閑話
今回はいつもより短いです('ω')ノ
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「何の躊躇いもなく行ってしまいましたね、夜叉様が“期待”しているといった意味が多少理解できました」
彼は本当に何者なんでしょうか?本来ならばこの浄己の間では己の心の内すべてを、仮初の存在であるココロへと変換し向き合うと言ったものなのですが、彼は、自らの本当の心の内側を最後まで変換させず突破しました。
これだけでも非常に稀なのに彼は、本来すべてを受け入れ、その人本人と同じになるはずのココロが“発狂”する。これは極めて異常なのです。だってそうでしょう?なぜ、その人を完璧にコピーする“ココロ”が発狂して“本人”は発狂しなかったのか?ココロが発狂するのならば、その本人である彼も同様に発狂していなければ可笑しいでしょう。
これだけでも愉快な存在なのに彼は、彼の内側に眠っている怪物をほんの少しだけ起こしただけで人間を超越した筋力を得ていた。まあ恐らく起こしたというよりは、周りを囲っている檻や扉なんかを認識しただけなのでしょうがね。それ故に、完全に起こしたら一体どうなるんですかねぇ今から少し楽しみになってきました。
まあどれもこれも彼が強くなるには必要な“要素”ですが、そんなものは彼を直接見たことがない者たちが言う言葉でしょうね。何故なら、彼の強さの本質はあの異常なまでの殺人欲なのだから。相手を殺す為ならば何度でも死に、相手のすべてを喰らい尽くし破壊しつくす。それこそが彼の強さの源でしょう。
現に、彼は鬼と化したココロを殺す為に累計十万ほど死にその度に相手の動きを読み取る力や自らの筋肉の動かし方、効率の良い回避の仕方などを習得していったようですから。
確かに彼はここに来た当初と比べれば格段に強くなっている。このまま順調に育てば、いずれすべての頂点に立てる可能性があった。しかし、彼が行った場所は戦場。本物の強者であっても呑み込まれてしまう場所に、技術もなければ力もない、素人に毛が生えた程度の人間が行っても一方的にすり潰されるだけ。そうして彼も他と同じように朽ち果てるのでしょう。
「本当に残念です、このまま終わってしまうのが」
人間の持つ無限の可能性、これに賭ければ那由他分の一くらいはまともな状態で生還できるでしょうが如何せん確率が低すぎるんですよねぇ。まあ自身で決めたことなのだから他人が言う事では無いですがね。他人というか私、人ではなく鬼ですが。なーんてはっはっはー……ああ、つまらないですねぇ。
「さて、こんな所で油売ってないで仕事に戻りますかね“ヒトガタ”を維持するのも面倒になったことですし」
黒邪鬼は自らに掛けていた術を解いて刀を振るう。そこには先程まで人に角が生えただけの姿はどこにも無く、史実に出てくる邪悪な鬼そのものの姿をしていた。次元を切り裂きそこへ歩いていく。
「やっぱり人間って面白いですね」
そう呟いて黒邪鬼は消えていった。
誰も居なくなった空間は音を立てて崩れた。
ブクマありがとうございます!稚拙ですが頑張ってあげていきます。今回は心情回なのでつまらなかったですかね?ではまた明日(=゜ω゜)ノ