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魔女の使い魔  作者: 自動機械鮎
第一章 白蛇と魔女
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第九話 ところでその穴クトゥルフ的なヤツ出てきたりしませんよね?

 窓から差し込む朝日を受けて目を覚ます。

 むくりと起き上がった俺の目に入ってきたのは真っ白なシーツと枕…ではなく、昨晩四苦八苦して明かりをつけた覚えのある趣味のいいテーブルランプだ。


 昨夜、お嬢の寝室に入ったはいいものの、流石にベッドで寝るのはいかがなものかと思い体のサイズ的にもここがちょうど良いとテーブルランプの上で鳥栖を巻いて眠ったのだ。

 使い魔とはいえ会ってまだ1日も経っていない相手の寝床に、主のいないところで寝るのは如何なものかと思ったのだ。

 …まあ、一緒に風呂に入った時点で如何もクソもないのだが、それはそれこれはこれだ。


 ジャンプしてドアノブに巻きつき尻尾で壁を押してドアを開いて廊下に出る。

 …確かお嬢は昼頃までは実験場にいるんだったか。

 お嬢ご帰ってくるまでは出来ることをやろうか。


 ──そういえば、


(俺の目って黄色かったんだな)


 いや、黄色と言うよりは黄金色か?

 ナイトテーブルの上にある少し埃を被った鏡を見て、今更ながらにそう心の中で呟いた。




◇◆◇◆◇◆




「お、終わった〜!」


 お昼前、目にクマを作ったアリシア・ローレライは実験場で疲労を滲ませながらもそれ以上に達成感の溢れた声を上げた。


「さて、ルキアの腕の動作チェックも終わったし本館に戻るか」


 もうお昼時だし腹を空かせているだろう、とそんなことを考えながら本館の結界を解錠してドアを開けるとーー昨日従魔にした白蛇が鳥栖を巻いて玄関先で眠っていた。


「………?」


 はて、なんでこんなところに?と思っているとふと、廊下が少しすっきりしていることに気がついた。


(なんか片付いてる………?)


 そう、昨日まで人の腰近くまで積まれていた衣服やその他諸々が今は足首程度までしか積まれていないのだ。

 ………ここで全て片付いていない、という辺りこの家の散らかり具合がよく分かる。


(まさか、こいつが………?)


 というか、こいつしか心当たりがないのだが…と思って自身の従魔を見やる。

 真っ白な鱗は少し埃と思しき汚れており、鱗とは異なる金色の輝きを宿した瞳は今は閉じられている。

 す、と隣に膝をつきその膝の上に従魔を乗せる。


「まあ、午後からは忙しくなるだろうからこれくらいはな…」


 誰にいうでもなくそうひとりごちた彼女の目は何処か優しく見えた。




◇◆◇◆◇◆




(………暖かい)


 この世界に来てからずっと触れることのなかった()()の気持ちよさを振り払って目を覚ます。

 取り敢えず床に散乱している衣服等を片付けているうちに力尽きたのが夢の世界に旅立つ前の最後の記憶だ。

 目を開けて辺りを見回すと真上に絶世の美女の御顔と小さな山。


 うーん、二度寝すっか!

 美女からの膝枕なんてそうそう体験できるもんじゃねえしな!そう思って再び夢の世界に旅立とうとすると圧迫感を覚えたのち、それが消えるとほぼ同時に浮遊感。

 あら?今どういう状態かしらん?

 今の状況を確認するために目を開けるのと、べちぃん!という音と共に身体に衝撃が走るのはほぼ同時だった。


『痛ぁ!何すんじゃワレェ!?』


「喧しい!何二度寝決め込もうとしたんだおまえは!」


 だって気持ちよかったんだもん!そうちょっと可愛い子ぶって言おうとして、ある事に気がついた。


『あれ?魔法は切ったのか?』


 そう、あの長ったらしい名前の魔法を使ったてではなく普通に喋っているのだ。


「ん?いや、別に切ってはいない。ただ、魔力の無駄だと思ってな。家では普通に喋ろうかと」


 ああ、なるほどね。そう返そうとして、


「それよりルキア!おまえの腕が完成したぞ!」


 キラッキラ目を輝かせて「私気になります!」とかいうセリフが似合いそうな勢いでそう言って取り出したのはーー金属製の首輪だった。


『………腕?』


「腕だ!」


 おじさんも年なのかな〜?

 それとも最近の若い子の間では首輪を腕として使うのが流行ってるとか?

 ウケる。で、それはこの世界の文化か何かで?

 流行に置いてかれるという意味でもちょっとしたホラーよ?それ。


『………お嬢、俺にはただの首輪にしか見えんのだが。説明を頼む』


「うん?ああ、そうか!これだけじゃわからないか!」


 あたりめーだ馬鹿野郎。

 一瞬蛇の目って特定の物が人間の目と全然違うものに見えるのかと思っちゃっただろうが。

 いや、それにしても腕と首輪はねえ?


「これは魔道具でな。魔力を流すと腕が出てくる仕組みだ。取り敢えず実演してみよう」


 ヤバイ、ホラーってのも強ち間違いじゃなかったわ。

 首の後ろから腕が生えてくるとか控えめに言ってヤバくない?

