すべての始まり
まばらに聞こえる車の走る音。静かな夜に吹く風の音。見上げた空は暗く月と星が輝いていた。見下ろせば街は人工で出来た光で満ちていた。マンションの屋上で眠らない街を見ていた。一歩踏み出せば見ている世界は反転し“俺は”この世界から消えることになる。
なんだか生きることに疲れてしまったのだ。生活に不満はない。ただ、人と関わることが“俺”には苦痛だったんだ。なにも人が嫌いだったわけじゃないが、誰しも嘘をついたり自分を偽って生きている。毎日がそうであるとは言わないが、それでも大半はそうであるんじゃないかと思う。そんな生活をこの先も送ると考えると耐えられそうにない。すでに自殺一歩手前まで来ているのだから。
今日“俺”は死ぬ。
なにも残すことはなく、だれにも止められることなく消える。思い残したことはたくさんあるがもう決めたのだから、しょうがない。
「さて、いくか」
意を決して飛ぶ。
体に叩きつけられる風、恐怖ももちろんあったが空を飛んでいることに対して少し高揚した。
そしてそのまま地面に叩き付けられて死んだ。
“俺”こと守夜桐継はこの世界を去った。