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魔女の使い魔  作者: 自動機械鮎
第一章 白蛇と魔女
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第二十八話 美少女だと男性陣のやる気が上がる依頼

 ちょっと混乱したギルドマスターに喋れることを説明して、フレデリカよりも若干静かなリアクションが返ってきたところで最後の客が来た。


「すみません、遅れてしまって」


「ウチの馬鹿が寝坊したせいで本当にすみません!」


 謝罪の言葉と共に入ってきたのは男女2人ずつの4人組。

 特徴としては全員が黒い鎧を纏っており、その統一性は軍隊にも似通ったところを見せる。

 黒鎧の4人組ーー「黒鎧の守護者」が先に着いたところでギルドマスターが口を開いた。


「さて、これで全員揃ったな。まずは招集に応じてもらえたこと、感謝する。この場を取り仕切らせてもらう冒険者ギルドイージア支部ギルドマスターのダズリー・グレイフォンだ。今回呼び立てたのは俺からの指名依頼を是非とも受けてもらいたい為だ」


「ダズリーさんからの指名依頼?」


 おそらくは誰もが疑問に思ったであろうことを「黒鎧の守護者」のリーダーと思しき男性が尋ねる。


「そうだ。依頼内容はこれより1年後、カトリス聖遺跡を巡礼なさる聖女アナスタシア・ヴーゲンビリア様の護衛だ」


 ダズリーの言葉に会議室内の空気が強張る。

 

「ギルマス、質問いーい?」


「何だ、フレデリカ」


「依頼内容が聖女サマの護衛だってことは分かった。来年の内容にもかかわらず今通達したって事も依頼内容の重大さから準備が必要だってことから事前に知らせたんだってわかる」


 会議室にいる大半が頷く。

 この世界の聖女とやらが何かは知らないが重要人物だということが分かっていれば今通達した理由も納得がいく。

 では何が分からないのか。

 それはーー


「何でギルマスからの依頼なの?普通は三神教本部かイージア領を統括するアストライア家、それか辺境伯であるテオドランド様が依頼するべき内容でしょ?何でギルマスが依頼するの?」


 そう、そこだ。

 本来であれば護衛を必要としている三神教が護衛を要請するべきだろう。

 もし三神教がいらないと言い、アストライア家が万が一のために護衛を要請するのであればアストライア家名義で依頼するべきであろう。


 ーーだが、


「それだと色々面倒なことになる」


「面倒なこと?」


「ああ、三神教は神聖騎士団の三番隊と五番隊が護衛につくそうだ。一番隊と二番隊は他の任務に行っているらしくてな。まあ、それはいい。ともかく三神教からの護衛はいるわけだ。だが、アストライア家としてはかの聖女様が自分の領地に来るわけだ。そうなればこちらからも護衛を出さないわけにもいかない」


 そう、いくら三神教から護衛が来ていると言っても重要人物が自分の領地に来るのだ。

 もし自身の領地で聖女に死なれては堪らない。

 こちらからの護衛がなくては辺境伯も気が気ではないだろう。


「かと言ってこちらから護衛を出してしまえば今度は別の問題が発生する」


「別の問題、ですか?」


「三神教の取り巻きと他の貴族共か」


 「黒鎧の守護者」の魔法使いと思しき女性が呈した疑問にランデルが言葉少なに答える。


「そうだ。三神教からは既に護衛が送られている。にも関わらずアストライア家から護衛を出すのは神聖騎士団を信用していない証ではないか、とか言い出す輩が現れる訳だ」


「そんな!そんなのただのこじつけじゃないですか!!」


『落ち着け坊主』


 思わず立ち上がって叫んだ「黒鎧の守護者」の青年を諫める。

 だれが?いや、俺だよ。

 だって誰かが諌めないと話進まないし。

 すると青年はキョロキョロと辺りを見回して首を傾げる。


「あー、リチャード。今喋ったのはそこの蛇だ」


 ダズリーが俺を指して言う。

 その言葉に「黒鎧の守護者」皆さんは驚いた様で固まった後、


「「「「嘘ぉ!?」」」」


 とまた随分と息のあった驚き方をした。

 いや、すげえな。

 誰一人として違う言葉を発しなかったぞ?

 息ぴったりすぎません?


「まあ、自己紹介は後ででいいだろう。ルキア、説明してやれ」


『何で俺が?アンタがやればいいだろうに』


 正直めんどくさい。

 お嬢じゃあるまいし説明はそこまで好きと言うわけでもない。


 「ギルマス権限だ。俺はその間少し寝る」


『横暴な……。って本当に寝やがった』


 見れば腕を組んで顔を上に向けながら口を開けてイビキをかいているギルマスの姿が。

 あの野郎……、俺にぶん投げやがって……。

 会って数分の相手にすることか?


