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魔女の使い魔  作者: 自動機械鮎
第一章 白蛇と魔女
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第十五話 フ・ラ・グ♪

志村けんさん…。

もう、英語禁止ボウリングは見れないのか…。

 コルテカの迷宮第一階層の洞窟の中で夜を明かす。

 あの後、気まずくなりながらもコルテカの迷宮に入ったのが日暮れ前。

 取り敢えず第一階層だけでも今日中に突破しようと言うことになって第一階層を進んだ。


 いや、気まずいのなんの。

 自業自得なのは分かってるんだが、それにしたってこの空気の重さよ。

 何とか会話が成立するまでには至ったものの、未だにぎこちない空気の今日この頃。

 それでも何とか第一階層を踏破して、第二階層へ続く階段を見つけたのがついさっき。

 もういい時間だし、飯食って寝ようと言うことになったのだが…。


『…………………』


「…………………」


 ひたすらに気まずい。

 ヤバイ、今までどうやって喋ってたんだっけ?

 コミュニケーションが苦手というわけではないのだが、流石にこんな状況に陥ったのは初めてだ。

 

『あー、お嬢』


『ん、何だ?』


 あら、意外と普通の反応。

 ヤダ、自分だけ気にしてたみたいで恥ずかしい!

 思春期の中学生じゃないんだから。

 なお、お嬢の耳が赤いのは見なかったことにします。


『明日以降の予定を聞いてもいいか?』


 こういう時は事務的な話題から入るに限る。

 お嬢が指輪ーー本人曰く、宝物庫という魔道具らしいーーから取り出したパンを食べながら聞く。

 

『ああ、明日は第二階層に行って出来るだけ下へ潜る。ただ、今回の目的はおまえのレベル上げが主だ。なので基本的には私は手を出さない方向でいく』

 

『わかった。最終的にはどこまで潜る?まさかこの迷宮の全階層踏破する、なんて言わないだろう?』


 流石にないとは思うが一応確認しておく。

 というか今回の目的が俺のレベル上げとか、今初めて知ったんですけどね?

 いや、お嬢がほとんど手出ししてこなかったし、第一階層でもネズミやら蛇やらを狩ったのは殆ど俺だったから何となくは察してたんだけどね?


『私を何だと思ってるんだ。それに食糧の関係もある。出来るだけ魔物の肉やそこら辺に生えているもので、食えるものを食っていこうと思っているが、それでも限界があるからな』


『いや、ここ何にも生えてないぞ?』


 そう、第一階層はただの洞窟だ。

 食えるような植物なんて一つも生えてたりはしない。

 つか、食物連鎖どうなってんだ?

 まあ、魔物だからで納得しとくか。

 お嬢に聞くと話長くなりそうだし。


『第二階層は草原だ。食用や薬、毒の原材料となる植物も生えている』


 …マジか。

 薄々予感してはいたが、このダンジョン思いっきり環境が変わるタイプのヤツか。

 となると、敵に合わせて戦法を変える必要があるか…。

 まあ、森の中でも同じようなものではあったのだが、今回はダンジョンだ。

 より多くの種類の魔物が出てくると考えてかかった方が賢明だ。

 

『そういやお嬢。魔導ってのはなんなんだ?』


 ふと、気になったことを口にした。

 あの時、お嬢は自らの大切なものの中で『魔導への到達』と口にした。

 それを口にしたときのお嬢の顔は苦々しく、それでいて眩いものを見るような顔をしていた。

 

『魔導は………。すべての魔法使いの目指すべき終着点であり、悲願だ。魔法よりもひとつ上の段階にあるモノ、魔王すらをも殺すと言われている超常の力だ。それを使える者を敬意を表して魔導師と呼ぶ』

 

『魔王?』


 また新しい単語が出てきた。

 この世界での魔王ってのはまた凄そうだ。

 何せ俺からすればバケモノとしか呼ばないようなお嬢が、バケモノと呼ぶ魔導師ぐらいでなければ殺せないモノなのだ。

 正直、想像がつかん。

 ジョブ:魔王みたいな感じではないのだろう。

 この世界ってRPGとかでよくある職業とか称号とかってないからなぁ。


『魔王は文字通り魔物達の王だ。魔王一体で国三つの兵力と釣り合うと言われている、こっちも超常の存在だ。現在六体が確認されていて、三神教の教義曰く、それぞれが「罪」を司っているそうだ』


 六体…、数的に7つの大罪か?「罪」と言っているし。


『ちなみにアルフの森にも2体いるそうだぞ?』


 悪戯を仕掛けた子供のような表情でそう言う。


『…マジか』


『まあ、アルフの森の最深部にいるらしいから会うようなことは万に一つも無いだろうがな』


 ……Oh

 お嬢、それを俺の生前の世間一般ではフラグと言ってだね?

