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Moon river

作者: 河衣小牧




ねえ、みて?




僕のシャツの袖を引くあなた。



視線の先には闇に煙る《けぶる》朧月


繋がれた手の温度は、空気の冷たさをはっきりと感じさせてくれる。


ごう、と飛行機の低い音が頭上を通り過ぎる。




明日は雨かしら。




呟いたあなたの声は残念そうだけれど、ふっと盗み見たあなたの表情かおは。




薄く開いた唇が



風任せに揺れる髪が



墨色の空を見つめる瞳が






綺麗で。




綺麗で。







今 自分が見ているもの全てが幻なんじゃないか、なんて錯覚すら覚えてしまう。




街の喧騒から離れたこの場所で、夢とうつつを分けてくれるのは、繋いだ指先の温かさだけ。



その手をより強く握れば、あなたは少し驚いて僕の顔を見つめて。



そして、ふわりと綻んだ笑顔で






どうしたの






なんて聞く。その微笑みさえ、どこか異国の物語の様で。



もし、手を触れたなら。



その身体を抱きしめたなら。






あなたは闇に紛れて消えてしまうだろうか?







そんなことすら思うのは、きっと。






花の匂いが強い所為だろう。




どうか今夜は酔わせて欲しい。



眩むような月の光に



その月を映す瞳に




むせ返る程の花の香りに



その香りに微笑む唇に



静かに梳いた髪に



その髪の垣間に見える白い首筋に







酔わせて。










惑わせて。






一夜の夢にさせて。






そうであったなら、目覚めた時、



僕は。




甘い頭痛と言葉のかけらを手に入れて。



またいつか訪れる夢の続きに焦がれ。




それだけであなたがいる事実を信じられる。



今夜も月が照らす。




この街を




香る花を




そして




光はどこまでも続き












あなたへ。

小牧です。やっと二作目を書くことが出来ました。 帰り道に月明かりがあまりにも綺麗だったので、それをイメージしてみました。作中の花は、金木犀だと気付いて頂けたでしょうか。 最初までお読み頂きありがとうございました。

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