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83話 初めの一歩

 今日の最終目的地点は生口島。三つ目の島だ。そこまでの道のりは約25キロちょっと。それを一日で歩く。こう聞いてみると案外短く感じる。ハーフマラソンより少し多い位だろうか?普段の練習でも2時間余りで、坂道が中心の中、10キロ近くは走っている。それ程長い距離とは思えない。


  木場山登山の6時間で移動した距離が10キロちょっとである事を考えると荷物があるとは言っても所詮は2倍。大した距離には思えなかった。現在の時刻は9時。歩行終了時刻が日暮れ間際の16時頃である事を考えたら7時間も時間がある。時速で計算すると3.5キロメートル。成人男性の平均歩行速度は4〜5キロメートルと言われている。休憩する時間や登山する時間を考えると、少し早歩き位で歩いていたら間に合う計算である。


  尾道駅から歩いてすぐ、俺達はフェリーに乗った。フェリーに乗って早5分程で向島に到着する。横には向島のドッグがあり、尾道駅方面のラーメン屋が立ち並ぶ鮮やかな風景とは違い、少し殺風景だ。


  フェリーから降りた俺達は一斉に地面に足をつけた。ここから対岸には尾道の町が見える。ああ、既に島に上陸したんだ。山では揺れなかった俺の心は大きく揺れた。


「はじめの一歩」

「グリコやる?」

「違えーよ。やらないよ」


  向島の方へと向かう人は少ないのか冬休みにも関わらず人が乗る場所はかなりガラガラだった。車や自転車で島に渡る人は多くても、徒歩で島の方に渡る人はほとんどいなかった。島上陸の記念として一歩を大きく踏み出した俺だったが、茂木の一言で出鼻を挫かれた。


  まぁ、確かに初めの一歩って言ったらそのイメージだけどさ……。


「わし達は車で先に行っておくから道は先輩達に教えて貰ってくれ。緊急連絡先は計画書にあるから迷ったりしたら連絡下さい」


  伯江先生と内山先生は車であっという間に俺達を置き去りにした。地図を最初に確認したが、向島の次の因島の山を下山するまでは道が複雑だった。ここまでは班行動は絶対だろう。と言った側から高校生の先輩達は笑いながら前方に走って行った。先輩達は今回持っていく荷物は少ないはずなのに殆どがメインザックだった。カバンに釣竿が突き刺さっている先輩すら居る……釣りをする時間などあるのだろうか?それに、どれだけ変なものを持って行けるか、と言うあの大会の為に何か持って来ているのだろうか?少なくとも俺はアレだけの荷物を背負ってハーフマラソン3日連続で歩く自信は無い。


  メインザックの容量は天蓋含めて80リットル程度の物が多い、それにも関わらず先輩達のザックは天蓋さえも盛り上がってしまっていた。あのパッキングの上手い先輩達だ。アレで中がスカスカな筈が無い。それしメインザックは長時間の行動を支えてくれる代わりに本体だけで2.5キロほどある物が殆どである。ただの企画なのに、負荷を敢えてかけるとかドMの所業としか俺には思えない。そう思いながら、俺は横の速瀬を見て口の中のグミを噴き出しかけた。


「ドMか……?」

「あ?うっせえ」


  速瀬はメインザックで来ていた。いや、お前ならそれ背負ってても完走は楽勝だと思うけどさ……もうバカかドMかどちらかにしか見えないんだ。すまん。


「あいつも、メインだろうが!」

「へ?」

「いや、着替えが3日分要るかと思って……」


  剣山よ。気持ちは分かるが、それ多分自分苦しめるだけやぞ?山田もメインザックで来ていた。ただ見た目の割に中身は主に着替えや、タオル等が殆どの為、重量はそこまででも無かった。山田もパッキングが上手い方では無い。荷物が嵩張ってしまったのだろう。


