カクヨムはなぜレビューが書かれやすいのか――なろう vs カクヨム
寿司通がお店に入るとよく最初にコハダを注文するそうです。
コハダを食べればその店の実力が大まかにわかるとのこと。コハダがうまければ他のネタもうまい、まずければ他のネタもまずい、というのが寿司通たちの常識のようです。
ところで、われわれ小説サイトユーザーにとっての”コハダ”に相当するものがレビューだと私は思うのです。
他人が書いた小説のレビューを書かせれば、その人の実力がだいたいわかります。よいレビューを書ける人ほど、おそらく彼/彼女の書いた小説も面白いと推定できます。
よいレビューを書くには三つの力が要求されます。すなわち①読む力、②書く力、③小説の一般的素養の三つです。
①読む力とは
レビューを書くにはまずその小説を読み、概要を大まかに理解していなくてはなりません。小説をただ要約するのではなく、どこが面白いかを強調して小説を紹介するのがレビューです。
よいレビューを書くには、この小説のどこが面白いかを正しく理解している必要があるのです。
②書く力とは
短いスペースに適確な言葉を選んで小説を賞賛する。これがレビューを書くという作業です。
ただ要約するのではなく、レビューの読者がその小説を読みたくなるよう、全体として小説をほめなくてはなりません。
よいレビューを書くには単なる小説の要約を書く以上に文章をコントロールする力が要求されます。
③小説の一般的素養とは
よいレビューを書くには、その小説と同じジャンルの他の小説と比較し、どこにその小説の特徴があるのか適確に指摘することが重要です。これは①とも重なりますが、要するによいレビュワーになるには、日ごろから小説を多読し、小説に関する幅広い知識や雑学を身に着けている必要があります。
ところで私はカクヨムでも作品を発表しています。
カクヨムは「なろう」にくらべユーザー数が少ないせいか、アクセス数や★数が極端に低いです。ただそれにも関わらす、レビューは書かれやすいようです。
「なろう」では感想は書かれてもレビューを書かれることは滅多にないのではないでしょうか。特にアクセス数がPVで200強もいってない作品(ユニークでは2桁)で、まずレビューは書かれないでしょう。
ところがカクヨムではこういう不人気作品にもレビューがつくのです。
カクヨムで私は自分の二つの作品にレビューが書かれましたが、最初にレビューの文章を読んだとき、いずれも「これ書いたやつ、何者?」という驚愕の念を覚えました。
それぞれ別の人物(一人は女性、もう一人は男性)ですが、どちらのレビューも文章といい、内容といい、おそろしくレベルが高かったからです。
おそらく道を歩いている人をランダムに捕まえ、私の作品を読ませてレビューを書かせても、彼らのレベルには到底およばないでしょう。
小説サイトに登録する以上、本気でプロ作家を目指しているアマチュア作家だから、これくらいのレヴューが書けて当たり前だと言われてしまえばそれまでですが、私はここにカクヨム運営のカラクリがあるのではないかと邪推します。
カクヨムでは、ときどきプロ作家が参加しています。小説の宣伝用に作品の冒頭部だけ無料でサイトに公開する、という具合です。
この他、エッセーを読むとコテコテのプロ小説家ではないにせよ、アマチュア作家とは一線を画すセミプロ作家が作者であることがあります。ゲームやテレビドラマのシナリオライター、プロの編集者などです。
さらに本物のプロ作家がお忍びで覆面ライターで参加している場合もあるでしょうが、これは「なろう」でも推定されることですので省きます。
いずれにせよ、公言しているもの限定でカクヨムと「なろう」を比較した場合、非アマチュア作家の割合がカクヨムの方が多いような気がします(ただし、しっかり統計をとったわけではありません)。
ここからは推測ですが、カクヨムでは何らかの非アマチュア作家に新参ユーザーの作品のレビューを書かせているのではないでしょうか。おそらく株式会社KADOKAWAに勤務する編集部の若手社員が、レビュワーをやらされている気がします。
もしそうだとしたら、その目的は何でしょうか。
第一に新参ユーザーを励まして、これからも多くの作品を書いてもらうためでしょう。
第二にレビューを書くことでアクセス数は向上します。そして結果的にある程度以上のアクセス数や★数を獲得すれば、KADOKAWAから書籍化を企画するという流れではないでしょうか。アクセス数や★数が十分あれば、書籍の売り上げも高い確率で見込めるからです。
私はカクヨムはヨムヨム、「小説家になろう」は「小説を書こう」として付き合っています。つまり非アマチュア作家の作品が読めるカクヨムは「読み専」、ユーザー数の多さから多くの人に作品を読んでもらえる「なろう」は「書き専」です。
もちろん完全な意味ではありません。カクヨムにもときどき作品は発表し、「なろう」でも特にお気に入りユーザーの作品はよく目を通します。
ただ基本は、カクヨムは「読み専」、「なろう」は「書き専」と考えています。
で、一体、おまえは何が言いたいのかと突っ込まれると、実は元も子もありません。
おまえの小説のレビューを書いてほしいだけなんだろうと言われれば、「はい、その通りです」と答える他ありません。
また「なろう」とカクヨムのどちらが優れているのかといった、おなじみの議論に陥るつもりはありません。二つのサイトを比較したエッセーは「なろう」でもカクヨムでも、いくらでも見つかります。
ただカクヨムで書かれたレビューのレベルが高かったので驚いたことと、こうしたレビューを書ける人はライターとしての実力がある程度以上あるはずだという思いがあり、それがこのエッセーを執筆した動機のすべてです。
(了)