに刹那の時間も要らなかった。

 目の前の人物には俺がどうやっても勝てないことは愚か、逃げることすらままならないのは内包している魔力からも、そして目覚めた時から感じている魔物としての本能からもわかり切っている。

 蛇に睨まれたカエルというものがあるが、蛇である俺がカエルの立場になるとはなんとも皮肉なものだ。


(元々、偶然で拾った命だ。なら、まあ………しゃあないか)


 特別、生への執着があるわけでもなく、何か縋るものがあるわけでもない。

 実際、どう足掻いたところで結果は変わらない。

 戦えばまず間違いなく死ぬし、逃げられるなんて希望はドブ……はないのでそこら辺の通路に捨てた。

 まあ、それでもせめて生き延びる努力はしようかな、とこちらに敵対の意思などないぞと示すためにバンザイ……はできないのでとぐろを巻いて目を瞑った。

 ……これ、投降してますって伝わるかなあ?


(まあ、無駄かなぁ)


 そう思いながら。

 ただ、それは目の前のには人間(死神)には意外に映ったらしく、


「………ん?」


 と困惑の声を上げるのがきこえた。

 まだ殺されていないことが少し意外で目を開きこてん、と首を捻ってみると、


「おまえ、変なヤツだな」


 そう呟いた。


(そらどうも)


 そう、心中で呟く。

 なるべく痛くしないでくれと願いながら。

 後、蛇相手に話しかけるとかあなたも大概変ですよ?とお腹減った、とも呟きながら。

 ……後者はともかく前者は聞こえてたら殺されるんじゃない?


「こいつなら丁度いいか?」


 その心配は杞憂だった様だ。

 ただ、目の前の人物が発した言葉の意味が分からなくて、再び首を傾げると、


「おまえ、私の使い魔になれ」


 目の前の死神(化け物)はそう言った。

 問い返す間も無く化け物(人間)は言葉を重ねた。

 いや、問い返そうにも言葉喋れないんですけどね?


「おまえの好きにしろ。断ったところで殺したりはせん。……まあ、私の言葉を理解しているかどうかは知らんが」


 それは俺からすれば意外な言葉だった。

 なんせ第一印象は「やべーぐらい魔力を内包した超やべー化け物」だ。

 なんなら皮剥がれるんじゃねぇかと危惧する程度にはやべー奴だと思っていたのだから。

 俺は悪くない、そんな琵琶湖かと思うぐらいに魔力を溜め込んでるあんたが悪い。

 魔王みたいなオーラ放ってますからね?アナタ。

 え、本当に魔王的なサムワンじゃ無いよね?


「始めるぞ。嫌なら拒め」


 そう言うと同時に俺と目の前の人間の足元にそれぞれ蒼に光り輝く魔法陣が浮かび上がる。

 それらは周り、周り、互いの魔法陣から同じ色の線がでてきて、つながる。 

 その線が魔法陣の直径と同じくらいの太さになったのとほぼ同時、


「繋ぐ」


 囁くように、歌うように


「意思を、道を、選択を、命運を」


 言葉を紡ぐ


「我らの明日はこれより等しき道を敷く」


 その言葉を発し終えると同時、魔法陣と線は目も眩むほどの光を放つとその形を1人と1匹を結ぶ糸へと変えた。


「誓いをここに、『コントラクト』」


 その言葉を発すのが合図とでもいう様に、糸捻ねじるようにして2人の間を無限の字を描くかの様に、もう一度形を変えた。

 形を変えたかと思うのも束の間、今度は柔らかく、だが確かにそこにあるとでもいうかの様に強く光り輝いたかと思うと溶けるように大気に消えていった。


「これでおまえは私の使い魔だ」


 とんがり帽子の鍔を上げて見せた笑みはともすれば冷たい印象を抱かせるだろう顔も作りとは裏腹に、無邪気な少女そのものだった。

 帽子の鍔からの奥にある蒼い瞳がこれ以上なく美しく見えた。




 ──きっと、俺はこの笑顔に魅せられて、この笑顔がまた見たいと思ってしまったのが全ての始まりだったのだろう


 ──契約の糸はここに


 ──人と魔物を繋ぐ糸は細かに、けれど確かにそこに紡がれたのだ


 ──これは願いの物語


 ──見果てぬ理想を追い求めた1人と1匹の物語だ

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