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序列主義の異能学院  作者: 丹野海里
第3章 殺人ギルド血影編
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第91話 光の魔剣・天使剣《ガブリエル》

—1—


 庭に散らばったウシオの血液が無数の棘となって咲夜を貫こうとするが、その全てが咲夜に届く手前で進行方向を変えた。

 まるで磁石のN極とN極とが反発するかのように勢い良く咲夜のすぐ側を通り過ぎていく。


「仲間思いのお前のことだ。自分から傷つけるような真似はできねェーよなァー」


 咲夜が白い歯を見せた。

 いいや、違う。正しくは私の姿に変身した咲夜が笑みを見せた。


 ウシオの『血棘繚乱ブラッドソーン・ロンド』は間合いもタイミングも完璧だった。


 しかし、咲夜が私の姿に変身したことでウシオの中に迷いが生まれてしまった。


「くっ、クズが!」


 ウシオも頭では咲夜が異能力で私の姿に変身しただけだと理解しているのだろうが、攻撃を当ててしまえばウシオの目には私が傷ついたように映ってしまう。

 仲間を一番に考えて行動してきたウシオは無意識に攻撃が当たらないように逸らしてしまったのだ。


「群れて戦うからそうなる。仲間なんざ足手纏いにしかならねェーんだよ」


 咲夜は元の姿に戻り、周囲を覆う赤き棘の茨を悪魔剣サタンで斬り刻む。

 咲夜の背後に控えていた化物もエネルギー弾を放ち、咲夜が進む道を開く手助けを始めた。


 最後の力を振り絞って最大技を放ったウシオはというと『血流暴走ドーピング』が解け、膝に手をついていた。

 恐らくもう赤棘を生成することすら難しいだろう。


 そんなウシオを嘲笑うかのように咲夜が悪魔剣サタンを振りかぶる。


水の円壁(ウォーター・ウォール)


