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79話 トレッキングポール

  俺達とすれ違った二人組のカップルはI字型のトレッキングポールを使っていた。恐らくこのタイプがメジャーなものだろう。トレッキングポールの知識に関しては先輩の知識だ。俺自身は使った事が無いが基礎知識だけは記憶にあった。トレッキングポール……通称登山ストックには種類が二種類ある。一つはI字型。横から握る様になっているタイプのストックだ。これは横のストラップに手を通して比重を分散させて使う物で、登りや長距離歩行の補助に適している。基本的に二本で使う。


  もう一つの種類はT字形。登山ステッキとも呼ばれる物である。一番上の部分がT字型になっており、見た目は正に老人が使う杖の様な物だ。あまり山で使っているのを見た事無い人も多いのでは無いか?これは基本的に一本で使用し、上から荷重をかける様にして握って使う。下山時の補助に役立つタイプのトレッキングポールである。


  次に素材だ。超軽量で扱いやすいカーボン素材の物、少し重いが丈夫なジュラルミン素材。軽量で曲がりやすいアルミ製。カーボンとアルミの複合型。基本的にトレッキングポールはこの4つに分かれている。


 どれを買えば良い。などは一概に言えないが、余程ハードな使い方をしない限りは最軽量であるカーボン製がメジャーなのでは無いか?と思われる。カーボンの場合折れる時はポッキリ折れるが、アルミ製の場合徐々に歪みが大きくなってから折れる。その為、トレッキングポールなどが変に曲がった状態などで使用していると力のかかり方がおかしくなったり、バランスを崩したりと不慮の事故を招く可能性がある。それを考えると多少高くてもカーボン製の方が良いのでは無いか?と個人的には思った。


 そして次に収納タイプも二種類ある。テレスコーピングタイプと折り畳みタイプである。テレスコーピングタイプはその名前の通り望遠鏡の様にトレッキングポールを直接伸縮させて長さを調節するタイプの物だ。これがメジャーなタイプで昔からある物だ。先程のカップルが使っていたのはこのタイプである。値段も折り畳みタイプに比べると安く、強度も高い。ただ収納性は悪い。

 

  折り畳みタイプは最近出たモデルの物で、軽く、コンパクトに収納出来るのが特徴だ。トレッキングポール自体がテントのポールの様になっており折り畳める様になっている。


 俺としては強度に優れ、安価である前者の物をオススメしたい所だが、初級登山位……要するに俺達が普段登っている山を登る程度ならば折り畳みタイプの強度でも十分なのだ。 種類も前者の方が多い為、これも用途に合わせて選ぶと言った感じだろうか?


 そして、次にシャフトのロック方法にも種類がある。これは四種類である。シャフトと言うのはストックの手を握る部分であるグリップ、ストラップ、先端を除いた本体の棒の部分の総称である。


  ジョイントと言われるパーツ。この部分はストックの長さを調節し、固定する大事なパーツである。最も一般的だと言われているのがスクリュータイプ。捻って固定するタイプだ。捻る部分にはstopと書かれたマークがある為、そこまで捻って固定する。そのマークを超過して回すとストックが折れる事があるので注意が必要である。要するにペットボトルの蓋などと同じ仕組みという事だ。形としては釣竿などのリールを固定する部分に似ているだろうか?このタイプのものは昔から作られている為、種類も豊富で値段も安価だ。欠点としては捻り過ぎて壊してしまう、女性などの力がない人はうまく固定出来なかったり、力加減が難しく、どこまで締めれば良いか分からなくなると言った具合だろうか?だが、これに関してはペットボトルの蓋をどこまで締めれば良いか分からないと言っているのと同じ様な事なので問題は然程無いだろう。


 次にレバータイプ。開閉式のレバーがシャフトに付いているタイプの物だ。これは操作は簡単で上下に開閉するだけでロック出来る。カチッと言う音がするまでレバーを閉じたらその長さで固定出来る。当然力も殆ど要らない。欠点としてはレバー部分の凹凸が歩いている時に木などに引っかかる……と言った所だろうか。これに関してはレバー部分が小さい為そこまで気にならないだろう。


