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序列主義の異能学院  作者: 丹野海里
第2章 華麗なる生徒会、学院存亡の危機編
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第47話 千代田とショッピング

―1—


神楽坂かぐらざかくん、後ろです」


 スマホを耳から離して振り返ると、同じくスマホを耳に当てた千代田ちよだが立っていた。


「おはよう千代田」


「お、おはようございます」


 千代田がスマホを黒い小さな鞄にしまい、トコトコと近づいてくる。

 前々から疑問に思っていたのだが、女子が出掛けるときに手にするあの小さな鞄には一体何が入っているのだろうか。


 あの大きさからして財布とスマホくらいしか入らないと思うのだが。

 いや、ショッピングモール内の支払いは全てプライベートポイントで済むから財布すら必要ないか。

 普段、鞄を持たないオレからすれば永遠の謎だ。


 千代田の服装は、薄緑色のシャツに丈の短い黒いスカート。シャツの上から白いパーカーを羽織っている。

 千代田の性格上、肌を露出することに多少なりとも抵抗がありそうだと思ったのだが、オシャレをするのに性格は関係ないのか?

 何はともあれ黒いスカートの中から伸びている綺麗な足に目が奪われる。


「私の服、変ですか?」


 オレの視線に気がついたのか恥ずかしそうに訊いてくる千代田。


「凄く似合ってると思うぞ」


「そ、そうですか。ならよかったです」


 千代田が黒の鞄を前にして足を隠した。どことなく頬も赤く染まっている。


「じゃあ、行くか」


「はい」


 千代田と並んでショッピングモール内を歩く。

 どの店もテスト期間中ということを感じさせないくらい人で賑わっている。


 5月分のライフポイントが振り込まれたばかりだからテスト勉強の気分転換にショッピングモールを訪れる生徒も多いのだろう。


 オレと千代田も気分転換に買い物でもということで集まった訳だしな。誘ったのはもちろんオレだ。


「ここもいっぱいですね」


「そうだな」


 お昼どき。

 飲食店はどこも混み合っていた。人気店に至っては長い行列ができている。


「フードコートにでも行ってみるか?」


「そうですね。ここにいても30分以上は待ちそうですし」


 意見が一致し、フードコートへ移動することに。


「うっ、ここも混んでるな」


 フードコートなら飲食スペースもそれなりに広いので、さすがに空いているだろうと足を延ばしてみたのだが、テスト勉強を行うグループがあったり、カップルと思われる男女がいたりで残念ながら満席だった。


