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魔女の使い魔  作者: 自動機械鮎
第一章 白蛇と魔女
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第二十話 攻略されるのも悪くない

 挨拶がわりとして向かってきたホブゴブリンソルジャーに向けて『ポイズンショット』をジェネラルに向けて撃つ。

 が、ホブゴブリンメイジの放った炎弾によって相殺されてしまってゴブリンジェネラルはおろかホブゴブリンソルジャーにも届かない。

 

「援護はいるか!?」


『いらん!』


 尋ねてくる声にそう返す。

 ボスとは言え「魔力感知」や体格から見て相手は全て格下だ、この程度であれば自身の戦闘能力の把握にはもってこいだろう。

 オーク相手では正直話にならないのだ。

 放たれる炎弾と矢を躱しつつ、『ポイズンショット』を撃ちながら接近する。


 迎え撃つのはホブゴブリンソルジャー5体とホブゴブリンランサー4体。

 向こうの間合いからギリギリ外のところで止まり、それを見てホブゴブリンソルジャーとホブゴブリンランサーの足も止まる。

 こちらの様子を伺おうとしているのだろうが、そんな時間は与えない。


 『ポイズンヴェール』を自身の身体に付与すると、ぐるん、と体を一回転させて『波涛』を撃とうとする。

 こちらが回転しているのを見て向こうも阻止しようと迫ってくるが、飛んで火に入る夏の虫、万里の堅鎖で脳天を貫く。


 その数はホブゴブリンソルジャー3体とホブゴブリンランサー1体。

 そしてその死体を回転の勢いを利用してホブゴブリンプリーストに集中して後衛組に投げつける。

 だが、こちらの攻撃はまだ終わっていない。


 その大きな尻尾から放たれた『波涛』はホブゴブリンソルジャー1体とホブゴブリンランサー2体の頭を吹き飛ばす。

 これで前衛組はホブゴブリンソルジャーとホブゴブリンランサーが1体づつしかいない。

 仲間がやられたことに怯んだのか、じりじりと足を下げていく前衛組。


(今だ)


 及び腰になっている前衛の隙をついて一気に駆け出し、追い越す。

 向こうが撃ってくる魔法を蛇行しながら交わしつつ、これまで見せていなかった『ポイズンジャベリン』を撃って先に厄介なプリーストを仕留める。

 そのままもう1匹のホブゴブリンプリーストを仕留めようと爆走しようとしたところで、ふっと影が刺す。

 自らの本能に従って前方に向かって『斬尾』を放つとゴオォン、と重々しい音と共にゴブリンジェネラルの大剣とぶつかった。


(チッ)


 心の中で舌打ひとつ。

 しっぽいたい、助けてドラ○もーん。

 痛みを無視して戦略を立て直す。

 元々の戦略としてはそこそこの数をホブゴブリンプリーストが回復できない様な損傷か致命傷を与えて、怯んだところで前衛を追い抜いて後衛を仕留めてから最後に残った前衛とゴブリンジェネラルを倒すというものだった。


 俺のステータスの中で最も数値が高いのは敏捷だ。

 加えてゴブリンジェネラルは鎧を纏っているしオークまでとはいかないものの、そこそこの図体だ。

 それほど早くは動けないから無視して先に後衛を仕留められると思ったのだが誤算だった様だ。

 どんなカラクリがあるのかは知らないが、想定よりも早く動けるということが分かれば充分。


 向こうはこちらを前衛とゴブリンジェネラルで囲む様にして陣形を取り、ゴブリンジェネラルの後方に後衛が固まっているという形だ。

 ……正直言って面倒な状況だ。

 前衛をほとんど倒したとは言え最も強いゴブリンジェネラルは未だ健在。

 ホブゴブリンプリーストは1体削れたものの、ホブゴブリンマジシャンは2体とも残っている。


「ギギャッ」


 こちらが相手方の様子を伺っていると、ホブゴブリンソルジャーとホブゴブリンランサーがジェネラルの指示を受けたのか、こちらに迫ってくる。

 迫りくる剣と槍。

 それを「魔力感知」で察知して振り返らずに『斬尾』で応戦する。


 ゴブリンジェネラルがこちらに踏み込もうとした瞬間に万里の堅鎖を放って防がせる。

 ホブゴブリンマジシャンもこちらに魔法を撃とうとしているのだろうが、斜線上にゴブリンジェネラルがいるため迂闊に魔法が撃てない状況だ。


 前衛と数合打ち合っていると、突如としてゴブリンジェネラルが膝をつき、倒れる。

 見れば口から泡を吐き、目は毒々しい色に染まっている。

 

(やっと効いたか。上位個体とは言え、そこそこ掛かったな。「毒耐性」でも持ってんのか?)


 原因は囲まれた際に最初に放っていた『ポイズンイクリプス』だ。

 この魔法の恐ろしいところは魔法陣が対象の体内に展開されるため、魔力を探る術がないと魔法が使われたということすらわからないところだ。


 ただ、制約として魔法の発動中は対処から視線を外せない為、複数相手では使いにくい魔法ではある。

 最強の護りが崩れたところで前衛も後衛までもが狼狽る。

 その隙をついて前衛の首を『斬尾』で跳ね飛ばし、ホブゴブリンマジシャン2体の首をを纏めて『フローウィングブレイズ』跳ねると最後に残ったホブゴブリンプリーストを『ポイズンジャベリン』で貫いた。


