終ノ焔槍
今回は少し短いです。('ω')ノ
拙い剣捌きでアグナの攻撃を捌き続ける。どれだけ拳が纏っている焔を“暴食”で喰らっても、体を掠める攻撃のダメージを減らすことは出来ない。
それに、“暴食”でどれだけ焔を喰らってもこれだけ連撃を叩きこまれている状態では、攻撃を無力化できるほどに喰らいきるのは難しい。
ここまでの戦いで“暴食”には一つ欠点があることに気が付いた。
それは、力を喰らってもすぐに自分のものにすることが出来ないと言う事だ。
これはある意味でありがたく、ある意味で問題でもある。
ありがたい事は、喰らった力に振り回されることなく、自分の一部として違和感なく使えるという事。
問題の方は、どれだけ力を喰らってもその場ですぐさま変換できるのは、およそ五十パーセントといった所だろう。
これがただの雑魚と戦っているとしたのなら問題は無かったが、相手は圧倒的なまでに強大。
“暴食”で喰らった力が、体の内に溜まり続けている。
喰らった力を溜めすぎれば、いずれ暴走するのだろうが、そんなことは今、気にしていられるほど余裕がない。
「はっ!ふっ!せあっ!」
顔面に来る拳は思いっきり首を傾けて避け、次いで死角から襲ってきた左フックを頭を下げて避け、下がりきった頭に膝蹴りが飛んできたため、咄嗟に剣の腹で受け止め、自ら後ろに飛び衝撃を流す。
地面を削りながら後ろに飛ばされ、周囲を確認する前に右へ転がる。
「くらいなさい!〈焔槍〉!」
先程まで居た場所に恐ろしいほどに、燃え上がった槍が降り注ぐ。
突き刺さった槍は、すぐさま周囲を巻き込む大爆発を起こし、その爆風で体勢が崩れた所に殺気に囲まれる感覚がした。
「終わりよ……〈終焔葬〉」
先程降り注いだ槍に、囲まれその槍から焔が噴き出し壁を作り出す。
“暴食”で喰らった力のおかげで呼吸は必要なくなったが、異常なまでの熱で立てなくなった。早く抜け出さなければ、上昇し続ける熱で焼き殺される。何とか、熱を喰らって気温を下げているはずだが、それよりも早く上がっていくためジリ貧だ。
それに、作り出された焔の壁を喰らっているはずなのだが、一向に減らずここから抜け出すことが出来ない。
「どうやって抜け出せばいい……」
抜け出すことを考えていた瞬間、焔の壁に体を圧縮された。
そのまま、宙に持ち上げられた。何とか体に纏わり付いている焔を喰らって、潰されるのを防ぎ、生きる。
「神をも滅ぼす終焔の槍。楽しかったわ、滅びなさい終神滅焔葬槍」
外から、アグナの声がする。
意識が朦朧としている中、世界を滅するナニカが俺に向かって放たれようとしているのを感じる。
何とかして、この拘束を解かなければ消される。
足掻いて、藻掻いて、抜け出そうとしたが、遅きに失した。
「ゴッ……ぐぶっ……」
焔で出来た槍は心臓を貫いた。
「さあ、燃え上がりなさい、美しく……ね」
「なんだ……これ?熱くないのに体が燃えてる?」
痛みも無ければ、体を襲う熱さもない。ただひたすらに、眠くなる。温かく優しいその焔に抱かれ意識を失った。
〈魂を貫かれました。このままでは、守夜桐継は消滅してしまいます〉
………
〈終わりへと至りました。これより守夜桐継の再構築を始めます〉
……
〈世界を喰らう“貪食”の制限をクリアしました。エラー……まだ満たしていない制限があります。よって“貪食”は使用できません〉
…
〈“暴食”のスキル【暴れ喰らうもの】を発動します。使用中、守夜桐継は自意識を失い本能のままに喰らいます。使用期限は、魂の復活までです〉
「ああ、貴方も綺麗な灰になれたわね。よかったわ」
そう、安堵しているとゾッとするほどの殺気がわたしを襲う。
殺気に体が反応し構えると、衝撃が体を震わせた。
「いったい、なにが……あ、れ?わたしの、しんぞう……は?」
