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魔女の使い魔  作者: 自動機械鮎
第一章 白蛇と魔女
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第十六話 ダンジョン

ぶっちゃけ第一章は世界観の説明と主人公の修行パートみたいな色が強いので退屈かもしれませんが、主人公の戦い方の変異を楽しんでもらえたらと思います

 コルテカの迷宮第7階層。

 そこは第二階層と同じく草原が広がる場所である。


「ブモォオ!!」


 豚の頭に人間の男の体をした2m程の背丈をした魔物──オークが棍棒を振りかぶる。


『シイッ!』


 横薙ぎに尻尾を振って迎え撃つのは、丸2週間迷宮に潜って魔物を狩り続けて体長が60cm程まで大きくなった白蛇──ルキアこと、どうも俺です。

 激突する尻尾と棍棒。


 しかし、いくら成長したとは言え向こうは2mの体格の持ち主の上に、肥大した腹から分かるように質量も相当だ。

 ついでに言うならば身長差からして、どうしてもこちらはしたから迎え撃つ形になる。

 まともに打ち合えばこちらが押し負ける。


 だが、卑劣な策を弄することにはお嬢からの定評がある俺だ。

 誰がまともに力比べなんざするものか。

 ………ていうかお嬢ひどくない?

 仮にも俺、あんたの使い魔ですぜ?

 せめてもうちょっとオブラートに包んでくれてもいいのよ?

 

「ブモォオ!?」


 だがそれはそれ、これはこれ。

 それが効率的であるならば基本それを選択するのが俺の信条というもの。

 激突したと言ってもこちらがぶつけたのは棍棒の側面だ。

 こちらの体に当たる軌道を曲げるように尻尾に力を込める。


 地面に突き刺さる棍棒、タタラを踏むオーク。

 そしてその隙にオークの足を伝って背中を這い、首元まできた所でギリィ、と首を絞める。


『チィッ、流石に堅いな』


 ゴブリンなんかであれば首を絞めればボキリと首の骨が折れるのだが、そこはさすがオーク。

 首を絞められて尚、こちらの胴体を外そうと首に手を伸ばしてくる。


 だが、それは想定内。

 この太い首をそう易々と折れるとは思ってはいなかった。

 まあ、ワンチャンあるかなーぐらいには思ってはいたが。

 しかし想定さえしていれば対策は立てられるというものだ。

 

「グッ、ボオォ!?」


『やらせるものかよ』

 

 伸ばしてきた両方の掌に万里の堅鎖の杭の部分を突き刺し地面に縫い付ける。

 更に鎖の部分を首に巻き付け絞めあげる。

 こちらの胴体と鎖二本で絞めあげること1分。

 ズドン、とその巨体故に重々しい音を立てて事切れた。


『こいつが第七階層のボスだよな?』


 コルテカの迷宮では各階層ごとにその階層の一番奥にある宝箱と次の階層を守護するボスがいる。

 他のダンジョンだと3階層ごとだったり5階層ごとだったりするらしいが。

 宝箱の中には宝石だったり武器だったり、中には現代では再現できない技術で作られた魔導具が入っていたりするのだとか。


 当然のことながらボスは階層を彷徨いている他の魔物よりも強く、それだけ得られる経験値が多いため、武者修行とかをする人間なんかは片っ端から喧嘩を売って行くのだとか。

 今の俺とたいして変わらんな。


 ちなみにどのダンジョンにも第一階層にはボスが存在していないらしく、一説には第一階層はあくまで入り口である為守護する必要がいなのだとか。

 第二階層はビッグラット、第三階層はコボルト、第四階層はブラックウルフ、第五階層はゴブリンソルジャー、第六階層はゴブリンリーダーがボスとして出てきた。


 ビッグラットはただのでかいネズミ、ブラックウルフまではアルフの森で戦ったことがあったので、結構簡単に仕留められたのだがゴブリンソルジャーは今までのようなただ振り回すだけではなく、きちんとした技術を持っていたのでかなり手こずった。

 鱗を浅く斬られてしまったのでお返しに万里の堅鎖で尻の穴から串刺しにしてやったが。

 こんなことばっかやってるからお嬢に卑劣だ何だと言われるのかねぇ。

 まあ、続けるけど。


『ああ、そうだ。第八階層からはこのオークが徘徊する。もっともボスになった魔物は通常と比べて魔力量や身体能力も大幅に上がる。だからここまでは強くはないが、複数相手するときは気を付けてかかれよ?』


 アークが守っていた階段の奥の宝箱から何やらアクセサリーのような物を取り出したお嬢がそう言った。

 見てみるとルビーのネックレスだったようだ。

 売れば金になるなとか、せいぜい吹っかけてやるかとかあくどい笑みを浮かべていたおじさんは見なかったことにしよう。

 つか、誰にふっかけるんですかねぇ?


