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序列主義の異能学院  作者: 丹野海里
第3章 殺人ギルド血影編
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第82話 腐敗の異能力者・朽田vsウシオ

—1—


折紙おりがみ、落ちた2人は任せた」


「はい」


 玲於奈れおなとスイが折紙の「紙吹雪」によってビルの外に投げ出された直後、朽田くちた折紙おりがみと対峙していたウシオは自身の血液から生み出した刀・赤棘あかのいばらを横に薙いでいた。


 細かく刻まれた紙切れ全てを防ぐことは不可能。

 ウシオの体にも紙の破片が突き刺さる。


「そこをどきなさい」


「通さない」


 折紙が玲於奈とスイの後を追うべく階段を駆け降りる。

 階段の中央に立っていたウシオは、左右に刀を伸ばせば両方共カバーすることができる。

 戦闘経験の無い2人に折紙をぶつけることは避けなくてはならない。


「お前の相手は俺だ」


 朽田が階段を一気に跳び降り、躊躇無くウシオの間合いに入り込んだ。

 折紙を通さまいと赤棘を構えていたウシオは朽田の胴目掛けて刀を振るう。

 が、朽田はウシオの攻撃を読んでいたのか、身を屈めることで回避した。

 ウシオの鋭い剣筋に朽田の髪の毛が宙を舞う。


「っ!?」


 次の瞬間、ウシオの頭部に激しい衝撃が走った。

 朽田の大きな手がウシオの頭を掴んでいたのだ。

 まるでリンゴを握力で握り潰すかのように朽田の腕に力が入る。


 このままでは海津のときと同じようにバラバラになってしまう。


「くそっ」


 赤棘で反撃しようと試みるが、ゼロ距離では刀が振れない。

 ましてや壁に抑え付けられ、足が地面から離れている体勢では為す術がない。


 そうこうしている間にも折紙が朽田の背後を走り抜けて行った。


「待て!」


 赤棘を解除。

 それにより刀が血液に戻り、足元に血溜まりができた。


「血棘——」


「他人の心配をするよりも自分の心配をするべきだ」


 ウシオが何か企んでいることを察した朽田は、ウシオの頭を掴んでいた手とは逆の手で壁を殴った。

 すると、次の瞬間、壁が音を立てて崩れた。


「んぐっ」


 朽田の腐敗の異能力が発動したことにより、フードが千切れてウシオは地面に叩き落とされた。

 壁が崩れたことで埃が舞い、視界が悪くなる。


 腕で目を覆っていたウシオの腹部に朽田の蹴りが決まった。

 受け身を取りながら室内へと転がるウシオ。

 どうやら壁に穴を開け、5階の室内にショートカットしたみたいだ。


 戦場は階段から室内へと移された。


「少し話をしないか?」


 視界が開け、朽田がウシオに声を掛けた。


「私はあなたと話すことなんてない」


「そうか。じゃあ、俺の独り言を聞いてくれ」


 敵と話すことなどないと突っぱねたウシオだったが、朽田が一方的に話し始めたため、仕方なく話だけ聞くことにした。

 手首から流れ出る血液から再び赤棘を生成し、反撃のタイミングを窺いつつ朽田の話に耳を傾ける。


「殺人ギルドの名前を聞くようになったのは確か半年前くらいだった。黒いパーカーを着た子供たちが隣の島を派手に荒らしたって噂が出てな。初めは何かの間違いだと思って聞き流してたんだが、その後も闇社会の連中が立て続けに襲撃を受けたとなれば信じざるを得なかった」


 ウシオ、コグマ、キノコの3人が種蒔の指示を受けて依頼をこなすようになった時期が朽田の言う半年前からなのだ。

 ターゲットにされたのは、犯罪者、有力な金持ち、政治家、警察官などなど。

 裏で悪に手を染めている人物が中心だった。


「この世界は広いように見えて案外狭いからな。俺や堀宮さんの顔見知りも何人か被害に遭った。まあ、顔見知りと言っても数回話したことがある程度だけどな。それでも話したことがある人間が死ぬっていうのは気分の良いもんじゃない」


 これまで淡々と話していた朽田の声色に怒気が混ざった。

 復讐は復讐しか生まない。

 しかし、知り合いが殺されて黙っていられる人間など、この世にいるだろうか?


