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序列主義の異能学院  作者: 丹野海里
第4章 集団序列戦in無人島編
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第103話 神楽坂&氷堂vs敷島&千炎寺

—1—


「試合は前半組と後半組の2回に分けて行う。初めに呼ばれた38組のペアは試合の準備を、残りの39組のペアには試合の観戦を行ってもらう。他人の試合から学ぶことは多い。自分だったらどうするかということを常に頭に入れて観戦するように」


 正嗣の合図で各々があるべき場所に向かって移動を始める。

 オレと氷堂は前半組。

 正嗣にグラウンドの中央を指定され、対戦相手である敷島と千炎寺と一定の距離を保ち待機する。


浮谷うきやさんはこの試合どっちが勝つと思いますか?」


 後半組の浮谷とその取り巻きの1人である門倉かどくらの話し声が聞こえてきた。


「そうだな。神楽坂と氷堂だな」


「ズバリその根拠は?」


「ぱっと見バランスが取れてるのは敷島と千炎寺のペアだが、バランスが取れているから勝てるかと言われればそういう訳でもない」


「つまりどういうことすか? すいやせん、俺、馬鹿なんで分かんないっす」


 門倉が申し訳なさそうに笑って頭を掻いた。


「いいか、氷堂と千炎寺の力量は五分かやや氷堂の方が上だ。そうなると、勝敗は神楽坂と敷島に左右される。神楽坂は、総当たり戦で氷堂や千炎寺とも良い勝負をしていた。対して敷島は防御一辺倒の戦闘スタイル。今回はどちらか片方の校章を砕けばいいってルールだから守りだけじゃ勝てねーんだよ」


「さすが浮谷さんっすね」


「まあ、敷島のデータがほとんど無いからあくまでも今俺が持ってるデータで判断すると、だけどな」


 浮谷たちの他にも多くの生徒がオレたちの試合を観るべく列を作っていた。

 序列10以内同士のペアによるバトルなんてそうそう観ることはできないから注目度が高いのだろう。


 どちらが勝つか予想し合う声も聞こえてくるが、そんな中氷堂は集中力を高めているのか微動だにしていない。


 一方の千炎寺は物体生成の異能力を発動させて緋鉄を作り出していた。

 その隣で敷島が白い大盾を地面に立てている。


「それでは、ペア総当たり戦1回戦を始める」


 グラウンド全体を見渡せる前方に位置取った正嗣が声を上げる。

 試合を見守る観客や両サイドの生徒から緊張が伝わってくる。



「始め!」



氷柱吹雪アイシクルストーム


 即座に氷堂が能力を発動させ、周囲に氷柱つららを展開する。

 氷柱は吹雪を追い風にして2人に襲い掛かる。


「切り刻むッ」


 試合開始と同時に飛び出していた千炎寺が氷柱を次々と斬り払っていく。

 吹雪で向かい風になろうが気にする様子はない。

 敷島はというと、大盾に隠れるようにして攻撃から身を隠していた。


「はッ!」


氷盾アイスシールド


 下段から斬り上げてきた千炎寺の一撃を氷の盾で防ぐ氷堂。

 すかさずカウンターの一手を放つべく腕を前に伸ばす。


凍てつく花弁(フリーズンペタル)


 氷堂の強烈な広範囲攻撃が炸裂する。

 普段は試合序盤で敵の動きを封じる際に使っている印象だが、今回はペアでの対戦。


 カウンターの効力を発揮しつつ、離れている敷島の動きを封じる意味でも有効な一手だ。


 剣を盾にして胸の校章を守ろうとする千炎寺だが、この距離ではさすがに間に合わない。

 いや、間に合ったところでこの攻撃は防ぎようがない。


 と、そのとき、盾に身を隠していた敷島が動いた。

 右手を千炎寺の方向にかざして技を発動する。


白羽の円盾(フェザー・シールド)


 次の瞬間、千炎寺の目の前に円形の大盾が出現する。

 白い盾の中央には天使の羽が描かれており、氷堂の攻撃を受けてもびくともしない。


 しかし、『凍てつく花弁(フリーズンペタル)』は場を制圧する技だ。

 グラウンドに咲いた氷の花から噴き出る冷気がみるみる地面を凍らせていく。

 いくら盾で直撃を逃れたと言っても自由が奪われることに変わりはない。


「氷剣」


 氷堂が氷の花から生み出した剣を握り、千炎寺との距離を詰める。


掌炎の業火道パーム・ヘルファイヤー


 腕から激しい炎を放出させて周囲の氷を溶かしていく千炎寺。

 やはり、氷堂が危惧していたように異能力の相性が悪い。


「緋炎!」


 腕から放出させた炎をそのまま緋鉄に取り込み、緋色に輝く刀・緋炎へと昇華させた。

 緋炎は火野の魔剣ともほぼ互角に渡り合った過去がある。

 ここはオレもサポートに入った方が良さそうだ。


「氷堂、例の作戦で行こう」


「2人で千炎寺くんをやるのね」


 オレが頷き、それを確認した氷堂が飛び出した。


「なんだ2人で俺をやるってか? 面白い、受けて立つ」


 氷堂の剣と千炎寺の刀がぶつかった衝撃で氷の欠片が宙を舞う。


「氷堂、スイッチ!」


 剣を振るった氷堂と入れ替わり、千炎寺が次のモーションに入るよりも早く拳を振るう。


白羽の円盾(フェザー・シールド)