『了解。ただその前に飯にしないか?そろそろいい時間だろう』


 するとおじさんはローブの中から懐中時計を取り出して時間を確認する。


『そうだな、そうしよう』


 そういうと宝物庫の中からパンを取り出した。

 この2週間パンとスープ、後はウルフ辺りの肉を焼いて食っている。

 ゴブリンやコボルトは肉が臭くって変えたものじゃないのだ。

 人型の肉を食うって結構抵抗あるよね。

 元はと言え人間だった訳だし。


『あ、そう言えば』


 何か思い出したようにお嬢が呟く。


『どうした?』


『オークの肉は旨いぞ』

 

『よし、食おう』


 前言撤回、人型だろうがなんだろうが「旨い」という言葉の前には倫理観など紙ほどの抵抗すらないわ!

 と言うか俺魔物だし?人じゃないし?なら別にいいよね!!

 などと盛大なブーメランを投げつけている場合ではない。


『お嬢!解体はどうする?手伝うか?』

 

『いや、すぐ終わる』


 すぐ終わるって、そんな巨体がすぐに解体できる訳ないでしょ、なんてことは言わない。

 どうせこの人のことだから魔法やらを使って秒で終わらすんだろう。

 短い付き合いといえど、大体丸2週間ほど共に行動していればそれぐらいの予測(諦め)はつくと言うもの。

 俺はもうお嬢に常識なんてものは求めない。

 

「かの肢体は我が意に従い分けられん。『セパレート・ボディ』」


 オークの死体の下に白い魔法陣が浮かび上がったかと思うと、オークの死体がバラバラに切り裂かれていた。

 ただ切り裂かれているのだけではなく、皮は剥ぎ取られ、骨は綺麗に肉と分離されていて、肉はブロック状に切り分けられている。


『おー、すげー』


 賛辞にふふんと自慢げに鼻を鳴らしたお嬢が、その中からブロック状の肉の4つを宝物庫から取り出した串に刺して、竈門の火であぶった。

 大丈夫?火力強すぎない?と思ったが、そんな心配は杞憂だったようで、火力を調節して炙られた肉は香ばしい香り立てて、思わずふたりして「「ジュルリ」」とよだれを啜ってしまった。

 炙ること数十秒、オークの肉はいい加減で火が通っていた。

 

『さて、食うか』


『ああ』


 万里の堅鎖で串を持って肉に牙を突き立てる。

 すると口の中に肉汁があふーー以下略。

 おいしかったです、まる。

 取り敢えず語彙力が「美味い」だけになるぐらいにはおいしかったと言っておこう。

 A5ランクのステーキってのはこんな感じなのかなぁ、と思った。

 串焼きだけど。


『しかしお嬢、ダンジョンってのはどの階層も全部同じような階層なのか?第一階層を除けばみんな平原だったが』


 食べながら少し気になったことを尋ねてみる。


『いや、ダンジョンにもよるが大体十階層毎に変わると言われている。このコルテカの迷宮は第十一階層、第二十一階層、第三十一階層で変わると言われている。現在、最深到達階層が第三十七階層だからそこまでしかわかっていないが、おそらくその先も同じようなものだろう』

 

『なるほど』


『このコルテカの迷宮は第二階層から第十階層までか平原。第十一階層から第二十階層までが迷宮回廊。第二十一階層から第三十階層までが森林。第三十一階層から第三十七階層までが砂漠だ。ここが「迷宮」と名付けられたのは第十一階層からがこのダンジョンの本質だからだ』


 ヤバイ、結構面白くなってきた。

 ダンジョンの階層ごとの話だけでもこちらの戦法、敵の魔物の種類について考えを巡らせるのでちょっとワクワクしてしまったのにそこにきて「本質」ときたものだ。

 

『本質、か?』


『そうだ。このダンジョンは第十一階層から一気に迷宮化する。罠、トラップの類は当たり前。モンスターハウスや謎解きなどが出てきて、魔物の知能も格段に上がる。斥候無しでの探索は自滅行為と言われるぐらいだ』


 なる程、それ故の「迷宮」か。

 ………ん?

 ちょっと待って?


『お嬢、斥候役できるのか?』


 お嬢は正真正銘、魔法使いだ。

 いかにも魔女然とした格好で斥候役とか、正直想像できないんだが…。


『できないが、だからと言ってその対策がない訳じゃない』


『ほう?で、その対策ってのは?』


 まあ、どうせ魔法でなんとかするんだろうが。

 だが、これに関しては具体的な方法がまるで見えない。


 魔力探知かと一瞬思ったが、あれは返ってくる魔力の波を知覚して周囲の地形などを探る技法だ。

 そして、その精度は結構曖昧なものらしい。

 この魔力探知は返ってきた魔力を肌で感じる技法だ。

 魔力に慣れ親しんでいるお嬢だから可能な技術であって、そのお嬢も万全に使いこなしているとは言えないらしい。


『それは、現地でのお楽しみだ』


 そう、悪戯っぽく笑った。

 チクショウ、可愛いとか思っちゃったじゃねえか。

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