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序列主義の異能学院  作者: 丹野海里
第4章 集団序列戦in無人島編
112/194

第109話 事情と私情

—1—


 グループ分けの締め切りとなる7月2日。

 ここまで来ればどの生徒も大きな動きを見せることはない。

 ほとんどがグループを組み終えているため、話題は翌日の無人島までの移動の話になる。


 先程、学院のウェブサイト上で発表された無人島移動の班分け。

 無人島には4台のバスと船で移動することになるのだが、バスのメンバーが発表されたのだ。


 決して遊びに行く訳ではないが顔見知りの多い方が緊張も解れるのは間違いない。

 初日は移動だけで終わるみたいだから気軽に話せる人で固まりたいと考えるのが自然だろう。


 スマホを操作して自分の班のメンバーを確認する。

 オレは1号車。

 同じ班には、千炎寺と西城と千代田の名前があった。


 他のメンバーの名前も一通り目を通したが、特に法則性のようなものはなく完全にランダムで選ばれていることがわかった。


 本番はあくまでも集団序列戦。

 そこまで気にする必要もなかったか。


「神楽坂くん、一緒に帰ってもいいかな?」


 昇降口を抜けると、西城に声を掛けられた。


「ああ、西城は用事はないのか?」


 普段同学年の生徒とショッピングモールに足を向けていることを知っていたため、視線をそちらに向けた。


「今日は神楽坂くんと話をしたいと思ってみんなには悪いけど誘いは断らさせてもらったよ」


「そうか」


 友人の誘いを断ってまでオレに話とは何だろうか。


「あっという間だったね」


「何かとバタバタしていたから時間が過ぎるのも早く感じたな」


「神楽坂くんは生徒会もあるもんね。僕とは比べ物にならないほど忙しいんだろうな」


「いや、西城も学年の輪を強めたり、序列下位の生徒に声を掛けたりして色々動いてただろ」


 グループ分け期間中も孤立している生徒がいたら積極的に声を掛けて、メンバーを募集している生徒へ繋ぐパイプの役割を自ら進んで行っていた。


「そのせいで自分がグループに所属することができなかったんだけどね」


 西城が自虐的に笑った。

 他人を優先するあまり自分のことは二の次になってしまう。

 身を削って信頼を勝ち取ったとしても肝心のバトルポイントが得られなければこの学院に入った意味が無くなる。


 西城には中学時代の先輩の記憶を取り戻したいという目標がある。

 その目標に近づくためにももう少し自分にリターンのある行動をしてみてもいいとは思うのだが、西城の性格上なかなか難しい話なのも理解できる。


「それで、何かオレに話があったのか?」


「うん、僕も学年をまとめるという立場上迷いに迷ったんだけど、神楽坂くんに相談したいことがあったんだ」


 西城が足を止める。

 真剣な表情をする西城を見るに相当悩み抜いたことが窺える。


「相談には乗るが応えてやれるかは分からないぞ」


「ありがとう。神楽坂くん、僕とグループを組んでくれないかな?」


 7月に入り、太陽が出ている時間も伸びた。

 この世の全てを燃やし尽くしてしまうのではないかと思える赤が西城の背後から差していた。


 グループへの打診。

 まさか初めての打診が西城からになるとは思ってもいなかった。

 いや、今日2人きりになった時点で薄々その可能性も頭には入れていた。


 しかし、自分より他人を第一に考えて行動する西城がオレに声を掛けてくるとは。


「すまない。色々と事情があってオレは1人で臨もうと考えてる」


 当初から1人で臨む方針だったが、暗空の護衛の件もあって誰かとグループを組むという選択肢は完全に消え去った。


「どうしてもダメかな?」


「すまない」


 答えは変わらない。


「ううん、ごめんね何度もしつこくしちゃって。序列上位入りを目指すならどうしても僕1人の力では叶えられそうにないから神楽坂くんと組めたらなと思ったんだ」


「ああ、気持ちはわかる」


「他の人の力を借りて序列上位になって七草先輩の記憶を取り戻せたとしても七草先輩は喜ぶのかなとも考えたんだ。自分の力で目標を叶えてこそ意味があるんじゃないかって。でも結局それは僕自身の感情の話で七草先輩には関係の無い話だから」


 眩しいほどの赤がオレと西城の体を暖めていく。


「ソロ序列戦や異能力実技の授業でみんなが確実に力をつけていく中で僕は自分の無力さを思い知ったんだ。僕の異能力は他人をサポートする異能力だから僕自身が強くなる訳じゃない。1人だと本当に無力なんだ。このままだと序列上位に入るどころかいつまでも下位から抜け出すことはできない」


「だからオレとグループを組んでバトルポイントを獲得する選択肢を選んだのか」


 西城が黙ったまま頷いた。


「だが、それではすぐに下剋上システムでポイントを奪われるのは目に見えている。西城もそれは分かっているんだろう?」


「うん、結局僕なんかが序列上位を目指すのは無理なのかもしれないね。だけど、だからといって諦める訳にはいかない」


 西城が拳を強く握り締めた。

 絶対に曲げられない決意。

 それが西城を突き動かす原動力となっている。


「異能力は使い方によって無限の可能性を与えてくれる。西城の異能力も西城が思っている以上にまだまだ可能性があるんじゃないのか?」


 西城の心が折れない限り可能性は潰えない。

 腐らず上を見て走り続けていれば今日のオレの言葉の意味が分かる日も来るだろう。

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