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虚構都市  作者: 虚構建築設計
6/11

断片:墓所

少女とヘラヘラ笑う男のはなし

墓所の空には、重い重い雲がかかっていた。

気付けばポツポツと雨が降り出している。

雨はすぐに、乾いた地面に吸い込まれていく。

雨はすぐに本降りになり、少女と男を濡らした。

後から後から振ってくる雨は、少女の瞳を濡らし、少女は何度も手で、ぬぐう。

地面はすでにじっとり濡れている。

男はヘラヘラ笑っていた。

この時だけでなく、いつも、ヘラヘラ笑っていた。

「ねぇ、どうして、いつも笑っているの?」

少女が男に尋ねる。

「へ、へへ、いつ、楽しいことが起こってもいいようにさ、へ、へへっ、笑ってりゃあ、大概のことは楽しくなるもんさ、へ、へへへ」

男は答える。

「どうしても、悲しいときも、あなたは笑っているの?」

少女は尋ねる。

「へへっ、へ、そうさ、あっしは、笑っている、へ、へへ」

「もしも、あたしが、死んでしまったたしても?」

「へへ、へ、そうさな、それでも、あっしは笑っているさ、へへ、へ」

少女はそれを聞いて少し悲しそうにする。

「 あたしが、死んでしまっても、あなたは、悲しくはないのね。」

男はヘラヘラ笑いながら首を振る。

「へ、へへへ、悲しくないことは、ないさ、へへっ、笑っていても、悲しいときは悲しいし、つらいときはつらいもんさ、へ、へへ」

「あなたは、泣いてはくれないの?」

「へへ、へ、泣いてなんていたら、楽しいことが来たときに、楽しくなくなっちまうから、な、へ、へへへ」

「あたしも・・・、笑っていたら、楽しい気持ちになれるのかしら。」

呟くように少女が言う。

「へへ、へ、そりゃあ、わからねぇ、へ、へへっ、ただ、泣いてるよりも、笑ってる方が、あっしは、楽しいがね、へへ、へ」

「じゃあ、あたしも笑ってみようかな?」

少女は無理に笑顔をつくってみる。

「へ、へへ、それがいい、へへ、たとえ、あっしが死んでも、この世で、おめぇ一人になっても、笑ってりゃあ、きっと楽しいさ、へへ、へ」

にわかに、雨が弱まり、雲間から、僅かに日差しが差し込んでくる。

「へへ、へ、ほれ、早速、いいことがあった、へへ、へ」

男は空を指していう。

少女は小さくほほ笑んだ。


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