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序列主義の異能学院  作者: 丹野海里
第4章 集団序列戦in無人島編
108/194

第105話 明智とデート

—1—


 集団序列戦の概要が発表されてから4日後の日曜日。

 オレは軽く身支度を整えると、寮の7階に足を踏み入れていた。

 寮の6階から上の階が女子の部屋であるため、男子がこのフロアを歩いているだけでもかなり目立ってしまう。


 付き合っている男女ならともかく、パートナーのいないオレのような人間が彷徨いていたら不審者と間違えられて最悪通報されてもおかしくはないだろう。


 などと、少しビビりすぎな気もしなくはないが、オレはとある部屋の前で足を止めるとインターホンを鳴らした。


「はーい、今出まーすっ!」


 オレを呼び出した人物、明智ひかりの足音が近づいてきた。


「ごめんね急に誘っちゃって。予定とかなかった?」


 ドアの隙間からひょこっと顔だけを出す明智。


「大丈夫だ。今日は1日空いていたからな」


 休日は大体空いているのだが、明智にそれを言う必要はない。

 友達から誘われない悲しいやつだと同情されたくはないからな。


「そっか。じゃあ行こっか!」


 玄関から飛び出してきた明智の姿に目を奪われる。

 可愛らしいフリルがついた白のオフショルダーにデニムのワイドパンツ。

 ぴょんと飛び跳ねたことで服の上からでも分かる膨らみが僅かに上下に揺れた。

 普段は制服を着ているから目にする機会が無いが、肩が露出されているだけで大人の色気のようなものを感じる。


「神楽坂くん、どうしたの?」


 ドアに鍵をかけた明智が小首を傾げる。


「いや、明智もこういう服装をするんだな」


「せっかくのお出掛けだからおしゃれしちゃった♪  変かな?」


 明智がファッションショーのようにくるりと回ってみせた。


「凄く似合ってると思うぞ。なんて言うか目のやり場に困るな」


「あははっ、神楽坂くんでもそんなこと言うんだ。でもありがとう。嬉しいっ」


 口に手を当てて肩を震わせる明智。

 正直な感想を言っただけなのだが、明智が喜んでくれたのなら良しとしよう。


—2—


 週末のショッピングモールは主に学院の生徒を中心に大変な賑わいを見せていた。


「外暑かったね」


「夏が近い証拠だな」


 エスカレーターの手すりに掴まった明智が「もうすぐ夏かー」と呟き、夏にやりたいことを挙げ出した。

 かき氷を食べたい、みんなで夏祭りに行きたい、花火をしたい、海に行きたい。

 やりたいことを考えている明智の表情は楽しそうだ。


「全部できるといいな」


「うんっ! 神楽坂くんもお祭りとか海とか一緒に行こうね!」


「ああ、そのときは千代田も誘おう」


「そうだね。風花ちゃんとも一緒に行きたいね」


 明智の裏の顔を唯一知っている千代田の名前をさり気なく出してみたが、明智の声のトーンは変わらなかった。


 さすがは明智だ。そう簡単に尻尾を出してはくれないようだ。


 寮からショッピングモールまで歩いたことで喉が渇いたという話になり、オレと明智はカフェに立ち寄ることに。


「抹茶クリームカプチーノのMサイズお願いします」


「同じのをもう1つお願いします」


 スマホを精算機にかざして支払いを行う。

 今でこそ慣れてしまったが、スマホ1つで買い物ができてしまうというのは便利だな。

 いちいちATMから現金を引き出す手間も無い。そう考えると学院以外でもキャッシュレスの流れは進んでいくのだろう。


「お待たせしました。抹茶クリームカプチーノのMサイズでございます」


「ありがとうございますっ」


 店員から飲み物を受け取り、適当に空いている席に腰を掛ける。

 暖色系の照明が店内の落ち着いた雰囲気を作り出している。1人で勉強をしたり、読書をしたりするときなんかに利用するには最適な環境だ。

