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序列主義の異能学院  作者: 丹野海里
第2章 華麗なる生徒会、学院存亡の危機編
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第49話 抜け殻の魔剣

―1—


 午前の授業が終わり、賑わう食堂。

 秘密の話をするなら図書室のような静かな場所を選択しがちだが、あえて人が多く集まる食堂を選択した。


 朝から座学の授業が続き、ようやく訪れた1時間のリラックスタイムだ。

 食堂を利用する多くの生徒は思い思いの会話を楽しんでいる。


 ここならわざわざオレたちの会話に聞き耳を立てる生徒もいないだろう。例えいたとしても周りの話し声がオレたちの会話を打ち消してくれる。


紫龍しりゅう先輩たちとはいつから知り合いになったんだ? 同じ部活とは言っていたが」


 対面に座る浅香あさかに話を振った。

 まずは紫龍しりゅう溝端みぞばたとの関係性を探るところから始めなくてはならない。


「うん、文芸部に入部してから時々話をするようになったんだ。ちなみにいのりんも文芸部だよ」


 浅香の隣に座っていた火野ひのが話を振られてこくんと頷く。

 オレとしては浅香と2人きりで話をしたかったのだが、普段2人でお昼ご飯を食べていると言われては仕方がない。火野には何の罪もないからな。


「じゃあ、溝端先輩とはどこで知り合ったんだ?」


「2週間くらい前かな、いのりんと一緒に部活で読む本を選びに図書室に行ったとき、紫龍先輩と溝端先輩が話をしているところを見かけて声を掛けたんだ。それから廊下とかですれ違ったら挨拶をするようになったかな」


「そうだったのか」


 つまり、浅香はこの学院に入学してから2人と知り合ったということになる。

 学院の闇とは繋がってなさそうだ。


「でもなんでそんなことを聞くの?」


「オレ自身友人と呼べる存在が少なくてな。どうやったら上級生と知り合いになれるのか気になったんだ」


 自虐も含めてもっともらしい理由をつけておいた。


「ちゆは神楽坂くんと違って人見知りとかしないから」


 火野が日替わり定食についてきた味噌汁をずるずるとすする。


「もう、いのりんは神楽坂くんの何を知ってるの?」


「えっへん、いのりちゃんは何でも知っているのです」


 火野が偉そうに胸を張る。

 ソロ序列戦では、火の魔剣・紅翼剣フェニックスを使って文字通り熱いバトルを繰り広げ、決勝まで駒を進めた火野だが、普段は話し方も含めてどこか抜けている。

 浅香と一緒にいるときは自然体でいられるのだろう。


 日替わり定食の豚丼に箸を伸ばしつつ、そろそろ本題に切り込もうかとタイミングを窺っていると、オレの代わりに浅香が口を開いた。


「神楽坂くん、朝の続きになるけど私なんかがライフポイントを貰ってもいいのかな?」


「ああ、浅香にはソロ序列戦のときに世話になったからな。それくらいはさせてほしい」


「ちゆ、神楽坂くんもこう言ってくれてるんだから遠慮しないで貰えばいい」


「火野の言う通りだ。遠慮なんてする必要ないぞ」


「そ、そう?」


 浅香がチラッとオレの目を見てきた。

 オレは黙って頷く。


「じゃ、じゃあさ、私がテストで上位30人に入れなかったときにお願いしてもいいかな? まずは自分の力で頑張ってみるよ」


「浅香がそれでいいならオレはいいよ」


 テストで成績上位30人に入れば5万ライフポイントがボーナスとして支給される。

 もし、浅香が上位30人に入れなかったとしてもオレが1ヵ月不自由なく生活できるくらいのライフポイントを渡すつもりだ。


 保険がある分、浅香はテストに集中することができるだろう。


 豚丼を食べ終え、おぼんの上に箸を置く。

 そろそろ席を立とうかと思っていると、火野がオレの腕をぐいぐいと引っ張ってきた。


「神楽坂くん、相談したいことがあるんだけどいい?」


「あ、ああ、オレでよければ別にいいけど、オレに解決できそうなことなのか?」


「わからない。でも、相談できるのは神楽坂くんしかいないから」


 先程とは打って変わって神妙な面持ちに変わった火野。

 その表情から真剣な話だということが伝わってくる。


「ソロ序列戦の決勝戦は見てた?」


「もちろん。火野と暗空あんくうが戦った試合だろ」


「うん、その試合で私は負けた」


 魔剣の力をもってしても暗空には敵わなかった。

 会場にいた誰しもがこう思ったことだろう。暗空玲於奈あんくうれおなには勝てないと。

 それほどまでに暗空は1学年の中で頭1つ抜けていた。


「魔剣所有者はバトルに負けると魔剣に見放されてしまうことがあるの」


「えっと……」


「2度と魔剣が使えなくなる」


「じゃあ、火野は暗空に負けたから魔剣を使えなくなったのか?」


「ごめん、言葉が足りなかった。魔剣所有者同士のバトルでのみ、その危険性があるんだけど、あるはずなんだけど、なぜかあの日から紅翼剣フェニックスの反応がないの。まるで抜け殻みたいに」


 火野の言葉を頭の中で処理していく。


「話はわかった。決勝戦以降、火野の魔剣は抜け殻のようになってしまったと。それは理解したんだが、オレに何をしてほしいんだ?」


 火の魔剣には伝説上の生物、不死鳥が宿っていると言われている。

 その不死鳥が所有者の火野の許可なくどこかに行ってしまったと。火野の話を噛み砕くとそういうことだろう。


「相談するにも私より序列が下の人には相談できなかった。下剋上システムを仕掛けられる心配があったから」


 1学年の火野の序列は3位。2位がオレ、1位が暗空だ。

 消去法でオレに相談を持ち掛けることになったということか。


「別に何かしてほしいわけじゃない。誰かに話したかっただけ。でも、もし何かわかったら教えて欲しい。紅翼剣フェニックスは私とお父さんを繋ぐたった一つのものだから」


「ああ、わかった。頭に入れておくよ」


 火野の大粒の涙がテーブルに落ちる。

 そんな姿を見たら力になりたいと思うのが当然の感情だろう。


 数少ないオレの友人が他の誰でもなくオレを頼って来たのだ。


 多くの生徒の退学がかかった中間考査に馬場生徒会長からの生徒会勧誘、夏蓮を誘拐した紫龍と溝端の件など取り込んではいるが、オレのできる範囲で精一杯頑張るとしよう。

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