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序列主義の異能学院  作者: 丹野海里
第2章 華麗なる生徒会、学院存亡の危機編
52/193

第51話 最後の仕上げ

―1—


 テスト前日。5月19日火曜日の夜9時を回った頃。

 オレは自室の椅子に座り、スマート端末を触っていた。連絡先のアプリを開き、下から上に画面をスライドしていく。


 元々友人が少ないから登録されている連絡先も少ない。

 そのため、探していた人物もすぐに見つかった。


「最後の仕上げといくか」


 オレは、これまで保坂ほさか先生や土浦つちうらから貴重な情報を仕入れてきた。


 1学年のソロ序列戦の内容は、毎回同じものが採用されているということ。

 学年末には上級生と競い合う他学年対抗序列戦が行われるということ。


 ソロ序列戦のように個人の能力が求められるものもあれば、チーム戦のように味方との連携プレーが求められる場合もある。


 部活動などで先輩との繋がりがある生徒はこれらの情報をすでに入手している可能性もあるが、上級生は自分たちが不利になるような情報を何の見返りもなく手放すだろうか。

 土浦が良い例だ。


 3年生は卒業まで1年を切っている。

 2年生も序列を上げる機会を捨てるような真似はしないはずだ。


 3年生と真っ向から戦うよりも1年生の戦力を削いで一気に叩く方が効率がいいからな。


 以上のことからオレたち1年生は、ここで退学者を出すことは得策ではないという結論に至る。


 1年生を説得させるだけの材料は揃った。

 では、誰がそれを伝えるのか。当然その役目はオレではない。


 オレは適任者だと思う人物に電話を掛けた。


『もしもし、西城さいじょうです』


 2コール目で西城が出た。


神楽坂かぐらざかだ。悪いなこんな夜遅くに」


『ううん、ちょうどテスト勉強に区切りがついたところだったから大丈夫だよ』


「実はな、西城に大切な話があるんだ――」


 オレは土浦から聞き出した情報をそのまま西城に伝えた。


「……他学年対抗序列戦か。確かに人数に大きな差ができちゃうと僕たちに勝ち目はなさそうだね」


「あぁ、不利になるのは間違いないな。西城、2日目のテストが終わったら全員の前でまた話すんだろ?」


「うん、そのつもりだよ。そこで僕の考えを話すよ。みんなが納得する誰も悲しまない方法を」


 退学者を1人も出さないという西城の理想。

 それに近づくための材料は渡した。材料をどう調理するかは西城の腕にかかっている。


「神楽坂くん、ありがとう。神楽坂くんの情報のおかげで僕の考えに賛同してくれる人も出てきそうだよ」


「それはよかった。オレも退学者は出て欲しくないからな」


 電話越しの西城の声を聞いて安心した。どうやら西城の頭の中で考えが1つにまとまったようだ。

 もう心配はいらないだろう。


 いよいよ明日からテストが始まる。

 そろそろオレも決断しなくてはならないな。


―2—


 テストは5月20日水曜日、5月21日木曜日の2日間に渡って行われる。


 20日が国語総合、数学Ⅰ、数学Aの3教科。

 21日が英語、世界史、化学、生物の4教科だ。


 各教科100点だから合計700点満点になる。

 期末考査では、さらに情報、家庭科、美術、異能力実技も加わるらしい。


 テスト時間は50分。テストとテストの間に10分間の休憩が設けられている。


 休憩時間はトイレに行ったり、テストの直前まで公式を覚えたりと半日ではあるが頭を使い続けた。


 1日目のテスト終了を知らせるチャイムが鳴り、机に倒れ込む生徒たち。

 鞘師さやし先生と保坂ほさか先生にテスト用紙を回収され、解散となった。


 数学の問題を振り返る者や明日のテスト科目の話をする者など、どの生徒もテストで頭がいっぱいといった様子だ。


 明日は暗記科目が中心だ。

 それほど焦る必要はない。


 オレには、他にやることがある。保留にしていた案件を片付けなくてはならない。


 大教室を出て、生徒会室の前で立ち止まる。

 ソロ序列戦の後、オレは生徒会長の馬場裕二ばばゆうじから生徒会へ勧誘を受けた。


 前期中間試験最終日まで保留にしていたのだが、試験最終日の明日は放課後に西城さいじょうを中心とした話し合いがある。


 つまり、回答できるのは今日しかないということだ。

 扉を3度ノックすると、中から生徒会書記の滝壺水蓮たきつぼすいれんが出てきた。


「えっと、あなたはいつかの自動販売機で会った神楽坂くんでしたっけ?」


「はい」


 1度しか会ったことはなかったが記憶していてくれたみたいだ。


「生徒会に何か用ですか?」


「会長に話があったんですけど、中にいらっしゃいますか?」


「会長は今忙しいので手が離せません。私でよければ代わりに伺いますけど」


 半分しか扉が開かれていないため、こちらから中の様子はわからない。

 代わりに聞くと言われても間接的に伝えていい話ではないだろう。

 そんなことを考えていると、扉がガッと勢いよく開いた。


「何をこそこそしているかと思えば神楽坂じゃないか。返事を聞かせてくれる気になったか?」


「返事……そういえば1年生を特別枠で生徒会に迎えると言っていた件ですか?」


「そうだ。神楽坂は1年生の中でも序列2位だ。実力的に見ても不足はないだろう。ここで話すのもあれだ。中に入れ」


 馬場に中に入るよう言われ、生徒会室の中に足を進める。

 滝壺はそんなオレの様子を見て不満そうな表情を浮かべていた。

 無理もない。馬場はオレが戦っている姿を見ているが、そうでない滝壺からすればオレは有象無象の中の1人に過ぎない。


 馬場の話にも納得できないだろうな。


「それで、答えを聞かせてもらおうか」


 生徒会室の奥に位置する会長席に座った馬場が机の上で手を組み、オレの目を見る。

 馬場の斜め後ろに立つ滝壺からも視線が飛んできた。


「オレで力になれることがあるのであれば受けたいと思います」


 学院が信頼している生徒会に入れば、夏蓮かれんの情報を掴むチャンスが訪れるかもしれない。

 初めから断る理由がない。


「わかった。正式に始動するのはテストが終わってからになる。神楽坂もそのつもりでいてくれ」


「わかりました」


「会長、もう1名の生徒から返答はきたんですか?」


「いいや、まだだ」


 もう1名?

 生徒会に誘われたのはオレだけじゃなかったのか。


 コンコンコンッと一定のリズムで扉がノックされた後、ゆっくりと扉が開かれた。


「失礼します」


暗空あんくう……」


 黒髪短髪の小柄な少女、暗空玲於奈あんくうれおなが生徒会室に入ってきた。

 ということは、暗空が生徒会に誘われたもう1人ということになる。


「すまないな。先に話を進めていた」


「いいえ、問題ありません」


 暗空が会長席の前まで足を進める。


「私も彼と同じく会長からのお誘い、お受けいたします」


 淡々と話す暗空の姿になぜか不気味さを感じた。


 この日、1学年の序列1位と序列2位が生徒会に入ることが決まった。

 これはテストが終わった後も気を抜けそうにないな。

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