第一話 ブラック企業戦士の転生
時系列はプロローグだけが結構後のお話で、今回の話からは普通に進みます
どうと言うことはない。
ネット小説を漁れば履いて捨てる程見れる異世界転生というやつが俺にも来たと言うだけの、ただそれだけのお話。
高校二年生の俺は一月前にできた初めての彼女とのデートの途中、突っ込んできたトラックから彼女を庇って死亡……なんてことはなく。
なんなら年齢は倍ぐらいサバ読んでるしね?
そんなカッコいい死に方ができれば言うことはなかったんだが。
まあ、アラサーのおっさんが「大丈夫大丈夫」とか言って無理してたら過労死したと言う何の面白みもない死に方だ。
3連続徹夜で仕事してたら眠るように死んでしまった。
1日に3時間ぐらい睡眠とってたらあと2年ぐらい持ったのかなあとか考えてしまうあたり、社畜に染まっているなあと思わないでもないがそれはともかく。
妻もいなければ娘もいない恥の多い人生を送ってまいりました……。
別にいいもんね!生涯童貞だったわけじゃないし!
いや、んなこたどうでもいいんだ。
転生したというのも不思議と自然に受け止められたのは果たして行幸と言うべきかどうか。
会社と自宅を往復するだけの生活だったし、両親はすでに他界して兄弟もいないから特別未練もなかった。
唯一あるとすれば積みゲーしていたエロゲの山を崩せなかったことぐらいか……無念!
……そう考えるとだいぶ悲しい人生だったがそれはさて置き。
問題は俺が転生したことだ。
まあ転生したということに疑問なんざ持っていても仕方がないので、ここで問題となるのは俺が何の種族に転生したかと言うことだ。
オーソドックスに人間か?だったら苦労はない。
文化の違いはあれど自分の姿形が種族レベルで変わってる訳でもあるまい。
なら、こないだアニメ化されたお話よろしくスライムか?
いや、俺は後輩とその恋人を凶刃から救ったわけでも無ければ、死に間際にパソコンのデータ抹消を後輩に頼んだ訳でもない。
………そういや、俺のパソコンのデータ大丈夫かな。
見られて困るもん?あるに決まってんだろ、馬鹿野郎。
エロゲーとかエロゲーとかエロゲーとか。
話を戻そう。スライムはスライムで面倒くさそうだなぁ。
動きにくそうだし。つか、目ないし。
まあ、何に転生したかと言うと…蛇だ。
うん、まあ驚きは無いよね。うん。
いや、でも蛇って便利ね。
周囲の温度とかわかるし、急な段差でもこう…ニョロっと登れるし。
時間とかはわかんないけど。
さて、俺が生まれたところは洞窟のようで、空気がひんやりとしている。
所謂鍾乳洞的なアレではなく、盗賊とかがねぐらにしてそう、と言えば何となく想像がつくだろうか?
んで、物は試しとネット小説の定番として頭も中で「ステータス」って唱えたらあら不思議、アクリル板みたいなのが出てきてステータスが書いてあったの。
おじさんびっくり。
………。
いや、まあそんな訳で出てきたステータスがこちら。
Name:
Level:3
Phylum :魔物
Species :ホワイトスネーク
HP:25/25
MP:17/17
Strength:7
Vitality:5
Dexterity:9
Agility:11
Stamina:9
Luck:7
Skill:
【耐性系】
精神苦痛耐性Lv.100
【魔法系】
毒魔法Lv.1
魔力操作Lv.1
【感知系】
暗視Lv.2
熱源感知Lv.2
【身体系】
尾撃Lv.1
いや、うん。
これ見て絶句したよね、うん。
名前がないのはまあ、分かる。確定ではないけど多分魔物だし。名前付きの魔物っていわゆるネームドモンスターって奴じゃないの?多分。
Levelが3なのはそこら辺うろちょろしてるネズミ数匹食ったら上がった。
いや、意外と美味いよネズミ。
生前まだ仕事に余裕があった頃、南米行って食った時は鶏肉みたいだった。
いま?いや、生ですしおすし……。
腹が膨れれば味なんて大した問題じゃないよネ!
話を戻そう。
種族がホワイトスネークって大分安直だなーっておもうけど、まあわかる。
あ、今俺体真っ白なのね、体長は30cmぐらい。
下のステータス欄もわかる。強いて言うなら運低くない?ってぐらい。
問題はてめーだよ、「精神苦痛耐性Lv.100」。目玉飛び出るかと思ったわ。
まあ、要するにアレだ。恐怖とか萎縮とかに対する耐性って奴でしょ?つまりストレス耐性。
でもLv.100はないわー。
まあ…、多分社畜としての経験が生きてるんだろうなーとは思う。
いっつも面倒な仕事押し付けてきた上司の五十嵐は未来永劫許さんよ、ハゲろ。
そんでもって奥さんに逃げられてしまえ。
明らかにやべースキルがこれだけなのは、いわゆる無双とかが出来ないようにと言うことだろう。
誰がどうしてそんなことしたのかは分からんが。
……にしても高すぎません?
