113話 無気力
マラソン大会、二回のテストが終了し、追い出し登山も終了した。
マラソン大会はBグループで走った俺は思った結果は残せなかった。そして、何より悪かったのが二回のテストだ。第三回、第四回テストの成績は一向に上がる気配は無く落ちていた。
それもそうだろう。授業の速度は速く、徐々に難しくなっていっているのだ。第一回、第二回テストにすら着いて行けていない俺が着いていける筈も無いのである。そして、そんな事にも気づかない俺は半分自暴自棄になってしまっていた。
周りの中で徐々に成績によるランク付けが行われ、カースト制度が出来上がっていく。俺は勝手にそう自覚していた。実際には成績が底辺であってもそれを馬鹿にする者は殆ど居ない。せめて、おいおい、勉強頑張れよ。程度である。テメェの成績悪いから口聞かねえ。みたいな事はないし、普通に友達として付き合ってもくれる。だが、俺は大きな劣等感を感じていたのだ。
実際に成績のいい人は優秀な生徒だと認知される。それによって先生による贔屓が起こる事はあまり無いが、他の生徒に敬われる事は確かだ。そう言う人がチヤホヤされているのは努力の賜物である。全国模試などでトップ10に入り、予備校のリストに名前が書かれる生徒もいるのだから上を目指すのは困難であった。
最終的に学年で下から一桁の成績を取った俺はその順位を周りに言う事は出来なかった。せいぜい、かなり悪いという事しか伝える事は出来ない。それでも模試では偏差値50は超えているのだから皮肉な物である。差が少ないと言われる一年生の模試ですら偏差値70超えを取るトップは凄過ぎた。
俺はこの成績を見た後、成績を隠したまま六年生追い出し登山に行った。六年生追い出し登山は午前中は軽い登山やサッカーを行い、午後は打ち上げをするという内容の登山だ。この登山には既に部活を引退している六年生も参加する。
学生なのに……何でこんなに高い店を……と個人的に思ったが、人数が人数の為、部員全員が入って食べ放題が出来るお店は広島市内でもごく僅かしか無かった。
打ち上げの内容は当然焼肉だ。引退する先輩達には色紙と後輩達が用意したグッズなどが贈呈される。その際に渡される物と読み上げられるセリフはまた独特な物である。教員がいる前で精力剤をプレゼントされる先輩や、変な本をプレゼントされる先輩までグッズは様々だ。
サッカーの際に中に出せと下ネタ連呼する位だから察してはいたが、ここまで堂々としているとは思わなかった。中に出せと言うのはインに入れろと言う意味で俺達は勝手に使っている。その他、アウトにボールが出た際や、自分にボールをパスして欲しい時に使うのは自分達のボールである事を示すMy ballと言う言葉がうまい棒に聞こえる事から『うまい棒!』と言う独特な掛け声がある。青ルといいこのチームは何かと新しい言葉を勝手に作るのが好きである。
打ち上げでは教員は大量にお酒を飲んでいた。その後二次会に行ったみたいだが、俺達は一部を除いて打ち上げが終了するとそのまま帰宅した。流石にまだ一年生だし、夜街を歩くのは危険だと判断したのだ。それに、俺は特に家が遠い為、遅くまでは居座れない。
毎度の事ながら俺の家の方面に帰る人はワンゲル部員では一人たりとして居ない為寂しい物である。
新年度を迎え、二年生になった俺は次第に意欲を無くして行き、最初のテストで下から3位を記録した。この時点で志道学園の授業の進みの早さについて行けなくなった人は多く、10人程が学校を自主退学している。自暴自棄になっていた俺もそれを考え始めていた一人になっていた。
外で話す際に浮かべる笑顔は常にぎこちない物となり、やる事全てに意味を見出せなくなってしまっていた。家に居ても会話は無し、学校に行っても周りが全て敵に見えた為、あまり人とも話さなくなった。
周りが敵に見えたのは俺の勝手な思い込みだったのだろう。実際には向こうから接してくる場合も多かった。それにも関わらず俺の視野は更に狭まっていた。そして、遂には自分の事すらどうでも良くなった俺は宿題すら放棄する様になった。
その結果、放課後には宿題による居残りや小テストの居残りが続き、ワンゲル部の練習には出れなくなってしまった。何かの報せなのか、偶然同じクラスにはワンゲル部の人は居ない。それ故か、俺はワンゲル部の人と関わるのは自然にミーティングの時だけとなっていた。
とは言っても宿題や小テストの居残りがあったとしても18時半まで居残りがある事は少ない。18時までには基本終わる。それにも関わらず俺は残った時間をしんどいし、途中から行くのは何か嫌だ。という理由でワンゲル部には行かなかった。
その時間はただ楽しいだけのジャグリング部の方の練習に向かっていた。
春一番の新入生歓迎登山には行ったものの、俺はそれ以降の合宿には参加していない。その理由は土日は家でゴロゴロしたい。しんどいからと言う理由だ。土日は一日中家で寝ていた。いや、寝る以外に気力が無かった。半分鬱の様な状態になっていた。
普段の生活態度や、授業態度、成績の悪さから土曜日はほぼ毎週土曜学習会に駆り出され、面談ではかなりキツいお言葉を貰った。ワンゲル部に参加しない影響で、自然と疎遠になったワンゲル部員。特に真面目にやっている明道などからは毛嫌いされる様になっていた。俺はワンゲル部を続けるか足を洗うから本当に迷っていた。辞めるなら今だろう。
俺は本気でそう思っていた。
二年編は半鬱期間であまり部活に参加しないのでサクサク進みます。