 いくぞー、という声と共にお嬢が首輪に魔力を込めると出てきたのは萎びて所々に血がこびりついた腕ーーなどではなく、鎖だった。


『………腕?』


「いや、戦闘用にも使うと言うからそれなりに攻撃能力が無いとダメだろう?そこで前々から思案していた鎖型の魔道具だ」


 見れば戦闘用というだけあって鎖の先端には杭のような物が付いている。

 にしても鎖とは中々渋いところをついてきたな……。

 まあ、家事するには支障は……ない、と思う。

 多分、きっと、メイビー。

 慣れは必要だろうが……。


 銀色の首輪に鎖がついているのではなく、鎖と少しの空間を挟んでなんかヤバめのーー具体的にはSAN値チェックが必要になりそうな神話のやべー奴が出てきそうな真っ黒な()から鎖が伸びている。

 首輪と同じ銀色の鎖には、やはり首輪同様何やらよく分からん文字がビッシリと刻み込まれていてお嬢の魔力に反応して淡く発光していた。


「これは時空間魔法を転用した物で首輪の相対位置5cm外側に亜空間を設置した物だ。魔力を込めることで亜空間との扉を開くようにしてある。中には鎖が入っていてこれまた魔力を込めることで鎖の操作ができるようになっている。一本の鎖の長さは全長2km。射出する時や動かす時の速度は使用した魔力の量に比例していく。また、鎖の強度そのものを上げる刻印もしてある。これは周囲の魔力を取り込んで勝手に強化されていくようにした。強度をあげたかったら多用しろ、ということだ。素材はダマスカス鋼に錬金術を使ってミスリルを()()()物だ。強度も高く、魔力伝導率もいい。鎖は全部で4本ある。私が作った魔道具の中でも屈指のの出来だ。質問は?」


『………ナイデス』


 長い、昨日のどの話よりも長い。

 目の下に隈をつけながらも満足そうにそうかと頷くお嬢を見て思う。

 いや、たしかに凄い物だということはわかるよ?

 でも、こう……もうちょっと抑えられないもんかね?

 そんな心の声は表には出さず首輪をつけてくるお嬢に従う。


 やっぱりこれにも装着者のサイズに合うように魔法が刻印されているらしい。

 ……魔法、つけすぎじゃね?

 従魔の証の上につけられたいろいろ混ぜ込んだ金属製の首輪はひんやりと熱を鱗越しに伝えてくる。

 にぱっと笑うお嬢様にどこか恥ずかしく、それ以上に嬉しくなってそれを誤魔化すために問うた。


『これからの予定は何かあるのか?』


「まずは外で昼飯を食べて教会に行って…、その後は外に出ようか。お互いの実力も確認しておきたいだろう?鎖の調子も確かめるためにというのもあるが」


 あなたにとっては実力云々よりも鎖の方が本音の割合多い気がするんですがねえ……?

 ……にしても、教会?




◇◆◇◆◇◆




 近くの食堂で昼飯を済ませた後、教会へ向かった。

 因みに飯の時はお嬢はペット扱いではなく、どちらかというと人のように扱ってくれる。

 首輪の時といい俺はいい主人に拾われた物だと思う。

 色々眼福だし。


『さて、着いたぞ。教会だ』


 感謝と共に邪な思いを抱いていると教会に到着した。

 やだ、浄化されちゃう!


『今更だが、魔物が入っても大丈夫なのか?』


『従魔の証があれば大丈夫だ。魔法使いが使い魔を連れてくることなどよくある事だ』


 それでいいのか?というか…


『魔法使いはよく教会に来るのか?』


 少し意外に思ってそう尋ねる。

 魔法使いというのはどちらかと言うとあまり神様とか言うものに頼らない、と言うイメージが自分の中にあったので思わずそう尋ねてしまった。

 何せ俺の魔法使いのイメージはお嬢で固定されている。

 そう思っても仕方ないのではなかろうか。

 それが伝わったわけでも無いだろうが、ふふっと溢すように笑みを浮かべると


『例外はあるが基本的に魔法使いは敬虔な信者が多い。魔法の神を祀っているというのが主な理由だろう。この国を中心として一般的に信仰されている宗教が三神教という文字通り三姉妹の女神を崇拝する宗教だ』


 清潔感のある白い教会は近くで見ると神聖さを増して感じる。

 木製の扉を開けると礼拝の最中なのか数人が一度に10人以上は座れるであろう椅子に腰掛けている。

 扉から続く道を挟むようにして椅子が十列ほど並んでおり、その先に3人の女性の石像が置かれていた。


『ーーあれが三姉妹の女神だ』

何?渦っぽい物の中から鎖が出てくるアニメに心当たりがある?

いや、渦黒いし鎖も銀色だからセーフ。

因みに構図としては王の財宝を黒くしたヤツから銀メッキしたライダーの鎖が出てくるような感じ。

それはそれとして作者はエルキドゥとキングゥ大好き。

19話のキングゥの「なかったんだ。なかったんだよぉ、ギル…」は最高すぎる…。

今からソロモンが楽しみすぎる…。

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