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85話 顧問の苦悩

「なんかあんまり橋って感じしないな」


  俺達は因島大橋の下の歩行者、軽車両用の歩道を歩いていた。橋の下の公園の裏山につながる階段と人工の通路を通る事で因島大橋に直接アクセス出来る。この道の上を因島大橋のハイウェイ。自動車道が通っている。だが、それを感じさせないほど通路は静かだった。揺れも殆どない。歩行者用の通路の地面は完全にアスファルトで固められ、左右は金網がしっかりと張られている。


  その金網の向こうんには太い橋本体を支える支柱となっている柱や、パイプなどが見え、構造が丸見えである。パイプなどの隙間には点検を行う作業員が常駐する為の物か、人が上がれる様な足場が並んでいた。橋の構造が下から確認できる場所は珍しい。マニアであれば感動するに違いない。


  歩行者は基本的に通行料金は無料だ。とは言っても軽車両、歩行者専用道路には事務員や警備員が常駐している訳ではない。一応防犯カメラは歩行人数を調べるレーダーの様な物が料金所には設置されているものの、バックレ様と思えば可能であろう。たかが数百円の為にバックレるもどうかと思うけどな。


  金網の向こうからは美しく、青い海が太陽の光を受け、キラキラと輝いていた。だが、金網を通してみると少し足が震えるな。橋の桁下の高さは50メートル。俺の視線の先には先程まで俺達が歩いていた海岸線が遥か下に見えていた。


  風は下にいた時より強く、爽やかな風がトンネル内を潜り抜け、俺の前髪はさわさわとそよいだ。


「なぁ、次の橋入るときにさ、一年生全員で集まって写真撮らね?」

「おお、いいなそれって……お前戻って来たのか」


  俺が金網越しの景色をガラケーやデジカメで写真を撮っていると横から声が聞こえた。そっちの方を振り向くと山猫が頰を掻きながら、スマホを握っていた。


「いやぁ、天咲にイタズラしてたら突き放されちまった」


  そりゃ、お前が悪いわ。山猫の性格はやんちゃ。イタズラが好きだ。それに対して、天咲は弄られるのが苦手なタイプである。だが、弄られたりして、何か嫌な事が起こるとすぐ表情や態度に出てしまう。それ故に山猫は面白がって度々、天咲にイタズラを仕掛ける様になった。


  イタズラと言っても本当に悪ふざけであり、深刻なイタズラでは無い。山猫がやるイタズラは基本的に沢登りの時の様に水をかけたり、耳に息を吹き込んだりと、小学生の様なしょうもないイタズラばかりだ。


  だが、普段から毎日これをやられていれば、非常に鬱陶しい。天咲が突き放すのも仕方ないだろう。


「ちょっとやり過ぎちゃったかな」

「何やったんだ?」

「飯のゴミ押し付けた」

「他には?」

「靴の踵踏み続けた」

「他には?」

「脇腹突いた」

「……」


  こいつ……突けば突くほど出てくるんだろうな。しかし、一つ一つが本当にしょうもない。


「まぁ、ちょっかいかけるのも程々にな……。それよりもさっき言ってた写真の話聞かせてくれ」

「おう、アレだよ。テレビとかでよく見る奴やりたいんだよ!」

「?」


  俺は首を傾げた。テレビとかでよく見る奴……?何だそれ?


「アレだよ。ワープする奴……」

「お、それってジャンプする奴じゃない?」

「そうそう、それそれ!」


  濱内が助け船を出し、それによって俺の脳裏に映像が浮かんだ。ああ、アレか。


「橋から海に飛び込む奴?」

「お、それ観たことあるぞ」

「そんなん、観たことないわ!」


  お前らは喋るな!ややこしくなる。


  茂木と材木が俺達閃いちゃった。みたいな感じで自信満々に答えるが、恐らく、いや、これは間違いなく山猫が考えているのとは違うだろう。それはただの命知らずの飛び込みだ。と言うか、それやって山中先輩大怪我して復帰したばかりだろう……。そこまで考えて俺の中で嫌な予感が過ぎる……あの人また飛び込まないよな……。


 でも、山中先輩、海水パンツ持って来てたよな……。うん。今の季節は真冬やし、気にしない事にしよう。




  因島大橋を渡り、橋を下ると直ぐ近くにパーキングエリアがある。そこで先生達と合流した。


「ここからは内山先生が先導します。ここから綺羅垣きらがき山の山頂まで先導します。綺羅垣山の山頂にたどり着いたらそこで点呼を取って下山します。皆さんが登山している間にわしは先のコンビ二まで車で先回りしておきます。山頂からは、北側に抜けて下さい。そっちの方にフラワーセンターがあるので、そこを通ってその先のコンビニを目指して下さい。山頂からは先輩達が先導してくれる筈です。え、先輩達頼むよ?大丈夫だよね?

 」

「「あ、大丈夫です」」

 

  本当に大丈夫!?伯江先生の指示に対して先輩達は今呼んだ?みたいな感じで軽く返事を返した。


「それで先輩達が先導してくれる時間に内山先生ちょっと大変だけど車急いで取りに戻って下さい」

「分かりました」


  内山先生は若干に苦笑いで答えた。綺羅垣山の標高は220メートル程と然程高くは無い。だが、島全体の標高が低い為、島全体が見渡せる絶景スポットだと言う。そこには沢山のお地蔵様が祀られており、安全祈願として毎年綺羅垣山登山を行っているらしい。


  話を纏めると、PAに車を置いて内山先生が綺羅垣山山頂まで先導。その間に伯江先生が車でコンビニまで先回り、綺羅垣山山頂からコンビニまでは先輩達先導。その間に内山先生は来た道を引き返して車を回収して俺達に後から追いつく。


  こう言う内容だ。こう考えると内山先生ハードだな。俺は普段から登山などで体力はあるとは言え、既に四十歳を超えている内山先生に同情した。今回に限って野原先生がいないのはかなりの痛手だな。教員二人でこの集団を管理する。それがかなり無理して、無理矢理回している状態であると言うのは子供でも簡単に理解できた。


山の名前は仮名です。山自体は実在してます。


部活の顧問の先生って結構ブラックですよね……。

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