 いや、何も言うまい。

 なるようにしかならんのだから、せめて会わないことを祈るしかあるまいよ。

 ………でも会いたくねえなあ。

 そんなことを考えているとお嬢がふあぁ、と可愛らしい欠伸をした。


『昨日徹夜したんだろう?もう夜だし寝とけ。この階層ぐらいの敵だったら俺だけでどうとでもなる』


『だが…』


『なに、生憎と徹夜には慣れていてな。生前は3日ぐらいの徹夜なら日常茶飯事だったもんよ』


 こんな所で生前の経験が生きるとは、人生わからないもんだ。

 蛇だけど。

 それはそれとして、俺に仕事押し付けてさっさと帰った林田は未来永劫許さんよ。

 そのせいで丸一週間仕事場で寝泊りすることになったんだ。

 その後、真面目に黒魔術を勉強しようかと検討したのはここだけの秘密だ。


『それに、少しぐらいは臣下としての格好をつけさせてくれ』


 主よりも先に臣下が寝るなどあってはならないことだ。


『ふふっ、そうだな。それもそうだ。なら、せめて防音の結界を張っておくから。好きなだけ物音立てても構わん』


 俺がお嬢を起こしてしまわないか、と言う心配をさせないための気遣いであろうが……。

 うーん、このイケメンっぷりよ。

 疲れていても気遣いを忘れない主人の鑑。

 ああ、こんな上司が欲しかった……。

 

『それじゃあ、おやすみ』


『はいよ、おやすみなさい』


 かつん、と杖の先端で地面叩いて魔法陣を起動させた後、お嬢はそう言うと三角帽子を深めにかぶって壁に寄りかかって眠り始めた。

 ………。

 いや、寝るの早いな!

 寄りかかってから2分ぐらいしか経ってないぞ?

 好きな時に好きな場所で寝られる能力とは、冒険者としては貴重な能力なのかもしれないな…。


 (さて、それじゃあ任されたお仕事はきちんとこなすとしますか!)


 そう心の中で呟くと、近寄ってきたグレイラットに向けてまだ操作に慣れていない万里の堅鎖を発射した。




◇◆◇◆◇◆




「んぅ、ふあぁぁ………おはよう、ルキア」


『おう。おはよう、お嬢』


 寝起きの美女、と言うのを見れただけでも一晩不寝番を引き受けた甲斐があったってもんだ。

 惜しくらむはお嬢が寝巻きじゃないことと、ベットで寝たときの服の乱れ具合が見れないことか。

 家に帰ったら絶対にみよう、そう思いました、まる。

 

『それじゃあ、朝食にしようか』

 

 そう言って宝物庫からパンとスープを取り出す。

 少し考え込むと、今度は宝物庫の中から鍋を取り出す。

 そして次は杖を持って蓮の彫刻がしてある方を地面に向けると、


「象れ、『クリエイト・ソイル』」


 その直後、地面に土色の魔法陣が広がりそこから土が盛り上がってきて、最終的には竈門を形成する。


「『ファイア』」


 続けて唱えると、竈門に火が灯った。

 お嬢は2つの器の中に入ったスープの中身を鍋に移すと、鍋を火にかけた。


『これでよし』


 満足そうに言うお嬢。

 ただ…、


『お嬢』


『ん?』


『今の魔法はなんだ?』


『何って……『クリエイト・ソイル』と『ファイア』だぞ?別に私が作った魔法でもないし…。魔法大全に乗っている初級の魔法だ』


 お嬢が頭の上に疑問符を浮かべながら答える。

 魔法大全はこの際無視、と言うか考えりゃ解る。

 いや、そう言うことじゃなくてだね?

 これは俺の質問の仕方が悪かったのだろう。

 おじさんは魔法そのもののことを聞いたわけじゃなくて…、


『詠唱、短すぎない?』


 そんな一語とかじゃなくて、魔法の詠唱はもっと長ったらしかったはずだ。

 と言うか『ファイア』に関しては詠唱すらしてなかったし。

 すると納得したような顔で、


『ああ、「詠唱簡略」のスキルだな。魔法を使用する際の詠唱を簡略化、及び丸々飛ばすことができるスキルだ。とはいえ、丸々飛ばすことができるようになるには相当な技量が必要だ。私は『ファイア』ぐらいでしか丸々飛ばすのはできない』


 そう言うこと。

 おじさん納得。

 それからパンとスープを食べながら今日の予定を決める。


『取り敢えず今日は第二階層に降る。で、おまえが苦戦するような階層になるまでひたすら降る。その階層になったらそこでひたすら狩りだ』


 …うはあ、スパルタ。

 だが、それぐらいで丁度いい。

 いや、むしろぬるいぐらいだ。

 高み(お嬢)を目指すのであれば少しでも強い相手であったほうがいい。


『承知した、お嬢』

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