 ウシオの援護に入るべく私と並走していたスイがウシオの正面に巨大な水の壁を展開した。

 ドスッという重い音が胸に響く。

 それと同時にスイの表情が一気に険しいものへと変わった。


貫通空気弾ペネトレート・ショット


 片腕を失い、うつ伏せに倒れていたスコップが貫通弾を放つが手が震えていて狙いが定まらない。

 弾は咲夜の遥か頭上を通過した。

 スコップもかなり限界が近い。


 咲夜の身に危険を感じたからなのか咲夜の背後に控えていた化物数体がスコップ目掛けて一斉にエネルギー弾を撃ってきた。

 倒れているスコップは当然避けることができない。


 地面が抉れ、エネルギー弾が直撃したスコップが宙に投げ出される。

 空を飛行していた別の化物がスコップの背中に回り込み、蹴りを入れて地面に叩き落とした。


「スコップ!」


 キララがスコップに声を掛けるがスコップの反応は無い。

 また一つ、命の灯火が消える。


玲於奈れおな、そろそろ破られる」


「ありがとうスイ。影繋ぎ(シャドー・コネクト)!」


 ウシオの元に駆けつけた私は、ウシオとスイを影の世界に引きずり込んだ。

 影の世界に広がるのは闇。先の見えない闇がどこまでも無限に広がっている。


「どうしたら……」


 影の中の世界とはいえ、ここが安全とは限らない。

 魔剣の力が異能力を上回る以上、影の世界に干渉してくる可能性がある。


 私は屋敷の近くまで後退すると、木の影から地上に戻った。

 続いてスイとウシオも影から出てきた。


「ウシオ、もうその体じゃ——」


「私の体はどうだっていい。あいつをどうにかしないとみんなが殺される」


 自身の全力を持ってしても咲夜には歯が立たなかった。

 その責任がウシオに重くのしかかっていた。

 きつく握った拳からは血が流れている。恐らく爪が掌に食い込んでいるのだろう。


 そんなウシオの姿を見て、スイも心配そうな視線を向ける。

 今、この瞬間も仲間は化物に襲われている。


 首元を食い千切られるハッチ。

 ロープは飛行している化物の足にロープをかけて地上に引きずり下ろしている。

 すぐさまカズが化物に打撃技を加えて絶命させるが、背後から迫った別の化物の小集団にエネルギー弾を集中砲火され、2人共瀕死のダメージを負った。


 キララはアイラを守りながら逃げ回っている。


 もう全滅するのも時間の問題だ。


「いつまで遊んでんだよ? あ? とっととぶっ殺せ!」


 痺れを切らした咲夜が化物を怒鳴りつける。

 すると、残りの化物全13体がキララとアイラに狙いを定めて動き出した。


 キララとアイラは逃げることをやめて迫り来る化物と向き合った。


「もうやめてっ!!!」


 アイラが一歩前に踏み出して咲夜に対して叫ぶ。

 目には涙を浮かべ、顔を涙と鼻水でぐしゃぐしゃにしている。


「キノコをコグマをスコップを、ハッチを、みんなを返してっ! 返してよ!!」


「ははっ、死んだもんは帰ってこねェーんだよ!」


 アイラの訴えが咲夜に届くことはなく、無情にも化物の魔の手がアイラとキララを襲う。

 咲夜はというと、屋敷の前にいる私たちの元に駆け出していた。


「母としてやることは1つ」


「えっ?」


 頭の上から聞き覚えのある優しい声が降ってきた。


「命を懸けて子供たちを守る。私がみんなの母親になると決めたあの日、そう誓ったはずなのに。ウシオ、玲於奈、スイ、こんな最低な母親でごめんなさい」


 私たちの横をゆっくりと通り過ぎた種蒔さん。

 悪魔剣サタンを構えて突っ込んでくる咲夜を前にしても普段の調子を崩さない。


「やっと、来たな魔剣使い!」


「来なさい、光の魔剣・天使剣ガブリエル。聖なる光で悪を滅ぼします!」


 種蒔さんが右腕を横に突き出すと、屋敷の中から金色に輝く剣が勢い良く飛んできた。

 天使剣ガブリエルが種蒔さんの手に収まる。


聖なるの光(ホーリー・シャイン)!」


 天使剣ガブリエルから放たれる強烈な光が周囲の闇を焼き払っていく。

 漆黒に覆われた地面は元通りに戻り、聖なる光を浴びた化物は瞬く間に霧散する。

 これが光の魔剣・天使剣ガブリエルの力。


 種蒔さんが魔剣の使い手だったということにも驚きだが、それ以上にあれだけ苦戦していた化物を一瞬で全滅させてしまったことに対する驚きの方が強かった。


「おらァッ!」


「くッ!」


 飛び掛かってきた咲夜の悪魔剣サタンを真正面から受け止めた種蒔さん。

 そのまま鍔迫り合いのような形になった。


「魔剣使い同士の戦いはどちらかが敗れるまで続く。それはわかってるか?」


「もちろんです。覚悟は決めてきました」


 魔剣と魔剣が衝突することで生まれる衝撃波が木々を激しく揺らし、屋敷の壁を破壊していく。


 魔剣使いではない私たちとはまるで次元が違う。

 この場に残っていてはいつ攻撃に巻き込まれて命を落とすかわからない。


「ウシオ! 玲於奈! スイ! みんなを連れて行きなさい!! 私も必ず後から行くから」


 種蒔さんが咲夜を押し返し、視線をこちらに向けた。

 口の動きだけで「大丈夫」と言い、私とウシオとスイの顔を見ると再び背を向けた。


「早く!」


 種蒔さんが地面蹴り、咲夜に天使剣ガブリエルを振るう。

 この機会を逃したら私たちが助かることはないだろう。


 だが、種蒔さんを残して逃げてしまっていいのだろうか。


「玲於奈、行こう」


 ウシオが迷っていた私の手を引いた。

 「種蒔さんの覚悟を無駄にするな」そんな風に言っている気がした。


 私は『影繋ぎ(シャドー・コネクト)』を使い、ウシオ、スイ、キララ、アイラ、それからまだ息のあるロープとカズと一緒に逃げることを選んだ。

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