 ふと、カップルが食べ物のシェアをしているところが目に入ってきた。女子が男子に食べ物を食べさせている。

 公共の場でよくも堂々とイチャイチャできるな。


 隣の千代田に目を向ける。

 傍から見たらオレたちもカップルに見えているのだろうか。


「日曜日のショッピングモールがこんなに恐ろしい所だとは思ってなかった」


「仕方ないですよ。席が空くまで何を食べるか見て回りましょう」


 千代田がフードコートの脇に並ぶ飲食店の前を歩き出した。

 たこ焼き、お好み焼き、ラーメン、パスタ、ハンバーガー、定食、アイス、ドーナツなど、様々な店舗が並んでいる。


 店の前を通るだけで良い匂いがする。気を抜いたらよだれが出てきそうだ。


「あっ、神楽坂くん、席が空いたみたいですよ」


「思ったより早かったな」


「これだけ席があるので回転率も高いのかもしれませんね。えっと、神楽坂くんは何を食べるか決めましたか?」


「千代田は決めたのか?」


「私ですか。私はオムライスが食べたいなと思いまして」


「偶然だな。オレもオムライスが気になってたんだ」


 千代田に合わせたのも半分あるが、気になっていたのも事実だ。

 外食でオムライスなんて食べたことがないからな。


「席を取ったら買いに行くか」


「はい」


 千代田はデミグラスソースがかかったオムライスを。

 オレは定番のケチャップがかかったオムライスを注文した。


 外食はポイントが高くつくが、オレも千代田も今月は10万ライフポイント以上振り込まれている。

 厳密にはオレが12万ライフポイントで、千代田が10万ライフポイント振り込まれた。

 たまに贅沢をしたくらいでバチは当たらないだろう。


「最近どうだ?」


 席に座り、何気ない会話を始める。


「最近と言うとテストのことですか?」


 千代田がスプーンを持つ手を止め、首を傾げた。


「まあ、そうだな。千代田なら心配いらないと思うがテスト対策は順調か?」


「はい、少しずつ試験範囲を見直してますけど、今のところ大きく躓いている問題はないです。後はどれだけ暗記できるかですね」


 授業態度も課題も完璧にこなしている千代田のことだから特段心配していなかったが、本人の口から順調と聞けて安心した。


「神楽坂くんはどうですか?」


「オレは数学に力を入れないとヤバそうだ。昨日やっと公式を暗記したから多少は解けるようになったんだけどな」


「神楽坂くんの家で勉強会をしたときも西城さいじょうくんに教わってましたもんね」


「よく覚えてるな」


「た、たまたま覚えてただけです。か、神楽坂くんのことをずっと見てたとか、そういうことじゃないので、あ、安心して下さい……」


 千代田が顔を赤くしてシュンと小さくなってしまった。耳まで赤い。

 目線を下げたことでオムライスに目が移る。

 千代田はスプーンでひと口サイズに小さく切ると、ゆっくりと口に運んだ。デミグラスソースが照明に反射して輝いている。


 千代田がオムライスを食べ始めたので、一時会話を中断することにした。


 オレもオムライスにかかったケチャップをスプーンで軽く伸ばしてから端の方を口に運ぶ。

 ふわっふわの卵としっかり味の付いたチキンライスが口の中で良い具合に合わさる。噛めば噛むほど幸せに包まれる。

 入学当初、暗空あんくうと食べたラーメンに次ぐ美味しさだ。


 そんな訳でオレと千代田は、あっという間にオムライスを食べ終えてしまった。


「この後はどうしますか?」


「前に土浦つちうらとの一件で眼鏡がダメになっただろ」


「はい」


「新しい眼鏡でも見に行くか?」


 土浦に眼鏡を壊されて以来、千代田は眼鏡をかけていない。

 ソロ序列戦のときに明智あけち西城さいじょうがそのことについて触れたことがあったが、千代田は眼鏡に度が入っていないから大丈夫と言っていた。

 しかし、その一方で眼鏡は安心するお守りみたいなものとも言っていた。


 ことの全てを知っているオレは、心のどこかでそのことが引っかかっていたのだ。


「気にかけて下さるのは嬉しいんですけど、大丈夫です。私のことはいいので、神楽坂くんはどこか行きたい場所とかありませんか?」


 本人がそう言うなら無理強いはできない。


「そうだな、それじゃあ、1年生の間でも話題に上がってる雑貨屋にでも行ってみるか」


「あ、あの噂の雑貨屋さんですか! 明智さんもついこの間、行ったみたいですよ」


 雑貨屋と聞いて千代田が食いついてきた。

 1学年の間で密かなブームを迎えているとある雑貨屋。


 一見すると、小物を多く取り扱うごく普通の雑貨屋なのだが、店の奥に設置されている1回100ライフポイントの占いくじが驚異の的中率ということで、話題になっている。


 占いというと、オレの勝手な偏見だが誰にでも当てはまりそうなことが書かれているイメージだが、一体どんなことが書かれているのか。


「あっ、ありましたね」


 雑貨屋にやって来たオレたち。

 店の奥に赤色の機械がひっそりと佇んでいたところを千代田が発見した。


「なになに、あなたの近い未来を占います! 当たりすぎによるクレームは一切受け付けません! 凄い自信だな」


「私から引いてみてもいいですか?」


 朝の情報番組で誕生月占いなるものを見たことがあるが、占いは女子が好きそうなイメージだな。

 やたらラッキーカラーに左右されている生徒もいるらしいし。


 今は未来予知の異能力者がいるくらいだし、有名な占い店では予約が取れないと聞いたことがある。

 ここもそのうち予約制になったりしてな。


 千代田がスマート端末を機械にかざして支払いを済ませる。

 すると、機械から1枚の紙が出てきた。


「何が書いてあった?」


「な、内緒です」


 千代田が手にしていた紙を背中に回した。


「そ、そうか。じゃあ次はオレの番だな」


 千代田同様支払いを済ませて紙を取り出す。


【ひと月以内に自身の身を滅ぼす災厄が降り注ぐだろう。※全力を尽くして立ち向かえば逃れられる可能性有】


 新年に引くおみくじのように健康運、恋愛運、学業について書かれていると思っていたが、出てきた紙には短くその一文が書かれていた。


 身を滅ぼす災厄か。ご丁寧にひと月以内という期限まで記してある。


「何か悪いことでも書いてありましたか?」


「いいや、注意喚起のようなそんなことが書いてあった」


「そ、そうですか。占いですし、頭の片隅にでも入れておけば万が一のときの予防になりますね」


 千代田の言う通りだ。

 まだオレの身が滅びると決まった訳じゃない。その後の文にも全力を尽くせば回避できる可能性があると書いてある。


 そうならないことを祈るばかりだ。


 その後、千代田と数店舗見て回った後、解散という流れになった


「今日はありがとうございました」


「オレの方こそ、良い休日になったよ。後はテストを乗り越えるだけだな」


「そうですね。なんか現実に戻されますね」


 千代田が可愛らしく笑う。

 明日からまたテストに異能力と、競い合う日々が始まる。


「千代田、これ」


「えっと、ありがとうございます?」


 オレは千代田に小さな紙袋を渡した。


「開けてもいいですか?」


「ああ」


 千代田が紙袋の封を切り、中からピンク色のハンカチを取り出した。


「ハンカチ、いいんですか? すいません、私は何も用意していなくて」


「貰ってくれ。実を言うと本当は眼鏡を買ってあげようと思ったんだが、急遽雑貨屋に行くことになったからな。何回も使えるものを考えたらハンカチになった」


「ありがとうございます。大切にします」


 千代田が今日1番の柔らかい笑顔を浮かべる。

 喜んでくれたようでよかった。


 こうしてオレと千代田の休日が終わった。

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