『まあいい。で、なんだっけ?』


「神聖騎士団を信用していないんじゃないか、のあたりからだ」

 

 ナイスだお嬢、というかお嬢説明してくんないかあ……説明好きだし。

 あ、でもすごいつまらなさそうな顔してる。

 興味ないのね、にしても顔に出し過ぎじゃないかしらん?


『じゃあ、説明するかぁ。正直な話、こじつけでもなんでもいいんだよ。そういうことを言う奴ってのはアストライア家を貶めたいが為に言ってるのが殆どだ。そいつらからしてみれば真偽の程なんてどうだっていい。要は「アストライア家は神聖騎士団を信用してない」っていうレッテルさえ貼れればそれでいいんだからな』


「ランデルさんの言ってた貴族共ってのはわかった。三神教の取り巻きってのは?」


 飲み込みが早くてよろしい。


『三神教を崇拝しているからこそ神聖騎士団に対する尊敬の念も厚い。だからこそ、そこに辺境伯の息がかかった護衛がくれば面白くないし、自分が尊敬している騎士たちが蔑ろにされていると取る可能性は高い訳だ。こいつらの場合は本気でそう思ってるから余計たちが悪い』


 結論から言ってしまえば辺境伯自身が護衛を依頼するのは色々面倒なことになりかねない。

 そこでギルドマスターことダズリー・グレイフォンに白羽の矢が立ったという訳だ。


『まあ、要するに権力が絡むと面倒くさくなると言う話だ』


 いつの世も人の性根は変わらんと言うわけだ。

 だから俺はそんなドロドロした人間関係が大好きだし、そう言う話を聞くだけでも心がポカポカするのだ。

 ドロドロした人間関係って側からみるだけなら面白いことこの上ないんだよなあ……。


『と、俺の予想は大体こんなところだが付け足すことはあるか?ランデルさん』


「いや、特にはないな。それよりもさっさとギルドマスターを起こそうか」


「そだね。おーい、ギルマス〜。おきろ〜」


 フレデリカがべちべちと頭を叩きながらダズリーを起こす。

 ……今更だけど自分で集めといて寝るってのは何なの?


「ん、ああ終わったか。それでこの依頼を受けるかどうかを聞きたい」


 「いやいや、事実上受けるしかないでしょ?断って聖女サマにもし万が一のことがあったらもうこの街には住めないしねぇ」


 首を振りながら言ったフレデリカの言葉に心の中で同意する。

 というかそれで済めばいい方だろう。

 領主殿の性格にもよるが、最悪腹いせか何かで暗殺者を送り込まれる可能性だってあり得る。

 他の人達も同意見だった様で反対意見は上がらなかった。


「それではここにいる全員に聖女アナスタシア・ヴーゲンビリア様の護衛任務を依頼する。日時は来年の夏頃。依頼の報酬は個々で相談するものとする。それまで怪我なくとは言わないが重傷は負わない様に気をつけてくれ」


 ダズリーの言葉にみんなが頷く。


「それでは解散とする」


 そう言ってダズリーが席を立った。

 その途中、「ああ、まだ仕事が残ってる……。早く帰りたい」とか言っていたのは全員で聞かなかったことにしました。


 


◇◆◇◆◇◆




「しかし聖女様の護衛か……」


 帰宅してから数時間後、夕飯の席でのお嬢の第一声がそれだった。


『その聖女様ってのは具体的にはどんな人物なんだ?』


「聖女アナスタシア・ヴーゲンビリア。年は21歳で現在の三神教内での地位は司教だったか。「召喚の巫女」の二つ名をとる女傑で「召喚魔法」と「治癒魔法」を得意とする。とりわけ「召喚魔法」の技術は並大抵の魔法師では足下にも及ばないと言われていて、高位の精霊の召喚にも成功した実績があるそうだ」


 21歳で司教って凄くない?

 お嬢の説明によれば教皇>枢機卿>司教>司祭>助祭>修道士の順だというから上から三番目だぞ?

 それに召喚魔法か……。

 聖獣でも召喚しかりするのかね?


「慈悲深く敬虔な信徒であり、優秀な魔法使いとしても知られていることから魔法協会でも魔法師として認められていて、社会的な地位はかなり高いといえよう」


 お嬢にしては珍しく絶賛だなあ。

 お嬢の人物評価は結構厳しいところがあり、あまり褒めているところは見たことがないのだが。

 それほどの人物であればこちらとしても護衛のしがいがあるというものだ。

 ……いやまあ、実際に護衛として通用するのはお嬢レベルなんですけどね?

アナスタシアさんは「召喚魔法」と「治癒魔法」に限って言えばお嬢よりも上だったりする

お嬢の専門分野は別だったりしますが

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