 次にピンロック式。これは普通の杖などに採用されている物だ。シャフトを引いて押したら引っ込むタイプのボタンを外に露出させて固定するタイプの物である。収納時はボタンを中に押し込んでシャフトを縮める。このタイプのものは最も軽く嵩張りにくい。ただ少し強度に劣るのと、長さが固定である事が欠点である。


 そして最後に複合タイプ。一つのタイプだけでなく複数のジョイントに色々なタイプを使った物である。それぞれのメリットと欠点を持ち合わせている為、使う人によっては使いやすい物になるだろう。


 個人的なオススメはレバータイプである。着脱が簡単で、欠点も殆ど気にならない。それ故の選考理由だ。


 最後に付属品に関してだ。登山ストックの先を見た事があるだろうか?石突と言われる部分である。先は硬い金属で出来ており、人などに向けるとそれは忽ち凶器と化す。そこを覆うゴムキャップなどが付属している。雪道や、岩場などの場所以外では基本的にこのゴムキャップを着用する。


 そうする事で植物の根なども守る事が出来る。そして、もう一つ。バスケットと言われる、石突部分が地面に食い込み過ぎない様にする為の傘状のパーツがある。これは基本的に無雪期用の物が付属している為、必要とあらば、雪山様の物との使い分けが必要だ。シーズン纏めて付属して販売しているものもあるので、そこら辺もチェックして見ると良いかもしれない。


 ここまでは、登山ストックの種類に関して話たが、肝心の使い方についてまだ言っていなかった。俺はそれに気がつく。


 I字型のストックは真っ直ぐ立った時にストックを体の横で持ち、肘が直角~少し開くくらいの長さになる様にする。登り時は少し短め、腰のあたりに来るように長さを調節する。逆に下り時は胸のあたりに来るように長さを調節する。


 持ち方に関してだが、I字型は登り時には付属しているストラップの紐に下から手を通す様にして横からグリップを握り、下り時は上から手を被せる様に握ると歩きやすいらしい。


  T字型はグリップの短い方を前に向け、親指と人差し指で握り、長い方を中指、薬指、小指で握ると握りやすい。タイプによってはT字型でもI字型と同じ様に握れる形状のグリップの物もある。


  そして、歩き方。平地では踏み出した脚と反対側のストックを足の少し前に突き、左右の足と反対側のストックを交互に突いて歩く。もう一本足が増えた様な形である。手と足の動きは互い違いだ。


  登り時。足の出る位置の少し前に反対側のストックを突き、足とストックに重心を移しながら後ろ足を引き上げる。ストックは地面と垂直に突く。この際歩幅は小幅の方が良い。それにストックも手前に付く事を心がける。ストックを使っていても基本姿勢を崩してはいけない。そうなると余計に疲れる原因となる。


  実際に先程のカップル達はストックに大きく身体の比重を傾けており、重心がかなり前に出てしまっていた。それ故に腰が曲がり、余計に身体に負荷がかかってしまっていた。そうなる位ならば、ストック無しで登山した方がマシである。


  特に気をつけるのは下りだ。ストックを付く位置は基本的に変わらず、足が出るすぐ横か、一段下にストック突き、安定させてから、最初に足を着地させる。歩幅は平地の半分以下にして、体重がストックにかかり過ぎない様に気をつける必要がある。ストックは案外脆い。体重をかけ過ぎてしまうとストックが折れる危険性があり、先程言ったように重心が前方にズレてしまい、姿勢が崩れてしまう。足を踏み外した場合には傾いた重心と共に頭から下り坂を落っこちてしまうに違いない。それは大怪我を招く。


  勿論、ストックは遠くに付いてはいけない。理由は上記の通りである。


「おい、山川。余所見をするな。いつ、黒の部隊に狙われているか分からんからな」


  戸山先輩の篭った声で俺は我に帰る。すいませんね。考え事してて。気がつくと先程まで居たカップルは既に彼方へと消え、串多山はかなり近付いていた。


「考え事をするのは良いが、周囲への警戒とマッピングを怠るな」

「はい、すみません」


  戸山先輩の台詞回しはクドイが、言ってる事はごもっともであった。


 


登山ストックの説明回でした。色々説明しましたが、興味がある方はお店の方に聞いて見るのが一番だと思います。


お店の人に普段登る山や用途、どの様に使いたいと伝えれば用途や指定した価格帯で、その条件に適したものを詳しく説明してくれながら選んでくれます。

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