 朽田の目の前には復讐の対象者であるウシオがいる。

 ここでウシオを逃してしまえば被害者は増え続けるだろう。


 今回のようにいつ自分たちの組織がターゲットにされるかもわからない。


「直接会ったら聞きたかったんだ。お前たちは誰の指示で何のためにこんなことをしてるんだ?」


「私は仲間を、家族を守るために戦ってる。戦うことが唯一家族を守る手段だから」


「なるほど。その年で人殺しなんてしてるんだ。複雑な事情はあるんだろうな。だからと言って俺が手を引く理由にはならないけどな」


 その瞬間、ウシオは朽田から並々ならぬオーラを感じ気を引き締めなおした。


腐敗へ誘う溶腕(クラプション・メルト)


 室内に広がる鼻を刺すような強烈な腐敗臭。

 足元から白い煙が立ち上がり、その中からゾンビのようなただれた腕が現れた。

 腕は煙の中をゆらゆらとうごめき、その数を増やしていく。ウシオの目で確認できるだけで15本はありそうだ。


 芋虫のように床を這う腕。

 腕が通り過ぎた床に目をやると、色が黒に変色し、今にも床が抜け落ちそうだ。


「赤棘一閃」


 ウシオは迫り来る腕に向かって果敢に斬り込むが、刀が腕に触れた瞬間手応えが感じられない。

 それもそのはず。斬られた腕が煙のように霧散してしまったのだ。


「これは……」


 腕を斬ることが無意味なら技を発動している本体を叩くしかない。

 だが、すでに室内は朽田が生み出した腕で覆い尽くされようとしている。


 腕に触れられれば最後。

 その瞬間から体の腐敗が始まってしまう。

 ただでさえ、折紙の攻撃による傷が残っているというのにこれ以上ダメージを負うわけにはいかない。


血華の散り際(ブラッド・スキャター)


 腕に囲まれたウシオは円を描くように刀を振るいまくる。

 その様子はまるでコマが高速で回転しているかのようだ。


 赤棘が腕に触れる度、刀が腐敗し、形を保てなくなった刀の一部が血液となって室内を舞う。

 勢いを止めたら腕に飲み込まれるのは自分。

 ウシオは赤棘が刀としての機能を果たせなくなるそのときまで全力で刀を振るい続けた。


「この技にここまで食らいついてきた奴は初めてかもしれない。あいつらが負けたのにも納得だ」


 室内の天井から壁、床、その全てにウシオの血液が飛び散っていた。

 腕を斬り伏せられた朽田が素直に賞賛するも血を流しすぎたウシオは意識が朦朧としていて反応する余裕もない。


朽ち果てろ(ディケイド)


 朽田がそう呟くと、朽田が接している床から部屋が崩れ始めた。

 床にヒビが入り、その亀裂が壁や天井にまで広がっていく。こうなってしまってはもう誰にも止められない。


 ウシオは最後の力を振り絞って顔を上げ、赤い双眸で朽田の顔を捉えた。

 すると、室内に飛び散っていたウシオの血液が赤く輝き出した。


血棘繚乱ブラッドソーン・ロンド


 刹那、ウシオの赤く輝く血液が鋭い棘の形に変形し、朽田の体目掛けて四方八方から襲い掛かった。


 数の暴力。


 ウシオにとってはここまでが伏線だったのだ。

 自身の手首を切り裂き、赤棘を振るったことも。血を撒き散らしながら朽田が繰り出した腐敗の腕を切り払ったことも。折紙の紙吹雪を体に受け、体中から血を流していたことさえも。

 全てがこの一撃に繋がっていたのだ。


「ぐはっ」


 体中に棘が刺さり串刺しとなった朽田は血を吐いた。


「……っ」


 ウシオに向かって何か言おうと口を開いたが、何も発せずに息を引き取った。


「早く出ないと」


 朽田を倒したとはいえ、建物の腐敗は止まらない。


「うっ、体が」


 いくらマザーパラダイスのリーダーとはいえ、血を流しすぎた。

 ウシオは立っているだけで精一杯だった。


 少しずつドアに向かって足を進めるがその歩みは遅い。

 ギシッという軋むような音がしたかと思えばウシオが立つ床が完全に崩れ落ちてしまった。

 ふわっという浮遊感が体を襲う。


「私が死ぬわけには」


 マザーパラダイスの仲間たちの姿が頭に浮かび、ウシオは宙に手を伸ばした。


「ウシオ!」


 その伸ばされたウシオの手を駆けつけた玲於奈れおなが掴んだ。

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