何が起きたのか分からなかった。気が付いたら、心臓だけ無くなっていた。別に、いつもの通りなら心臓が無くなったところで、また再生すればいいのに何故か今は再生しない。
「ど……なっ……い…の?」
「…………………」
「う………そ、な…で」
確実に消し去ったはずの彼がそこに立って、わたしに手のひらを向けていた。
けれど、おかしい。神をも滅ぼすあの一撃を喰らって生きていられるわけがない。それに、さっきまでの彼とどこかが違う。
欲望しかないような、自分を失っているような、そんな感じがする。
「【暴食】」
握りしめていた焔を当てようとした瞬間、彼は手のひらを握り潰し、わたしは消えた。
灰になって消えたアグナを、無感動に見送り【暴食】は進む。
次なる獲物を求めて進む。
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焔神 アグナ
保有概念 「焔」
・全てを焼き尽くし灰に帰す滅びの焔。ひとたび火が付けば、患部を切り落とそうが何をしようが消えずただ無情に燃やし尽くすのみ。ただし、この焔は使用者に絶大な加護を与える。身体能力の強化や、再生能力といったものを与える。これは終わりであり始まりでもある概念なのだ。
・焔神器 「崩焔拳 ゼバール」
※ アグナが愛用していた神器。これは、焔を自在に動かし意のままに操れるようになるもの。
※ 概念を得た後はさらに強化され、あらゆる存在を灰に返す神器と化した。
・装備 「深紅のドレス 焔界」
※ 炎を纏いその熱で敵を焼き尽くす攻防一体の防具。この防具は、アグナが着た最後の服でもある。
※ 消えぬ焔を身に纏い、世界をその熱で守らんとしたドレス。
・戦技 【炎掌浄破】 手のひらに膨大な熱量を宿し敵を打ち抜く技。
【炎槍】 炎を槍へと変え敵を滅すだけの極めて簡単な技。それ故に強力な技でもある。
【炎帝】 アグナが本気で戦う際に使用する炎を纏う技。これはありとあらゆる能力が強化され、ただ纏っているだけで敵を灰にする絶対的な技。
【焔神破邪】 “焔”の概念を用いた滅びの正拳。ただ愚直に修練を積んだその一撃は、確実に敵を貫く一撃と化す。
【炎帝浄滅破】 使用している【炎帝】の全てを込めて拳を突き出す奥義。全てを込めた一撃である為、威力は他の技と比べて群を抜くほどに高いが、その分隙が大きくその上、使用中の【炎帝】も効果を失ってしまう。
【焔神殲火】 終わりの焔を纏い敵を殲滅する。全てを灰に変え、世界を終わらせる焔。【炎帝】を超えた力を与える超常の神技。
【終焔葬】 焔神と化した状態でしか使用できない技。強化された【焔槍】を敵のまわりに配置し、焔の壁を作り出し敵を圧殺する。
【終神滅焔葬槍】 アグナの持ちうる最終奥義。全てを終わらせる【焔槍】で敵を、神を、世界を、その全てを焔で貫き終わらせる技。
・今はただすべてを灰にすることしか、考えることが出来ない。それほどまでに彼女は燃やされてしまったのだ。そして、彼女は優しく強く美しかった、だがそれも世界のために死ぬ前までの話だったが。
・彼女も死神と同じように世界を守るために、そのすべてをなげうち守り人になった。そして、他の者と同じように死んだ。
・死んだあと彼女は、その身に世界の澱みを抱えていたため他の人間に移す以外、成仏できなくなっていた。だが、澱みを移すと言う事は、その者に呪いを背負わせると言う事になる。それを許容できなかったが故に、ここに来た者たちを灰に変えていた。
残り再生数 零
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最近忙しいので、少し投稿頻度落ちます。ごめんなさい。(*'ω'*)