あとのスキルはまあ、蛇だし。
毒が魔法なのは意外っちゃ意外。
まあ、ファンタジーだし魔法は使ってみたいという欲はあるので内心結構嬉しかったり。
試してないのでこれから試す。
「魔力操作」はやっぱりファンタジーだし、MPあるから使えるのは普通かな、と。
因みに他は全部試した。
まあ、「暗視」と「熱源感知」は常に発動しいる。
「暗視」はまんま。暗いとこでも目が見えるって言う。
洞窟の中はろくに光源がないのでこれ無かったらなにも見えなかっただろうから助かってる。
「熱源感知」は視界にサーモグラフィーが重なる感じ。
かと言って、視界が遮られないのかというとそうでもなく……いい感じに見えてます、はい。
「尾撃」ネズミにぶっ叩いて試してみたけどはあんまり実感が無かった。
スキルが発動してるのはなんとなく感覚的に分かるんだけど劇的な変化がないと言うか……。
「魔力操作」はこう、体の中のゼリー状の何かを動かしてる感じ。
「精神苦痛耐性」?無視に決まってんだろ馬鹿野郎。
と言うか試そうにもどう試せばいいのか分かんないし。何なら耐性スキルだから効き目がわからん。
まあ、強いて言うのであれば転生してるのにあんまり動揺してないあたり、発動してるのかな?とは思うが。
さて、「毒魔法」の試射に移ろうと思う。
スキルの発動の感覚は他のスキルでわかってる。
対象スキルを意識してそれに則した動作をとる。
ただ、魔法の場合は少し異なるようで、それに加えて魔法の名前と効果を明確に思い浮かべて出現した魔法陣に魔力を注ぐ必要がある。
何でわかるの?と言われても分かるからとしか言いようがないが…。
因みに今使える「毒魔法」は一つだけで名前は『ポイズンショット』。
効果は名前の通りで毒を弾丸状にして飛ばす。以上。
どの程度の毒の強さと速さなのかはわからない。
ので、これから試す。
では、いざ。
「ヂュッ」
狙いはさっきからそこをうろちょろしているちっこいネズミ。
魔法をイメージ。
その瞬間、目の前に魔法陣が浮かび上がった。
色は毒よろしく紫色に発光して、円の中に書かれた文字は複雑怪奇を具現化したよう。
生前に教科書で見た象形文字を彷彿させる魔法陣はくるくると俺の目の前で回っている。
魔法陣に魔力を注ぎ込む。
それから一秒にも満たない時間の後、魔法陣から毒の弾丸が発射され…
「ヂュッ」
ネズミは避けた。どころか、見当違いの方向に飛んでいった。
うん……、ちゃんと狙って撃たないとダメですね、ハイ。
襲いかかってくるネズミ。
だかまあ、恐れる必要はない。
飛びかかり、浮遊している時が狙い目。
(あらよっと)
ネズミの横っ面に「ベチィン!」と鱗に覆われた尻尾を叩きつける。
あ、こうして見ると俺の尻尾綺麗だなと思う。
純白の尻尾は暗闇の中でもキラキラと輝いてーーネズミの薄汚れた灰色がそれを台無しにする。
おい、空気読めや。
だいぶ無茶苦茶なことを考えつつ尻尾に力を込める。
吹っ飛ぶ、とまではいかないが軌道を40°ぐらい逸らされるネズミ。
そこでもう一度『ポイズンショット』を撃つ。
今度はきちんと狙って。
ネズミから視線を逸らさずに放たれた弾丸は「ベシャッ」と言う音を立てて壁にぶつかったのとほぼ同時に着弾。
「ヂュァアッ!?」
と言う声とともに落下してまたしても「ベシャッ」と言う音を立てる。
『ポイズンショット』が着弾した頭部を見れば貫通はしていないものの、凹んでいる。
うわ、グロ。
ビクン、ビクンと1分ぐらい痙攣していたがやがて動かなくなった。
うーん、ネズミがどれくらい強いのかにもよるけど普通に使える。
のこりのMPを確認するためにステータスを開いて見ると。
Name:
Level:3
Phylum :魔物
Species :ホワイトスネーク
HP:25/25
MP:11/17
Strength:7
Vitality:5
Dexterity:9
Agility:11
Stamina:9
Luck:6
Skill:
【耐性系】
精神苦痛耐性Lv.100
【魔法系】
毒魔法Lv.1
魔力操作Lv.1
【感知系】
暗視Lv.2
熱源感知Lv.2
【身体系】
尾撃Lv.1
MPが6減っていた。
つまり、『ポイズンショット』一発撃つのにMPが3必要になる。
今のままだとまあそこそこ重い。
MPの回復速度にもよるが。
まあ、何はともあれ自身の確認は済んだ。
次は現状の確認だ。
今、俺は転生した。
これはほぼ確定したと言っていいと思う。
まあ、ゲームの世界に放り込まれた可能性もなきにしもあらずではあるがそれにしてはリアルすぎるので却下。
つーかゲームの中だとしてアバターが蛇ってのはどうよ?
次にここ。
おそらくは異世界、あるいは色々変わった地球。
正直なところ、生前とは別世界と認識しておけばいいだろう。
ぶっちゃけどっちでも大して変わらん。
今は洞窟にいるが、此処がいわゆるダンジョン的な場所なのかどうかもわからない。
よって、当面すべき事はこの洞窟と周囲の調査。
加えて何が起きてもいいようにレベル上げだろう。
取り敢えずは奥へ行ってみようか。
「転生」したのに主人公冷静すぎじゃね?と思ったらそこのあなた。そのうち説明します。だからせめて今更新している最新話まで見て頂けるととても嬉しいです。一章と二章の中盤まではほぼダンジョンなのでちょっと退屈かもしれませんが、お仕事や勉強の息抜きなんかに読んで頂けたらと
なに?「鑑定」のスキルがない?んなチートスキルは拙作では認めません。と言うかそこらに個人情報無断閲覧スキルがあってたまるかということで。パソコンの履歴とか勝手に見るのはよくないと思います!(結構関係ない)
ちなみに魔法系のステータスは本作では存在しません。魔法の威力は魔法の種類、込めた魔力量、そして術者の工夫なんかで決まります。
7/27にステータス表示を大幅に変更しました。ぶっちゃけ作者が見にくいって思ったから変えただけなんで、ストーリーに変更とかは特にないです