「どんまい」

「……」


  前の経験から学んだ俺は今回水筒は持って来ていない。その為、割と総重量は軽い状態で荷造りは出来ている。先程駅のヘブンイレブンで購入した。昼飯はまだ未購入である。道中にコンビニがある事は分かっている為、今買う必要が無いと判断したのだ。


  こういう合宿の場合は道中ゴミ箱があればゴミは捨てられるし、途中で食品なども購入出来る。歩行中は無駄な重りを背負う必要は無い為、現地調達が一番効率的なのだ。登山の際にはグミなどが入っている袋の上の切れ端ですら事前に切って重量を削減させる。


  それ程荷物の重さと言うのは、行動時のスタミナ維持に直結するのだ。


  向島のドッグを出てすぐ、隣には中学校のグラウンドと思わしき建物が目に入る。島にも学校があるのか……まだここは尾道からすぐの島だから良いが、これより奥の島の子とか外出るの大変そうだな……。俺は思った。俺も家が学校から遠いからこそ分かる。島からは電車などの路線が繋がっていない。どこか、大きなショッピングセンターに行きたい。と思ったら島を出る必要がある。


  俺は電車に乗って広島市街に出れば良いがここら辺に住んでいる人は車で橋を通り、船に乗って移動する必要がある。それ程面倒な事は無いだろう。


  交差点を超えた辺りで既に班はきれいに分割されていた。大体5〜7人。それくらいの塊に分かれ、先を目指す。俺達の周りは殆どが一年生だ。茂木、材木、湖穴、孤島、山田、濱内。俺達はこのグループである。


  一つ前のグループには青空や、雲井、明道、速瀬、天咲、山猫などのメンバーが居る。一つ前のグループを追っていればひとまず迷う事は無いだろう。俺は一番後ろのグループの為、少し心の中で焦り、足を速めようとしたが、曲がり角などが近くに無い為。焦る必要は無いと自己完結させて速度を落とし、協調性を優先させた。


  交差点などの迷いやすい場所では参与が車を停めて、指示を出してくれる。それも有ったのだろう。俺は苦笑いで茂木達の下らない会話に乗っていた。


「海って言えばイカじゃん?そう言えば、イカの足って何本かしってるかー?」

「8本じゃね?イカのハッちゃんって言うじゃんー?」

「え、それタコじゃね〜?」

「多分それだわ。はっはっは」

「「はっはっは」」


  何がオモロイねん!それに、海って言えばイカか?こいつら、いつもと会話の内容が全く変わらんな……。それに結局正解言わんのんかい!イカの足は10本だが、足は8本!って言う引っ掛けかと思ったわ!


「イカの足は10本でした〜」

「あちゃ〜そうだったか?」


  いや、気づいて無いんかい!ツッコミ不在のボケ程怖いものは無い。いや、寧ろ、この二人にとってはボケたつもりもないのだろう。まぁ、この二人がそう深く考えてる訳ないよな……。俺はそう考えた所である事をふと思い出し、顔がひきつる。


 でもこの二人。何気に俺より成績良いんだよな……。俺は少し頭を抱えた。


街中を歩いたりする企画とかの場合は食事などは基本現地調達が良いです。ゴミなどが嵩張らないので便利です。それでも、ちゃんと分別して纏めて捨てる様のゴミ袋は必須です。


こう言う企画の時の友人とするつまらない会話めっちゃ好きです。これがあるから歩き旅はやめられないんですよね。自分のペースで進める一人旅も悪く無いですが、人と行くってのもこんな良さがあります。


7月に広島から京都までお寺参り含めて10日程で行って参りました。岡山辺りで暑さで死にかけました。岡山までは徒歩、総歩行距離300km超。金銭面の問題(飲み物代で予想以上に消費)で途中電車も使いましたが、良い旅でした。資格勉強の本を詰めて行ったのが一番の失敗でした(そのせいで荷物重量15kgオーバー)。


やはり、荷物の重量は大事ですね。えっと結局何が言いたいのかと申しますと……歩き旅は最高です!(実の所を言いますと作者は登山よりもこちらの方が好きなんです)

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