「お疲れ様。華麗にとはいかなかったが、慣れない体でなら良くできたというところだろう」


『『ポイズンヴェール』はいらなかったな。ついでに言うならゴブリンジェネラルの速さが異常だ。ガッチリ騎士鎧着てんのに、なんだあれ』


 労いの言葉をかけてくれたお嬢にそう返す。

 美女からのお褒めの言葉は…まあ、嬉しくないこともないですねぇ、うん。

 いや、普通に嬉しいです、はい。


「ああ、あれは魔道具だな。着用者の敏捷を上げたり、鎧自身の重量を軽くするとかそんなところじゃないか?」


 見れば鎧には魔力が篭っていて、鎧の表面にも何やら文字が刻まれている。


『識別できなかったのは不覚だな。次からは気をつけよう』


「ふふふ、そうだな。とは言え、この2週間でここまで成長したのは素直に誇ってもいいぞ?今なら魔力供給無しでも幼体のジャイアントスパイダー相手に勝てるとまではいかないがそれなりにいい勝負ができるんじゃないか?」


 ここで勝てる、と言い切れないのが歯痒いところだ。

 確かにいい勝負はできるだろう。

 それこそ、もし退却するとなって()()が追いかけてきているような状況であれば役目を果たせるぐらいには強くはなった。

 だが、もう一手が足りない。

 何度頭の中で模擬戦を繰り返しても最後の一手が足りないのだ。


『いつか、倒せるようにはなるんだろうが…』


 それでも今の自分に出来ないことが明確にあるというのはどうにも歯痒い。

 

「まあ、そこは鍛錬あるのみだな」


 ふふっ、と楽しそうな笑みを浮かべながらゴブリン達を解体する。

 しかしいつ見ても魔法陣の上で勝手に魔物の体がバラバラになっていくのは不思議な光景だ。


『そういえば毎回取り出してるその結晶みたいなのはなんだ?』


 ふと、気になったので聞いてみる。

 魔物の心臓から抉り出している黒っぽい石だ。

 それは一見すれば色付きの水晶のようにも見える。


「ああ、以前説明したことのある魔石だ。一般的に家具として使われるような魔導具にはこれが燃料として使われる。魔物の心臓内部に埋まっていて、前にも言った通り高位の魔物程その教養魔力量は多い。そうだな、言ってしまえば水をくむ桶のようなものか。桶が魔石で水が魔力だ」


 ああ、そう言えば説明してたことがあったなぁ。

 イージアの警備隊の詰所から出てきたときにそんな事を言ってた気がする。

 何というか2週間とは思えない程時間を長く感じる。

 転生してからまだそんぐらいしか経ってないんだなぁ。

 

「さて、解体も終わったしそろそろ行くか」


 魔石を宝物庫に仕舞ったお嬢が早く行こうぜと言うような顔で催促する。

 いや、何でアナタが嬉しそうなんですかねぇ?


『了解、お嬢』


 そう一言告げて彼女の後ろを追った。

 ちなみに宝箱の中身は所有者の魔力を高めるブレスレットだった。

 お嬢はもっと性能の良いやつ持ってるから後で売るとか。

 ブルジョワめ………。




◇◆◇◆◇◆




 コルテカの迷宮第九階層。

 そこは無秩序にゴブリン達が暴れていた第二階層とは違い、確固とした()()を形成したゴブリン達が徘徊する階層。

 加えて言うのであればゴブリン達は全てホブゴブリンの、しかも「役職持ち」でそれらをリーダーが指揮している。

 ()()とまで洗練されてはいないが、それでも片手で収まる人数でかかるには少し難儀なところではある。

 

「援護はいるか?」


『んー、お嬢が危ないと感じたら頼む。それまでは独力でやらせてくれ』


 数は暴力だ、技術とは財産だ。

 故にその2つを手にしている彼らはひとりで挑むのは苦戦を免れないだろう。

 だが、それこそが俺の求めていたものだ。

 ステータスが上がっただけでは本当に強くなったとは言えない。

 勿論、ステータスの上昇やスキルの獲得は歓迎するべきだし率先してやるべきだ。


 だがそれだけでは足りない。

 ジャイアントスパイダーの時のように、いずれ自身よりも何もかもを上回った敵と対峙する時が来るだろう。

 その時に頼るのはステータスやスキルではなく、それを使う自分自身だ。

 どんなに強いステータスやスキルを持っていたとしてもそれらを十全に使いこなせないようではいつまで経っても格上には勝てない。


 力に使われるのではなく、力を使いこなすようにならなければならない。

 故に、矮小なその身で戦う彼ら(ゴブリン)は俺が成長する為の良い糧となるだろう。


「わかった」


 きっと俺の意図を全て汲み取ったわけではないのだろう。

 それでも俺の意思を尊重してくれることが何よりも嬉しい。

 あれ?俺なんかギャルゲーのヒロインみたいな立ち位置になってない?

 大丈夫?俺攻略されてない?


 だってお嬢の主人公力高いし、内面イケメンだし。

 やばい、このままでは俺が寵愛を施されてしまう…。

 こう、主君と騎士の身分差恋愛みたいな。

 あれ?そしたらどっちかっていうと俺が口説く方じゃない?

 「主………お許し下さい……!!」みたいな感じで。

 あ、でもお嬢が攻めもありか?

 妄想が膨らんでしまうと止まらなくなってしまうのでここら辺にしてホブゴブリン達を狩るとしよう。

ジャイアントスパイダーの幼体に勝てたのは相手が木をぶった斬って自滅したこと、木を引っ張るのと毒でお風呂作るだけの魔力を供給してもらえたこと、土の槍だった為その殆どの毒が土に吸収されていたこと、ジャイアトスパイダーが「毒耐性」を持っていなかったことetc…など、かなりの運要素が絡んでいます。

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