「ぐっ」


 敷島が発動した盾によって攻撃が防がれてしまう。

 拳に強い衝撃だけが残る。


円炎斬サーファス・スラッシュ


 体勢を立て直した千炎寺がオレと氷堂の校章を同時に斬ろうと炎の斬撃を飛ばしてきた。


「神楽坂くん、下がって!」


 さすがに生身で斬撃を受け止める訳にもいかず、氷堂がフォローに入った。

 氷剣を構え、左足に重心を移動させて素早く回転する。


氷華連牙アイスファング


 弧を描く炎の斬撃を氷堂の鋭い2連撃が断ち切る。

 オレは斬撃を切った爆風に突っ込み、千炎寺の懐まで一気に飛び込んだ。


 ここで誤算が生まれる。

 千炎寺の背後に控えていたはずの敷島が千炎寺の隣にまで移動していたのだ。

 瞬時にプランを変更して対応する。


 千炎寺の腹目掛けて掌打を繰り出そうとしていた腕を引っ込め、橋場先輩の肉体強化の異能力を発動させる。


 身体強化では敷島の盾を突破することはできなかったが、爆発的な破壊力がある肉体強化ではどうだろうか。

 とはいえ、多くのギャラリーの目がある以上全力は出せない。

 あくまでも盾を跳ね返せればそれでいい。


 腰を落として正拳突きの構えに入り、何の躊躇もなく拳を放つ。


報復の白金盾リフレクション・シールド


 敷島が手にしていた白い盾が激しく発光する。

 そして、オレの拳から千炎寺を守るように盾を前に突き出す。


 ドスッという骨と盾とがぶつかる鈍い音がグラウンドに響いた。

 体の捻りを利用して盾を押し込む。


「んっ」


 敷島はその小さな体のどこにこれだけのパワーを隠していたのか、押されてはいるもののなんとか持ち堪えた。

 攻撃を受け止めた白盾から不気味な音が鳴ったことを確認し、オレは急いで氷堂の元まで後退した。


 次の瞬間、盾の中心から無数のガラスの破片が吹き出してきた。


氷盾アイスシールド


 真っ直ぐこちらに向かってくるガラス片に対して氷堂が盾を展開するが、威力が強すぎて呆気なく盾が砕けてしまう。

 オレと氷堂は左右に跳ぶことでなんとか回避した。


 どうやら攻撃を吸収してガラス片として跳ね返す技のようだ。

 これは厄介極まりない。


 しかし、これだけの実力があれば相手が岩渕だったとはいえソロ序列戦でも活躍できていたはずだ。

 それが今になって頭角を現し始めた。


「今のはなかなか効いた。神楽坂、あんた強いんだ」


「さあ、どうだろうな」


 敷島に疑問系で聞かれたのでいつも通り適当にはぐらかした。


「次やるときの楽しみが増えた」


「は?」


 ボソリと呟いた敷島の声をギリギリ拾うことができた。

 次やるときとは、いつのことを指しているのだろうか。


 オレと敷島がそんなやり取りをしていると、千炎寺が切り掛かってきた。

 身を屈んで攻撃を避ける。


「試合の最中に会話とは随分と余裕だな神楽坂!」


「話し掛けてきたのは向こうだけどな」


 低い体勢から蹴りを放つが剣の腹で防がれてしまった。


「神楽坂くん!」


 そこに氷堂が回り込み、拳に冷気を集める。


氷拳打破フリーズンブレイクッ!」


円炎斬サーファス・スラッシュ


 千炎寺が緋炎を横に薙ぎ、氷堂の拳と激突する。

 オレが放った蹴りにより万全な状態では無かったため、千炎寺がやや押し返される形に。


「うおーーーー!!」


 千炎寺は声を張り上げることで自身の体を奮い立たせ、氷堂の一撃を相殺した。


「氷堂!」


「えぇ」


 ここまでは事前に打ち合わせをしていた。

 問題はここからだ。


 氷堂から放たれる冷気がオレの拳に集約されていく。

 今からオレたちがやろうとしていることはかなり高度なことだ。

 練習も無しに一発で成功できる確率はかなり低いだろう。


 しかし、抜群の戦闘センスを持つ氷堂とだったら試してみる価値はある。

 これは授業だ。命を懸けた殺し合いの場ではない。最悪失敗してもいい。試すことに意味がある。


「ヤバい」


 千炎寺が敷島に視線を送って助けを求めるが、なぜか敷島は動かない。


『「擬似・氷拳打破フリーズンブレイク!!!」』


 氷で覆われたオレの拳が千炎寺を捉えた。

 刹那、氷が千炎寺の上半身に広がり左胸の校章を砕く。


「そこまで!」


 正嗣が試合終了を告げ、ギャラリーから歓声が上がった。

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