52話 天気図講習会 2
「ええとさっきは記載すべき基本要素と順序を説明したね?だけど、テレビとかで見る天気図ってなんか色がついた線みたいなのが引かれているよね?あれも描かないといけないんだけどその説明もしていくね」
国背先輩はペンを握って俺達にわかりやすい様にホワイトボードに図を描き始めた。
「さっき説明した要素がラジオで言われたら次に漁業気象って言うのが読まれる。漁業気象では主に前線、低気圧、高気圧などの位置の座標、気圧などの数値が読まれる。まず描き方の前に言葉から説明していくね。ペンは赤、青、紫のペンを用意してくれ」
国背先輩はホワイトボードに山岳地図の様な物を描き始めた。ホワイトボード上には山と思われる物が二つと、大きな窪地と思われる様な地形が描かれていた。
「まず気圧って何だ?って話からするよ。気圧ってのは目に見えない空気が押している圧力の事だ。今も君達は意識していないかも知れないけれど身体の上には大量の空気が乗っかっている。その圧力の単位でhPaってのを使うんだ。海面上の標準気圧は1013hPaと言われているが、低気圧でもその1013hPaを超えるものもあるんだ」
国背先輩は窪地の部分を赤いペンでなぞり、Lと記載した。
「低気圧って言うのは単純に周囲の気圧よりも気圧が低い所の事を言うんだ。では、そもそも低気圧って何なの?って話になる。小学校の時に理科の実験でやったと思うけど、暖かい空気は軽いって聞いた事あるでしょ?だから、同じ面積辺りの重さは軽くなるよね?そうなると当然圧力も下がる訳だ。その結果、上昇気流が起きて空気が上に上昇する。この図の様に窪地に水を流して蒸発させるイメージをすると分かりやすいかな?等圧線はほぼ等高線と同じと考えて見てくれ。立体で考えるから難しくなるんだ。空の空間を山だと思って……ごめん。難しいね」
国背先輩は若干理解出来てなさそうな俺達の顔を眺めて少し考えつつ、山になっている方の等圧線を青ペンでなぞり、中心にHと記載した。そして何かを思い付いたのか、口元を綻ばせた。
「等圧線ってのは海水面上での大気圧の圧力が同じ場所を結んだ線の事だ。等高線の気圧版だと思ったらいいね。そして、高気圧はその名の通り気圧が高い空気なんだ。つまり、空気が重いんだよね。だからこっちでは下降気流が起こる。ほらこの図を見て!おっぱいの房の所から水を流したのをイメージすると分かり……。んん。円錐の先っちょから水を流すのをイメージしてくれると分かりやすいかな」
国背先輩は唐突に下ネタをぶち込んで来た。貴方そんなキャラじゃないでしょ。国背先輩は少し微妙な空気になったからか途中で言い直したが、周囲は余計に微妙な空気になっていた。
「それで、この二つが何に関係してくるかと言うとね気圧の谷って言葉を聞いた事があるかい?高気圧と低気圧が近くに来た時当然その間は大きな気圧の差が出来るよね?そうなった場合、当然その間には上下間で大きな温度差が生まれるから天気が悪くなる。それと他に関係があるのが前線だ。梅雨前線とかって聞いた事あるでしょ?雨が降るイメージだよね?停滞前線については後で説明するけど。ええと空気の対流って言うのは……。そうか、一年生はまだ習ってないかな?前線ってのは冷たい空気と暖かい空気の境目を示すものなんだ。冷たい空気と暖かい空気はぶつかり合っても直ぐに混じり合わない。冷たい空気は重く、暖かい空気は軽い。だからぶつかり合った空気は冷たい空気が下に潜り込んで暖かい空気が上にはい上がろうとする訳だ。お相撲さんが風船みたいな人とぶつかる様な物だね」
また微妙な例えを……国背先輩例えるの下手だな?
「暖かい空気が冷たい空気の上にのし上がると当然上空は気温が低いから冷えるよね?そしたら冷えた水分は氷となって雲を形成して雨を降らす。のし上がった場合は冷たい空気の上を暖かい空気が移動するだけだから広範囲にしとしととした雨が降る。雲も乱層雲や巻雲などの上下に薄い雲が形成されるんだ。寒冷前線が追いついた時。つまり、暖かい空気が押し上げられた時は逆に暖かい空気は真上に昇るよね?自分より速度が速くて重い人に後ろから押されてるのに横に広がるなんて無理だよね?そんな場合は縦に広い雲。積乱雲などの雲を形成して狭い範囲に強烈な雨を降らすんだ」
俺は難しい話にだんだん眠くなってきたのかうとうとしていた。
「聞いてる?」
「あ、はい。大丈夫です」
勿論大丈夫ではない。俺の天気図用紙には涎の跡がしっかりとついてしまっていた。
「前線の種類は後で説明するけど、取り敢えず暖かい空気が海上の湿った空気を吸って、上空で冷えて雨になる。前線は温寒の空気がぶつかり合う境目と覚えてたら天気図描く分にはそれで良いよ。この仕組みとか分かってたら日本の季節ごとの気圧配置とかも覚えなくても分かるようになるから案外便利だよ」
そんな事覚えて何に使うんだ。とか思ったが俺は当然口には出せない。そもそも天気図描く練習の時間など必要あるのだろうか?一応これでも運動部である。部活の時間にまで理科の授業を聞きに来ている訳では無いのだ。
「よし、基本情報を頭に入れた所で低気圧や高気圧、前線の天気図での描き方についてを解説しよう」
国背先輩は、隣にいたホワイトボード上の高気圧の図の中心に松村先輩が赤い点を加筆した事に気が付いていなかった。それを見た俺達の下ネタ大好き組は心なしか嬉しそうな表情を浮かべていた。中学生って言ってもまだ子供、いや、男子中学生って子供だなぁ。俺は中学一年生ながらにそう思った。
等圧線……同じ大気圧の部分を線で結んだもの。
気圧……空気の圧力
低気圧、高気圧……周囲より気圧が高いか低いかで決まる。低気圧は反時計回りに風が吹き込み、上昇気流を生じる。高気圧は時計回りに吹き出し、下降気流を生じさせる。
前線……暖かい空気と冷たい空気のぶつかり合う境目。その他次回説明します。
理解が深まると天気予報なども数時間単位で自分で出来るようになります。私が高校時代山岳部に所属していた際はライバル校の方が気象予報士の資格を持っていましたね。私は天気図担当では有りませんでしたが、チームメンバーがその相手の方に勝っていたのは誇りです。(私は隙あれば何の話をしているんだ……?)