 最近流行りの楽曲が控えめなボリュームで流れているから会話もしやすい。


「んー、美味しいねっ」


 ストローから口を離し、満面の笑みを見せる明智。


「ああ、でもちょっと抹茶が濃い気もするな」


「でもね、時間が経つとその味が恋しくなるんだよ」


「そういうものなのか」


 カップをテーブルに置いて明智の顔を見てからすぐに逸らした。

 明智はそのルックスの高さからファンクラブまでできている。

 もし、休日に2人きりで出掛けている姿なんて見られたら恨まれたりしないだろうか。

 心なしか店内にいる生徒から視線を感じるが、多分気のせいだろう。うん、きっと気のせいに違いない。


「なんか最近色々あったよね」


「そうだな。まだ入学してから2ヶ月だがかなり密度の濃い時間だったな」


 反異能力者ギルドの襲撃に暗空の掲示板問題、集団序列戦。

 当然だが、時間は進むことはあっても止まることはない。


「神楽坂くんは集団序列戦でグループを組む予定とかあるの?」


「オレは1人で望むつもりだ。特に誘いもないしな。明智はどうだ? 誘われることも多いだろ?」


「うん、そうだね。でも、誰か特定の人とグループを組んじゃうと揉めたりする子もいるから。私も1人かな」


「そうか」


 人気者には人気者なりの苦労があるみたいだ。


「グループ組む人も少しずつ増えてきたから1人だと不利になるのかな?」


「まあ単純に2対1、3対1になると厳しいだろうな」


「10位以内同士でも組めたらいいのにね」


 明智が澄んだ瞳でオレの目を見つめてくる。


「学院側もバランスを取るためにルールを作ったんだろ。仮に1位〜3位の3人組のグループができたら上位入賞は揺るがないしな」


「うーん」


 明智がストローを人差し指と親指で摘んで抹茶とクリームをかき混ぜた。


「わからないけどもし何かあったら助けてね」


「確約はできないが善処する」


「いじわるっ」


 明智との付き合いも入学式の日から数えて約2ヶ月。

 軽い冗談を言い合える仲にまで進展した。


「生徒会ってやっぱり大変?」


「楽ではないことは確かだな」


「反異能力者ギルドのこともあったしね。最近では暗空さんの掲示板の件も結構大きくなってるよね」


 自分からその話題に触れてくるか。

 千代田とオレがどこまで繋がっているか探りを入れたつもりなのだろうか。


「その件に関しては馬場会長が事実関係を含めて調べてる。誰が張り紙を貼ったのか、とかな」


 向こうから作り出した話の流れを利用してこちらが明智に探りを入れる。


「そうなんだ。張り紙を貼った人も何が目的で貼ったんだろうね? 暗空さんに個人的な恨みがあるから、とかなのかな?」


「それは本人に聞いてみないとわからないな。だが、あそこまでインパクトのある表現を使ったってことは無差別的な犯行ではないだろうな」


 【生徒会1年暗空玲於奈は人殺しだ!】

 人殺しというワードから連想されるのは、物理的に人を殺したという意味と誰かの人生を奪ったという2つの意味に取れる。

 もしくは、人殺しという言葉を使うことで暗空をただ陥れたかったのか。


「早く張り紙の犯人が見つかって暗空さんの疑いも晴れればいいね」


「そうだな」


 特に引っ掛かる言動も無く、この話題は終了。

 ふと、窓の外に目をやると金髪のイケメン、岩渕が女子2人を引き連れて歩いているのが目に入った。


「んっ? あっ、岩渕くんと3年生の小南こみなみ先輩と百瀬ももせ先輩だね」


「知ってるのか?」


「うんっ、1回だけ話したことがあるの。2人とも優しい先輩だよ」


 本当、明智の交友関係の広さには驚かされる。

 交友関係で言えば、岩渕は同学年との交流は薄いが先輩とはこうして休日に出掛けたりしているんだな。

 思いがけない形で岩渕の少し意外な一面を見られた気がする。

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